No.559641

リリカルなのはSFIA

たかBさん

第七話 あっちでもこっちでも修羅場

2013-03-27 04:46:27 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:6383   閲覧ユーザー数:5570

 第七話 あっちでもこっちでも修羅場

 

 

 

 アサキム視点。

 

 ジェイルの求めているもの。超高エネルギー結晶体。レリック。

 今頃、チンクが回収しているといいんだが・・・。

 

 「ッ!隙あり!」

 

 ガァンッ!

 

 と、揺れる天秤のスフィアの力を乗せた剣の一撃を受けると、背後から高速で雷の剣が襲い掛かかってくる。

 

 「ジェット・ザンバー!!」

 

 僕はそれを自分が持つ剣。ディスキャリバーで受け止めようとすると、金の髪を持つ女性はその剣の性質を変えた。

 

 「ッ、ブラスト!」

 

 「・・・へぇ。少しはやるようになったね」

 

 実体のある魔力剣。その剣を象る魔力の殻を破り、ただの雷に変換した。

 剣で受け止めようとした僕の動作を見て、斬撃から収束砲に切り替えた。いわば、剣の刃をした収束砲をぶつけた彼女の成長に僕は少しばかり感心した。

 

 ズドオオオオオオオオオンッ!!

 

 その収束砲を受け、大爆発を起こした宙域から素早く離れた彼女達は未だに構えを解かずにこちらの方を警戒している。

まあ、当然だね。

 向こうもこの程度で倒れるほど僕が弱くないと重々知っているだろうから・・・。

 

 「…リミッター解除の確認。リニス。ギアを上げても大丈夫だよ」

 

 「了解です。フェイト。どんどんギアを上げていきますよ」

 

 向こうも準備運動を終えたようだ。

 それにしてもリミッターか。僕を目の前に随分と余裕だね。

 まあ、いいか。

 あちらが余裕を見せてくれるならそれでいい。僕はそれを正面から打ち破るまでだ。

 

 「・・・見ているかいジェイル。これが君の最大の障害。『傷だらけの獅子』が残した『白』を作る者達だ」

 

 「…ジェイルッ。貴様、ジェイル・スカリエッティを知っているのか!」

 

 へえ、彼女とは因縁があるとはいえ、名前を出しただけでこうも魔力の質が上がり、攻撃性も増した。

 

 「落ち着きなさい!フェイト!冷静さを失っては彼には勝てません!」

 

 『揺れる天秤』の忠告を受けて少しは落ち着きを取り戻したかのように見えた彼女だが、さらに揺さぶりを変えるとするか。

 

 「落ち着いていられるはずがないさ、『揺れる天秤』。何故なら」

 

 「・・・やめろ」

 

 「プロジェクトFの原案者。ジェイル・スカリエッティ」

 

 「言うな」

 

 「自分の親(・・・・)を忘れる事なんて出来るはずがないのだからね」

 

 「言うなぁあああああああああああああああ!!」

 

 ガシュンガシュンガシュンガシュンガシュン!!

 

 [オーバードライブ!イグニッション!]

 

 雷の大剣から幾つもの薬莢を吐き出させながら、金色の雷を体全体から放出させた少女は『揺れる天秤』の制止を振り切って突撃してくる。

 

 「ウオオオオオオオオッ!!」

 

 一閃の金の光が僕に向かってくる。

 ジェイルは言っていたな。彼女は出来るだけ殺さないように、と。

 …でも、悪いね。彼女を殺す。もしくは殺そうとすれば『揺れる天秤』の内心は揺さぶられ、『悲しみの乙女』は悲しみ、『傷だらけの獅子』も心を痛めて、その力を更に上へと昇華させるだろう。

 僕は少しでもスフィアを手に入れる可能性を上げるためにも・・・。

 君の欲したサンプルを全力で殺そう。

 

 

 チンク視点。

 

