安らかで植物のような心で送る平穏な暮らし
彼の目標は常にそれであり、そのために努力を惜しまない性格のとても几帳面な人間であった、人同士のトラブルは勿論これまでに起こしたこともなければ、人とはなるべく必要最低限に関わり、今後とも、そういった自分に踏み込む関係は作るつもりもない
一月三十日生まれ、A型、「平穏な生活」「植物の心のような生活」「安心した生活」といった平穏無事に生きることを信条としており、この世で最も嫌いなものは「争い」。但しこれは「平穏な生活を目指す自分にとって、争いは面倒事の種でしかない」という考えによるものである、
純粋な平和主義から来る考えではない。「もし」戦えば誰にも負けないという確固たる自信はある、だが、彼の幼少の頃から自宅に置かれたトロフィーや賞状はすべて3位のものであり、しかも自分が何を得意とするのか他者に特定させないため、様々な分野の賞を意図的に取るなどしていた
結婚はしていない 仕事は『カメユーチェーン店』の会社員で毎日遅くとも夜8時には帰宅する タバコは吸わない、酒はたしなむ程度 夜11時には床につき必ず8時間は睡眠をとるようにしている 寝る前にあたたかいミルクを飲み、20分ほどのストレッチで体をほぐしてから床につくと ほとんど朝まで熟睡、赤ん坊のように疲労やストレスを残さずに、健康診断でもハゲは無しと言われる、完璧な生活を送る
彼の名前は吉良吉影、ただ一つだけ、人とは違うところといえば…
「…美帆さん今日の晩御飯は…何にしようか…うん、君がそういうのならそうしよう…」
その人間として外れている狂気、彼はいままで誰にも悟られることなく殺人を行ってきた、目撃者や自分の本性を知った人間も当然、消した、跡形もなく
手首だけを残して後の部位を全て残らず消滅させ証拠を決して残さずに幾人の女性の命を平然と狩ってきたのだ、まさに殺人鬼、その素行は自分自身の変わった性癖と殺人衝動によるもの、そんな彼にはそういった事が続けることができる力があった、それは…
「…ふむ、少し臭ってきたか…この女ともそろそろ別れ時かな、手を切る時期か…『手を切る』…クククク…またどこかで新しい女の子でも探すか…、」
彼は独り言の様にそんな言葉を呟くと自分の持っていた『ある女性の手首』を空中に投げる、そしていつもの作業の様に何事もなく証拠の消滅として自分の力であるその者の名前を呼んだ
彼もまた普通の人間とは違うある力を有していた、平穏な暮らしを求めた彼が快楽殺人の証拠隠滅と“平穏な生活”を守るために生まれた者である
「キラークイーン…、その手を跡形もなく消し飛ばせ…」
彼の背後から大きな人型のビジョンが現れ、吉良が捨てた女性の手首にその名前を呼んだビジョンが触れる、そうベルトのバックルをはじめ、身体の各部にドクロの模様がありその姿は猫の様な外見にも見える
スタンド、そうこの吉良吉影という男もまたスタンド使いと言う人間の一人であったのだ
「…美帆さんあなたと過ごした時間は楽しかったですよ、そしてさようなら…」
彼は綺麗に吹き飛んだ手首を目視で確認するといつも通りの帰路へとつく…
杜王町からこの町に転勤と言う意味のわからない上司の指示は最初は無性にむかっ腹が立っていたのだが、ここもそんなに悪くはない、むしろ杜王町より手首の綺麗な女性が沢山見かける分こっちにきて良かったと最近感じる様になってきた
平穏な暮らしもここなら出来そうである、特にこれといって憂いもないし今夜もまたゆっくりと熟睡できるな…
彼は暗闇の中にその姿を消していった、その狂気は止まることを知らない
ところ変わって、ここは夜の神社
塚本八雲を連れ出した仗助は彼女になぜ自分と億泰のスタンドが見えているのかそのことについて詳しく教えてもらうためにこの場所に彼女を連れてきた、なぜだかわからないが走ってきたせいで息が切れているため仗助は呼吸を整える
「だ、大丈夫ですか…えっと、仗助さん…」
無理やりこの神社まで連れてこられた八雲は何故か心配そうに仗助の背中を擦っていた、彼女は姉同様に恐らく心やさしい性格の持ち主なのだろう、まぁ彼女のこれまでの行動や言動を見るに自分たちに対して敵意のあるスタンド使いではないことはわかる
彼女はとりあえず彼が息を整えるのを待つことにした
(それにしても…この人の髪の毛…姉さんの話には聞いてたけど…)
