No.571239

超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ラステイション編

さん

その7

2013-04-29 20:13:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:594   閲覧ユーザー数:582

ーーー空が汚れている。大地が汚れている。世界が汚れている。

 

 

ーーーいつだって、どこだって、世界を汚すのは人間だ。

 

 

ーーーしかし、必要な人間も遺憾ながら存在するのも事実だから

 

 

ーーーだから、

 

 

ーーー綺麗な花を咲かせる為に、雑草を抜こう。

 

 

 

 

 

「…………ここは」

 

俺が目を覚めると、そこは謎の空間だった。

赤黒い、そう表現しかできない色が世界を支配している。

距離感などは完全に故障して、永遠に広がっている地平線がない彼方は不変だ。

ぴちゃぴちゃと足元で紅い液体(・・・・)が徒歩を阻害する。

 

「なんだよ、ここはッ…!」

 

決して、生き物が生きれる様な環境ではない。

足元を満たす液体を先ほどためしに舐めてみたが苦かった。少なくても人が好きで飲むような液体ではないことは、はっきりと言える。イラつきながら、足をとにかく進む。

 

確か、俺はネプテューヌ達とモンスターを討伐して色々と報告を済ませて宿で寝たはず……こんなところに来たことも無ければ、身に覚えもない。

そもそも、ここはゲイムギョウ界なのか?そんな疑問すら頭に浮かぶ。

 

ただ、言えるのは、俺はここに来たことがある。そんな既知感だ。

過去の俺はここに来たことがあるのか?こんな胸苦しい空間の中に?謎が頭の中でずっと円環する。

ヒントらしいヒントもない。あるのは既知感だけで、自分の過去を真面に思い出せない俺にとっては一種のムリゲーだった。

 

『ここは、君の心理世界だよ』

「その声……デペア!?」

 

暫く歩い時に、知り合いの声に俺は驚く。

心理世界?それはつまり俺の心の中は、こんな摩訶不思議な世界を作っているのか?

 

『ごめんね。まさかあいつがこの世界に居るなんて可能性は、天文学的数値だったから予想もしてなかった。だから君に言っておきたいことがあるんだ』

「何をだ……?」

破壊神(・・・)について……だよ』

 

破壊神ーーー?

その言葉は聞き覚えがあった。むしろ親近さすら感じるキーワードだった。

 

「待ってくれ、この世界にはーーー」

『破壊神は、この世界とは別次元の神様だから、この世界の法則は関係ない』

 

紅の空間の中で姿が見えないデペアは真剣な声音で呟いた。

 

『罪遺物の臭い追ってきた……いや、キャプテンの封印術式は完璧だった。逃走経路に問題が合ったのかな?---まぁ、今更過去の原因を探しても意味ないか……はぁ』

「一人で言って、一人で解決するな、俺に分かりやすいように言えよ!あと流石に真面目な話でもお前は目と目を合わせないのか?」

『………分かったよ。驚かないでね?』

 

その瞬間、闇の空間の中で、九つの禍禍しき光が見えた。

 

 

「------ぁ」

 

 

呼吸ができない。

目の前の巨大な存在に俺は、冷や汗を流しながら慄くことしか出来なかった。

 

 

『始めましてーーーと言うべきかな?』

 

それは、異形の化物だった。

全長30mは超える巨大なドラゴン。

下半身は、蛇のような黒い鱗を纏った尻尾だった。

上半身は、胸に闇色の宝玉があり蔓の様な鞭のような触手が液体を零しながら、翼を形成している。腕は四つ、昨日戦ったモンスターが入ってしまいそうなほど太い腕、伸びている鋭角な爪は恐怖を覚えるほど、恐るべき切れ味を予想させた。

 

なにより目が引いたのはーーー顔、不規則に並んだナイフのような牙、喉まで裂けた口、左右に四つずつの目が、更に額に他の目より大きい目が、一斉に動き俺を見詰めてきた。

ドラゴンーーーその表現より、それは魔王や悪魔と言った方がまだ通じそうな気がする。

 

『驚いた?どうも昔から人に好かれるような姿じゃなくてね。いつもは君の中で生活をさせてもらっているよ』

「あははは、だよな……」

 

ぶっちゃけ、許されるならこいつに背中を向けて全力疾走したい。そう思うほど、こいつの姿は醜悪に満ち溢れていた。っていうか、今まで俺はこいつは俺に憑依していると思っていたが、俺の中に肉体ごと住んでいるのか……俺の心のスペックはどうなっているんだ?