 チンクは暴走を続ける列車の上でティアナ達四人を追いかけていた。

 魔力で足腰を強化し、風に吹き飛ばされることのないようにバリアジャケットを展開した少女チンクは戦闘機人と言ういわばサイボーグのような存在だ。

 そんなチンクがガジェットの支援があるのに未だに四人に追いつけない理由があった。

 

 「目標の(ブツ)は手に入れた!撤収ぅううううう!」

 

 「ま、待て!貴様等!私を捕まえなくてもいいのか?!」

 

 オレンジ色のツインテールと青髪鉢巻の女が私とガジェットの足止めをしている間に赤髪とピンク色の子どもがレリックの入ったケースを手に入れると同時に私やガジェットから逃げるように列車の一番後方の車両に逃げ出す。

 

 「私達の目的は世界を滅ぼす可能性があるレリックの回収!無理に戦う必要はないわ!エリオが先頭、スバルを殿、キャロと私が真ん中でフォローをするわ!列車の一番後ろに移動しながらなのはさんとアリサさんが来るまで逃げ切るわよ!」

 

 くそっ!なんて的確な指示だ!その少しでも彼女の意志が戦いに向かえばいいが最初の数合。それだけでティアナとか言うツインテールはレリック確保までは足止め、確保後は撤退に全力を注いだ。

 

 「公務執行妨害とかで捕まえなくていいのか!?」

 

 「それはなのはさんかアリサさんがやるわ!容赦なくピンクの光に貫かれるといいわ!」

 

 あれか?!

 管理局では悪魔砲とか、荷電粒子砲とか、非殺傷設定詐欺砲とか呼ばれているアレか!?

 

 (ナイスよ、ティアナ!もう射程内範囲だからがんばりなさい!)

 

 アサキムとチンクが現れた時、リニスはすぐに指示を出した。

 一番自分とコンビネーションを合わせやすいフェイトと一緒にアサキムを足止め。

 空中戦のエースのなのはが空中を飛行するエイのようなガジェットⅢ型の殲滅。

 そして、一番ガジェット対策で有効打が打てるアリサがティアナ達との合流を担当していた。

 

 くっ、的確過ぎる指示だ。

 アサキムへの足止めが少しでも少なければ彼女達は十分もしないうちにやられてしまうだろう。

 なのはがガジェットの遊撃に向かわなければフェイトやティアナ達はガジェットの増援が来て物量で押し負ける。かといって、アリサが向かわなければティアナ達がやられるのも時間の問題。

 ティアナ達が逃げに徹しているからこそ、この均衡が保たれている。

 

 「くっ、IS!ランブルデ」

 

 「キャロ!私にブースト!」

 

 「はいっ」

 

 キャロに魔力増強を支援してくれたので、ティアナはいつもより多く、そして強力な魔力弾を放つことが出来た。

 

 「シュート!」

 

 ティアナの魔力に反応してガジェットがチンクとティアナ達の間に割り込んで透明な壁。

 魔力を中和するフィールドを発生させて中和する。が、それは同時にチンクの攻撃の軌道も潰していた。だが、ガジェットがチンクの前に出てこなければティアナの攻撃を受けていた。

 

 「そのままブーストをし続けて!エリオとスバルはこのまま私達の周囲を警戒し続けて!」

 

 「はい!」

 

 ティアナは魔弾を打ち続け、それをキャロが支援し続ける!

 このまま打ち続ければティアナかキャロのどちらかが疲弊するだろう。

 

 (このまま魔力を消費させていれば・・・)

 

 と、考えていたら。

 

 ビィイイイイイイッ!

 

 突然の警告音にチンクが振り向くとそこには列車の天井の一部と思われる瓦礫があった。

 

 「なっ?!」

 

 どががっ!