改めて見ると凄い頭だなと八雲は思った、しかし、彼は頭の事を触れられるとメチャクチャに怒ることも彼女は勿論、天満から聞いているそのために触れることは決してしようとは思わない、
そういった気遣いもできるところもこの塚本八雲だからであろう、なにか仗助が髪型について特別な思いれでもあるのを察するところができるのは流石である
顔に不釣り合いな髪型が気になるのは仕方ないところではあるのだが…
それからしばらくして呼吸を整えた仗助は、改めて連れ出した八雲の方へ振り向き自分のスタンド、クレイジーDを発現させてどうしてこのスタンドが見えるのか質問を投げかけることにした
「…急に家から連れ出していきなりの質問になるんで失礼かもしれないんですけど…、妹さん、アンタは確かにこのスタンドが見えるんッスよね…間違いないっスか?」
「え…、そ、そうですけど…」
仗助の眼は真剣そのものだった、なにやら自分が言った先ほどの事柄に対しての疑問を明確にしておきたいといった具合に改めて先ほどと同じ事を聞いてくる、それほど重要な事柄なのだろうか…
だが、八雲にははっきりと見えていた、大きな体格の人型のそれは体のいたる所にハートマークがあしらわれており、頚部に数本のパイプの様なものが見られる
詳しくその外見とスタンドについての感想を八雲は包み隠さず素直に仗助に伝えた、別に隠すことでもないしそれがこの問題の早い解決の道筋になるとわかっていたからであろう
仗助は不思議そうな表情を浮かべた、実に奇妙である明らかに彼女はスタンド使いって感じの人間ではない、どうみても一般人、綺麗な容姿と物腰をしてはいるがそれは間違いない事である
仗助は彼女がスタンドを知覚できる原因を頭の中で模索するが余計に答えが出ず深くその場で考え込む、
そんな時だ、彼女はうっすらと自分が人とは違うあることに気が付いた、それはいつごろの事であっただろうか、確か高校に入ってからだろう自分の事が気になっている異性の心の中が見えるという能力だ
異性の心を読めてしまう彼女はそれゆえか今まで好きな人は一度もいないし、男子と付き合いたいとは一度も思った事は無い、というか思えなかった
八雲は思い出したその事柄を仗助に淡々と打ち明け始めた、
「…仗助さん…実は…」
「ん?なんっスか?何か思い当たる事があったんッスか?」
打ち明けようとする彼女の言葉に静かに耳を傾ける仗助、この能力について打ち明けられる理解者はいままでいなかった、こんな話をして信じてもらえるなんて思っていなかったから、自分は異端であると思ってた
しかし、仗助は彼女の言葉を静かに聞いて、彼はまったくそのことについて疑おうともせず、ましてやくだらないと言葉に出すことは一切なかった
それどころか、彼女がその能力を持つが故の苦悩をなんとなくだが理解しているようなそんな面持ちで全ての話を聞き漏らすことなく聞き取っていた、人の気持ちを知ることができるのだそのうちに秘めるどす黒い感情なんかも幾らか見てきたに違いない
仗助はなんだが暗い面持ちで話を打ち明けてくれた彼女に言葉を送り始める
「…そいつァ…辛かったッスねぇ、俺も同じ様なコイツがあるんで気持ちは良くわかりますよ…」
「…仗助さん…」
仗助のその言葉にやっぱり話して良かったなと感じた八雲はその事に対する嬉しさか、うっすらと笑顔を浮かべる、その表情は美しくどこか儚げに見えた
しかしながら、それでは塚本八雲、彼女がスタンドが見えるというのは、スタンドが心を見るというものであるからなのか…いや、それはなんだかおかしい気がする、もしかするとこれは別の何かが作用しているのではないだろうか…
仗助は頭の中でこれまでに聞いた八雲の話を整理してみる、
彼女は自分に好意をもった相手の心を覗くことができる、しかしながらこれはスタンドが見えるという要因の一つにはなり得ない、なぜならこれは彼女自身が望んだ精神により発現したスタンドというものとは別のものだからだ
ならば、何が彼女に自分達のスタンドを知覚させているんだろう、
そう仗助が八雲についての話をまとめて改めて疑問に抱いた事柄について深く考え込もうとした矢先であった
『それはね…私がそうさせたのよ…東方仗助…』
ふと、神社の本殿の様な場所から声が聞こえた様な気がした、いや間違いなく仗助の耳にその声は確かに聞こえていたのだ
