まえがき コメントありがとうございます。皆さん、エイプリルフールに嘘をつきましたか?私は嘘をつく間もなく1日が過ぎていってしまいました・・・。無念なり。来年こそは嘘をついてしてみようと意気込んでいます!おそらく明日には忘れているでしょうがね。はてさて、今回も拠点仕様ですね。それでは、まったりとした空間をお楽しみください。
・・・俺の部屋で薔薇と手を繋いだまま固まっている俺。薔薇が寝ている状態で何故こんなことになっているのかと言うと・・・バレちゃった。それに気付いている訳もなく薔薇はすやすやと寝息を立てている。
「胡花ちゃん、またご主人様が知らない子を連れ込んでるよ。」
「え!?桃香様、あの方は劉協様ですよ!」
「え? だって、あの子は女の子だよね?」
「ですから、劉協様は女の方だったんですよ。」
「・・・え!?」
桃香が驚愕の表情を浮かべこちらを見てくる。胡花も桃香と同じように薔薇・・・でなく俺を見ている。穴があったら入りたいってこういう時に思うんだろうなぁ。こうなっては仕方ない・・・開き直ろう。
「桃香、胡花、こっちにおいで。」
「う、うん。」
二人が俺の隣に座る。
「今寝たとこだから静かにね。」
「うん。それは良いんだけど・・・劉協様が女の子だってこと、ご主人様は知っていたの?」
「隠し通すつもりだったんだけどね。前に朝廷に行った時に俺が聖桜を忘れて劉協様の部屋に戻ったでしょ。その時にバッタリ着替えの時に部屋に入っちゃって・・・。」
「けど、こうやって見ないと女の子だって全然気付きませんでした。」
「皇帝は男しかなれないからね。それに、突然の霊帝の崩御に加えて十常侍や何進の目があった。それらを欺いていくには俺たちに気付かれないくらいの変装をしないといけない。」
「そっか、劉協様も相当な苦労をしてたんだね・・・。」
桃香もそっと薔薇の手を握る。桃香の視線の先には薔薇の寝顔に向けられていた。その表情は慈愛に溢れ、愛する我が子を見るかのように・・・。
「その・・・ご主人様、渡したいものがあるんですけど、いいですか?」
「? いきなりどうしたのさ?」
「ご主人様に助けていただいてから何かお礼をと考えていたのですが、なかなか機会がありませんでしたので。それで、先日の買い物のときにそのお礼を買っておいたのです。」
胡花の手には小さな四つ葉のクローバーがあしらわれた指輪があった。クローバーはガラス細工で作られているみたい。
「四つ葉のクローバーのこと、よく知ってるね。」
「これを持っていると運が良くなる。と、卑弥呼さんに教えていただいたので。」
『私がおるだけで十分に運は良くなるのだが・・・。』
そこ、茶々を入れない。
「なるほど。」
卑弥呼が以外にも乙女チックなことをしてる・・・。漢女だけに。
「だから・・・受け取っていただけませんか?」
「うん。じゃあ、胡花が直接俺の指にはめてくれるかな?」
「は、はい!//」
胡花が俺の左薬指に指輪をはめる。・・・深い意味があるのかな?
「その、卑弥呼さんがご主人様はこの指にはめると喜ぶって聞きましたので//」
「う、うん。」
「指輪って懐かしいね。私もご主人様に指輪もらったんだ♪」
桃香がピンクダイヤの指輪を見せる。懐かしいなぁ。洛陽で行商人からもらったものだ。
「へぇ、可愛い指輪ですね♪」
「えへへ♪」
二人が指輪のことで談義している。なんか和むなぁ・・・。
「にゃーー・・・・・・・。」
「?」
部屋の外から何か聞こえてくる。この声は・・・明里か?
「にゃーーー!!にゃにゃにゃーーー!!!!!」
・・・結構近いぞ。というか、確実に俺の部屋に近づいてきているよね!?