 

『っで、話に戻るけど破壊神に気を付けろ。あいつは情緒不安定だから、何をするか予想がつかない』

「破壊神っていてもな……どんな奴なんだ?悪い奴か?」

『破壊に善と悪はない。だから君の望む答えは難しいけど……まぁ、どっちでもあるね』

 

どっちでも……?それはつまり

 

『うん、そうだね。あいつを見てきて言えるのは、どんな神様より人間臭い奴(・・・・・・・・・・・・)だよ。流石に紫ッ子ほどじゃなかったけど気がするけど、この世界の神様もかなり異端だよねー。僕自身の経験上の話だけど』

「俺はこの世界から出たことがないから、なんとも反応しずらんだが……」

『あっ、ゴメンねー。とにかく、破壊神の容姿は……君とは対極の姿をしている全身を隠す様な真っ白、それは世界から孤立したかのような純白、破壊なる白』

 

俺のいつも着ている漆黒のコートは逆の真っ白のコートを着ているのか。

デペアはその巨体を揺らしながら、俺の近くに寄って胸に爪を当てた。

 

『言えるのは、君は今を大切にしろ。過去なんて知らなくていい。理解できないし、もし理解してしまったら君はーーーーーゲイムギョウ界からいられなくなる』

 

そして、俺の意識は反転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はぁ」

 

目が覚める。

窓から見える。お日様は既に空の頂上を目指して上がっていく。

最寄りの時計で時間を確認すると、お昼前の時間帯だった。

隣の部屋ではまだネプテューヌ達は寝ているだろうか?重たい体を起こして、体を伸ばす。

 

「なんか、釘を刺された気がする」

 

さきほどのデペアとの会話を思い出す。

まるで拒絶させられた気分だ。

 

ーーーお前は来るべきではない。

ーーー無知のまま過ごせ。

 

そんなことを言われた感じだ。いや、そんな思いがデペアにあるんだろう。

 

 

「異世界の神様、破壊神……ねぇ…」

 

思わず飲み込んだが、冷静に考えると可笑しな話だ。

なんで別世界の神様が態々、この世界に来る必要があるんだ?

思い当たることとすれば、やっぱり信仰が足りないとか思い浮かぶが、本能的にそれは違うと否定している自分がいる。結局の所、分からないという事実だけが肩に伸し掛かる。

 

それにーーー疑問が再度浮かぶ。

俺達は昨日、強いモンスターを無事に討伐できた。

その喜びに浸っていると妙な気配を感じて、俺は一部の壁を砕くとそこには死んだと思われるラステイションの軍隊が眠らされていた。

急いでコンパを呼んで視てもらったところ、全身ところどころ傷を負っているが命に別状はなく、俺達は急いで神宮寺教祖の元に向かい、このことを報告して彼らを救助してもらった。さすがに四人で担げるような日の数ではなかったからな。

 

ここからが問題だ。

俺は神宮寺教祖から確かに『全滅して一人だけ生還したが後に死亡した』と確かに言っていたが、普通に生きていた。

足を骨折していたが、生きていたのだ。

流石に俺も呆れながら、神宮寺教祖に『ボケるが早すぎないか?』と言ったら真面目に怒られた。

意味が分からない。確かに全滅したと言ってもそれは予想だったので良しとしても、あの神宮寺が呼吸を吐く様に嘘を吐く人物だとは思えない。

 

まるで、この一連の事は、始めから終わりまで定まっていた(・・・・・・)のような不愉快を俺は感じた。

 

 

「紅夜、起きてる?」

 

扉の向こうから聞き覚えのある声がしたアイエフだ。

 

「ああ、起きてる。鍵は開いてるよ」

 

ガチャと扉が開きアイエフが入室してくる。

格好は、コートを脱いだインナー姿だった。

 

「どうしたんだ?」

「聞きたいことがあってね」

 

どうしたんだろう?

ネプパーティーの中で一番頭の動くであろうアイエフの疑問を伺う為に、俺はとりあえず席を引く。

 

「ありがとう」

 

お礼の言葉に頷いて、俺も席に座り互いに目を合わせる。

 

「あなた、確かリーンボックス出身よね?」

「ん? そうだが?」

 

どうやら、昨日の件とは全く別の話のようだ。

因みに俺は昨日でネプパーティーを抜けた。

ネプテューヌは猛反対するし、コンパは泣きそうな顔になるが、ネプテューヌの目的は『鍵の欠片』だ。

俺の目的はモンスターの討伐で、目的が合致したため協力を結んだ。

間違いなく、ネプテューヌ達が居なければ俺はいまごろ死んでいたかもしれないが、ネプテューヌにはネプテューヌの目的が、俺には俺の目的がある。

他にもラステイションから依頼された依頼はあるから忙しい、そのことを伝えると『手伝うよ!』と元気よく言ってくれたのは嬉しかったが、苦笑しながらラステイションから依頼された依頼集を見せると顔を青く染めて『べ、別行動もありだよね!』と言い直してきた。正直でよろしい。

まぁ、こっちはなんだかんだ手伝ったもらった恩があるので、アイエフとコンパの電話番号とメールアドレス(ネプテューヌは持っていなかった)を交換して、その場は解散となったな。

 

「えっと……」

 

手をモジモジしながら、アイエフは顔を赤くしている。……どうした?

