出会いはまさしく唐突である、
この青年、スタンド使いの東方仗助の場合もまさしくそれであった、高校生なのだから恋愛の一つや二つおかしくはないのだろうが彼の場合はなにやら特殊な感性があったのか杜王町で過ごした時間にはそのような事柄は一切気にした事もなかった。したがっていままで女性と付き合ったことは無いに等しいといってもよい
しかし、彼の中で彼女、塚本天満との出会いは衝撃的だった、なぜだかはわからない、だが理由はなくとも人は恋に落ちるものだと彼は長年疑問に抱いてきた恋愛観についてようやく悟ることができた
そして、今彼は転入という形で運命か偶然か、朝見かけた塚本天満のいるだろうクラスの前にどこか冴えない眼鏡を掛けた担任教師と共に立っていた。
職員室で特徴的な髪の毛について教師達から訪ねられたりしたが、同居人の刑部絃子の配慮によってお咎めはなかった承太郎の根回しがあってのことだろう矢神高校の本校がイギリスにあってのことかSPW財団からの融通もここではある程度は効くらしい
しかし、彼の相方である虹村億泰の姿は見当たらない
(…まさか、億泰と違うクラスなんてよォォ~~…、そのくらい配慮してほしかったぜェ承太郎さん…)
そう、虹村億泰がまさかの違うクラスという手違い、こればかりは仗助も予想にしていなかった事態である、と、いうより一つ間違えれば間違いなく彼の静止役がいない時点で危険な状況になりかねない
例えるなら、いつ爆発するかわからない爆弾をセーフティーの無い状態で放置しているようなものである。
仗助が2年C組に対し億泰が2年D組という意味の分からない手違いは暗雲を早くも仗助と共に授業をうけるであろうクラスにもたらしていた
しかし、当の不安材料である仗助はそんな事は知るはずもなくとりあえず億泰のいない今、転入先のクラスにどうやって好印象を植え付けるのかそんな二の次でもいいような事柄を思考を巡らして考え込んでいた、
同じクラスにあの朝に見かけたあの女生徒も、もしかしたらこのクラスにいるかもしれない、不良とよく印象的に言われる自分の格好を改めて考えると親しみやすくてそんなに怖くないと思ってもらわなくてはならない
そのためには一発で自分は何か頭に残るような自己紹介をしなければ…
そんな的外れな事を考える仗助はふと自分の親父であるジョセフ・ジョースターの言葉がふと頭に過った。確かあれは間違いなくウケはとれるかわからないだろうが印象は好感触になるはず
(…ウッシシシ、みてろよォォ~…コイツでェ度胆抜かしてやりますよッ)
密やかに内心で笑いを溢しながら綻びそうな頬を口元を抑えてこらえる仗助
そうこうしているうちに転校生を紹介するという声が耳に入り、先にクラスの中に入って事情を説明していた眼鏡の担任教師から手招きをされ、クラスに入って来いと促される
(よっしゃぁ…来たぜェついにこの時がッ!)
待ってました!、と内心は言葉を漏らしながら、担任教師に言われたとおりにゆっくりとドアを潜り教室にへと足を踏み入れる東方仗助、その体格は185センチの長身であるため彼を見たクラスの男女の視線を釘付けにしていた
しばらくしない内にところどころから仗助に対する声が辺りかまわず飛び交っている
「…おい、でけーよアイツ何センチあんだよ…」
「てゆーか、かなりイケメンじゃない?ハーフかな?メチャクチャかっこいいんだけど」
「それにしてもあの頭…」
様々な言動が飛び交う中、クラスに入った仗助は何気なく辺りを見渡し今朝見かけた女生徒の姿を何気なく探す、しばらくするとその特徴的なアホ毛が上下に動く姿が視界で確認することができた
そう、今朝見かけて仗助の印象に残った女生徒、塚本天満の姿だ
よっしゃあと、クラスの男女生徒から背を向けてつい隠れて小さくガッツポーズをして呟く仗助はにやけてしまいそうになる口元を無理やり元の顔に戻す
そして、担任の先生が再びクラスに仗助に注目するように手を二回ほど叩くと先ほどまでのざわざわした空気は何処へ行ったのか、まるで静寂した竹林のようにシーンっとしずまりかえってしまった
そうして、仗助もそんな先生の計らいに応えるように自身の自己紹介をし始める
「えェーと、杜王町出身、ぶどうヶ丘高校からこちらに入学することになりましたァ!東方仗助ッス!」
ここまでは完璧な自己紹介、しかし問題はここからやはり特徴的な仗助の髪型を気にしてか何処かまだクラスの空気は重い、だが、仗助にはとっておきの秘策がクラスに入るまでに実は用意してあった
静かに自分の自己紹介に耳を傾けているクラスに対して仗助はッ!このときッ意外な行動に出るッ!
