No.567143

一刀の晋王転生録 第三章二十話

k3さん

理鎖が子供たちに話すこととは……

2013-04-17 22:22:36 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3351   閲覧ユーザー数:2862

 姓:司馬 名:昭  性別:男

 

 字:子上

 

 真名:一刀(カズト)

 

 北郷一刀が転生した者。

 

 

 

 

 姓:司馬 名:懿  性別:女

 

 字:仲達 

 

 真名:理鎖(リサ)

 

 一刀と瑠理の偉大なる母。

 

 

 

 

 姓:司馬 名:師  性別:女

 

 字:子元

 

 真名:瑠理(ルリ)

 

 母を目標にする一刀の姉。一刀を溺愛している(?)。

 

 

 

 

 姓:張  名:春華 性別:男

 

 真名:解刀(カイト)

 

 一刀と瑠理の父にして、一刀の師。

 

 

 

 

 姓:王  名:元姫 性別:女

 

 真名:美華(ミカ)

 

 一刀に異常なまでに執着する一刀の妻。

 

 

 

 

 姓:鄧  名:艾  性別:女

 

 字:士載

 

 真名:江里香(エリカ)

 

 後の司馬家軍の宿将。司馬家に対して恩を感じている。

 

 

 

 

 姓:賈  名:充  性別:女

 

 字:公閭

 

 真名:闇那(アンナ)

 

 司馬家の隠密。一刀のために働くことを生きがいとする。

 

 

 

 

 姓:王  名:濬  性別:女

 

 字:士治

 

 真名:澪羅(レイラ)

 後の司馬家の水軍の将。一刀を気に入り、司馬家のために戦う。

 

 

 

 

 姓:司馬 名:望  性別:女

 

 字:子初

 

 真名:理奈(リナ)

 

 一刀達親戚で、一刀と瑠理とっては義姉という立場。

 

 

 

 

 

 

 姓:杜  名:預   性別:女

 

 字:元凱

 

 真名:綺羅(キラ)

 

 一刀とは同期。親同士の仲は良くないが、当人達の仲は良い。  

 第二十話

  「司馬懿の最後 わが子らへ」

 

 

 一刀は解刀と共に理鎖のいる部屋へ入る。そこにはすでに瑠理が居た。

 

 理鎖はゆっくり首を一刀達に向けた。

 

「少し遅い……」

 

「すまん」

 

 彼女の文句に解刀はただ謝罪した。

 

「分かれば良い」

 

 彼女は特に追及しなかった。彼女自身分かっているのだ、自身の命はもう短いと。ならばこれ以上、僅かな時

 

間を無駄に消費はしたくない、彼女は無駄を嫌うのだから。

 

「解刀、まずは一刀と瑠理に話したいことがある」

 

「分かった」

 

 彼女の言葉の意味を理解した解刀はすぐに部屋から出て行く。

 

「瑠理、一刀……」

 

 二人はじっと理鎖の言葉を待つ。

 

「本当はもう少し生き、やるべき事を成したかった……だが私はここまで……」

 

 その言葉に一刀は理鎖に悔いが残っているように感じた。

 

「やるべき事?」

 

「国を……大陸を安定させる事……混沌とした国のままで家督を継がせるのではなく、安定した国となったとこ

 

ろで後継者に後を継がせる……これが、次代に託そうとする者の最低限の責務」

 

 理鎖は顔を上に向け、目をつぶる。

 

「そうすることでお前達に危険が及ぶのを最小減にすること」

 

「……え?」

 

 その言葉に面食らう一刀。瑠理も同様だった。理鎖ほどの者がこの戦乱の時代でそのように考えているとは思

 

わなかった。

 

「そして、出来うる限りの……我が子達に、幸福なる人生を……それが母としての望み……」

 

「母……上……」

 

 一刀は上手く言葉を紡ぐことが出来ない。自分達はそこまで母に愛されていたのか、ただそのことばかりが 

 

頭の中で繰り返される。

 

「私は……後継者に託そうとする者としての責任は果たせた? そして母としてお前達に何かを残せた? わか

 

らない……私は……このまま後を託して良いの?」

 

 不安。今まで見たことが無かった母の不安。

 

 己の病を利用することも、己の命を利用したのも、どうあれ自分達のためだった。そのことに泣きそうになる。

 

(俺の馬鹿野郎! 何で、何で今まで気付かなかったんだ!?)

 

 次に激怒する。己の鈍感さに。

 

(そうか……分かったよ父上)

 

 そして至る。自分がするべき事を。

 

「私は」

 

「母上」

 

 一刀は理鎖の言葉を遮り、彼女の手を握る。理鎖はじっと一刀を見つめた。

 

「良いんだ母上、もう良いんだ。後は俺達に任せても大丈夫だ。俺達はいろんな事を教えてくれたし、いろんな

 

物を与えてくれた。それに、俺……知らないよ、この時代で、こんなにも親に愛された子を……他に知らない」

 

 ここで瑠理が僅かに微笑みながら二人の手に自分の手を乗せる。今度は理鎖は彼女を見つめた。

 

「私と一刀は、幸せだった。私達に出来るだけ苦労させないために、私達の人生を考えて、此処までしてくれた

 

母を持ったという事だけで、これ以上無い幸福だと思う……母上は司馬家の長としても、私達の母としても、十

 

分責任を果たしている」

 

「瑠理……一刀……」

 

 理鎖は二人を交互に見つめる。

 

「……ありがとう……」

 

 彼女の口から感謝の言葉が出る。二人が母から聞く初めての感謝の言葉。彼女の表情は実に穏やかな笑みだっ

 

た。

 

「……家督は我が娘、司馬師に譲る。我が子、司馬昭……姉をしっかり守れ」

 

 二人は疑問に思うことも、迷うことなく頷く。

 

「……解刀を呼んでほしい、そこからは解刀と二人だけで話しがしたい……お願い」

 

 母の最初にして最後の願い。それを果たすため、部屋から出る。

 

 ――二人は部屋の外で待機し、解刀は部屋へ入る。

 

 彼が部屋に入っていった後、一刀は背中で壁に寄りかかる。

 

(さようなら……母さん)

 

 一刀は静かに、涙を流した。


 
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