No.573761

天馬†行空 三十話目 空の色、再会

赤糸さん

 真・恋姫†無双の二次創作小説で、処女作です。
 のんびりなペースで投稿しています。

 一話目からこちら、閲覧頂き有り難う御座います。 
 皆様から頂ける支援、コメントが作品の力となっております。

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2013-05-06 21:44:11 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:7201   閲覧ユーザー数:4922

 

 

「ここは都と弘農、長安近郊の荒地を開拓してはどうか? 労役ではなく、耕地を開拓した者に任せるという形を取れば――」

 

「陛下と御遣い様の威勢で中原はおろか江南でも商人達が活発に流通をしております。ここは各地への街道の整備をですね――」

 

「黄巾の残党は元々農民が多う御座います。ここは彼等を赦し、労働力として組み込み――」

 

「馬、馬を買う。西涼のとあわせて強いのを沢山増やして――」

 

「徴税の見直しと、過去の帳面を調べ直して無駄を極力省く方向に――」

 

「公孫賛殿や馬騰殿、士燮殿たちを通じて五胡の話が通じる部族と誼を――」

 

「一遍に喋るなヌシら! 記録が取れんじゃろうが!!」

 

「……なんぞこれ」

 

 洛陽の宮殿、臨時で会議室と化した玉座の間で起きている喧騒を前にして司馬仲達は間の入り口で呆然と呟いた。

 集まった者達が好き勝手に意見を口にし、文机で彼等の言を書き取っていた老人(蔡邕(さいよう))が青筋を立ててべきり、と筆を折る。

 おおよそ想像していた宮中の様子とはあまりにもかけ離れた現状に目を白黒させている仲達の後ろに、小さな影が近寄ってきた。

 

「司馬懿、そんな所で立ち止まって如何した?」

 

「――ぅわひっ!?」

 

 平時から心の裡を余人に悟られないよう「感情を表に表さない、穏やかな人物」の仮面を被っている(つもりの)司馬懿だが、気配も無く声を掛けられて飛び上がらんばかりに驚愕する。

 完全に仮面が外れた司馬懿は、ぐるりと顔だけを真後ろに向けると、そこに居た人物を見て二度驚愕した。

 

「り、劉協様!?」

 

「……随分と、器用に動く首だな」

 

 首だけでこちらに振り返った司馬懿を見上げ、劉協は呆れたように呟く。

 

「さて、朕も参加するか…………司馬懿、何をぼさっとしておる? お前も参加するのだぞ?」

 

「ぅえっ!? ――じゃ、じゃなかった、ぎ、御意っ!」

 

 仕官が決まってすぐに闇鍋の中に放り込まれる状況ってどう言う事よ!? と、胸中で叫びつつ、司馬懿は混沌の様相を見せる討論の場へと向かった。

 

 

 

 

 

 ――混沌の場に至るより前。

 

 登用試験の受付に並ぼうとした司馬懿の耳に怒声が響いた。

 

「貴様! 小役人の分際でこのワシに対して、小汚い連中の後ろに並べと言うか! 一体どういう了見をしておるのじゃ!」

 

 耳をつんざく濁声に、司馬懿がめんどくさそうにそちらを見ると、受付の文官に向かって怒鳴り散らしている朝服姿の老人の姿。

 

「今回の試験は該当する全ての方に門戸が開かれており、また試験は到着した順となっております。故に、貴方がどちら様であろうと規則に従い列に並んで頂きます」

 

 唾を飛ばしながら食って掛かる老人を前に、年若い受付の女官は恐れた風も無く淡々とした態度で応対する。

 

「こ、この無礼者め――」

 

「――そこまでにしときなよ、爺さん」

 

 手にした竹簡を振り上げ、受付の女官を殴りつけようとする老人の背後に近寄った司馬懿は、老人の腕を捻り上げた。

 

「どこの名門出か知らないけどさ、天下の往来でこんな振る舞いしようなんて……アンタの器が知れるよ?」

 

「なんじゃと――ぐ!? は、離っ、い、痛たたたたっ!?」

 

「陛下が御出でになる試験だよ? その受付やってる方の言う事には従うのが筋でしょ?」

 

「わ、解った! 解ったから! は、離してくれ!!」

 

 ぱっ、と手を離すと老人は大きく腕を振りながら受付から後退り、

 

「ふ、ふん! 下賎の者に混じってまで仕官しようとは思わんわ!!」

 

 捨て台詞を残し、足音も荒々しくこの場を立ち去る。

 その姿を視界どころか最早気にも留めず、司馬懿は列の最後尾に並ぶ。

 

「助かりました。礼を言っておきますね」

 

「あ~、別に構いませんよ。私が勝手にやった事ですし」

 

「そうですか。では私も勝手にお礼を言わせていただきますね。有り難う御座いました」

 

