No.556077

ALO~閃光の妖精姫~ 最終魔 フェアリィ・ダンス

本郷 刃さん

最終魔となります。
また1つ、物語の幕が下ります・・・。

どうぞ・・・。

2013-03-17 10:12:46 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:13961   閲覧ユーザー数:12798

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終魔 フェアリィ・ダンス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーファSide

 

あたしは漆黒に包まれる夜空の中を飛翔していた。

今のALOでは無制限の飛行が可能となっている。

だからこそ、唯々早く力強く空を駆けていく。

次々と加速していき、トップスピードに到達する。

この速度になると思い出すのが、先週開かれた『アルヴヘイム横断レース』だ。

あのレースは凄かった、あたしはルナくんとお兄ちゃんとアスナさん、

それに『神霆流』の男の子達によるデッドヒートを繰り広げた。

ゴールが近づくにつれてお兄ちゃん達は火が付いたようで、武器を抜いて乱闘しながら飛んでいたのを思い出す。

その乱戦に巻き込まれないように必死に飛び、あたしが1位、アスナさんが2位、お兄ちゃんが3位という結果になった。

あまりにもあたし達が他の参加者を突き放してしまい、その上乱戦状態になったせいで、次回の開催が難しくなっている。

そんなことを思い出して笑みが零れる。

でも、一番空を感じることが出来るのは、こうやって何も考えずにただ飛んでいる時が一番なのだ。

やがてあたしは上空への飛翔を始めた、雲を突き抜け、その上に出ていく。

遥か高みにそびえながら燦々と輝く満月へと手を伸ばしながら向かう。

だけど、その先には進めなかった……上昇速度が0になってからあたしは眼を閉じながら落下していく。

 

 

 

いずれはあの月にも届くことができる、星の海を泳ぐことも出来るようになる。

他のVRMMOと相互接続することでそれらが可能となり、新たな惑星として認識され、1つの大きな世界になって、

未開の地を冒険することも出来るようになる、と…。

お兄ちゃんからそう聞かされた。

だけど、あたしには絶対に届かない場所がある、それは……あの『剣の世界』だ。

あのオフ会に行って分かった、あそこに集まったみんなには確かな強い絆がある。

命を懸けて戦い抜いた、あの世界で得た絆が…。

あたしは、その絆を紡ぎたいと思っている。

でも敵わないその願いにまた寂しさが襲ってくる。

翅が、動かせないよ…。

 

 

 

「まったく、あまり心配を掛けさせるものじゃないっすよ…」

 

「ぇ……ルナ、くん…」

 

大好きな彼の声が聞こえ、あたしの体は落下を止めて受け止められた。

開けた目の前には彼の顔、お姫様抱っこをされていた。

少し照れながらも、彼の腕から出て自分で飛行する。

 

「ごめんね…」

 

「ま、気にしないでいいっすよ。それよりも、そろそろ時間っすから」

 

短く謝るとルナくんは微笑を浮かべて返してくれた。そっか、迎えに来てくれたんだ。

 

「リーファ、どうしたっすか?」

 

「ぁ…ううん、なんでもないよ。それよりも踊ろう、一緒に♪」

 

「え?……わわっ!?」

 

あたしは誤魔化すようにそう言うと、彼の手を引いたままスライド移動をするように空を滑る。

 

「最近開発したテクなの。ホバリングしたままゆっくり横移動するんだけど、

 ほんの少しだけ上昇力を働かせて、同時に横にグライドする感じだよ」

 

「む、むむ…」

 

飛び方を教えるとルナくんは早速試し始める。

最初は苦戦していたけど、ものの数分でコツを掴んだようで、あたしに合うように動きを始めた。

 

「こんな感じ、っすかね?」

 

「そうそう♪」

 

そしてあたしはストレージの中から1つの小瓶を取り出して中の液体を振りまいた。

流れてくるのは旋律、プーカの吟遊詩人が作った演奏を詰めているアイテム。

あたし達はお互いを感じ取るかのようにステップを始める。

最初はゆっくりと流れる感じで手を繋いでくるくると円を描き、徐々に速度をあげてより遠くまであたし達は舞う。

そうだ、あたしにはルナくんがいる。

2年間離れて、ようやく繋がった想い。

これからゆっくりと彼との時間を、思い出を作っていけばいい。

そう、それでいいはずなのに…。

 

 

 

音楽が終わり、あたしは動きを止めた。どこか心配そうな表情を浮かべるルナくん。

 

「駄目だね、あたし…。どうしても、みんなのいる所を…考えちゃうよ…」

 

「リーファ…」

 

彼は察してくれたみたいだ、あたしが何処(・・・)を思っているのかを。

あたしは居た堪れなくなり、この場から逃げ出そうと彼の手を放した。

 

「あたし、今日はもう帰んっ//////!?」

 

ルナくんから離れようとして言葉を言いきろうとしたけれど、彼に体を抱き締められて、

そのままキスをされたことで離れられなくなった。

 

「直葉……行けないところなんて、ありはしないよ…」

 

「刻、くん…///」

 

唇を離した彼の表情は真剣そのもので見惚れてしまった。

そしてさっきのようにお姫様抱っこされると、ルナくんは一気に加速して移動を始めた。

 

 

 