「ご主人様、この声って・・・。」
「うん、明里だろうね。ちょっと外に出て、様子を見てくるよ。」
それから立ち上がろうとするが・・・
「・・・立てない。」
バッチリ薔薇に手を掴まれている状態なので立とうに立てない・・・。無理やりひっぺがす訳にもいかないし。
『私が捕まえて来よう。』
鈴が勾玉から出てくると、俺の部屋を出た。
「にゃーーー!!にゃぶ!?」
「ほれ、捕まえてきたぞ。」
「・・・。」
明里が首根っこを掴まれて大人しくなっていた。本当に猫状態になっている。
「明里、俺のこと分かる?」
「・・・はっ!・・・ご主人様、私は何を?」
首を掴まれた状態でキョトンとしている明里。どうやら暴走していて我を忘れていたみたい。
「明里ちゃんが外を走り回っていたから、鈴さんが捕まえてきたんですよ。」
「一体何があってあのような状態になっておったのだ?」
「それは確か・・・(ボッ)」
「?」
一気に明里の顔が真っ赤になっていく。何かを思い出しているようだけど・・・。
「な、なんでもありません!!//」
「そ、そっか。」
何もなかったようには見えないんだけどなぁ・・・。
「・・・あの、この方はどなたですか?」
「あのね、劉協様だよ。」
「・・・・・・えぇ?だって、髪も黒くないですし胸も大きいですよ?」
「本当は女の子だったんだって。」
「・・・へ?」
あちゃー、やっぱり驚くか・・・。
「朱里ちゃんと雛里ちゃんが凹むだろうなぁ。」
「? なんで朱里ちゃんと雛里ちゃんが凹むの?」
「え? その~・・・。」
明里が桃香の何かを耳打ちしている。
「ご主人様、何でしょうね?」
「さぁ?」
俺と胡花は目を合わせて首を傾げた。
「なるほど~。けど、確かにご主人様と劉協様は仲良さげに見えたもんね。」
そんなに親しそうにしてたかな?
「私から見ていても親しげに見えたぞ。」
「鈴にもそう見えた?」
「あぁ。というより、一刀が皇帝にまで手を出しているとは思わなかったぞ。」
「いや、まだ手は出してないよ。」
「ほう、まだとな。」
「あっ・・・いや、深い意味はないよ。」
「一刀のことだからな。たとえ一刀から手を出さずとも、自ずと相手から寄ってくるだろう。現にそうなっているし。」
「・・・。」
すやすやと眠る薔薇を見やる。確かに俺を頼ってきたっていうのは間違いないんだけど・・・薔薇が俺に好意を持っているってこと?
「すー・・・すー・・・。」
穏やかな寝顔を見ていると、なんだか考えるのが難しくなってきた。
「まぁ、俺に好意を持ってくれているってことは素直に嬉しく思うからね。後のことは薔薇に任せるよ。」
とりあえず、俺たちは薔薇が起きるまで部屋でのんびりと待つことにした。
・・・
桃香たちが部屋に来てからおよそ三十分。
「・・・んっ、んん~~~~~。」
「薔薇、おはよう。」
「一刀・・・おはよう。」
「劉協様、おはようございます♪」
「ええ、おはよう。・・・?ねぇ、一刀。ちょっといい?」
「・・・言いたいことはよーく分かる。すみません。」
俺は洗いざらい全て話した。・・・俺が悪いわけじゃないのに罪悪感が残るのはなぜだろうか?
「まぁ、納得はしたわ。それに、私だってお城を出た時点でバレる覚悟は少なからずしていたから。」
「劉協様、ごめんなさい。私が覗かなかったら・・・。」
「劉備、あなたのせいではないわ。私の警戒心が足りていなかったという点もあるから。」
「このこと、愛紗ちゃんたちには内緒にしておいた方がいいですよね?」
「・・・いえ、将たちには私から伝えるわ。まぁ、一刀と月は私のことを知っていたのだけどね。」
「そういえば劉協様は月ちゃんとお知り合いでしたね。」
「えぇ、幼馴染というやつよ。」
幼馴染かぁ。俺の幼馴染・・・いねぇ。俺の幼い頃といえば、爺ちゃんとの稽古。婆ちゃんとの稽古。それが六歳の頃だから、その前は・・・。・・・鞘香と遊んでたくらいかな?それと犬とか猫とか・・・。
「とりあえず、庭に戻るわよ。一眠りしたらお腹が空いたわ。もう残っていなかったら一刀、料理作ってね。」
「分かったよ。」
俺は薔薇と共に部屋を出た。
「劉協様って、思ったほど皇帝様って感じではなかったですね。」
「そうだね~。私も朝廷でお話しした時ほど緊張感は感じなかったし。」
