簡雍は桃香の家から出ると村の広場に向かった。そこでは韓程が程遠志へ打擲を行っていた。その姿は凄まじく、夜も遅いというのに遠巻きに見る村民が引いてるのがわかるほどだった。引いてるのにも関わらず、家の中に引き上げる人や顔を背ける人がいないのを見て簡雍は
(あぁ・・・やはり一刀は村民に愛されていたんだなぁ・・・)という気持ちを強くした。
そう思いながら刑罰の執行を見ていると受けている程遠志は意識がまだあるらしく、ギラつく目で桃香の住む家と簡雍を睨みつけていた。
そうしたうちに夜は明け、刑罰の執行も終わった。打擲回数は100を超え120もの回数を打たれていたが、程遠志にまだ息はあり、改めて追放を言い渡し簀巻きにし山の麓に捨てるという罰を行った。それと同時に簡雍は一刀捜索隊を組織し、自らも捜索するため一刀が落ちたとされる川沿いに韓程を連れ、向かったのだった。
簡雍らが楼桑村に戻ってきたのは夕方になってからだった。暗くなっては危険だし、捜索しても暗くては解らないからだ。
「劉備ちゃんのところに取り敢えず報告に行こう。何も見つからなかったというのもまた報告だ。」
死体が見つからない。ならば、生きているかもしれない。死んでなければ死体など有り様がないからだ。落ちたとされる場所に血痕がなかったのも大きな収穫だった。きっと川に直接落ちたのだろう。川底はまだ全て調べたわけではないが、調べた範囲では死体は引っかかってなかった。
そういった旨を報告しようと桃香の家の扉を開けると、桃香が明かりもつけずに自分で作ったのであろう食卓に並べられた料理の前で立っているのが見えた。
「あ・・・簡雍さん・・・」
どう見ても料理の量が多い。そう、丁度二人分のような量だ。少なくとも健啖家ではない桃香が食べれる量ではなかった。
「これは・・・どうしたの?」
嫌な予感を感じながらも一緒に来ていた韓程が桃香に問い質す。そうすると桃香は何処かぎこちない、明らかに作り笑いとわかる表情だった。
「あ、あはは・・・作りすぎちゃいました。ダメですね・・・一刀さんが居ることに慣れちゃって、一日ずーっと昨日までと同じ行動をしちゃうんです。」
韓程はそんな桃香を見て、悲しくてたまらなくなったのか桃香を抱きしめると、桃香は堰を切ったように泣き始めた。
「ダメなんです。どうしても考えちゃうんです。一刀さんがいれば・・・って。朝も昼も夜もずーっとそんなこと考えちゃうんです。」
ひとしきり泣き、桃香が落ち着いた頃を見計らうと簡雍は捜索の報告を始めた。事務的な簡雍に韓程は批難の眼差しを向けるが、それを黙殺し簡雍は桃香に報告する。それは義務だと考えていたし、進展こそないものの自分たちにとってはプラスのことだと思っていたからだ。
「搜索の報告だが、進展はなかった。一刀君の遺体は見つかっていない。そして落ちたとされるところに血痕もなかった。獣に喰われたわけでも無さそうだ。」
此処まで簡雍が言うと、俯きながら報告を聞いていた桃香はその言葉に興味を示した。
「どういうことですか・・・?一刀さんは・・・一刀さんは生きているかもしれないんですか!?」
まるで食いつくかのように簡雍に迫る桃香を韓程は宥めながら簡雍の後を継いだ。
「その可能性がある。ということよ。私たちは一刀君が亡くなったのを確認するために捜索をしているのではなくて、生きていることを確認したくて捜索してるからね。」
”生きている”その可能性が目の前に出た桃香の目には多少ではあるが正気が戻ってきたようだった。
「可能性でもいいです!生きている可能性があるのなら・・・!」
これでもう大丈夫だ。と判断した簡雍と韓程は桃香に別れを告げると帰宅した。
捜索は3ヶ月もの間進められたが進展はなかった。
進展はなかった。という報告を聞くたび、桃香はホッとした表情になり元通りとはいかないが、明るさを取り戻していった。関羽と張飛と名乗る2人の旅人が楼桑村に来たのはそんな時だった。
村長である簡雍に面会を申し出ると、その二人は暫くこの村に逗留したい旨と路銀を稼ぎたいので仕事を紹介して欲しい旨を伝えてきた。暫く簡雍は迷っていたが、年の近い娘なら桃香にいい影響を与えるだろうと判断し、桃香を呼ぶと世話をしてみないか。と持ちかけた。
「あ、大丈夫ですよ!よろしくお願いしますね!関羽さん!張飛さん!」
内心までは解らないが、少なくとも外面は大丈夫そうだと判断すると、簡雍は一刀の搜索に出かけていった。
更に3ヶ月の月日が経った。
どうやらあの旅人2人組は桃香と仲良くやっているらしい。互いを真名で呼ぶ3人をみた簡雍は、桃香にとって良い方向に転がった。と判断すると、日課となった搜索に出かけた。その日は少し下流に行ったところに岩に引っかかっていた上着を見つけた。それは一刀が愛用していた上着で水を吸って重くなっていた。ひょっとしたらと思い周囲を重点的に搜索したが、一刀は疎か死体も見つからなかった。そのことに安堵すると簡雍は村に帰還した。
上着を発見した日から暫くした日のことだった。
「簡雍様ー!た、大変です!」
村の若者が簡雍のもとに駆け込んできた。
「どうしたのだ。そんなに慌てて。」
滅多に慌てない若者が慌てていたので不審に思った簡雍は先を促した。
「ぞ、賊が!黄色い布を巻いた賊が大挙して隣の村に!」
黄巾賊。黄色の布を巻き立派に聞こえる題目を唱えながら略奪行為を繰り返すその集団はいつの間にかそう呼ばれていた。
「なんだと・・・次はこの村か・・・ならば迎え撃つしかあるまい!男衆を集めよ!武器庫の鍵を外せ!」
続け様に指示を与え、村の皆を広場に賊に対する対応を協議するために集めた。
「我らも助太刀しましょう!」「鈴々も頑張るのだ!」
桃香達3人も加勢してくれるようだ。2人に関してはかなりの腕だ。と感じた簡雍は2人と桃香に感謝すると村の皆に策を話し始めた。
「賊軍はこの村より少し離れた大輿山の麓に布陣している。賊軍は8千程だ。大軍・・・にはなるが所詮は賊軍だ。練度も低い。道すがら義勇兵を募れば兵差も縮まる。頭の首級を上げれば蜘蛛の子を散らすように逃げていくだろう。そこで我々は大輿山の山頂に布陣し、これを迎撃する。兵数の差はあれど、地の利は我らにある!必ず勝てるだろう。準備が完了次第出陣するぞ!戦えるものは武器を取り立ち上がれ!隣村とこの村を守るぞ!」
そう村人に号令すると、楼桑村に村民たちの大きな鬨の声が鳴り響いた。
はしがき
書き終わってから気がつきました。
アレ!人があまりからんでねぇ!
そ、そういうこともあるよね!
主人公出てこねぇ!どこいった!
そ、そういうことも(ry
関羽さんの喋り方忘れた!
よしプレイし直そう!
次回もよろしくお願いします。
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気がついたら5話目ですね。
あまりの中身のなさに悟った気になれるかも知れません。
主人公の霊圧が消えたSSハッジマッルヨー