No.561809

リリカルなのはSFIA

たかBさん

第八・五話 見てはいけない物

2013-04-02 01:58:34 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:6522   閲覧ユーザー数:5844

 第八・五話 見てはいけない物

 

 

 

 ファイル1。

 

 彼と私が遭遇したのは私が人では到達不可と言われた場所。虚数空間。

 そこからとあるロストロギアで脱出。これは彼が特異な存在。スフィアを有していたからだと推測される。

 スフィアは森羅万象を操る鍵。に、なり得る物。ならば、その力を行使すれば虚数空間と呼ばれたところからでも脱出はありえなくもない。

 更に彼の人間性はとても穏やかだ。だが、私は彼をすぐに信じるわけにはいかない。私には私の命以上に大切な存在がすぐそこにあるのだから・・・。

 

 

 

 ファイル7。

 

 彼との共同生活の中で私は、彼の人間性がだんだんと理解できるようになってきた。

 彼は欲が少ない人間だ。だが、故郷を思う心。家族を大事にするという心を持った人間だという事を。

 この2つは何よりも大切にし、何よりも優先しているようだった。

 彼と私は似たような存在だったから。

 帰りたくても帰れない。望みと現実の差をよく理解している存在。同志だったから。

 

 

 

 ファイル19。

 

 私は彼の人間性を全く理解していなかった。

 彼は自分の持つ唯一の力の象徴を私に。いや、私達に差し出してきた。

 なんの見返りも求めず。

 だが、それを彼は違うといった。

 彼は言った。

 ただの自己満足だと。

 彼自身よりも幼い、私の娘の為になるのならもっていってもいいよ。それで満足だから。と、

 それが彼と言う人間性だから。誇りだから。

 ああ、だからか。

 だから私の娘はこんなにも彼に懐いているのだ。

 彼が敵になるはずがない。彼が私達を傷つけるはずがないと感じ取ったのだ。

 

 

 

 ファイル41。

 

 娘が彼の事を私と同じくらいに好きだと言った。

 幼い子どもだからと思いながらも自分を甘やかしてくれる彼を、叱ってくれる彼を兄のように。兄以上の存在に感じ取っているのだと私は思った。

 それは自分を見てくれて、思ってくれることの表れだった。

 甘やかすだけではない、時には厳しく、だけどどこか甘い彼の事が娘は好きだと言っていた。

 その日。彼に頼まれた戦闘の特訓量を倍にしてしまったが、彼はなんとか耐えきったので問題ないだろう。達成は出来なかったけど・・・。

 

 

 

 ファイル43。

 

 「お母さん大好き~♪」

 

 と、娘から言われた。今日はとってもいい気分だ。きっといい日になる。今なら宝くじを買ったら一等賞は間違いなしだろう。

 

 彼の特訓の量も今日は…。

 

 「じゃあ、俺は?」「お兄ちゃんも()好き~♪」

 

 四倍だぁああああああああ!!

 

 私だってここ最近言われていない『()好き』を言われていないのに、彼のくせに言われるなんて生意気だ!

 

 

 

 ファイル44。

 

 昨日の訓練が堪えたのか、彼は真っ白になっていた。

 

 

 

 ファイル53。

 

 (以下、彼と記されている者が著者によって、たびたびしばかれていることが記されているので省略)

 

 

 

 ファイル324。

 

 彼からとある情報を聞かされることになる。

 それは自分が私達に害悪を与える存在。『放浪者』になるのも時間の問題だという事を。

 何かの間違いだと思った。いや、思いたかった。

 彼は私に生きる希望を与えてくれた。自分勝手に作り出した罪を、責め、許してもらう為に奔走した。

 それは私の娘の前で、そして見た目は同い年だが自分よりも子ども達の為に頑張ってきた彼を嘲笑うかのような事だった。

 彼に救われたのは私だけじゃない。

 私の家族。娘の友達。その家族。

 この世界を二度も救ってくれた彼を、世界は受け入れてはくれなかった。

 親しい者達を自分たちの戦いに巻き込む呪い(スティグマ)をばらまく存在。『放浪者』。

 彼は私達を巻き込まないように私達の前から姿を一度くらました。せめて、誰にも翻弄されずに好き勝手気ままに生きて欲しかった。だけど、世界はそんなことも許さなかった。

 いや、世界じゃない。彼自身がそれを受け入れることを拒否したからだ。

 彼が救ってきた私や娘の家族の中に自分と同じ存在になり得る存在がいたから・・・。私達は優しすぎる彼を縛り付けてしまうことになる。

 彼はその存在の者にスフィアの危険性を説いた。そして、自分が戻れないこともその時、私に話した。

 何よりも家族を大事にしてきた彼。そんな彼は誰よりも優しすぎて、いつもいつも他人であるはずの私達の為に、自分の心と体を傷つけてきた。

 そんな大恩を感じさせる彼は、それでも見返りを求めない。

 自分の事を大切に想い、自分がその人を求めることを。その誰かが傍にいることを。だけど、求めてはいけない。

 それは子どもの前では格好をつけたがる彼の前では。自分よりも幼い娘達に呪いを刻み付ける事嫌がっている彼を更に苦しめるだけだから。

 だから、私は。

 彼に救われた一人の人間として彼を救う。

 それに、娘の為にもなる。娘は彼の存在を誰よりも、何よりも大事に思っているだろう。だから、彼には娘の傍にいて欲しい。

 親の視線からも入っているが、それを抜きでも娘は(以下、自分の娘を褒め続ける文章が続くので省略)なので、私が誘導することで彼は虜になるだろう。

 今を持って、彼を娘の虜にするための計画を立てることにする。

 

 この計画を『隷従化計画』名づけることにした。

 

 これまでの彼との生活で彼は私達には逆らえないようになってきている。

 

 第二段階で彼の最優先事項を破壊し、私の娘を何よりも優先させる。

 第三段階で、・・・ふふふ。

 

 

 リニス視点。

 

 「・・・」

 

 見てはいけない物を見てしまった。

 プレシアに言われて部屋の片づけをしていたら、ミッドでは珍しい手書きのレポート用紙を発見してしまった。

 その中身が・・・。

 私はどうすべきか悩んでいると、ゼクシスに出動要請が来た。

 とある列車が謎のハッキングを受けて暴走。最悪、列車を破壊してでも止めなければ終点のある街の中を…。

 私は慌ててプレシアの部屋を出た。

 

 その一番下にあったレポート用紙。

 

 

 隷従化計画:破。

 ファイル1。再開。

 偶然を装い、娘と彼を部隊の誰よりも先に再開させて、好感度を上げる。

 

 

 と、書かれたレポート用紙に目を通すことなく。

 

 


 
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