「こりゃ御丁寧にどうも」

 

 事務的な態度を崩さないままに一礼する女官に、司馬懿は内心苦笑しながら頭を掻いた。

 

 

 

 列に並ぶ事三刻(約四十五分)、自分の番が来た仲達は宮殿の一室へと案内される。

 部屋には中央に机が一つ、二つの席に妙齢の女性が二人腰を下ろしており、入り口横には朝服姿の、まだ子供と言っても良い年齢の少女が控えていた。

 どうぞ、と二人の女性の対面に据えられた椅子に着席するよう勧められた司馬懿は、しばし逡巡すると、二人に背を向けるように椅子の位置を直して腰を下ろす。

 漏れ聞こえる動揺とも感嘆ともつかぬ吐息を背に、司馬懿は入り口に佇む少女にのみ意識を集中していた。

 

「え、ええと……私に何か御用ですか?」

 

 見つめられた少女は、蒼穹を思わせる瞳に不安の色を浮かべて控え目に司馬懿に問う。

 

「はい――お初にお目にかかります劉協陛下。私は司馬懿、字を仲達と申します」

 

 真剣な表情のまま、静かに起立した司馬懿ははっきりとした口調で少女に深く頭を下げた。

 ……仲達が頭を下げたままの姿勢でいると、しばらくして、くすくすと小さな笑い声が少女の口から漏れ始める。

 それが聞こえても、仲達は目を閉じて頭を下げたままの姿勢を維持していた。

 

「くすくす――――お見事、司馬懿とやら。試験に移る前に朕に気付いた者は貴女が初めてですよ」

 

 お辞儀したままでも解る程に、少女から感じられる雰囲気が変わる。

 部屋の空気が重みを持って司馬懿の肩に圧し掛かってくるような、そんな感覚。

 

「では、面倒な質問は省きましょうか。――司馬懿よ、一つだけそなたに問う……頭を上げよ」

 

 司馬懿には今、部屋の中に自分と目の前の少女しか存在しないような錯覚に陥っていた。

 

「汝、天下に何を望む?」

 

「この乱世に終止符を。――そして、続く世に強き国の形を」

 

 劉協から放たれた鋭い刃のような問いに、司馬懿は一瞬の逡巡もなく答えを返す。

 劉協の強い視線に、司馬懿もまたありったけの思いを込めた視線をぶつけた。

 嘘偽りの無い、真っ向からの信念を言葉に乗せて自身を見る司馬懿に、劉協は花開くような笑顔を見せる。

 

「ならばその志、我が下にて徹して見せよ。……董承、司馬懿を例の間へ通せ」

 

(――――!)

 

「御意。司馬懿殿、こちらへ」

 

 温もりを感じさせる声を皇帝から掛けられ、司馬懿が感動のあまり硬直していると、後方で誰かが立ち上がる気配がした。

 董承に促され、部屋を出る司馬懿の後姿を見つめる劉協は部屋に残る一人、盧植と顔を合わせると悪戯っぽく笑う。

 

「なかなかに面白い人物が来たものです。さて、本日の試験はここまでとしましょうか。……後を頼みます、盧植」

 

「はっ!」

 

 盧植と共に部屋を出た劉協は、先程董承が向かった先へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 懐かしい景色を左右に見ながら、街道を歩く。

 土の香り、頬を撫でる風、そして――

 

「みんな雨具用意して! 凄いのくるよ!」

 

「おう!」

 

「風は準備できてますよー」

 

「風、貴女のは宝譿が(人形サイズの)傘をさしてるだけでしょう!」

 

 ――突然来るスコール。

 滝のような雨に打たれながら、急いで街道脇の木陰に退避する。

 

「……ふぅ、こっちは相変わらずだなぁ」

 

「天気が変わりやすいにも程があるだろう……」

 

 編み笠を脱ぎ、濡れた外套をばさばさ振って水気を落としていると、星がうんざりした顔でどんよりと曇った空を見上げた。

 

「や~、でもお兄さんが居て助かりますよ」

 

「そうですね、この雨にしても直前まで空は晴れ渡っていましたし……降る前に一刀殿から注意して頂けるだけでもだいぶ違います」

 

 眼鏡を拭いながら空を見上げる稟さんは、何かコツが有るのですか? と聞いてくる。

 ん~…………そう言われても、こればっかりは慣れとしか言い様が無い。

 このあたりで一年暮らして自然と身に付いた感覚なので説明しづらいと言うか何と言うか。

 …………敢えて言うとすれば、空気の匂い、だろうか。

 降る直前になると、土や緑の匂いが強くなるように感じられて、そうなると一分と経たずに雨が降り出すのだ。

 案の定、説明してもハテナ顔をされたが雨脚も弱まったので再出発。

 あと一時間も歩けば交趾だ。

 