辿り着いたのは世界樹、その上に灯る火はイグドラシル・シティの灯り。

世界樹の空で止まるとあたしを抱っこの状態から解放し、しかし隣に立ったあたしの腰に手を回して抱き寄せてきた。

なんか、情熱的…///

 

「遅れちゃったっすね………来るっすよ!」

 

その言葉の意味が分からず、だけど彼の視線は遥か空に輝く月を捉えていた。

あたしも月に眼を向ける、すると突如として月が欠け始めた。

 

「月蝕…? あれ、違う……」

 

そう思ったけれどそんな現象はALOでは今までなかった。

さらにゴーン、ゴーンという大きな鐘の音が鳴り響き、月の影の形がハッキリと分かるようになった。

円錐形の物体、いくつもの建物が集合したような姿、何キロメートルもの高さを誇る大きさ。

一度だけ、リアルであの巨大な建造物の映像を見たことがある…。

 

「まさか……そんな…。もしかして、アレ…が…?」

 

「浮遊城、鋼鉄の城、『アインクラッド』っすよ」

 

驚きのあまりに言葉を失う。何故、どうしてあの城が…。

そう思っていると浮遊城は世界樹の上部の枝よりも少し上で停止した。

 

「今度こそ、あの城をクリアする為っすよ。中途半端で終わったっすからね……今度は1層から100層まで攻略するんす。

 だからリーファ、一緒に行くっす…どこまでも」

 

「っ、うん! 一緒だよ、どこまでも♪」

 

笑顔で一緒にいることを伝えてくれたルナくんに、わたしも精一杯の笑顔を浮かべた。

そしてそこに、

 

「ルナリオ! リーファ!」

 

「「お兄ちゃん(キリトさん)!」」

 

スプリガンであり、リアルの姿のお兄ちゃんが妖精達(みんな)と一緒に飛んできた。

 

リーファSide Out

 

 

 

キリトSide

 

俺とアスナとユイはルナリオとリーファの側に来る。

他のみんなは続々と浮遊城に向けて飛び立っていく。

 

「お先に失礼」

 

「失礼します」

 

「……お先」

 

「さっさと来いよ」

 

ハクヤ、ヴァル、ハジメ、シャインが駆け抜け、

 

「おっさき~」

 

「待ってくださいよ~」

 

「あらあら♪」

 

リズ、シリカ、ティアさんが続き、

 

「置いてっちまうぞ」

 

「追いついてね」

 

「待ってるぞ」

 

クライン、カノンさん、エギルも飛んでいき、

 

「今度は最初から付いていくからな」

 

「わたしだって」

 

「俺もだ」

 

「当然俺も」

 

「僕も頑張るよ」

 

ケイタ、サチ、テツ、ロック、ヤマトも飛翔していく。

さらにアルゴ、マスター、ラルドさん、シンカーさん、ユリエールさん、サーシャさん、ウェルガー、

シュミット、ヨルコさん、カインズ、フリックといったSAOメンバーが続いた。

その横にシルフ領主のサクヤさんとシルフ隊とレコン、ケットシー領主のアリシャ・ルーさんとケットシー隊、

サラマンダー領主のモーティマーとユージーン将軍とサラマンダー隊、他の種族の領主と部隊、

個人のALOプレイヤー達も続いていく。

 

「ほら、リーファ! ボク達も行くっすよ!」

 

「うん! お兄ちゃん、アスナさん、ユイちゃん! 先に行くね!」

 

ルナリオとリーファも手を繋いでかの城へと向かう。

 

 

 

「リーファさん、元気が出たみたいですね」

 

「良かったね、キリトくん。リーファちゃん大丈夫そうで」

 

「ルナリオならなんとかしてくれるのは、分かりきったことだよ」

 

ユイがそう言い、アスナの言葉に俺は自信を持って答えた。

リーファにはルナリオがいる、兄とはいえ俺が言わなくてもアイツがなんとかしてくれる。

 

「それでは、旧アインクラッド城主、覇王キリト様。今度もクリアしちゃいましょう」

 

「誰が城主だ……ま、今度こそ完全に征服してやるさ…」

 

アスナのお茶目に少し呆れるも、確かにあの城を不完全とはいえクリアしたのも事実。

ただ今度は完全に征服を果たしてみせる…。

俺はアインクラッドを見つめてから少し俯く。

 

「……………」

 

「「キリトくん(パパ)?」」

 

小さく呟いた俺に何かを思うアスナとユイ。

しかし俺は顔を上げるといつもの不敵な笑みを浮かべ、前方を飛ぶ面々に軽く覇気をぶつけた。

 

「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」

 

遠目でも分かる、全員がこちらに振り返り、引き攣った笑顔でいるのだろう。

俺とアスナはニヤリと笑い、ユイは俺の胸ポケットに入り込んだ。

アスナと手を繋いで一気に加速する。

後方から一気に追いつき、全員を追い抜く。

呆気に取られていた面々はすぐさま俺達に追いつく。

俺はアインクラッドに目を向けて、言い放った。

 

「行こう!」

 

キリトSide Out

 

 

 

全ての妖精達が鋼鉄の城を目指して夜闇を駆け抜けた。

 

その姿はまさに、『妖精達の舞(フェアリィ・ダンス)』のようだった。

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがきを投稿します。

 

 

 

 

 


 
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