「私より胸、大きかった・・・。」
「おーい、早く来ないと置いていくぞ~?」
「あっ、待って~!」
「明里ちゃん、私たちも行こう!」
「うん・・・。はぁ・・・(しょぼーん)。」
・・・
俺たちは薔薇と共に庭に戻った。のだが・・・
「これまで私は皆を騙していた。すまなかった。」
ペコッと頭を下げる薔薇。しかし、それ以上に何が起こっているのか把握しきれていないうちの将たち。
「その、ご主人様。こちらの方は?」
「劉協様だよ。」
「・・・。」
皆、衝撃の真実に驚愕した表情を浮かべている。俺も知ったときはビックリしたけどね。いろんな意味で。
「なるほど。なんで兄貴と劉協様があんなに仲が良かったのか、なんとなく分かった気がするぜ。」
「なんで?」
「兄貴、劉協様に何かしたろ?」
「・・・その根拠は?」
「兄貴が女の子関係で何もしてない訳が無いからな。」
「ご主人様なら有り得ますね。子持ちの私も口説かれましたし♪」
「ちょっ!?」
「私はずっと一緒にいてくれって言ってもらえましたから♪」
「清羅まで・・・。」
「一刀、お前は何人正妻を持つつもりなんだ?」
「!?」
俺も含めて皆が一斉に鈴の方を振り向いた。
「鈴、何を言ってるの?」
「そうではないのか?お前は王の立場だ。しかも皇帝にお手付きしているとなれば全員面倒を見ると思っていたのだが。勿論、私も含めてな。」
「お、お手付きはしてないよ!!」
「けど、私の・・・その・・・見たじゃない//」
「ん? どうしたの?」
「何でもない!!」
? いきなりどうしたんだろうか?
「ねぇ、ご主人様。」
「?」
「私、頑張ってご主人様のお嫁さんになるからね♪」
「え、えぇと~。うん、楽しみに待っておくよ。」
「主よ、満更でもないようですな。」
「・・・星、分かってて言ってるでしょ。」
「はて、なんのことやら。私には分かりかねます。」
「・・・。」
「桔梗、抜けがけは無しよ。」
「何を言っておる、そう言う紫苑こそ抜けがけは無しだからな。」
「ふふっ♪」
「ふっふっふ。」
「桃香様はこの男のどこに惹かれているのだろうか・・・。理解し難いな。」
「それはねねも焔耶と同感なのです。こいつさえいなければ恋殿にもっと遊んでいただけるのに~。ぐぬぬぬ・・・。」
「ご主人様、良い人。セキトたち、懐いてる。だから、ご主人様のこと、好き。」
「恋殿~。」
よよよ~と半分泣きそうになっているねね。
「月夜ばかりと思うなよ・・・です。」
「めっ。(ぽかっ)」
「あいたっ!」
・・・背中を狙われないように警戒した方が良さそうだな。
「皆も一刀のこと好きなんやな~。今更のことやけど。」
「皆も・・・ということは、霞さんも兄様のこと好きなんですか?」
「勿論や。一刀はうちのことを女として見てくれた初めての男やし、人間も出来とるさかいな。いろんな意味でうちの目標や。そう言う流琉こそ、一刀のこと好いとるやん♪」
「そ、そうですね//」
俺は置いてけぼりでどんどん話が膨らんでいく。・・・たまにはこういうのもアリかな。
「モテる男は大変だな。」
「自覚はないんだけどね~。」
「分かっていたが、兄貴の鈍感っぷりは折り紙付きだからな。」
「蒼よ、そんなことは分かりきっていることだ。気にするな。」
「・・・月、俺ってそんなに鈍感かな?」
「感じ方は人によりけりだと思いますよ。」
「そうだよね。」
「はい♪」
「一刀と月は仲が良いのね。」
「ご主人様と薔薇様も仲が良いじゃないですか。」
月と薔薇もわいわいと話し始めた。薔薇にも気を許せる子がいるって改めて分かったのは素直に嬉しく思う。
「劉協様、楽しそうだね。」
「そうだな。桃香も楽しんでる?」
「うん♪ けど、これって何に対して楽しんでるの?」
「俺も分かんない♪」
何故か少し投げやり気味になっている俺がいたそうな。
・・・
俺は薔薇の昼食を作るために、桃香と流琉と共に厨房に来ていた。よく考えなくても、鈴々と恋がいる時点でご飯が残っている確率は万に一つも無かったんだが。薔薇は月たちと庭で談笑している。部屋の中にいては?と提案したのだが、普段からなかなか外に出られなかったから出来るだけ外にいたいそうだ。
「流琉ちゃん、今日こそご主人様たちに美味しいって言ってもらえるように頑張るからね!」