 

 

 ――荊南四郡の賊討伐から更に一ヶ月。

 

 賊が荒らした各郡の治安を回復する為に月さんはそれぞれに将を別けて事態に当たった。

 月さん自身も武陵、長沙へと巡察に赴き、零陵と桂陽は俺が担当。

 時間が掛かるかと思われたが、各郡の有力者が協力してくれた為、予想以上の早さで荊南は平穏を取り戻した。

 それから一段落着くと、武陵の詠から益州攻めの布石を打つために交州、雲南へと赴く許可を求める為に出した手紙の返事が届く。

 返書には一言「あんたに任せるわ」とだけ記されていた。

 ――っと、そうそう、荊南での初仕事から一週間経って文遠が、

 

「忙しゅうて忘れるとこやった。一刀、ウチの真名は霞や。これからもよろしゅうな!」

 

 と言い出したのが切欠になって、それならと皆で真名を交換。

 俺は厳密に言えば真名無しな訳だが、華雄さんも真名が無――ではなく、不明だと聞かされた。

 なんでも華雄さんの生みの親が、華雄さんが物心もつかない頃に亡くなったそうで……。

 それも、賊に襲われて華雄さんの住んでいた村が焼かれ、生き延びたのは彼女を含めて数人だった。

 

「父と母は、私が言葉を話せるようになってから真名を伝えようとされていた、と育て親から聞いた。その後、育て親から真名をどうするか? と聞かれてな、要らぬと答えた。……私の真名は父と母が既に決めてくれていたのだ、たとえそれが分からずとも既に真名が有る以上、別の真名を名乗ってもそれは偽りの名でしかないからな」

 

 と、さばさばとした口調で語った華雄さんが印象的だった。

 

 

 

「ここは交趾の街だよ! ――あ! 兄ちゃん! 北郷の兄ちゃんだ! おーい皆! 兄ちゃんが帰ってきたぞー!!」

 

 交趾に着いてすぐ、門を潜ったところで子供達の中ではまとめ役だった男の子がこっちを見て声を上げる。

 

「ただいま。元気にしてたか?」

 

「うん!」

 

 しゃがみこんで目線を合わせると、元気一杯! ってな感じの返事が戻って来た。

 

「ホントだ! お兄ちゃんが帰って来た!」

「兄ちゃん! 兄ちゃん兄ちゃん!」

「兄ちゃんひさしぶりー!」

「おにいちゃん、かえってきた……」

 

「皆、ただいま! お兄ちゃん、ちゃんと約束守ったぞ?」

 

「「「「「おかえりなさい!!」」」」」

 

 初めの子の第一声から間を置かず、あちこちから集まって来た子供達に囲まれる。

 そのまま一斉に抱きつかれ、余りの勢いに転びそうになった。

 

「ん~……ふぁあ~あ、っと。おーい、チビッ子たちー? 何かあったー?」

 

 右手と左手で三人ずつ受け止めて体勢を整えると、頭上から久し振りに聞く(欠伸混じりの)声が聞こえて来る。

 城壁からひょっこりと覗いたその顔は思った通り、

 

「よっすハク、久し振り!」

 

 ハクこと郝昭その人だった。

 

「――へ? ほ、北郷!? ――うわわわ!?」

 

「わー!? 何やってんスかハク先輩! あぶ、危ないッスよ!!?」

 

「おいおい、流石に落ちたら洒落にならないよ?」

 

 子供達を抱えたまま、上に向かって声を掛けると――バランスを崩してあたふたするハクを、コウちゃんとケイさんが支えたみたい。

 

「お、北坊じゃないか! 今帰りかい?」

 

「オウ、帰ったか北坊。星に……そっちの嬢ちゃん達は前に一度見た顔だな」

 

「こりゃまた……北郷、お前、天の御遣いってのは本当の話だったのか」

 

 思わず頬が緩んだ時、後ろからまた知り合いの声が。

 

「おやっさん、おかみさん、尤突さん、お久し振りです!」

 

 ようやっと収まった子供達をゆっくと降ろしてから振り返ると、そこにはおやっさん達の変わりない姿があった。

 仕事用の小さな槌を持つ姿が、まるでおもちゃを手にしているように見えるおやっさん。

 風と同じくらいの背丈だが、今だって二、三……七枚!? の石畳をまるで出前の蕎麦でも運ぶかのように、片手で軽々と持っているおかみさん。

 おやっさんと同じく槌を持っている、やや無愛想な風情だが実はああ見えて女性向けの細工物とかを作るのが上手い尤突さん。

 

「墨水殿、お久し振りですな」

 

「黄乱殿、その節はお世話になりました」

 

「尤突さん、宝譿の傘、ありがとうなのですよ」

 

 星達も挨拶している……ああそっか、稟と風も前に来たって言ってたっけ。

 

