秋休みの始まりの時期、箒は一夏に『買い物に行こう。』と言い、一夏を駅のショッピングモールに連れ出した。買い物をしていると弾と虚に二人は会った。
「一夏、お前も買い物か?」
「ああ。そういうお前は?」
「見てわかるだろ。」
「そうか。」
一夏は弾に近づき小声で言う。
「デートだろ。」
「ちょ、おま!!」
弾は顔を赤くする。
「照れんなって。」
「お前な~。」
そんな二人に箒と虚は話し掛ける。
「何をしているのだ、二人とも。」
「こそこそ話さなくてもいいじゃない。」
「あはは、すみません。」
「ところでこれからどうします?」
「そ、そうだな・・・・・」
「そういえばさっき買い物で福引き券をもらったわね。今から一緒に行かない?」
虚の提案に三人は賛同し、福引き会場へと向かう。
箒は歩きながら一夏が酒に酔ったときのことを思い出していた。
(そ、そういえば商店街の福引きで一夏がお酒を飲んでしまったな。こ、ここではないと思うが・・・・も、もしそうなったら・・・・・)
箒はそんなことを考えて顔を赤くする。
「・・・・うき、箒!」
「は、ひゃいっ!」
箒は声を裏返し返事する。
「どうしたんだ箒、そんな返事して?」
「す、少し考え事をしていたんだ。」
「ふ~ん、そっか。箒、ガラガラ回すか?」
「あ、ああ・・・・・」
(ああ、今日は本当にいい一日だった。ふふっ)
箒は一夏の言葉に従い抽選機を回す。
ことんっ・・・・・・・・・・・ころころころ。
「ん?」
「お?」
「へ?」
「あら?」
「ま、またまた大当たりぃ!豪華温泉旅行一泊二日の旅、二名様ご招待!」
歓声に包まれる中、箒はきょとんとしていた。
――――温泉?
―――一泊二日?
――――ペア?
「やったな、箒!」
一夏の言葉で我に返る箒。箒は一夏に衝動的に叫ぶ。
「一夏!」
「なんだ?」
「い、一緒に行かないか!?」
箒はその後のことは覚えていないが一夏と行くことになった。弾と虚も一緒である。というのも二人も当てたのが理由である。
「にしてもこういう経験って早々無いよな。」
「そうだな。だが弾、良かったな。」
「ば、声に出すな!!」
「お前が出してんじゃないか。」
弾と一夏は電車の中でそんなやり取りをしている中、虚は箒と話していた。
「ねえ箒さん、こういうのは初めて?」
「そ、そうですね。う、虚先輩は・・・・・・」
「私も無いわ。こ、恋も初めてだしね。」
虚は顔を赤めながら箒に話す。
しばらくして旅館に着く一夏達。
「じゃあ俺と箒はこっちの部屋だから。」
「おう。じゃあな。」
弾は虚と一緒に一夏達と別れた。一夏と箒は部屋に入る。
「結構すごいな。こういうのは臨海学校以来だな。」
「・・・・・・・」
「箒、大丈夫か?」
「え!あ、あぁ・・・・・・す、少し考え事をしてたんだ。心配は無用だ。」
不思議そうな顔をする一夏。
そして、そんな二人を窓の外の山中から見つめる瞳があった。
「二人っきりの旅行なんてこのセシリア・オルコットが許すと思いまして?」
険しい山の中でセシリアはジャキッとスナイパーライフルを構えていた。
「あのさぁ。」
「鈴さん、なんですの?」
「これ、やめない?なんかこういうのだるくてさ。」
「鈴さん!これは一大事ですのよ!?」
「わかってるけどさあ・・・・・」
同じ木の枝で双眼鏡をのぞいているりんがはあぁ・・・とため息を漏らす。
「まあ確かにそうよね。こういうのって堂々といきたいのが本音よね。」
楯無が腰に手を当てながら話しかけてくる。
「おい、ご飯が出来たぞ。」
アーミーブーツに迷彩ズボン、それに動きやすいタンクトップ姿のラウラが呼んでいた。その隣でシャルロットが魚の串焼きを焼いていた。
「ふぅ。こうやって皆でキャンプってのもなんかいいね。」
『キャンプ?』
セシリア、鈴、ラウラの目がギラリと光る。
「これはそんな生やさしいものじゃありませんわ!」
「そうよ!大体シャルロットは考えが甘いのよ!」
「この一大事を目の前にして余裕の発言か!」
