その昔、一人の男の手により妖精戦争とう争いが起こった。
その争いにより数多くの死が生まれ……
数多くの希望が死んだ……
青き英雄――エックスの手により、その永遠とも思えた争いには終止符が打たれた。
誰もが戦争は終わったと喜び、希望を積もらせた。
だが、戦争は終わっていなかった……
今……全ての悲しみが終わりを向かえようとしていた。
ラグナロクと融合をはかり、ロックマンゼロとの最後の戦いを挑むドクターバイル。
だが、ゼロの……
いや、地球全ての怒りをその胸に宿したレプリロイドの目はドクターバイルの奇策など、こけおどしにもならなかった。
「ゼロ……ワシを……殺すか!? レプリロイドでない……人間のワシを殺すか!?」
「……」
ラグナロクとの融合に苦しみにもがくバイルの叫びにゼロはゆっくりと閉じていた目を開けた。
「貴様は……」
ゼロの目がバイルの醜き醜態を映し出した。
「貴様は……ただのイレギュラーだ……」
「ッ!?」
その瞬間、バイルの脳裏に燃えさかる廃墟に一人たたずむイレギュラーハンターの姿が映った。
忘れかけていた悪夢……
自分をこのような呪われた姿にした張本人……
バイルの心に恐怖に似た深い憎しみが咆哮となってゼロに襲い掛かった。
「き・さ・ま~~~~~~~~!」
バイルのコアクリスタルが光を集め、ゼロに最終攻撃を仕掛けようとした。
「……」
だが、その瞬間、ゼロの動きがゆらりと倒れるように消え……
「ッ……!?」
気づいたら、エネルギーを集めていたコアクリスタルにゼットセイバーが突き刺さっていた。
「終わりだ……」
ゼットセイバーを抜き放ち、ゼロの身体が残影を残すように消え、下の場所へと戻っていた。
その一瞬の出来事にバイルは絶望したように声が震え上がった。
「この……このワシが……このワシが……」
コアクリスタルから、いくつもの刺さるような閃光が走り……
「こんなムシケラごときにーーーーーーーーーーーーーーーー!」
黒い煙を撒き散らし爆風を上げるバイルの残骸ゼロは安堵したように軽い吐息を吐いた。
だが、これで終わりでなかった。
バイルというコアをなくしたラグナロクはその制御を失い、地球と言う引力に吸われ、落下しようとしていた。
ゼロの周辺にいくつもの凄まじい爆音を響き、ゼロはまた目を瞑った。
「……これで、すべて終わる」
その瞬間、ゼロの脳裏に一人の少女の姿が映った。
明るく……
健気で……
そして、強かった一人の少女の顔を……
「シエル……さらばだ……」
死を覚悟したゼロの背後に淡い光が集まってきた。
「それでいいのかい……ゼロ?」
「エックスか?」
こちらを振り向こうともしないゼロにエックスは躊躇うように言った。
「これが君の答えかい?」
「……」
「これが君の望んだ事かい?」
「……」
「君の帰りを待っていてくれる人を残して死ぬ事が君の望みかい?」
「……」
言葉を発しようとしないゼロにエックスは自分を責めだした。
「全ては僕の不手際だった……ダークエルフを封印するためとはいえ、君に辛い運命をあたえてしまった。 そして、今はたった一人の少女の願いすら壊そうとしている……とんだ英雄だよ、僕は……」
「…………」
自嘲するエックスにゼロはそっと目を開いた。
「俺は…………」
ゼロは一瞬、言葉をためらい、自分に言い聞かせるようにいった。
「俺は……シエルを信じる」
「……ゼロ」
目の前に広がる青い地球を見つめゼロはやさしく微笑んだ。
「シエル……」
最後に浮かぶ、最愛の人の顔を思い出し、ゼロはまた目を瞑った。
「ありがとう……」
ゼロの周りに白い閃光が広がった。
噴水の吹き上げる公園のベンチでシエルは眠たそうに青い空を眺めていた。
スローモーションのように流れる白い雲……
それを助けるわずかな微風……
シエルの心に一人の青年の姿が映った。
「あれから……三ヶ月か?」
ボソッと出てしまった言葉にシエルは驚いたように口を押さえた。
シエルの行動に隣で眠っていたアルエットも退屈そうに顔を上げた。