「オウ。ところで北坊、城に用か?」

 

「あ、分かります?」

 

「そりゃあな。んなカッコで帰って来りゃ、大将に何か用事があるって思うだろうが」

 

 おやっさんに上から下まで見られてはっとする。

 あ、そうか、そういや制服だったっけ。

 どうも交趾にいると制服を着てる感覚では無くなっちゃうな。

 

「あー……はは。そ、それより、今お城に行っても大丈夫ですかね?」

 

「ン? そうだな……(あおい)、どうだ?」

 

「ん~……この時間なら確か休憩されてる頃だろうし、大丈夫じゃないかな」

 

 おやっさんに尋ねられたおかみさんは、石畳を揺らす事無く空いている左手を額に当て、ちょっと考え込んでから答えてくれた。

 

「そうですか、じゃあ先にお城に行ってきます――皆、また後でね?」

 

「うん、兄ちゃんまた後でな!」「帰ってきたらあそぼーね!」

 

 城に行く前に一声掛けると、子供達から元気のいい返事が。

 

「北郷! 後でご飯付き合ってな! 北郷が居なくてコウちんが淋し――ゥオフッ!?」

 

「北郷さん、また後でッス!」

 

 そしてハク達から――なんか、ハクの脇腹にコウちゃんの肘が突き刺さったが大丈夫か!?

 

「ああ、大丈夫だよ北郷君。久し振りに君に会えたから二人共はしゃいでいるだけさ」

 

「あ、あはは。じゃあハクの言う通り、後でご飯でも食べますかケイさん。お店はいつもの所で?」

 

「そうだね……そちらの方達も連れて来ると良い。では後程ね」

 

 おし、後で南安に、と――――今日はメンマ丼があるか分からないけど、星が喜びそうだ。

 よし、予定も決まったし威彦さんに会いに行くか。

 

 

 

 

 

 ――交趾の城、玉座の間にて。

 

「御遣い様、このようなむさくるしい城へ御出で下さり、交州牧士燮、感謝の念に堪えません」

 

「――!? ――! いえ、こちらこそ会談に応じて頂き有り難う御座います、士燮殿」

 

 玉座の間に通されると士壱さんをはじめ、顔なじみの武官、文官さん達が居並ぶ。

 そして、彼等の前に立つ威彦さんの顔を見てすぐの第一声に驚き――すぐに理解してなんとか切り返す。

 そう――今、俺は月さんの所から「天の御遣い」として威彦さんに会いに来ているんだ。

 交州牧としてこの場に立つ威彦さんはいつもとは違い、穏やかな雰囲気を残しつつも凛としていた。

 それに応えようと、俺も出来うる限り真剣に返答する。

 

「恐縮です。それでは御遣い様、早速ですが」

 

 始めさせて頂きます、と威彦さんが宣言した。

 

 

 

 先ず、威彦さんから出かけていた間に起こった南方の様子を教えてもらう。

 要点を纏めると――

 洛陽で反董卓連合に関わった人達に対して、劉協様から沙汰が下された時に士壱さんは三つの辞令を頂いていた。

 

 一つは、交州の牧に威彦さんを任命すること。

 

 一つは、士壱さんが中央を離れ、威彦さんの下で働くこと。

 

 一つは、朝廷の許し無く蒼梧郡に太守を置こうとした劉表を逆賊とすること。

 

 辞令を受けた威彦さんがどうしたかは語るまでも無く、交州から劉表の息がかかった者は駆逐された。

 今は各郡へ人を送り、治安の回復に努めているとのこと。

 とは言え、威彦さんは州牧になってないのがおかしいくらいの人なので、今回の州牧就任に交州の人達は諸手を挙げて歓迎したと聞いた。

 後、呉巨へと意図的に情報(当然、知られても構わない程度のもの)を流した際――威彦さんはあくまで私の勘ですが、と前置きをしてから話し始めた――呉巨や劉表以外、おそらく中原に拠点を置く諸侯の誰か(と威彦さんは判断した)の間諜が堂々とイベントに参加して来たのだという。

 三人組の旅芸人だったそうだが、当人達は兎も角、護衛に付いていたのが兵士として厳しい訓練を受けたと思わしき人達ばかりだったとかで、そう思ったのだとか。

 いずこの方にせよ、さほど価値の無い情報しか表に出さなかったので――と威彦さんは微かに笑みを浮かべた。

 

 次に交趾、雲南、建寧、永昌、南蛮間の同盟について。

 俺と星が雲南へ行った頃はまだ南蛮で疫病騒ぎが治まっていなかったのだけど、黄巾の乱が収まる頃には完全に沈静化したそうだ。

 劉焉領に近い建寧、雲南、永昌は獅炎さんを中心として連携を取り、劉焉軍を寄せ付けていないとか。

(尤も、黄巾の乱辺りから天水や長安に狙いを定めていた劉焉は、南方に侵攻してくる気配を見せなかったようだ)