「だ、大丈夫だって。いざとなったら僕の強襲用パッケージ『アヴァランチ』で!」
そういいながらシャルロットはISを部分展開する。
「こらこら、そんなことしたら国家問題になっちゃうじゃない。こういうのは隠密に終わらせるのが得策よ。」
そんな話をしながら五人は丸太のベンチに腰を掛ける。
「あの、これってラウラさんとシャルロットさんが釣ってきた川魚ですわよね?」
「そうだ。」
「それがどうかしたの?」
「衛生面的には大丈夫なのかしら・・・・」
「何を言うか!日本の川のきれいさを侮るな!」
「火も通したし。それに・・・・・・」
(セシリアが料理に参加してないし。)
それは言わない約束であった。英国人のプライドは高い。
「それでは、いただきます。」
セシリアはやたらためらいながら焼き魚を口にする。なぜか自然と全員がその反応を見ていた。
「まあ!美味しいですわ!」
全員はホッとし、それから焼き魚を口にする。
「それにしても状況はどうなっているのだ?」
ラウラの問いに鈴が答える。
「別にこれといって何もないわ。一夏がいつもどおりの反応をしているってところね。」
「ふむ。では、特に心配することはないのだな。」
「まあ、こんな大掛かりなことをする必要は無かったわけね。」
楯無はテントの側においてある武器を見る。それはあまりにもグロイと言っていいほどの光景の武器の数々。下手したら銃刀法違反になるよ。いや、もはやテロか。
そんなこんなで食事は進み、食後のティータイムとなった。
「そういえばあの旅館、混浴らしいですわよ。」
ブ―――――――――――――――――――ッッッ!
セシリア以外の全員が口に含んだお茶を噴出した。
「げほっ!げほっ!せ、セシリア!なんでそんな大事なことを先に言わないのよ!」
「え?」
「まさか・・・・・あんた混浴の意味わかってないでしょ?」
「まさか!混浴というのは二種類の温泉を混ぜ合わせた湯銭で―――」
鈴の剣幕にキョトンとしたセシリアがすらすらと説明する。それをシャルロットが遮る。
「ち、違うよ!全然違うよ!混浴ってのは男女が一緒に入るお風呂のことだよ!」
シャルロットは言ってからあることお思いだし、顔を赤くする。
(そ、そういえばあの時・・・・・・僕一夏と一回混浴したんだ・・・・・)
「混浴は露天風呂だな。よし、ならば迫撃砲だ・」
「風は北北西微弱。誤差三メートルで吹き飛ばせるわね。」
席を立ち、すたすたと武器の方を向かうラウラ。鈴は計器類と地図を交差に見ながら距離を測っていた。
「こらこら、そんなことしない!」
「そうですわ!ここはポンプ施設の破壊を優先すべきではなくて?迫撃砲で配置がばれてしまいますわ。」
「それもそうか。」
「冴えているじゃない。」
ラウラと鈴は頷く。
「じゃあ壊すのはポンプを複数個所破壊する方がいいと思うよ。」
「甘いわね。」
「え?」
シャルロットの提案を否定するように鈴が喋る。
「日本の技術者はちょっとやそっとの故障なら十分足らずで直しちゃうんだから。
「そうよ。」
「じゃあどうするの?」
「やるなら徹底的にするのよ!」
鈴の言葉に皆は頷いた。
「箒、風呂はどうする?もう入ってくるか?」
「そ、そうだなッ!?」
声が裏返ってしまったことに恥ずかしく思いながら、それでも箒は胸の鼓動を高鳴らせていた。
(い、一緒に大浴場まで歩いていくというのは・・・・・・い、いいな。風情がある・・・・・)
とりあえず「そうしよう。」と言ってから、箒は着替えの用意を始めた。
(ええっと、帰りは浴衣になるとして、他には――)
バッグの中から下着を取り出して、ついついボッと赤くなる・・・・・・・つい、妄想に入りそうになったのである。
(ふ、不埒だ!ええい、しっかりしろ、私!)
「箒」
「な、なんだっ!?」
「いや、どうかしたんかなって思って。」
見ると、一夏は既に準備を終えていた。
「な、なんでもない!なんでもないぞ!」
(こ、こいつは情感というものが欠けている・・・・・・!)