「おねえちゃん……ゼロ帰ってこないね?」
「そうね……」
シエルは寂しそうに目を細め、また空を眺めだした。
「ゼロ……どこに行っちゃたのよ」
空にゼロの顔を思い描きながらシエルは深いため息を吐いた。
その瞬間、街のほうから凄まじい爆音が轟いた。
「え……!?」
「なに!?」
突如、響いた爆音にシエルとアルエットは驚いたように振り返り、目を見開いた。
「あれは……!?」
シエルは自分の目を疑った。
そこには芋虫に足をつけたような気持ち悪い形をしたアリ型のメカニロイド『ファイア・レイナント』が無差別に街を破壊していたからである。
「な、なんであれがここに!?」
シエルの顔が真っ青に染まった。
ファイア・レイナントはアルカディアを復興する際、全て破棄されたはず。
もしかしたら、無人で動いていたメカニロイドが任務を見失い暴れてるのかもしれない。
その光景にシエルは絶望したように膝を突いた。
「ようやく、ここまで取り戻したのに……」
どんどんと破壊されていく街……
響き渡る人々の悲鳴……
そして、傷ついていく人間とレプリロイド……
そんな地獄のような光景にシエルは心が砕かれたように目に涙を浮かべた。
悔しかった……
無力な自分が悔しくってしょうがなかった……
だが、シエルは気付くべきだった。
目の前の地獄がすぐそばに迫っていること……
「ピィーーーーーーーーーーーー!」
「あっ……!?」
狂ったような機会音を出すファイア・レイナントにシエルは顔を上げ、驚いた。
逃げ遅れた……
シエルの身体全体に震え上がるような恐怖が広がり、気づいたら動けなくなってしまった。
「クッ……」
シエルは怯えているアルエットを庇うように強く抱きしめ、震え上がった。
ファイア・レイナントの触覚から赤い炎が吹き起こった。
「ゼロ!」
シエルの脳裏にゼロの顔がよぎった。
助けて、ゼロ……
頭の中にいくつもよぎるゼロとの思い出にシエルは気づいたら叫んでいた。
大切な人の名前を……
シュパンッ……
「え……?」
竹を切るような小気味良い音が響き、シエルは不思議そうに首を上げた。
「……ッ?」
シエルは信じられない顔でファイア・レイナントを見た。
「ピッ……ギガッ……」
ファイア・レイナントの姿は縦一文字に真っ二つに切り裂かれていたのだ。
「……大丈夫か?」
背後で大爆発を起こすファイア・レイナントを無視し、男は静かにシエルを見た。
「あ……ああ……」
シエルの目から大粒の涙が溢れてきた。
涙が止まらなかった。
止めたくなかった。
だって、今、目の前にいる人は、自分が一番大切に思っている人だから……
「ゼロ!」
傷だらけのゼロの身体が抱きつき、シエルは涙で滲んだ声でなんども同じことをいった。
「ゼロ……生きていたいのね……本当に生きてたのね?」
「ああ……」
ゼロの返事にシエルはより強く、ゼロを抱きしめた。
ゼロが生きている……
それだけでシエルはなにもいらなかった。
だって、ゼロそのものがこの世界の光だから……
ゼロがいれば、街もまたよみがえる。
シエルは光り輝く未来を疑わず、ゼロから離れ、太陽のように微笑んだ。
「おかえりなさい!」
「ただいま」
二人はまた微笑あい、抱き合った。
その光景をアルエットは顔を真っ赤にして見つめていた。
すべての争いの歴史は終わった……
そして、また新たな歴史が始まる……
シエルとゼロを中心に新しいレプリロイドと人間の歴史が……
そう、ゼロから全てが始まる。
あとがき
『ロックマンゼロ4』です。
GBA時代の名作といって過言でない作品でしょう。
結局、ゼロは最後はどうなったか不明ですが……
もし、PSPかDSで続編でたら、この作品ただの道化と化しちゃいますね?
もっとも、出たら買いますけどね!
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ロックマン4の最終ステージをスーサン流に解釈し、独自のエンディングを作りました。
実はスーサンの得意技だったりします。(出来はともかく)