 

 最後、蜀の劉焉について。

 初めて知ったんだけど、益州では劉焉が病に倒れて療養中。

 今は息子の劉璋が代わりに太守をしているらしい。

 代替わりした際の混乱は臣、民共に少なかったらしいが……それには理由があるのだとか。

 劉焉が主だった(自身に追従する)部下を成都に集めていたことに加え、劉焉が死んだ訳でもないので臣下の混乱は少なかった。

 民の方はと言うと重税や劉焉配下の兵士達の狼藉が依然として変わらない為、太守が代替わりしても結局は同じだと思っているのだと言う。

 

 

 

「……劉表が逆賊ですか。劉焉もですが、自業自得としか言い様がありませんね」

 

 威彦さんから話を聞き終えると、稟が眼鏡に手をやりながらそう言った。

 

「交州から劉表殿の勢力は追い出せましたが、結果的に荊南へ入った董卓殿に厄介事を押し付けた形になりましたね……」

 

「心配要りませんよ士燮さん。董卓さんも劉協陛下から劉表さんを討伐しても良いと言われたそうですからー」

 

 風の言葉にそうですか、と頷く威彦さん。

 

「士燮殿、本日は劉焉の件で来ました。董卓殿と協力し、南中同盟も劉焉を攻めて頂きたいのです。なお、この件に関しては陛下の許可も頂いています」

 

 反董卓連合で劉焉が動いていた証拠は掴めなかった。

 だけど、劉焉は朝廷との連絡を断ち、領地を私物化している実情がある。

 

「都で起こっていた騒動の裏で、劉焉殿が策動していたことは愚妹から聞き及んでおります。……陛下が決断されたのであれば、私に否やはありません」

 

「では、お願いします。……こちらからは以上です」

 

「承りました。では、これにて閉会させて頂きます。御遣い様、皆さん、お疲れ様でした」

 

 威彦さんの涼やかな声が響き、会談が終わった。

 武官や文官の方達がこちらに一礼しながら出て行くと、士壱さんがふうっ、と息を吐き出す。

 

「真面目な話は終わりだね。さて、ここからは普通にいこうか」

 

「そうですな、いつまでも他人口調では肩が凝りましょう?」

 

「ふふ、そうですね。では改めて――お久し振りです子龍殿、仲徳殿、奉考殿。おかえりなさい、北郷君」

 

 くだけた口調になった士壱さんに星が頷き、威彦さんがいつもの笑みを浮かべた。

 星達がめいめいに威彦さんへ挨拶をした後に俺も挨拶する。

 

「はい、なんとか無事に帰って来れました」

 

「公孫賛殿のところでは黄巾討伐、続く洛陽では幼い陛下と董卓殿を救う為にその服を着た、と……随分と数奇な運命を辿っていますね、北郷君は」

 

 苦笑交じりに挨拶すると威彦さんの、どこか困ったような感想が返ってきた。

 

「そうですね。――でも、全て自分で選んだ道です。後悔はしていません」

 

 きっぱりとそう言い切る――これから先は自分の行動が天下に少なからず影響を与えることを考えると不安にもなるけど、皆が居るから大丈夫だろう。

 

「――最早、心配は要らないようですね」

 

「そうなんだよね、北郷ってば御遣いの格好になって随分と肝が据わっちゃったからさあ――」

 

 威彦さんが呟き、士壱さんはそう言うと肩をすくめて見せた。

 

「――ま、でもその分男振りも上がったみたいだけど、ね?」

 

 ニヤニヤしながら後ろを――? あ~……星達三人を見ながら楽しそうに続ける士壱さん。

 

「ふっ、当然ですな。いまや一刀は我らの主ですぞ? 士壱殿」

 

「おおっと、これは藪蛇だったかな? まさか子龍さんから惚気を聞かされるとはね」

 

 同じくニヤニヤしながら星が士壱さんに応えた。

 ……当人を前にしてそんな事話し込まんでくれと思わなくも無いが突っ込むと絶対にあの二人は弄ってくる、間違い無い。

 

「お兄さん、突っ込まないんですかー」

 

「……その手は喰わないよ、風」

 

 裾を引っ張りつつ上目遣いに見上げてくる風。

 その仕草はとても愛らしいけど、この娘も弄り隊の主力メンバーなので油断はできない。

 

「ふふ、本当に良き友と巡り会えたようですね。――北郷君、それに皆さんも」

 

 笑みを浮かべていた威彦さんが目を閉じて――すぐに開き、その綺麗な翠色の瞳で真っ直ぐに見つめてきた。

 

「北郷君には一度名乗ってはいますが――(とう)、私の真名です。どうか預かって頂けないでしょうか?」

 

 ――!!