「はい!とりあえず、私の言う通りに作ってくださいね。」
「はーい♪」
桃香のことは流琉に任せるとして、俺は何を作ろうかなぁ。
「・・・そういえば、薔薇の好みって知らないな。う~ん・・・。」
いつも通りに中華で攻めるか? けど、桃香も作ってるからなぁ。美味しくなるかは別としてだけど・・・。流琉が一緒にいるから大丈夫だろう。それなら・・・
「日本食にしようかな。前に作った醤油もあるし・・・肉じゃがだな。みりんの分は砂糖で代用して。桃香が炒飯作ってるみたいだからおかずには丁度いいだろう。」
俺が久しぶりに食べたくなった。っていうのもあるんだけどね。
「流琉、桃香の調子はどう?」
「今のところ、いい調子ですよ。それに、前の失敗の二の足を踏むようなことはされていませんから、そろそろ一人で料理されても大丈夫だと思います。」
「そっか。桃香もなんだかんだ頑張ってるんだ。じゃあ続きも桃香の監督役お願いね。」
「はい、お任せ下さい。」
桃香も真剣な表情で料理に取り組んでいるし、後は数をこなせば一人で料理しても大丈夫なレベルにはなるかな。さて、俺も料理を再開しようかね。
・・・
「ご馳走様。とても美味しかったわ。」
「どういたしまして。」
薔薇は昼食を食べ終わると突然、市を回ってみたいと言い出した。
「誰かに皇帝だってバレるかもしれないよ?変装しなくていいの?」
「改めて考えると、私の素の姿って蜀将と朝廷のごく一部の人間しか知らないの。つまり、ここにいる間は男の格好をしなくても良いと判断したわけ。」
「その、薔薇様・・・それは流石に危機感がないですよ。」
月、もっと言ってやれ!とは思うものの、流石に口には出せない。
「大丈夫よ。」
えらく自信満々に答える薔薇。
「こ、根拠はどこにあるのですか?」
「一刀がいるじゃない。」
ドヤ顔で俺を指差す薔薇。俺は護衛の代わりか何かと思われているんだろうなぁ。まぁ、馬騰さんから薔薇を預かっているような状態だから、ついて行くのはほぼ決定事項なんだけどね。
「俺でよければ護衛させてもらうよ。」
「あなたがいないと安心して外を出歩けないもの。それと、道案内を頼むわね。」
「了解。」
「私もお供しますね。」
俺は二人と共に市へと向かった。
「劉協様と月ちゃん、嬉しそうだったなぁ・・・。羨ましい!」
そして、その光景を少し離れたところで傍観していた桃香と愛紗がいた。
「私たちも先日、ご主人様と出掛けたばかりではないですか。」
「そうだけど、羨ましいものは羨ましいの!愛紗ちゃんだって、ご主人様と一緒にお出かけしたいでしょ?」
「わ、私は・・・ご主人様の側にいられるだけで幸せですので。出来れば・・・ご主人様がこんな私でも愛してくださるのであれば・・・その・・・//」
「愛紗ちゃん!今こそ作戦会議だよ!」
「と、言われますと?」
「朱里ちゃんたちのお部屋に行こう!」
ということで、二人は朱里たちの部屋へと向かった。
「・・・しゅ、朱里ちゃん?それに雛里ちゃんまで、どうしたの?」
二人が部屋に到着し、目にしたものは項垂れている朱里と雛里。そして、そこにいた明里と詠も頭を抱えている。
「二人とも、いいところに来たわ。この凹んでる二人をどうにかしてくれない?」
「どうにかしろと言われてもだな、原因が分からないのではどうも出来ないぞ。」
これは愛紗の言う通りだ。相談に来たのに、逆に当人たちをどうにかしろと言われてもどうにもしようがない。
「う~、ご主人様と劉協様で良い八百一本が書けると思ったのに・・・まさか女の子だったなんて~。」
「しかも、私たちよりおっぱい大きかった・・・。」
「暇だから来てみればずっとこの有様なのよ。」
「あ、あはは・・・。」
「こ、これをどうにかしろと言われてもだな・・・。私にも何も出来ないと思うのだが。」
「朱里ちゃん!雛里ちゃん!桃香様と愛紗さんが来たよ!」
「う~。」
「はわ~。」
「・・・重症のようだな。」
「私、華佗さんを呼んでくるね!」
「華佗を呼んでもどうにも出来ないでしょうに・・・重症と言っても病気ではないのですから。」
「まぁ、ある意味では病気だけどね。」
どうにか出来ないか考えても、解決策が思いつかないまま時間だけが過ぎていった。