「箒?」
「なんでもない!」
やや乱暴に掴んだ着替え袋を持って、二人で部屋を出た。
「け、結構豪華ですね。」
「そ、そうね。」
弾と虚は一緒の部屋に入り荷物を置くと。二人して向き合いながら正座をする。
「き、聞いてもいい?」
「な、何ですか?」
「わ、私と付き合ってくれていることに後悔していない?」
「・・・・・・どうしてそんなことを聞くんですか?」
「いや、その・・・・・なんていうか・・・・いきなりこんなことになってるから・・・・かな?」
弾は立ち上がり、虚虚に近づき虚の手を両手で握る。
「だ、弾君!?」
「俺はあなたが好きだから一緒に来たんです。だからそんなこと言わないで下さい。」
弾の言葉に虚は何処か気持ちが楽になり、笑顔になる。虚は弾に抱きつく。
「ありがとう、弾君。」
「いいですよ。」
そのとき戸の向こうから一夏が弾を呼ぶ声がしてくる。
「お~い、弾。いるか~?」
「「っ!!」」
二人はビクリとする。二人は急いで離れ、何事も無かったようにする。
「入るぞ。」
一夏は戸を開けて部屋に入ってくる。
「邪魔だったか?」
「い、いや。だ、大丈夫だ。」
「そっか。あ、ところでこれから風呂に入るんだがお前たちも行くか?」
「い、いいな。ねえ虚さん。」
「そ、そうね。そうしましょう。」
「じゃあ外で待ってるから。」
一夏は部屋の外に出る。
「じゃ、じゃあ準備しましょうか。」
「そ、そうね。」
二人は無言のまま入浴セットの準備をする。準備を終えると揃って外に出る。
「じゃあ行くか。」
「ああ。」
四人は大浴場に向かう。箒は心臓の鼓動をバクバクさせながら歩く。虚は少し冷静を保ちながら歩いていると周りの声が耳に入ってくる。
『ねえねえ、ここって混浴があるらしいよ。』
『じゃあとで一緒に入るか。』
(こ、混浴!!ここに混浴があるの!!て、てててことは!!!)
虚は内心乱心する。
――――一一方、その頃。
「仲居の着物を入手してきたぞ。」
「さすがラウラ!」
「敵地進入はお手の物ですわね!」
「でもこんなことは今回限りね。」
「そ、そうですね。」
とりあえずセシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、楯無の五人は空いている部屋で着替えを始めていた。
「ん?あれ?」
「これ、ちょっと・・・・」
「胸がきついわね。」
「「・・・・・・・・・・・」」
胸がきつい組→セシリア、シャルロット、楯無
胸がきつくない組→鈴、ラウラ
「なんなの、この裏切られた感・・・・」
「味方などいない。戦場は常に孤独だ。」
などと言いつつも、全員がお互い着物を着せあって、何とか様になった。そんな時シャルロットがあることに気がつく。
「でもこれ、顔と隠さないとすぐにばれるよ。」
「「「「あ」」」」
シャルロットはぽかんとする。
「参ったわね。」
「特殊メイク道具を持って来ていないぞ。」
「わたくしもですわ。」
「困ったわね。マスクとサングラスで変装するぐらいしか・・・・・
真剣に考え出すセシリア、鈴、ラウラ、楯無。
そこに助け船を出したのはシャルロットだった。
「あのさ、お土産コーナーでにあった簪で全員の髪形を変えようよ。マスクとかサングラスじゃ怪しすぎるしさ。」
「それはいいな。」
「ナイスよ、シャルロットちゃん。」
「流石ですわね。」
「いいアイディアじゃない。」
五人は『見送り美人』や『色気のあるうなじ』を想像する。
―――― 五分後。
「買ってきたわよ!」
「鈴さん!そんなバタバタ走っては着崩れしますわ。もう!」
「あ、やば!」
「ほら、帯を直しますから、こちらへ。」
「あ、ありがと。」
相変わらず息の合ったコンビである。
一方その頃シャルロット、ラウラ、楯無は髪の結い方を携帯端末で調べて実践しているところであった。
「うーん、ここのところをどうすればいいのかな・・・・」
「うむむ。この画像だけではわからないな。」
「お姉さんもお手上げね。」
五人がうなっていると、そこに女将と思しき人物がやってきた。
「あら、こんなところにいたの。あなたたちヘルプの子でしょ?早く手伝ってちょうだい。」
「あ、いや!」
「あ、あたしたちは・・・・」
言い逃れをしようとするが、強引に女将に腕を引かれてしまう。
「いいからいいから。髪のセットもまだじゃない。ほら、順番にしてあげるから早くしなさい。」
(あ、あら?これは予想外に・・・・・・)
(ラッキーな展開ね!)