それはピッシリと伸ばしていた両手を動かした実に珍妙な自己紹介の仕方であった、このとき勿論、クラス全員は仗助に視線が集中しており誰一人としてそれを見逃してはいない
これが後に語られる東方仗助の伝説の一つになった出来事である
「ハッピーうれピーよろピくね――――」
仗助が思考を巡らして絶対に受けると踏んで必死で考えたジョセフ・ジョースター直伝の渾身の一ネタ、だが、無情にもそれに対してシーンと静まり返るクラス、
やはり、こいつはァいきなりレベルが高かったか? と仗助は冷や汗を背中に垂らしながらなおクラスの男女の反応を静かに待つ、ほんの二、三、秒ほどの間ではあったが、かつてこれほどまでこの間を拷問と思ったのは、正直仗助としても初めてである
しばらくして、耐え切れなくなったのか一人の女生徒がプッっと笑いを溢した、そうそれは今朝塚本天満と共に一緒に登校してきた周防美琴である、どうやら彼女にはこの手のネタがドツボであったらしい、プスプスと笑い声がすでに抑えられず零れていた
そうしてそれに釣られる様に至る所から次から次へと笑い声が吹き出しはじめ、あとはネズミ算式にクラスは仗助のそれで笑いの渦にみまわれた
しかも、なぜか笑うはずないと思っていた担任の眼鏡まで爆笑している
仗助はちょっとだけイラッとした
「やべぇって花井!アイツ強者だわッ!ヒィィィ…笑い過ぎてお腹痛い!」
「ハッピーうれピーってちょっと…待って、ぷくく」
「あははははははは、仗助君面白過ぎィ!」
まぁ、自分が好印象を与えたかった女の子も笑ってくれていることだし、このことはとりあえず良しとしよう、思いのほか爆発力があって意外だったのはこの際ご愛嬌だ
とりあえず、自分のひとしきり話し終えた仗助はとりあえず未だに笑いを抑えきれていない担任の先生から自分が座ることになる席を指で指し示す、まだ笑ってるとかどんだけツボに入ったんだよと思いながらとりあえず示された席に若干呆れたように視線をやる仗助
しかし、彼はその席に視線をやった途端、あまりの超VIP席に近い場所を差されたことに驚愕を隠せないでいた
そう空いていたそこは、なんと自分が気になっていた女生徒、塚本天満の隣であったのだ
「マジっすかッ!あそこの席ッスよね!最高じぁないッスかッ!」
嬉しそうに担任教師に同意を求める仗助、眼鏡の担任は未だにツボっているのか笑いを堪えながら仗助の言葉にウンウンと何度も頷く
鞄を持った仗助は嬉しそうに笑みを溢しながら、さっそく指さされた席へ歩を進め塚本天満の座る横のVIP席(一部に限る)に座り荷物を下ろす、ついにここまできたのだ登校初日からこいつはついてると隣の席の塚本天満にへと挨拶をする
「今日からァよろしく…えっと…!!」
「あはははははは!、よろしく!仗助君!私塚本天満!」
無邪気な笑顔で勇気を出した仗助の挨拶に応える天満、仗助にとってはそれはまさに天使の笑みの様で、彼にしてみればこの高校に転入してきてものすごくよかったなと感じられる一瞬の出来事であった
今日の自分はやばい、もしかして放課後彼女を呼び出して告白まで一直線じゃないッスか!
そんな、わくわくする様な出来事をつい思い浮かべながら、にやけそうな頬を必死にこらえ何事もないように天満に顔を見られないよう意識する仗助、だが、現実はやはりそんなに甘くはない、そもそも普通の人より身長も高く顔つきも整っている彼だ、その不釣り合いな髪型を除いては…その髪型を疑問に思わない生徒がいないわけもないはずで…
「それにしても、へ、変な髪の毛だな…それ」
…プッツゥーーz_______ン!!