仗助はクレイジーDを発現させ、先ほどまで話していた八雲を自身の傍に引き寄せ、なるべく敵からの攻撃に備え身構える、その光景は、はたから見れば仗助が八雲を抱き寄せているようにしか見えないのだがこの状況で仗助はそういった事を一切気にしない
仗助に寄せられた八雲は仗助との顔の距離に顔を赤くする、近い、近すぎる、けれども状況が状況であるがゆえにそんなことも言えない
警戒心を強めている仗助の真剣な表情を見てもそうだが気にしたら負けなのだろう、八雲はそう思い、顔を赤くしたまま沈黙することに決めた、男の人の胸板ってこんなに厚かったんだと彼女が内心でつい思ってしまったのは秘密である
しばらくして、仗助は姿をなかなか見せない声の主に向いクレイジーDを発現させたままこう脅しをかけ始める
「…誰かは知らねーッスけどねぇ!コイツの拳でボコボコにされたくなかったら早く姿を見せんのが得策だと思うんっスけどーー!!」
勿論、これは安い挑発だ、乗ってくれば別に問題ないし乗らなくても他の策は練ってある
しかしながら、これは『人間であったら』の話だ、彼はこの時自分が声を発した者がまさか人間ではないという事を視野には入れていなかったのである
声の主は仗助たちの目の前にまるで浮かび上がる様にその姿を現し始める、そう宙に浮きながら…
その容姿と身体は十代ぐらいの少女のもの、彼女はこの世の者ではなかった、そう恐らく今でいう幽霊と言うやつであるのだろう
「…あ! あなたは、あの時の…」
そういって、少女の姿を目で確認した八雲はつい声を溢す
しかしながら、彼女が幽霊であるというのに東方仗助、塚本八雲の二人は彼女を真近で見たというのにも関わらず、全く驚いたような素振りを見せることはなかった
常人なら幽霊なんて非科学的でオカルトなものに遭遇しただけで発狂しその場から一目散に逃げるのが普通なのであろう、だがしかしこの二人がここまでこの幽霊と言う存在の登場にそこまで驚かないというのには訳がある
まずは東方仗助、彼はまずこの町に転入してくる前に杜王町で杉本鈴美という女性の幽霊の存在を知っているし実際に見たことがある、なので幽霊と言っても全く恐怖を感じない自分もスタンドなどという力を有しているためにそこまで驚くに値しないのだ
続いて塚本八雲だが、どうやら彼女はこの幽霊と面識があるらしい、その証拠に彼女が姿を見せた時に一度出会ったことを思い出したかのような口ぶりであった
二人の前に姿を見せた幽霊の少女は仗助と八雲を見据えて淡々と話をし始める
『成程ね…杉本鈴美が言ってたスタンド使い、貴方の事だったんだ…それにしても私にまったく驚かないのね、少し寂しいわ…』
「…生憎慣れちまったんで…へぇ~それにしてもアンタ、杉本鈴美の事知ってんッスか」
何事もなく返してくる仗助の言葉に思わず、驚いた表情を見せる少女の幽霊、この時には八雲と顔見知りであるということで仗助は彼女に対する警戒心を既に解いていた
しかも杉本鈴美の事を知っていると言っているとこからすると、彼女は鈴美と面識があることが窺われる、あの幽霊なんだかんだ言ってこういうところで意外と顔が広いんだなと仗助はこの時、素直にそう関心させられてしまった
彼女から謎の女性失踪事件の事について聞けるかもしれない、仗助は少なくともそう考え彼女に話を聞く方向に持ってゆくことにした
まずは、八雲がスタンドを知覚できる理由、これについて仗助は彼女に質問を投げかけるみる
「さっきの話ッスけど…スタンドを妹さんが知覚できるってぇどういう事っスか?」
『…ふーん、意外と順応性があるのね貴方…、いいわ、教えてあげる…、これは私の能力…ってとこかしらね、見えないものを他人に知覚させれるっていう…』
幽霊の少女は仗助が投げかけた質問に対して何も抵抗がなさそうに平然と答えた、彼女にとっては隠す必要もないし別に答えても構わない、取るに足らない質問だったのだろう
続いて、八雲が幽霊の少女に対してなぜ自分にスタンドを見えるようにしたのかそれについての質問を彼女に投げかけはじめる、もっともその質問の仕方がどこかぎこちなかったために幽霊の少女に途中で拾ってもらったのだが…
「なぜ、貴女は私に…その…」
『東方仗助と虹村億泰のスタンドを見えるようにしたか…でしょ? それはね、貴女に今後、襲い掛かるかもしれない狂気から守るためって言ったら…信じる?』
幽霊の少女はそういって可愛らしく首を傾けた、