(うむ。ここで祖国ドイツの経験が役に立ったな。)
(仲居さんかぁ。実はちょっとやってみたかったんだよね。)
(これで作戦もスムーズに行きそうね。)
ひとり、なにか方向がずれ始めたメンバーがいないでもいないが、とりあえず全員髪を結い上げる。
その姿は、いつもと違って華々しく彩り鮮やか、まさに男が見返るであろう美少女達だった。
「はい、それじゃあお料理を運んでちょうだい。急いでね。」
『はい。』
とりあえず全員がうなずいて、女将が出て行ったのを確認してから作戦会議が始まった。
「とりあえずラウラちゃんがボイラー室の破壊に行って。後は私達が出たほうがいいし。」
「了解しました。」
「流石ですね、楯無先輩。」
「テロリスト真っ青ですわね。」
「えへへ、仲居さん仲居さん♪」
小さく跳ねるシャルロットはセシリア、鈴、ラウラに睨まれしゅんと小さくなる。
「こらこら、そんなに睨まないの。でもシャルロットちゃんの気持ちはわからなくもないわ。でも今は状況を考えてね。」
「はい。あっ!ラウラ、けが人とか出さないでね。」
「任せてもらおう。」
そう言ってラウラは袖を捲り、縛って部屋を出て行った。
「じゃあ私達は」
「不本意だけど。」
「仲居さんだね♪」
「あんた楽しそうね。」
「あれ?大浴場ってどっちだ?」
「完全に迷ったな。」
「地図見とかずに行かないからこうなっちまうのってよくあるよな。」
「そうね。」
ものすごい広い敷地内を、地図を見ずに移動していた一夏達はぐるりと一周してラウンジにやってしまった。
「ちょっと休んでいくか?」
「そうだな。茶でも飲もう。」
「賛成。」
「そうしましょう。」
ご自由にお飲みくださいと書かれている棚から湯飲みを一夏と弾はそれぞれ二つ取り出し、座席に向かう。後ろでは箒と虚がお茶を急須に入れていた。
箒と虚はちらりと盗み見て、二人はついつい顔が緩んでしまう。
(ま、まるで、夫婦のようだ・・・・・・)
(ほ、本当に・・・・・夫婦みたい・・・)
そんなことを考えていると、その横を通り過ぎたラウラに気付くはずもなかった。
ちょうど一夏と弾が振り向くと、もうラウラの姿は消えている。
「箒?どうしたんだ?座らないのか?」
「虚さん?」
「あ、いや、そうだな!ま、待ってやっていたのだ!」
「さ、さすがに先に座っていると悪いと思って・・・」
「そうか、サンキュ。」
「どうもです。」
「う、うむ・・・」
「え、ええ・・・・」
咄嗟に言い出した言い訳が、二人の反応が良かったため、箒と虚は言葉を詰まらせる。
とりあえず座ったお茶を飲む。
「ふう・・・・・」
(む、むう・・・・。これ以上に距離を縮める方法は無いものか・・・・)
そう思った矢先であった。
ぽんっ。
『!?』
突然、遠くで何かが爆発したような音が響いた。一同爆発に驚いて音が聞こえた方を向く。
「な、なんだ・・・」
「わ、わからないが・・・・」
「今・・・・・変な音したよな・・・」
「ええ・・・・・」
それからくるりと一夏は箒の方を、弾は虚の方を向いたので、二人二組は間近で見つめ合うことになってしまった。
「「あ」」
「いや、その・・・」
「//////」
虚以外の三人はしどろもどろになり、虚は顔を赤くする。そそっくさと目を逸らす二組は、なんだかいい雰囲気だった。
「むっ」
「どうしましたの、鈴さん。」
「なーんか、ヤな予感がしたんだけど・・・・・」
「まあ。」
「気のせいじゃないような・・・・・」
そんな会話をしていると、後ろから布団をめいいっぱい持ったシャルロットが声をかけてきた。
「ふ、二人とも、手伝ってよ~。」
「これ以外と重いのよ~。」
「あ、ごめん。」
「どこまで運べばいいのかしら?」
とりあえず、シャルロットから布団を受け取る鈴とセシリア。
「えーと、椿の間だって。」