そして、今、タイミングを見計らってか爆弾の導火線に一人の男子生徒が火をつけた。そう、東方仗助に対して決して使ってはいけないワードの一つを他の席にいた男子生徒がつい口走ってしまっていたのだ。彼の名前は吉田山次郎、自称「不良」で2年C組をしきっていると勘違いしてる男子生徒である
塚本天満を他所に口走ってしまった吉田山という男子生徒にはその言葉に恐らく悪気はなかったのだろう、だが、その瞬間、東方仗助の中でピシりと何かが切れ、まるで鬼のような形相に仗助が変わってゆく
その声は先ほどまで温厚のようなそれとは違いドスが効いたようなそんな恐ろしい口ぶりで怒髪天というのだろうか、髪が重力に逆らうように逆立ってゆく
「…おい、誰の髪がァサザエさんみてェーだとォ~ッ…」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
押しつぶされそうな恐ろしい程の威圧感が仗助から発せられ、先ほどまで笑いに包まれていた筈のクラスの温度が氷点下まで下がる。そう爆弾がすでに点火しカウント三秒前になったところだ。
その瞬間、急に2年C組のクラスの扉が開き一人の男子生徒が飛び込んでくる
「やっぱりかよォ…仗助ェ…嫌な予感的中だなァおい」
「なんなんだね君はッ!隣のクラスだろう!」
すぐさま、扉を開けて入ってきた男子生徒を注意するように声を発する2年C組の学級委員長、花井春樹、だが、彼の言葉に飛び込んできた億泰は華麗にスルーする、そんな事に耳を傾ける以上にヤバいことが起きそうなのだ当たり前である
クラスにいる生徒達は何だかよくわからない状況に全員総立ちである、ただ一つわかっていることは転校生、東方仗助が髪の毛を貶されたと思い込みブちぎれたということぐらい…
2年C組のクラスに飛び込んできた男子生徒、それは言わずとも最悪の出来事を危惧していた仗助の相棒である虹村億泰の姿であった。しかし、彼は自身の相棒が手遅れなのを悟ると嘆かわしいと言わんばかりに深い溜息を吐く
そうして、すぐさま億泰は臨戦態勢の構えをとり、彼は自身の幽波紋(スタンド)の名前を叫んだ
「ザ・ハンド!とりあえず仗助を気絶させろォ!…ッてェ!?」
「ドラララララララララララララララララララララララララァッ!!!!!!」
だが、すでに時遅し、仗助のスタンド、クレイジーD(ダイヤモンド)のラッシュの犠牲となった男子生徒、自称「不良」の吉田山次郎は転校してきたばかりの東方仗助によって短い間の彼の天下(笑)にこうして幕を下ろした
さらに吹っ飛ばされた彼の先には丁度スタンドを構えた億泰の姿があり、それもタイミングよく飛んできたせいでザ・ハンドのスタンド能力の軌道がずれてしまった。ついでに億泰も吉田山と共に巻ぞいを食らい吹っ飛ぶ
虹村億泰のスタンド、ザ・ハンドはそのスタンドの右腕によって空間や物質を削り取ることができるスタンドである
特徴的なガオンと音を立てて空間を削り取る音、だが、ザ・ハンドが削り取ったのはそれだけではなかった…
「お、おい沢近、前、前!!」
「……えっ?」
友人である周防美琴の訳の分からない指摘に首を傾げとりあえず違和感のある自分の制服に眼を落す沢近愛理
周りの男子生徒達からはオォォォと関心の声が上がり、中には何故か鼻血を吹きだす者までいる。クラス一番の軟派男の今鳥恭介は今が好機と言わんばかりにじっくりと沢近の身体を観察しそこに周防の鉄拳を溝に入れられ、のた打ち回るという珍光景がひろがっていた。
そう丁度、そのとき彼の近くにいた金髪の女生徒、沢近愛理の制服の前部分のみを体に触れないように一緒にガオン(笑)、つまり制服だけが削り取られ下着姿だけ露出した状態にされてしまったのだ
「…きゃああああああああああああああああああ!!!ちょっとなんなのよォ!」
暫くして声にならない叫び声を上げ顔を真っ赤にして涙目のままその場に屈むなんというピタゴラスイッチと感心せざる得ないが、もういろいろとりかえしのつかないとハチャメチャな事態が発生していた
ふとそこで沢近の悲鳴を聞いてかプッツンしていた仗助はハッとようやく我に返り、辺りを見渡す、そして不安そうな表情を浮かべこちらを見てくる塚本天満を視界で確認するとついでに、先ほど吹き飛ばした男子生徒、吉田山の下敷きになっている億泰を発見する
そうやってしまったのだ、髪の毛でまたブちぎれたのだろう…
まぁ、もしかして違うということもあるだろう、可能性は低いが…
恐る恐る我を取り戻した仗助は、吉田山の下敷きになっている億泰に確認するように自身の犯した出来事を訪ねた
「億泰、俺ぇ…もしかしてまたやっちまったか…?」
「みりぁ、わかんだろこのダボがァーッ!」
起き上がって声を荒げ怒鳴る虹村億泰、まぁ予想はしていたが億泰もまさか仗助がここまで大事にするとは思ってもいなかった。転入早々初日からやらかしてしまったという事だろう
この瞬間、仗助はこの光景を見ていた塚本天満への弁解と家に帰ってからの刑部絃子への処罰の覚悟を決めたのだった
…TO BE CONTINUED
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S市杜王町に住む東方仗助、虹村億泰はある日を境に空条承太郎からある高校に転入し、スタンド使いの捜査を頼まれることになる、杜王町から離れての高校生活に不安を抱える仗助はそこで一つの出会いを果たしてしまった、そうそれはスタンド使い同士が引き合うような運命のように…
ラブコメにジョジョという無茶な設定ではありますが楽しんでいただけたらなとおもいます