 

「――有り難く。我が真名は星。灯殿、ぜひ預かって頂きたい」

 

「風です。灯さん、今後とも宜しくお願いしますねー」

 

「稟と申します。士威彦殿、真名を預けて頂き光栄に存じます」

 

 ――――。

 

「……? どしたの? ほんご――」

 

 士壱さんが俺のほうを見て、はっと息を飲んだ。

 ? どうしたんだろ? 何か凄く驚いてるみたいだけど――あ、あれ?

 

「――一刀」

 

「は、あはは。ここんと、こ……皆の前で、こん、な姿ばっかり……」

 

 星の静かな呼び掛けで、ようやく自分が涙を流していた事に気づいた。

 

 ――くそ、また、こんな。

 だけど、これ堪えるの、難しい、や。

 

 ――こっちに来てから、想夏と同じくらいお世話になった人で、学問と武術を教えてくれた。

 

 ――時に厳しく、けれども親身になって教えてくれたんだ。

 

 いつかこの人に認められたいと――そう、思っていた、から。

 

「北郷君――貴方の名を、私に呼ばせてくれませんか?」

 

「――うっく。こ、断る訳、無いじゃ、ない、ですか。灯、さん」

 

「ふふ、やっと名前を呼べますね」

 

 

 

 ――ありがとう、一刀君。

 

 

 

 と、いつもの穏やかで優しい声が聞こえて。

 

 ――――――。

 

 

 

 

 

 ――数刻後。

 

 交趾の街、料理屋「南安」の前にて。

 

「あ! 北郷さん、こっち――って、どうしたんスか!? 目、真っ赤ッスよ!?」

 

「……ん(涙の跡? ……泣いてたのかな? ……でも、その割にはさっぱりした顔してる)」

 

「店の前で話し込むものじゃないよ。さあ、入ろうか……大丈夫だろう? 北郷君」

 

「ええケイさん、大丈夫です。入りましょう」

 

 丁度正午に差し掛かったあたりでハク達と合流して……やっぱり、突っ込まれたか。

 コウちゃんが驚いた顔をして、ハクはやけに神妙な顔つきになってる。

 説明しづらいな、と思った矢先にケイさんが上手く流してくれた。

 

「ここも久し振りですねー。稟ちゃん、なにを頼みましょうかー?」

 

「前は……確か、餡かけ炒飯定食だったような。ふむ、他のものも美味しそうだから目移りするわね」

 

「師匠、お久し振りです! メンマ丼は出来ますかな? あと単品でメンマ皿三つと大麻竹メンマの瓶詰めも!」

 

 暖簾をくぐって席に着くと、以前来た事が有る風と稟(二人が士壱さんと初めて出会った時に来ていた)が真剣な目つきでメニューを見始め、メンマの化身が決まりきった注文を告げる。

 

「あいよ! それと星、師匠はやめな!」

 

 片手で鉄鍋を軽々と振りながら、店内に響き渡る声。

 失礼だけど、揚婆さん確か七十歳越えてたような…………あと星、揚婆さんに真名も預けてたの!?

 

「あ、私は何時ものよろしく!」

 

「んー……今日は坦坦麺にするッス」

 

「私は叉焼丼にしようか」

 

 続けて、ハク達が注文した。

 ハク、いつものって…………ああ、確か八宝菜とカニ餡かけ炒飯のセットか……それも良いな。

 ケイさんが頼んだチャーシュー丼はここの看板メニューの一つと言ってもいいくらい美味いし、コウちゃんがオーダーした坦坦麺は辛いけどそれが癖になる美味さ。

 

「風はこの海鮮炒飯にしますねー」

 

「私は炒飯と……そうですね、かに玉をお願いします」

 

 悩んでいると風と稟も頼む物を決めたようだ。

 ちなみに揚婆さんの海鮮炒飯はご飯がパラパラなのは言うまでも無い上、エビの食感が最高。

 かに玉は卵のふわふわ加減が絶妙かつ餡が濃厚でとにかく美味い。

 ――いかん、どれも美味そうでなにを頼んだものやら。

 

「あいよ! 北の坊やはなんにする?」

 

「そうですね……チャーシュー丼と焼売を」

 

 よっし、久々に帰って来たからここはスタンダードにいこう。

 

 

 

 ――しばらく後。

 皆で他愛のない話に花を咲かせながら食事を終え、話題は自然と洛陽での話に移った。

 ところどころでハク達からの質問を挟みながら話していると、花火の話が出たあたりでコウちゃんが目を丸くする。

 

「――! 北郷さん、あれ使ったんスか!?」

 

「うん。あれがあったから陛下をお救いする事が出来たんだ。工房の人もそうだけど、作ってくれてたコウちゃんのお蔭だよ――有り難う」

 