「えーと、止まっているお客さんは―――」
リストをゴソゴソと取り出したシャルロットと楯無は、そこでぴしりと固まった。
「こ、これ、一夏と箒のお布団だよ・・・・」
「「え!?」」
鈴とセシリアはそれを聞いて大きな声を出す。
「これ、どっかに隠しちゃまずいかしら?」
「いえ、鈴さん、それでは逆に状況を加速さえるだけですわ。ここはあえて、へ、へ、平常心で布団を敷きましょう。」
「既に平常心じゃないじゃん・・・・・・」
「気持ちはわかるけどね・・・・・・・」
そういうことで、部屋に忍び込む好機であった。
「じゃあ、とりあえず部屋まで行こうよ。」
「そうね。」
「そ、そ、そうですわね。おほほ・・・」
「ふふふ・・・・」
四人の目つきがそれとなく鋭くなる。
そうして二人の布団を運んでいると、ほどなくして一夏達の好く掃く部屋にたどり着いた。
「じゃ、じゃあ、入ろうか。」
「い、いいわよ?」
「か、覚悟は出来ていますわ。」
「私もよ。」
ゴクリ、つばを飲む四人。
そして控えめに戸が開かれた。
「わあ。いいお部屋・・・・」
「なんで箒ばかりこうなんのよ・・・・・」
「腹が立ちますわね。」
「盗聴器を仕掛けられる場所はないかしら?」
四者四様の表情を浮かべながら、布団を寝床へと運ぶ。
ぶつくさ言いながらも、女将に教えられた通りに布団を敷く四人。
「「「「・・・・・・・・・・・」」」」
沈黙が訪れる。
「これ、今晩二人が寝るのよね?」
「そ、そうだね・・・」
「な、な、何かの間違いがあってからでは遅いですわ!やはり、箒さんの布団にトラップを仕掛けてはいかがかしら!?」
「セシリア、目がマジよ。」
「鈴さんこそ。」
「ね、ねえ二人とも・・・」
「なによ。」
「なんですか、シャルロットさん。」
「少し離さない?」
「賛成ね。」
シャルロットの提案で二人の布団を少し離す。そのときスパーンと戸が開く。
(戻ってきたの!?)
そう思って四人は慌てて隠れる場所を探したが、幸いやってきたのは女将だった。
「こら、あなたたち何をサボってるのよ。働きなさい。」
「「「「は、はい。」」」」
こうして、また四人は旅館の仕事に戻っていくのだった。
「えっ、大浴場が使えない!?」
一夏達はやっとたどり着いた入り口前で中井さんにそう説明された。
「残念だったな、箒。」
「なんでだ?」
「いや、ここの温泉美白効果があるって書いてあっから。ほら、女性って美に気を使っているってよく言うしな。」
「そ、そうか・・・」
箒は少し顔を赤くする。
(い、一夏が私のために気を使ってくれた・・・・)
そのことに箒は内心でちょっぴり喜んでいた。一方の虚はというと。
(よ、よかった。・・・・・・でも、少し残念ね。)
虚はこんな感じです。
「あ、でも、お部屋の露天風呂は別装置を使っているんで、入れますよ。」
「そうなんですか!」
一夏は表情が明るくなる。
「そうか、じゃあ部屋に戻るか。」
「はーい。ごゆっくり~。」
一夏達は部屋へと戻っていた。
それを廊下の陰から見ていたラウラは、しまったという顔をしていた。
「私だ、作戦は失敗。そちらで個室の露天風呂使用を妨害されたし。」
『ええっ?無理無理無理無理!今団体さんの宴会で料理を運んでて――――うわっ!』
『ちょっと、シャルロット、大丈夫?』
『う、うん。ありがとう、鈴。』
『結構多いわね。皆頑張って。』
仕方なくラウラは携帯電話を切る。
「うーむ・・」
戦力は大幅にダウンしてしまった。しかし、策が無いわけではない。
「いざとなれば箒と入れ替わる手段もある。」
ラウラの目が光る。
「うむ。そうだ。それがいい。それが最善だ。」
もやもやと妄想する。
『ラウラ、食べさせてやるよ。』
『む、そうか。』
『口移しで、な・・・・』
――――。
「いい・・・・」
「何がいいのかしら?」
ぎくぅっ!