・・・
俺は月と薔薇と共に市を散策している。薔薇はというと、市をゆっくり回ること自体が初めてのようでキョロキョロと物珍しそうに店や人々を眺めていた。
「どう?初めての市は。」
「活気に満ち溢れて良いところね。」
「私も初めて外をゆっくり見たときは、薔薇様と同じように感じました。」
似たような境遇だからこそ、感じ方も似るのかな。
「北郷様、桃まんが蒸しあがりましたのでどうですか?」
「お、食後のデザートにいいかも。三ついいかな?」
「毎度あり。おや?見慣れない方ですね。しかも、また女の子!北郷様も隅に置けない方ですね~。」
「この子はお客様だから、そういうのじゃないの。」
「そうですか。けど、好意を持たれているのは間違いないでしょう?」
「どうしてそう思うのさ?」
「北郷様たちがお城の方から歩いてきているのを見ていたら、雰囲気からして逢引にしか見えませんでしたから。」
「(ボッ)」
「あはは、真っ赤になっちゃって。可愛いじゃないですか。北郷様、気が多いのもそうですが、見放されないように気をつけてくださいね。」
「善処します。」
俺は三人分の桃まんを受け取り、店員のお姉さんにお代を払う。
「また来てくださいね。」
「うん、今度は鈴々や恋も連れてくるね。」
俺は桃まんを抱え、月たちの元へ駆け寄った。
「はい、月と薔薇の分の桃まん。熱いから気を付けてね。」
「ありがとうございます。」
「・・・。」
とりあえず二人に桃まんを渡した。けど、薔薇に反応がない。もしかして、桃まん食べれないのかな?
「か、一刀!何を言っていたのよ!?//」
「は? いきなりどうしたのさ?」
「だ、だって!あの人、私と一刀がその・・・あ、逢引してるって言ってたじゃない!//」
「あ~、それか。俺は逢引だと思われてもいいかなって思うんだけど。」
「何よ、私だけ意識して・・・馬鹿みたいじゃない・・・。」
「薔薇様は、ご主人様と逢引するのはお嫌ですか?」
「・・・嫌なわけないじゃない。けど、逢引だって意識すると・・・恥ずかしくて堪らないのよ//」
より一層顔が赤くなった薔薇。まぁ、嫌じゃないって言ってくれたのは嬉しいな。
「じゃあ・・・手、繋ごうか。」
「え!?ちょっと・・・もう、既に繋いでるじゃない。」
「ご主人様って、こういう時は押しが強いんですよ♪」
「これは押しが強いんじゃなくて有無を言わさずってやつよ。」
「ご主人様、私も良いですか?」
「うん。」
「失礼します。あっ・・・。」
「ん?」
もう片方の手は俺の分の桃まんが握られている。う~ん、さっさと食べるのは勿体無いし・・・けど月のお願いを聞かないわけにはいかないし・・・。
「ご主人様の桃まん、私がご主人様に食べさせてあげてもいいですか?」
「え?」
「これなら私も手を繋げますし、ご主人様も桃まんを食べることができます。」
「なるほど。それじゃあ、はい。」
俺は持っていた桃まんを月に渡し、手を繋いだ。
「えへへ♪」
左には嬉しそうに微笑む月。右には恥ずかしそうに顔を真っ赤にする薔薇。俺、こんなに幸せでいいんだろうか?ってたまに思う時があるよ。こんな可愛い子達に囲まれてさ。
「ご主人様、どうぞ。」
「あーん。」
月がちぎってくれた桃まんをパクリ。うん、美味いな。今度桃香たちにも教えよう。
「・・・一刀、こっち向いて。」
「ん?もぐっ!?」
薔薇が俺の口に桃まんをつっこんでくる。しかも、ちぎられてないやつ。俺は口に入ってる分を噛み切った。・・・薔薇の手元には俺がかじった桃まんが残る。
「その・・・美味しい?」
「う、うん。美味しいよ。・・・あと、食べさせてくれる時は、一口大にちぎってからにしてもらえると助かるかな。」
「う、うん。・・・そうだよね、食べにくかったよね。ごめんなさい。」
「い、いや。次に気をつけてくれればいいだけだから。」
「分かった。」
そう言うやいなや、自分の持っている桃まんをちぎる。
「はい、あーん。」
今度は一口大にちぎってくれている。けど・・・
「俺ばっかり食べてたら薔薇の分がなくなるよ。」
「あっ・・・。む~~~。」
薔薇が唸りだした・・・。なんか葛藤しているみたい。
「・・・」
ついには固まってしまった。というか、歩きながら食べなくてもいいわけだよな?