「わふっ!? い、いいいえオイラで役に立てたのならよよよ良かったッス!」

 

 目を合わせてお礼を言うと、なにやら奇妙な声を上げてコウちゃんがあたふたし始めた。

 

「ん~ふ~ふ~。良かったねぇコウちん」

 

「……ふむ、これでコウ君も一歩前進かな?」

 

 ハクが星みたいな笑い方をしていて、ケイさんが小声で何か呟いてる。 

 

「……お兄さん……一体何人……ぶつぶつ」

 

「徳枢に風、劉協陛下に白蓮殿。柚子に愛紗……詠や月殿もあやしいと言うのに、まだ増えるのか……いやしかしそれ程の器量だと……むう」

 

 ? よく聞こえなかったけれど、星と風も小声で何かを呟いていた。

 

 

 

 

 

 昼食を食べてから市場でおばちゃん達に挨拶をして、その後約束通り子供達に付き合って遊んだ。

 夕方になるより前に、子供達を家に送ってから洪さんの所へ顔を出して旦那さんの位牌に手を合わせた。

 雲南へ出発するのは明日なので城に用意された部屋に寄ってから、そのまま書庫へと足を向ける。

 

 ――結局、会いに行くのが最後になっちゃったな。

 そのことで怒られるんじゃないかと思いつつ、恐る恐る扉に手を掛ける。

 僅かな音を立てて開いた扉から中を覗く。

 

 ――あの日と同じ、夕陽が茜色に染める部屋の中、彼女はこちらに背を向けて書棚に向かっていた。

 以前に見たときはこの部屋はまだ整理中だったのだけれど、今は壁一面にある棚に整然と書物や竹簡が並べられている。

 床や部屋の中央に置かれた机の上は、彼女の几帳面な性格を示すように塵一つ見当たらない。

 

「――た、ただいま、想夏」

 

 その背中に躊躇いがちに声を掛ける。

 

「――」

 

 俺の声で、本を棚に入れていた彼女の手がぴたりと止まった。

 ふわり、と短めの髪が揺れる。

 そちらに目が行って――はっと気が付くと空色の瞳が俺を捉えていた。

 無言。且つ、見慣れたいつものポーカーフェイス――ではなく。

 想夏の頬が僅かに膨らんでいる……こう、なんて言うか不満そう?

 

「……遅い、です」

 

 思わぬ表情を目にして言葉も出せずにいる俺の前に想夏が歩いて来て、そっと制服の袖口を掴んで小さく呟く。

 じっとこちらを見る彼女の瞳が揺れていた。

 

「来て、くれないのかと思いました」

 

「――ゴメン」

 

 ――想夏の瞳から目を離せない。

 

 煩くなる心臓の鼓動を意識しつつも、俺はなんとかそれだけを口にした。

 

「ぁ――――いえ、謝るのは私です。あなたは忙しい身ですし…………御免なさい、我が儘を言いました」

 

「――っ!? そんな事無い!」

 

「――あ、っ!?」

 

 目を伏せて沈んだ声で呟き、離れようとする想夏を思わず抱きしめる。

 耳元を、想夏の声がくすぐった。

 

「そんな事無い――――俺、想夏に会いたかった! 遅くなって、ホントにゴメン――」

 

「――――わ、私も、です。私も、あなたに会いたかった」

 

 思った以上に小さい彼女の身体をしっかりと抱きしめたまま、思いの丈を打ち明ける。

 微かに震えていた想夏は、俺の耳元でそう囁くと背中にゆっくり手をまわしてきた。

 

 

 

 

 

 しばらくの間そうしていた――そして、どちらからともなく腕を緩めると至近距離で見つめ合って――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――一方その頃。

 

「あー!?」

 

 士燮の執務室、机を並べて書類仕事をしていた士壱はすっとんきょうな声を上げた。

 

「どうしました? 宵」

 

「あんな空気だったからすっかり忘れてた! 私の真名、子龍と北郷に預けて無い!」

 

 しまったー!! と叫ぶ士壱。

 

「既に預けているものとばかり思っていましたが」

 

 不思議そうに首を傾げる姉に、

 

「いや、姉上と北郷が真名で呼び合ってないのに私だけ先に真名を交換するのもなー、って思ってさ。で、そうなると子龍だけに真名を預けるのも北郷を仲間外れにしてるみたいで悪いしね?」

 

 妹は頭を掻きながらそう言った。

 

「相変わらず妙なところで義理堅いですね、宵」

 

 その様子を見て、灯は静かに微笑んだ。

 

「うー……まあ、明日にしとくか。時間も遅いし、それに北郷に限って言えば――」

 

 一旦言葉を切ると、士壱は窓の外を見る。

 

「――今日は、あの子に譲ってあげないとね」

 

