姓:司馬 名:昭 性別:男
字:子上
真名:一刀(カズト)
北郷一刀が転生した者。
姓:司馬 名:懿 性別:女
字:仲達
真名:理鎖(リサ)
一刀と瑠理の偉大なる母。第三章で死亡した。
姓:司馬 名:師 性別:女
字:子元
真名:瑠理(ルリ)
母を目標にする一刀の姉。一刀を異性として愛す。
姓:張 名:春華 性別:男
真名:解刀(カイト)
一刀と瑠理の父にして、一刀の師。
姓:王 名:元姫 性別:女
真名:美華(ミカ)
一刀に異常なまでに執着する一刀の妻。
姓:鄧 名:艾 性別:女
字:士載
真名:江里香(エリカ)
後の司馬家軍の宿将。司馬家に対して恩を感じている。
姓:賈 名:充 性別:女
字:公閭
真名:闇那(アンナ)
司馬家の隠密。一刀のために働くことを生きがいとする。
姓:王 名:濬 性別:女
字:士治
真名:澪羅(レイラ)
後の司馬家の水軍の将。一刀を気に入り、司馬家のために戦う。
姓:司馬 名:望 性別:女
字:子初
真名:理奈(リナ)
一刀達親戚で、一刀と瑠理とっては義姉という立場。
姓:杜 名:預 性別:女
字:元凱
真名:綺羅(キラ)
一刀とは同期。親同士の仲は良くないが、当人達の仲は良い。
(野郎! 本当にやりやがった!)
姜維は解刀を盾にする事で何とか矢を凌いだ。
否、盾にせざる負えなかった。彼は意識して解刀を盾に使ったのではない。反射反応で無意識にそうしたのだ。
(くそ、これではこの男という切り札は使えん!)
さらに事はそれだけでは収まらなかった。
彼は何とか矢を何とか防いだものの、自分の部下達は一刀の行動に唖然としてしまい、無防備に矢を食らってしまったのだ。
(! しまった! 矢の範囲にいる全員が矢を食らってしまった!)
彼はようやくその事態に気付き、指示を飛ばそうとする。
「まだだ! 打ぇ! 打ぇー」
一刀の指示により二回目の総射撃が行われる。
「! 矢を避けろー!」
ここで姜維は大きな失態を犯した。
彼は迫り来る矢に対して、部下達に避けろと言うが、具体的にどう避けるかを指示していなかった。彼もまた動揺していたのだ。
「ぐわ!」
「ぎゃー!」
結果、まだ動揺が収まっていない部下達はおろおろするだけでまともに動けず、またも無防備に矢を食らってしまった。
「ちっ! くそ!」
彼は此処で己の失態に気付く。気付いてさらに動揺してしまう。彼は優秀すぎたがために今まで失態を犯したことは無く、初めて
だったのだ。故に失態を犯してしまった時の耐性がまるで無かった。
「静まれ! 静まれー!」
今の彼に出来た事はただ部下達の動揺を抑えようとすることだけだった。その間にも一刀達の総射撃を食らってしまう。
――そして、司馬家軍の矢が尽きた頃には、五胡軍は甚大な被害を被ってしまった。
「行けぇー! 奴等を討てぇー!」
一刀の指示で司馬家の兵達は凄まじい鬨を上げて五胡兵に向かっていく。
「! 迎え討てぇ!」
それを見た姜維は少し遅れて、迎撃を指示をする。
しかし司馬家軍の激情による士気の高さに対して、五胡軍は甚大な被害により士気は最悪だった。姜維が奮戦するも、見る見る内に
五胡兵は討たれて行く。
そして姜維の元に江里香が現れる。
「姜維ぃ! その首を貰う!」
江里香は長柄双刀で姜維に斬撃を繰り出す。
「く!」
後ろに下がり、回避する。だがその後ろから気配を感じすぐに横に動いた。
横に動く前の位置には澪羅の双戟が地面に突き刺さっていた。
「ち! くそ!」
澪羅はすぐに姜維の所に駆け、武器を振るう。さらに江里香も加わる。
(ぐ! 不味い!)
姜維は明らかに劣勢だった。そんな彼に加勢しようと五胡兵達は姜維の所に集まろうとするが、理奈、闇那、綺羅がそれを阻む。
「通しません!」
闇那が手投げの短剣で彼等を討つ。
「彼女を援護しなさい!」
「姜維取りの邪魔をさせるな!」
理奈、綺羅が闇那を援護し彼等を姜維に近づけさせない。
それでもなかなか姜維を討てない。
「姜維ぃ!」
その混戦の中についに一刀が加わる。
そんな司馬家軍を全力で馬騰軍は援護していた。
(まさか……見殺しでは無く、自らの手で父を討つとは……)
異常なまでの覚悟を見せた一刀に感嘆としてしまう。
出世のための思惑などでは無い。それは彼の涙を見たここに居る誰もがわかるだろう。
(あの覚悟に応えねば!)
そのための全力で司馬家を援護する。此処は馬騰軍は主役であるべきではない。
(主役はあいつ等であるべきだ。それをしない奴は、部下だろうと娘だろうと斬る!)
尤も娘達にその心配はないだろう。彼に感化されたのか二人の目は少し涙ぐんでいて、必要以上に前に出ていない。それは二人が弁
えている証拠だ。
「お前等! 司馬昭を全力で援護しろ! いいな!」
「ああ! 分かっている!」
「任せて!」
三人は司馬家軍に向かう五胡兵達を斬り捨てていく。あの親子に少しでも報いるために。
そんな戦を、一刀を、僅かな視界で解刀は見ていた。
「姜維よ……天下よ……見たかぁ……これが一刀だぁ……これがもう一人の……司馬家の主だぁ……」
かすれた声であっても、彼は叫んでいた。
「がふ!」
声を出した後、彼は口から吐血する。もはや喋る力は無い。
(理鎖……すまん……お前との約束……ここで終わりだ……瑠理の想いの結末を見ることはかなわんようだ……)
だが彼の心はけっして二人の行く末の心配はしていなかった。
(けど……一刀居れば大丈夫だ……一刀なら……どんな形であれ……瑠理を絶望には導かないはず……一刀……瑠理の想いに気付いた
時お前は最初はどうして良いかわからないだろうが……最後は……幸せに出来る決断をすることを信じているぞ……瑠理や民のために
俺を討つ決断したお前なら……きっと出来る)
彼の視界が闇に染まる。
(瑠理を……頼むぞ一刀……理鎖……報告に行くよ……一刀の成長……ぶり……を……)
解刀は、眠りについた。
その表情は、残酷な結末を迎えた人間とは思えぬほど、非常に穏やかで笑みすら浮かんでいた。
司馬昭が江里香、澪羅に加勢したその直後、姜維は分が悪いと即座に判断し、部下達に退却を命じ、彼自身も隙を突いて逃げた。
彼を追撃したが結局は討つことは叶わなかった。
――五胡兵全てが退却した後、一刀は解刀の遺体に静かに歩み寄り、抱いた。
「何でだよ……何で……笑っているんだ……息子の俺に殺されたのに……何で!」
一刀は涙を流す。
「何で! どうして!」
叫ぶ、涙しながら、喉を潰しかねないほどの声で。
「う……く……父上……」
一刀は解刀の遺体を強く抱きしめる。
「父……さん……う……おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
一刀の悲しみの叫びが響く。
その姿に馬騰親子は目を伏せ、何も言えず、理奈、江里香、闇那、澪羅、綺羅は一刀につられ、涙をこぼした。
第十四話
「戦場跡に響く、一刀の慟哭」
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ついに決着。しかし代償はかなり重かった。