「月、近くの森を抜けたところに川辺があったよな?」
「そうですね。」
「そこで三人で食べないか?」
「私は構いませんよ。・・・洛陽でも同じようなことをしましたね。」
「そうだったな。なんか、結構昔のことのように感じる。」
あの頃は・・・黄巾党討伐をしていたときだよな。初対面の時の月は、まだ洛陽太守だった頃で・・・こんな関係になるとは思ってもみなかった。懐かしい。
「薔薇、移動するよ~。」
「え、えぇ。」
・・・
市を抜け、森を通り過ぎると川沿いまでやって来た。
「ここならゆっくり桃まんを食べられるね。」
「へぇ・・・結構いいとこね。」
俺たちは芝生の上に座る。何か敷物とかあればいいんだけどなぁ。
「月、俺の桃まんちょうだい。」
「はい。」
俺は月から桃まんを受け取り、一口大にちぎる。
「はい、あーん。」
「え!?自分で食べられるわよ。それに、その分は一刀の分じゃない。」
「俺も薔薇の分もらったからね。はい、あーん。」
「薔薇様、観念した方がいいですよ。ご主人様はお自分が納得するまで諦めませんから♪」
「なんで月が嬉しそうなのよ・・・。はぁ、観念するわ。あーん。」
桃まんを薔薇の口に入れる。
「・・・美味しい。」
「でしょ?」
「けど、それ以前に恥ずかしいわ//」
「慣れの問題ですよ。」
「そういうもの?」
「そういうものです。」
「・・・そういうことにしておきましょう。」
「薔薇、もう一口。あーん。」
「また!?」
「うん♪」
「//(なんで一刀と月はこんなに当たり前かのように振る舞えるのよ!それに、慣れの問題って言われても一朝一夕じゃ無理だから!)」
「あーん。」
「あ、あーん(ぱくっ)//」
それから食べさせあいながら桃まんの風味をのんびりと満喫した。
「美味しかったですね~♪」
「そうだね~。」
「一刀も月ものんびりし過ぎじゃない?」
「こういう時くらい良いの。」
俺の膝枕で横になってる月。薔薇は座ったままである。
「ご主人様のお膝・・・気持ち良い・・・です・・・すー・・・すー・・・」
「もう寝ちゃったか。」
「もう・・・外なんだし、危機感が薄いわよ。」
「外に出てる時点で薔薇も人のこと言えないんじゃない?」
「・・・そうだった。隣、良い?」
「うん。」
薔薇が俺の隣に座る。
「一刀の周りって、ホント女の子が多いわよね。」
「なんでだろうね~。」
「はぁ、鈍感なんだから・・・。(私の好意にも気付いてないようだし・・・。前途多難だわ。)」
「?」
何か分からないけど、大丈夫だろう。そんなことを考えていると、薔薇が俺にもたれかかってきた。
「私も少しだけ、こうしてていい?」
「うん、遠慮なくどうぞ。」
「ありがと・・・。」
薔薇の瞼がゆっくりと閉じられていく。俺も少しだけ・・・おやすみ~。
・・・
夕暮れどき、一刀たちは目を覚まし城へと戻った。それから宴が開かれ、酒豪たちは酒を楽しみ約二名の大食漢はひたすら食事をしていた。
「一刀さん、この方は誰ですの?新しい侍女ですか?」
「確かに昨日まで見てませんね。」
「そっか、麗羽たちはお昼は庭にいなかったもんな。まぁ、麗羽も知ってる人だよ。」
少し悪戯っぽく言ってみる。
「ん~?華琳さんじゃありませんし、蓮華さんでもない。・・・?」
「袁紹、見なくなったと思えば一刀の世話になっていたのね。」
「? あなた、私のことを知っていますの?」
「麗羽様は有名人っすから!いろんな意味で。」
これは猪々子に同意だな。
「失礼ですが、お名前を聞かせてもらってもよろしいですか?」
「斗詩は二人と違ってしっかりしてるんだな。えらいえらい。」
「ありがとうございます。麗羽様も猪々子ちゃんもご主人様に毎日迷惑をかけてますし、私がしっかりしないと・・・。」