しかしその行動とは別に彼女の口から驚くべきことを耳にした二人は瞬時に眼を見開く、今後、襲い掛かる狂気、それは間違いなくあの女性失踪事件の犯人の事なのだろう、少なくともいまの少女の幽霊の言動からそいつがこの町に潜伏していることがわかる
それらを察した仗助は思わず少女の幽霊の顔に視線を送る、彼女は仗助のそれに応えるように静かに頷き、この町で起きている狂気の出来事について語り始めた
その男がどういった性癖の持ち主なのか、そしてどんな風に人を消し飛ばして殺しているのか、自分が幽霊でいる間に幾つもの魂が空のかなたに消えて行ったのか…
恐らく杜王町にいる杉本鈴美も自分と同じ光景を見ていると少女の幽霊は仗助と八雲に話した
だから、自分の力で八雲の身からせめてそのスタンド使いの狂気だけを知覚させ、逃げさせてやろうとしたと幽霊の少女は語る、話を黙って聞いていた仗助は悔しさか堪らず気が付けば自分の握り拳を力強く握り締めていた
このままだと、もしかすると、あの自分のクラスの奴が、いや、下手をすれば天満を含めたあの四人がそいつの標的にされるかもしれない
幽霊の少女から話を聞いた仗助はそんな不安で心がいっぱいであった、そんな仗助の横顔を八雲はどこか不安げな表情で見つめる
だが、そんな仗助の心を察してか幽霊の少女はある提案を仗助に持ち駆けだした
『それで、提案なんだけど東方仗助…、私の能力でその殺人鬼がこの町にいる間、貴方の近くの人間に、そのスタンドという奴を知覚できるようにしたら…どう…?』
仗助はその少女の幽霊の言葉にピクリと微かに反応を見せた
確かに周りの奴にスタンドがわかる様になれば危機的な状況になった時に少しでも生存できる可能性が上がるかもしれない、しかし、それによって引き起こされる危険もある、殺人鬼の場合、目撃者を消したがる筈だ、もし、そうなったときに自分のクラスの奴がたまたまそいつのスタンドの姿を目撃して消されたりしたらどうする
だが、仗助はこの時思いのほかこの少女の幽霊の提案にメリットが大きいことに気が付いた
スタンドが知覚できれば、新たなスタンド使いが出てきてもどんな奴なのかもしかすると今まで以上に情報網が広がる可能性が出てくる、一般人を巻き込めないとは思っていたが自分はこの町の人間じゃないし何事にも協力者が必要だ、なりふり構ってはいられない、既にこの天満の妹である八雲も巻き込んでいるのだ
仗助は色々と考え抜いた挙句に導き出した結論を幽霊の少女に伝える
「…そうっスね…とりあえずやってみましょうか…だけどスタンドが知覚できるのはあくまで俺の近くの人間だけっス…それなら多分、大丈夫だろうし…」
自分の知り合いからは絶対に自分たちのスタンドの情報が漏れるとは思えないしこれならある程度の防犯の一選として間違いないだろうと仗助が感じて出した答えであった
少女の幽霊はその仗助の言葉に頷き、静かに自分の瞳を閉じて何か言葉を発する、それに呼応するように彼女の髪の毛が奇妙な動きをし始め、伸びた
『ワン・ナイト・オンリー、…これが私の能力、貴方たちはスタンド能力って言ってるんだったわね、東方仗助』
そういって、彼女は奇妙な力を仗助たちの目の前で使って見せた
成程、八雲がスタンド使いではないはずなのに億泰も自分もスタンド使いの気配がして妙に警戒していたのは、八雲にこの少女の幽霊の力が変に作用していたせいだったのか、仗助は彼女が能力を発動したのを目の当たりにして納得してしまった
能力をひとしきり使い終えたところで彼女はゆっくりと長くしていた髪の毛を元の長さにへと戻し、仗助と八雲の両者を見据えてふと優しい笑みを溢した
『…八雲、せいぜい彼にちゃんと守って貰いなさい、それじゃあ私はもう行くわ』
「あ、あの…それって……」
「もちろんだ!任しといてくれよー!、いろいろありがとうなァ!たすかったぜーッ!」
神社の暗闇へ消えてゆこうとする彼女の立ち去り際に残した言葉に動揺したようにおもわず声を上げる八雲、それに対して仗助はまったく気にした様子もなくむしろドンと大船に乗った勢いで任しとけと言った言葉を彼女に送る
そうして暗闇の中に彼女が消え、完全に見えなくなったところで、仗助はようやく一段落ついたと深い溜息を吐いた
それにしても、八雲がスタンドが見える理由がまさか幽霊である彼女のものであるなんて思いもしなかった、世の中には本当に奇妙な出来事があるものだなと改めて感心させられる、