 宵がちらりと視線を向けた先、とある部屋の明かりが小さくなって消えた。

 

 

 

 

 

 ――交趾城内の一室にて。

 

「星ちゃん……良かったんですかー?」

 

「今日ばかりは良いさ。――――なにせ彼女は、ずっと待っていたのだからな」

 

 寝台に腰掛け、飴を咥えたまま訊ねてくる風に、星は穏やかな笑みを浮かべてそう答える。

 

「星殿も、妙なところで義理堅いですね――尤も、そこが良い所なのですが」

 

「ふっ――褒めても何も出んぞ稟。さて、明日も早い。今日はもう休むとしようか」

 

 そう言った星は、部屋の灯りを静かに吹き消した。

 

 

 

 

 

 場面を移して――徐州、小沛にて。

 

「桃香様、こちらの書類に印をお願いいたします。あと、こちらの件にも目を通して頂きたく――」

 

「――あわ、あわわわ!?」

 

 太守の執務室――つまり現太守劉備こと桃香の仕事部屋に、事務的な口調とそれに続いて戸惑いの声が響く。

 

「あ、は、はい陳羣(ちんぐん)さん! 今やります!」

 

 桃香は向かいの机に座る、四角い眼鏡を掛け、冠(文官の帽子)や着衣を一部の隙無く着こなしている少女のその声に、思わず背筋をぴしっと伸ばした。

 

「――桃香様、何度も申し上げている通り私は貴女様の部下です。敬称は付けないで頂きたいのですが……それに、出来れば真名で呼んで頂きたい」

 

「――あわわ? あわわわ!?」

 

 陳羣と呼ばれた少女はいたって真面目な態度のまま、主君を窘める。

 

「ふあっ!? あ、ご、ごめんね紅蕉(こうしょう)ちゃん。つい」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「――あわ、あわわ」

 

 ややぼうっとしていたらしく、桃香はいつもの口調に戻って陳羣に手を合わせた。

 

「――あのね紅蕉ちゃん、ちょっと訊いても良いかな?」

 

 そして、先程から気になっていた事を尋ねるべく陳羣に声を掛ける桃香。

 

「何でしょうか?」

 

「うん。その、ね? ――何で雛里ちゃんを膝の上に乗せてるの?」

 

 ――そう。

 先程から愛紗を髣髴とさせる真面目さを発揮していた陳羣の膝の上にちょこんと雛里が座って――いや、座らされていた。

 右手で事務仕事をこなしつつ、左手は雛里の頭を撫でている。

 

「可愛いからです」

 

「――あわわっ!?」

 

 主君の質問にきっぱりと答えた陳羣の左手は止まる事無く雛里の頭を撫でていた。

 

「あ、あはは――た、確かに雛里ちゃんはとっても可愛いけど……その、雛里ちゃんも困ってるし……離してあげて?」

 

 でないと、帽子の上から撫でられている雛里の髪がえらいことになるだろう、間違いなく。

 後々の雛里がするであろう苦労(髪を整える意味で)を考えると、そろそろ止めないといけないと思い、声を掛ける桃香だった。

 

「…………そうですね、今日の分は補充出来ました。雛里様に嫌われるのも嫌ですし……」

 

「あ、あわわ……桃香様、助かりましゅた」

 

 物凄く名残惜しそうに雛里を膝から降ろす陳羣。

 降ろされた雛里は帽子を押さえたまま、恥ずかしそうに一礼すると部屋を出て行った。

 

「……大丈夫、大丈夫だ私。今日一日は耐えられる――――そう、雛里様から頂いたあわわ(ちから)で」

 

「――あ、あわわ力!?」

 

 雛里が出て行くと、陳羣は机の上の書類に目を落とし、深刻そうな顔で呟き――聞きとがめた桃香が思わず声を上げる。

 

「はい、雛里様から頂ける活力の素です。他にも、はわわ力とにゃはは力があります。この力はですね――」

 

(朱里ちゃんと鈴々ちゃんにもやってるんだ……)

 

 真面目くさった顔のままで解説を始めた陳羣に、桃香は興味本位で訊き返してしまった事を後悔していた。

 

 

 

 

 

 あとがき

 

 

 お待たせしました。天馬†行空 三十話目を投稿します。

 前回のあとがきで南中や法正のターン、と書いておりましたがそこまで進みませんでした。

 次回以降が一刀の南中回り、雲南編になると思います。

 ちなみに、冒頭で話し合いをしている面子にも名前がありますが……それはまた後の話で。

 また、華雄さんの真名に関して、本作ではこのような設定にさせて頂きました。

 

 

 では、次回三十一話目でお会いしましょう。

 それでは、また。

 

 

 

 

 

 ※あわわ力を暴走させても、ハイパー化は…………出来そうだな、陳羣さんなら(滝汗)

 

 

 

 

 


 
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