ゆっくりと後ろを向くと、そこには怒りのオーラを纏った女将が立っていた。
「はいはい、あんたはこっち!ったく、若い子はすぐにサボろうとして!」
「ま、待て!私は――――むぐぐ!」
着慣れない着物のせいで上手く身体を裁けないラウラは女将にずるずると連れて行かれた。
「ふー、しっかり食べたな。」
出された料理を一通り平らげると、一夏は一息つく。
「そうだな、おいしかった。」
にこにこと笑顔を見せている箒を見て、一夏も一安心する。
いくら旧知の友ともいえ、二人がけで泊りがけというのは一夏でも少し意識するものがあったからだ。
(また一夏と二人っきりで食事が出来た。旅行とはいいものだな。)
箒はホテルで一緒に食事をしたことを思い出していた。
「じゃあ俺は風呂に入ってくるからな。」
「ああ。ゆっくりしてこい。」
個室の脱衣所があり、そこから露天風呂に向かう。
(うん。ゆっくり出来そうだな。)
衣服を脱いでタオルを一枚持っただけの一夏は露天風呂にゆっくりと浸かる。
「ふぅ~~~~~~~~~~・・・・」
檜でできたその湯船は、ゆったりとしていえ広い。
(こんな風に平和が続いたら・・・・・)
夜空を眺めながらそんなことを思っていた。
そうすると不意に箒の声が聞こえてきた。
「は、入るぞ!」
「ん!うん―――って、はぁっ!」
そこにはバスタオルを纏った箒の姿があった。
『むっ!』
ぴゅきーん。
『嫌な予感がする。』
セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、楯無はそれぞれ何かしら気配を感じ取っていた。
「なんだかこのまま放っておいては・・・」
「よくない気がするわね。」
「ど、どうしよう?」
「決まっている!」
「突撃ね。」
うん、とうなずく五人は宴会場から脱出した。
――そしてその頃。
「な、な、なぁっ!?ほ、箒!?」
「な、なんだ!?」
「な、なんだじゃない!何してんだよ!」
「こ、これは、その・・・・・背中を・・・・背中を流してやろうと思ってだな・・・・・」
「え?なんだって?」
「い、いいからそこになおれ!」
びしいっと檜椅子に指を指す箒。
一夏は湯船から出ようとしたが・・・
「あ、あのー、箒さん?」
「なんだ!?」
「その、後ろに振り向いてくれないとあがれないんだが・・・・・」
「っ!」
ボッと赤くなった箒は慌てて後ろを向いた。
(と、とりあえずあがろう。それでさっさと背中を流してもらえばいいんだ。)
そういうことにして、湯から出る。タオルを腰に巻いて、檜椅子に腰掛けた。
「い、いいぞ。」
「う、うむ。」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
しばらく沈黙。
「・・・・し、しないのか?」
「わ、わかっている!」
・・・・・・・。
そしてまた沈黙が続いたが、箒が近づいてきた気配に一夏はぴくっと反応した。
(うう、一体何がどうなって・・・・)
(ど、どうしればいい?大体、私は一体何をやっているのだ!?)
ドキドキと高鳴る胸の鼓動を抑えながら、箒はボディーソープをタオルで泡立てる。
(そうだ、これは夢だ。そうに違いない。)
もしゃもしゃと泡を大きくしながら、箒はいきなり現実逃避を始める。
(夢か・・・・・・そうか夢か!ならば何をしていてもいのだな!)
室内からはトントントントントンとノック音が続いていたが、露天風呂にいる二人には聞こえていない。
「では洗うぞ!」
「お、おう。」
(ふふっ、いい夢だ。いい夢だ。まるで旅行気分ではないか。)
ごしごしと一夏の背中を洗う箒。そのたくましさに触れて、ますます高揚していく。
(夢ならば直接触れても問題ないな♪)
ぴとっ。
「ほ、箒?」
「はぁ・・・・・・。いつの間にかこんなに大きな背中になったのだな・・・・・」
「お、おい、どうし――――」
一夏が振り向こうとした瞬間、爆音が響いた。
どご―――――――――ん!