 

「グリーンハート様に会ったことって……ある?」

「グリーンハート……?あるけど」

「……本当!?」

 

机に手を置いて、一気に俺とアイエフの距離が縮まる。互いの呼吸が分かるほどに

 

「ち、近い……」

「あっ、ごめんなさい……」

 

とりあえず、アイエフを落ち着かせて座らせ、腕を組む。

 

 

「グリーンハートのことを知りたいのか?」

「えっと……うん」

 

んー。あいつのことか、俺にとっては近所の引きこもり気味の優しいお姉さんってイメージがあるんだよな。

 

「まぁ、優しいな。ゲーム、アニメ、マンガは三種の神器だと剛言している人物だな」

 

あと、胸がデカい。

 

「へ、へぇ……少しだけ私の予想より違うのね」

「女神も人間と同じように喜怒哀楽があって、自分の好きに生きているからな」

 

女神と人間の違いって、身体能力の違いとカリスマ性とかそんな一見すればそんなに違いはない。

時には喜んで、時には怒って、時には悲しんで、時には楽しんで、そんな人間と差ほどと変わらないと思っている。

まぁ、このことを教会の連中に言ってしまえば、とんでもない目に合うと思うが。あいつらは女神を神格化しすぎなんだよ。

 

「ありがとう、聞いてくれて」

「機会があれば、我が国にようこそ、観光地に案内するよ」

「えぇ、その時は宜しくね」

 

アイエフは笑顔で、俺の部屋を後にした。

さて、今日は何をしようか、昨日のことを想定して今日には予定を入れていないから、暇なんだよな。

折角だし、ラステイションの観光でもしようと思い、俺は漆黒のコートを羽織って窓を見た時だった。

 

 

『白』が俺を見ていた。

 

 

 

「-----」

 

 

その色は、世界から孤立していた。

窓から見える景色、そして人の川の中で立っている。

畏怖感と神秘性を同時に覚えるその色をしたコートを羽織った奴は、真っ直ぐ俺を見ていたが、視線を変え、どこかに歩き始めた。

 

「あれが……破壊神…」

 

あのとんでもない力の結晶なデペアすら恐怖する程の相手。

そして、デペア以外に俺の過去を知るもう一人。

意識する前には、俺は駆けだしていた。

部屋から飛び出し、階段を急いでおり、外に出た。

 

 

ーーーニヒル!?ダメだ!!

 

 

「少しだけ、少しだけでもいい。俺は俺を知りたいんだッ!」

 

一年前から抜けた記憶。

俺には友人がいたのか、恋人がいたのか、大切な人がいたのか、それを聞いたところで俺にはどうすればいいか分からない……けど、それでも俺は俺を知りたい!

 

人混みをかぎ分け、白を追っていると俺と同じく白を追っているかのように動いてる人物が目に入った。

ゴスロリの服装で、黒曜石のような綺麗な髪をツインテールにしている美少女だった。

 

「……誰だ…?」

 

頭の中で疑問が浮かぶが直ぐに振り払う。

自分がすべきことは、あの白と会って話をすることだ!

 

白は、人気のない所に進んでいく。

そして、ツインテールの女性は、俺と同じ目的かは分からないが白を追っていた。

 

「……廃棄工場か」

 

着いた先は、既に活動が終わった。人気のない寂しい工場だった。

白はその中に入っていたのは確認したところで、後ろから声が掛かった。

 

「あなた、だれ?あいつの関係者?」

 

警戒心が込められており、妖しい物を見るように俺を見つめてきた。

 

「それは俺のセリフだ。お前こそ誰だ?」

「なんで、私が名乗らなければならないの?まずはそっちが名乗るべきでしょ」

「………零崎 紅夜だ」

 

プライドが高そうだ。

こういう人物は、とにかく刺激にしないようにしなければならない。後々面倒になる。

 

「私はノワール(・・・・)よ。それにしても、その服装……へぇ貴方が噂の黒閃…ね」

「…………」

 

ふふんっと、誇らしげに鼻で笑うノワール。

 

「噂は所詮、噂のようね。あなたのような細い体で大軍のモンスターを全滅なんて、ありえないわ」

「勝手に言ってろ」

 

念のため、黒曜日を顕現させて工場を中に入ろうとするとコートを掴まれた。

 

「……なんだ?」

「あなたとあの真っ白が関係者である可能性があるわ。私も付いていく」

「あの白に、怨みでもあるのか?」

「えぇ、あと一歩のところを邪魔された怨み…がね」

 

……なんだか、複雑なことがあったらしい。

ノワールは、よほど屈辱な目に合ったのか、拳が白くなるまで握りしめていた。

 

「俺が白の関係者ならどうするんだ?」

「まとめて拘束する」

 

……よほど、腕に自信があるんだな。

ノワールは腰からレイピアを抜き、俺は黒曜日を構え警戒しながら、廃棄工場の中に入っていた。

 

 

 

 

 

 


 
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