何はともあれ、とりあえずこれで八雲が敵スタンド使いでもない事が証明されたし、自分や承太郎、そして億泰が追っていたスタンド使いの情報も手に入れることができた、これで殺人鬼の情報をこれからも集めてゆけば弓と矢の捜査の方にも繋がってゆくかもしれない
仗助は一安心した表情を浮かべてとりあえず飛び出してきた塚本宅に戻ろうと八雲に提案すべく彼女に声を掛けようとした
「…あり…?」
だが、彼が八雲が居たであろう場所へ振り返った時には既に彼女の姿が消えていた、仗助は豆鉄砲を食らったハトの様に目を丸くし、つい間の抜けた声を溢す
さっきまで一緒にいたのに一体どこに消えたのか、しかも今ばかり殺人鬼がどうとかあの幽霊から話をされたばかりではないか、
すぐさま、神社の周りを見渡し彼女の姿を探す仗助、だが、どうやら思ったよりも早くその彼女の姿は仗助の視覚の中に入ってきた、
ちなみにどこにいたかというと何やら現在進行形で木の上に登っている、何をやっているんだとつい頭を押さえる仗助だが、木に登る彼女の視線の先に木に登って降りれなくなった黒猫の姿を見つけすぐさま状況を把握した
なるほど、心やさしい彼女の事だ…大方、木に登って降りれなくなった黒猫を見つけて助けようと自身が木に登ったのだろう
仗助はすぐさまその木の傍に近寄り、危なっかそうに猫を助けようとする彼女を下から見守る、というより猫が乗っている木の枝が既に体重に耐えかねて折れそうになっている
そうして、しばらくしない内にパキリと音を立てて折れる猫の乗った木の枝
「…………あ!…」
「…ッチ!! やっべー!!」
折れた木の枝に乗っていた猫を助けるために身を挺して飛び込みその身体を抱きかかえる八雲、しかし、なにも掴まずに飛び込んだせいで、重力に引かれその身体は地面にへと自由落下をしはじめる
それを早くに悟った仗助は彼女の落下地点を読み取り、急いでその場にへと彼女の身体をキャッチすべく見事なスライディングをかます
ドサリ、と見事に仗助が構えた両手の中に入る八雲の身体、仗助はふうと言った具合に間に合った事に安堵の声を溢す
そんな、仗助と助けようとした八雲の気持ちを知ってか知らずか彼女の腕の中に抱えられた黒猫はひょっこり顔をだしのんきにニャーと声を上げている
猫の声を聴いて八雲は何かに気付いた様にあ…、と声を溢した
「……猫って心の中でもニャー…なんですね」
「…猫っスからね…まぁ、猫が人の言葉喋ったら流石に俺でも怖いっス」
そういって木から落ちてきた八雲を抱きとめた仗助はクスリと八雲の呟きに対して思わず笑いを溢し、やれやれといった具合に八雲の無事が確認出来た事に対して胸を撫で下ろす、別に八雲が猫を助けたことについて彼は全く気に留めていないような口ぶりであった
仗助に抱きとめられた八雲はようやくここで自分が彼の腕の中にいる状況を理解し顔を赤くして慌ててそこから立ち退く
「ご、ごめんなさい!…あ、あの!!」
「気にしなくてもいいっスよォー!妹さん!俺ぇあーゆーの満更嫌いじゃあないっス! んじゃ、塚本の家戻りますか、そいつ連れて」
仗助はそういって八雲に抱きかかえられた猫を指さしてそういった、どうやら見た感じ野良猫であるし数秒もしない内になにやら八雲に懐いているようであった
仗助は面倒だしそいつを飼った方が早いんじゃないかと八雲に助言する、天満への説得も協力するからどうだと彼女に告げた
「わかりました…それじゃ、この子連れて帰ることにします」
「んじゃあ、とっとと帰りますかねぇー」
そういって神社から一匹の猫を連れて階段を下りてゆく二人、その姿ははたから見ればなんだかお似合いのカップルの様にも見える
月夜に照らされる仗助と八雲
そして、この町にはびこる狂気、女性失踪事件の犯人であり今もなお何処かで女性の命をその手に狩り取っているだろう殺人鬼の影
恋愛とサスペンスの螺旋はまたこうして新たな物語を紡ぎ始めた
………TO BE CONTINUED
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市杜王町に住む東方仗助、虹村億泰はある日を境に空条承太郎からある高校に転入し、スタンド使いの捜査を頼まれることになる、杜王町から離れての高校生活に不安を抱える仗助はそこで一つの出会いを果たしてしまった、そうそれはスタンド使い同士が引き合うような運命のように…
ラブコメにジョジョという無茶な設定ではありますが楽しんでいただけたらなとおもいます