「そこまでですわ!」
「神妙にしなさい!」
「一夏、許さないよ!」
「お前というやつは!」
「それ以上はさせない!」
いきなり仲居姿のセシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、楯無がなだれ込んできて、一夏は呆気にとられる。
「な、なぁ!?お前ら、何して―――」
『問答無用!!』
ジャキッ!ごにんがそれぞれ武器を具現化させる。
「ま、待て待て待て待てぇ!」
「私の夢なのに邪魔が入るとは・・・・許さん!」
箒も刀を具現化し、対峙する。
「こらこらこら、待てって!」
慌てて間に入る一夏だったが、その瞬間・・・・タオルが落ちた。
「あ」
「あっ・・・・・・」
「あああああああ~~~~~~~~~~~っ!!!!!」
急いで湯船に飛び込む一夏。その顔は真っ赤だった。
「わ、忘れろ!忘れてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
(み、見ちゃった・・・)
その後、セシリア達五人は女将にこっぴどく怒られたものの、一日分の働きとして一泊させてもらえることになった。
「・・・・・で」
ぴくぴく眉を震わせる箒。
「どうしてこうなるのだ!?」
箒を含めた六人は、同じ部屋で眠ることになった。
当然という結果だ。一夏は別室を希望したが女子陣の強い押しに負けて同じ部屋になった。
「いいじゃない、別に。」
鈴がそういいながらポッキーを食べる。
「パジャマパーティーみたいだね。」
にこっとするシャルロット。
「男もいるのにか?」
「それはそれ、これはこれですわ。」
優雅に窓枠に腰掛けながら一夏に話すセシリア。
「うむ、うまい。」
一人マイペースに饅頭を食べるラウラ。
「ところで虚は一体どこにいるのかしら?」
虚の携帯電話に何度も連絡するも出ないことに疑問を抱く楯無。
「こ、こ、こ・・・・」
「こ?」
「これは夢だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
叫ぶ箒。しかし、その声は夜空にただただ消えていくだけだった。
華は華なりて華のごとし、さすれば夢は夢のごとして夢なり―――――。
露天風呂に一人浸かっている弾。夜空を眺めながらみていると物音がした。
「ん?ぬぁっ!」
音がするほうを振り向くとバスタオルを巻いた虚の姿があった。
「な、な、な・・・・・・」
「お、お邪魔する・・・・ね。」
顔を赤めながら弾の隣に座る虚。二人は高鳴る胸の鼓動を抑えながら理性を保とうとする。
が、弾は理性が保てそうにないので思わず虚に背中を向ける。
(や、やべえ・・・・・いきなり入ってきたから心臓の鼓動が止まんねえ。)
(弾君の背中って、結構大きいのね。)
ぴとっ。
「ふへっ!?」
弾は背中に当たっている二つの柔らかい感触に驚く。
「う、うううう、虚さん!な、なにか背中に当たっているんですが!!」
「・・・・・当たっているんじゃなくて・・・・・その・・・・あ、当てているの。」
弾は虚の方を振り向き、両肩を掴む。
「え?」
弾は虚にキスをする。
「ふ・・・・うむ・・・・む・・・・・・」
「む・・・・はぁ・・・・・あ・・・・・・」
唇と唇が重なり合い、舌が絡む。
「ぷはぁ。」
弾は虚の唇から離れる。
「虚さん、お、男にそんなことしたらどうなるかわかってるんですか。」
「あ・・・・・」
虚は弾のあるところを見る。
「その・・・・・弾君がしたいのならいいよ。」
「で、でも!」
「の、飲んでるし。・・・・・・弾君と付き合ってから・・・・」
「虚さん・・」
徐々に二人は身体を引き合わせ
二人の影が重なった。
「はぁ・・・はぁ・・はぁ・・・・・」
「さすがに・・・・・ここだとすぐのぼせるね・・・・・・」
「そうっすね・・・・・」
「続きは・・・・・・あっちでしよっか・・・・・」
「・・・・・・・はい。」
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一夏は箒と駅のショッピングモールにきていた。そこで弾と虚に出会いそして・・・・・若干R15あります