 

 比較的巨大なガジェットⅡ型がチンクに向かってきた瓦礫の盾になって直撃を防いだ。

 

 「ちっ」

 

 それを見たティアナは舌打ちをした。

 チンクに向かって撃った魔弾の他に見えないように、チンクのを迂回した魔弾は先頭車両の天井を破壊した。

 その瓦礫がチンクを襲ったのだ。

 

 「今の瓦礫は貴様か?!てか、舌打ち?!今のが当たっていれば死んでいたぞ!」

 

 「そんなもの世界を滅ぼすかもしれない代物の確保に比べたら安いもんだわ!それで始末書ですむなら御の字。下手しても懲戒免職程度で済む!」

 

 「代償が多すぎるよティア!」

 

 「世界が救われるなら安いものよ!」

 

 「さすがティアナさん!かっこいい!」

 

 「そこにしびれる!憧れるぅうう!」

 

 「やってのける!て、何を言わせるの!」

 

 ノーマークだったオレンジ色の女はかなりの曲者だった。というか、思い切りがよ過ぎた。ある意味かえりみないという考え方は相手にとってこんなにもプレッシャーをかけるとは・・・。

 

 そして、

 

 「よくやったわ皆!あとは私に任せて!」

 

 特別派遣チームゼクシスが一人、アリサ・バニングスがティアナとチンクの間に降り立つ。

 

 「お前は…。博士のガジェットを山というほど打ち砕いた燃える女!」

 

 「バニングスよ!アリサ・バニングス!」

 

 「…アジサバ。ニンニク?」

 

 「あんたまでそれを言うか!」

 

 アリサの持つフレイム・アイズに紅蓮の炎が灯る。

 その熱量にチンクは顔を引きつらせる。

 

 「やめろニンニク!危険な香りがする!ここにはレリックがあるんだぞ!何かしらの衝撃で引火したらどうする!」

 

 「世界を滅ぼしてでもあんたを倒すわ!」

 

 ドッゴオオオオオオ!

 と、フレイム・アイズだけでなくアリサの全身も燃え上がっている。

 

 「お前は管理局員だろ!」

 

 「私はゼクシスよ!世界を守るのなら世界を滅ぼすわ!」

 

 「「「「「前後で思いっきり矛盾しているから!!」」」」」

 

 アリサの言動にその場にいた全員がツッコミを入れた。

 

 

 高志視点。

 

 さて、プレシアから非常用の連絡を受けて終着駅から百五十キロの地点でガンレオンをセットアップして待機していた。

俺は最終防衛ラインで待機していた。

 レンチとスパナで線路をいじって、脱線狙い。

 無人の列車だからひっくり返しても止める。幸いこの地点付近は無人の荒野だ。

 

 「・・・なんでだろう。不安しか残らないんだよな」

 

 とりあえず、スパナでボルトを外して、レンチでレールを曲げて。あ、ここはスパナか?

 

 「と、スパナスパナ」

 

 「ぎー」

 

 一度置いたスパナをもう一度拾おうとすると、チビレオンから手渡しでスパナを受け取る。

 

 「おお、サンキュな」

 

 トンテンカンテン♪トンテンカンテン♪

 

 「次はレンチ。と…」

 

 「はい♪レンチ」

 

 と、今度はライトグリーンの膝上のスカートに肩出しの可愛らしい上着に白衣のようなマントを羽織っている新しいバリアジャケットを着こんだアリシアからレンチを受け取る。

 

 「おお、ありがとうな。アリシ…ア」

 

 「うん♪」

 

 「・・・」

 

 「・・・」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 「あ、あの・・・」

 

 「今は仕事中だし、失敗した時の被害も甚大だから今は私情は挟まないよ♪だけど」

 

 [バスターライフルモード]

 

 ジャコンッ。

 

 と、アリシアの目の前に二メートル近くの機械じみたライフル銃が現れる。

 

 「だけど、逃げようとしたら、設定上ガンレオンの装甲すらも撃ち貫くライフルで兜部分を撃ち抜くから」

 

 やだな、機械じみた首なし鎧(デュラハン)になんかなりたくない。

 

 「い、イエッサー」

 

 魔法世界ミッド。

 あっちでもこっちでも修羅場になっていた。


 
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