「苦労をかけるねぇ。」
「私は劉協、袁紹とは反董卓軍以来ね。」
「は? 何の冗談ですの? 劉協様は男ではありませんか。」
「麗羽さん、この人は現皇帝の劉協様ですよ。」
「・・・本当ですの?」
「麗羽様、口調口調!」
「いいわ。今は個人として来てるのだから気にしないで。」
「・・・一刀さん!もっとおもてなしなさい!」
「麗羽は少し落ち着け!」
「白蓮さん、何をするんですの!私は劉協様におもてなしを・・・。」
「白蓮さん、麗羽様をお願いしてもいですか?」
「おう。ほら、行くぞ~。」
「ちょっ、白蓮さん!」
麗羽は白蓮によって自室へと連行された。
「劉協様、申し訳ありません。うちの麗羽様がご迷惑を・・・。」
「だから、気にしないでちょうだい。それに、あなたが謝ることではないでしょ。」
とりあえず落ち着いたところで、宴を再開した。
「劉協様、こちらの白酒はいかがですか?」
「そうね、少しだけもらおうかしら。」
「薔薇、紫苑たちに付き合ったらキリがないから本当に少しだけね。」
「では今度お館様に付き合ってもらうとするかの。」
「せやな。一刀、たまには付き合うてーな。」
「う、うん。」
「そうは言いながらも主は酒に強いからな。」
俺も顔に出さないだけで、ちょっときついんだよ。
「ほう、それは飲み比べる必要がありますな。焔耶は酒に弱かったからの。」
「桔梗様の基準で言わないでください・・・。」
焔耶の顔が真っ青になってるよ。何かトラウマがあるのかな?
「お母さんも、飲み過ぎちゃ駄目だからね。」
「分かってるわ。このくらいならまだ大丈夫よ。」
「・・・。」
空の酒瓶が五本もあるのは見なかったことにしよう。
「ふぅ、ご馳走様。美味しかったわ。」
「まだ何か食べる?」
「いえ、今日はもう寝るわ。お部屋に案内してもらえるかしら?」
「うん。」
そういえば部屋割りしてなかったな・・・。俺の寝台を使ってもらおう。
・・・
「着いたよ。」
「ここ、一刀の部屋じゃない。」
「薔薇には俺の寝台を使ってもらおうかなって思って。俺は椅子に座っていれば眠れるから。」
「それは悪いわ。だから・・・その・・・一緒に寝なさい!」
「薔薇はそれで良いの?」
「え、えーと・・・そう!あなたに風邪でも引かれたら皆が心配するでしょ!」
「う、うん。分かった。」
一刀と共に寝台に入る。数分後・・・。
「すー・・・すー・・・」
「一刀?・・・もう寝てしまったのね。」
どうしよう・・・ドキドキして目が覚めたわ。一刀はすぐ寝ちゃったから話し相手もいないし・・・。
「それにしても、こんなに慌ただしい一日は初めてだったわ。」
色々と恥ずかしかったけど・・・楽しかったなぁ。朝廷で独りぼっちの頃とは大違いね。・・・姉さんもこっちに来ることができれば・・・。
「一刀、姉さんのことも助けてくれる?」
こんなことを聞いても返事がないのは分かってるんだけど・・・自分が思っている以上に一刀のことを信頼しているのかしらね。ふふっ、明日はどんなことが待ち受けているのかしら。
「一刀、おやすみ。」
それから瞼を閉じるとすぐに眠りについた。
あとがき 読んでいただきありがとうございます。薔薇メイン拠点(のつもり)、いかがだったでしょうか。薔薇ちゃん可愛い!!そして伏竜鳳雛が憤死しそうです(笑)書いてて思ったことは、薔薇ちゃんの性格って月と詠を足して2で割った感じかなって思いました。さて次回 桃香、攻めに転じる・・・愛紗の憂鬱 でお会いしましょう。次回をお楽しみに。
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何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。