ご無沙汰です。ブロンコモデルのJ-10Aという戦闘機です。
中国空軍は長らくJ-7(MiG-21の派生機)などのロシアメーカーの純/非ライセンスコピー機によって構成されていましたが、周辺国の軍備にアメリカ製品を代表とする高性能な第四世代機が配備されるにつれ性能の差が顕著に露呈していくことに危機感を覚えました。
中ソ対立などの政治的余波によって後援を得られなくなってからは独自開発を強いられていた中でその焦燥は一層強くなり、本機の開発に結び付いたと言われています。

この中国機らしからぬフォルムを持つ戦闘機はイスラエルで開発されていたもののアラブに配慮したアメリカ資本の撤退によって頓挫されたラビ戦闘機計画をイスラエル側が情報提供として売り、それによってフライバイワイヤやCCV、ブレンデッドウイングボディといった先進的な航空技術を取り入れて開発されたとの見方が強いです。事実関係を両国は公に否定していますが、フォルムが言い訳出来ないレベルで瓜二つなので、さながら秘密裡に交際を始めた少年少女がいつの間にかクラス中に関係が知れ渡っているとでも言ったものでしょうか。

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フクザツな開発経緯が何とも面白い飛行機です。

なお、この原形と言われるラビ戦闘機がF-16の系譜なので、中国のJ-10、台湾の経国、韓国のT-50、日本のF-2などアジア版F-16の異母兄弟ともいえましょう。

キットは現在トランペッター、ブロンコモデルの二社がおもにリリースしていますが、1/48に関してはどうやら両者とも似通った内容のようです。トランペッターとの違いは向こうのプラが柔らかいのに対しブロンコはかなり硬質な点でしょうか、ここは好みで選んでも良さそうです。
開けてまずパネルラインの入れ込みようにビックリし、組み立ててその勘合のハマるんだけどなんか微妙にズレる独特の味わいに苦戦して、無駄に豊富な武装パーツやエンジンの作り込み放電索はエッチング製など随所にちりばめられた機体愛に感嘆して、最後にトンデモなく乖離の遅いデカールに懊悩させられるステキなキットです。間違いなく、1/48でJ-10を最高のクオリティで作れるように！という願いが込められているのは熱き想いと共に手に届くのですが、全体的にかなりじゃじゃ馬なので接着やデカール作業は覚悟完了しておくべきでしょう。
なお、ピトー管はメタルパーツ。放電索及びシートは先述の通りエッチングで、エンジンAL-31が開閉二択、動翼は分離式です。
プラ製の搭乗梯子が付随し、これだけでも他の戦闘機と組み合わせたりかなり遊びの幅が広がりそうです。ミサイルはこれでもかと満載にキットに封入されているので、J-8やJ-7といった他の中華機を作る際に残しておくとなかなか楽しめそうです。

色々ありましたが、デカールが使えるようになるまで水浸し二分以上かかるという事を除けば愛に満ちた大変楽しい内容になっていると思います。プロポーションも美しく、ミステリアスな設計遍歴と同時にスルメを咬むように愛着が湧いてくること間違いなし。

……それにしても余談なんですが、日本ではまぁ仕方ないんですけど中国軍機の嫌われ加減が凄いですね！
J-8もなんだか半額で積まれていたり、このキットもそもそも発売から最寄りの店舗で三年近く埃をかぶったままで、店頭ポップが張られるのを目撃した僕が結局その店頭ポップを張り付けられたままレジに持っていくという、奇妙な縁のあるキットです。
苦戦しつつもなんとかしっかり組み立ててあげられたので、ときどき何処か誇らしげに見えます。