ゴォォォォという風を切る音だけがソニックの耳に入る。
先程まで米粒サイズ程に小さくなっていた二つのハリネズミの影が徐々に大きくなっている。滑空のポーズをとって急降下していたソニックは背中のブルーウィンドの取っ手を掴みそのまま引き抜いた。
「こっから俺達の猛撃ショーの始まりだぜ~♪」
ブルーウィンドの剣先がキラリと光る。
だが、ハリネズミ達がそんなソニックのうのうと眺めているはずがなかった。二体がそれぞれ別方向に飛び、二手に別れソニックへと襲いかかる。
「ハァッ!」
だが、ソニックはそのまま地へと急降下していった。ハリネズミ達も進路を変え、大きな螺旋を描き彼を追う。ソニックは地に着地すると、そのまま走り出す。ハリネズミも着地するとソニックを追いかけた。
だが、ハリネズミ達の足が瞬時にして止まった。
ドシュッ!ドシュッ!
遥か上空からパープルシスターがM.P.B.Lの銃口をハリネズミに向け、弾丸を放っていたのだ。だが、距離が遠すぎるのもあってか弾丸はハリネズミに掠ることなく地に落ちていく。
ハリネズミ達は背中に黒い翼を出現させると今度はパープルシスターめがけて飛び立った。二つの姿に別れたことが影響しているのか、彼らの背より生えている翼は片翼だった。
ハリネズミの姿はあっという間にパープルシスターとの距離を縮めていった。一方でパープルシスターはハリネズミに弾丸を撃ち込んだが一発も当たることなく刻一刻と距離を詰められていく。僅かに二体のハリネズミに不気味な笑みが浮かぶ。
すると、パープルシスターは何を思ったのかM.P.B.Lを持ち直しハリネズミ達に向かってまっすぐ急降下しだした。ハリネズミ達はスピードを落とすことなく迎え撃つかのように全身に紫色のオーラを纏い始める。
「ッ!?」
二体の内片方――後方のハリネズミが背後に気配を感じ取り動きを止める。
そして、振り返る。
「へ、今頃気づいても遅いぜッ!」
猛スピードで回転しながらソニックが突っ込んできていたのだ。ガードも間に合わずハリネズミはソニックの体当たりをモロに食らった。
前方のハリネズミもそれに気づいたのだろう、動きを止め振り返った時だった。
「ッ!!!」
背中に奔る衝撃。パープルシスターがM.P.B.Lを手にハリネズミに突っ込んできていた。
次第に距離が縮まる二つの姿。
ソニックとパープルシスターはそのままハリネズミの姿を重なるように叩きつけた。
その刹那、二人はその場から離れ地へと着地する。
叩きつけられた二つの姿が花火のように鋭い光を放ち輝く。あまりの眩しさに二人は腕で目を覆った。
光が収まり、二人が目にしたのは再び一つとなったハリネズミが力無く落下している光景だった。明らかにぐったりとした様子で頭から地上へと落下してきている。
ドサァッ……!!
二人は、落下してもなおハリネズミの姿を見つめていた。
ただ、二人の手にはしっかりと武器が握られていた。
スッ……――
案の定、ハリネズミが立ち上がる。
二人にはなんとなくそうなることが分かっていた。
「…………………」
ハリネズミが静かに目を開く。
公園内を風が一つ、静かに吹き渡った。
ハリネズミが静かに口を開いた。
「――いいだろう……『鎖』を見つけた後再び相手をしてくれる……女神……」
ハリネズミの姿が瞬時にして消えた。
「………………」
二人は、ハリネズミが消えた後もその場を見つめ続けていた―――
「み、みなさん……!?」
カオス・コントロールでルウィーの教会へと戻ってきたネプギアとソニックは目を疑った。
「………………お帰りなさい。」
アイエフが虚ろとした目をネプギアに向ける。
大きな円を描くように、ネプギアの仲間達が立っていた。
円の中心にいたのは――――半狂乱に泣き叫んでいるミナの姿。
「お、おい?何かあったのか?」
「…………」
コンパが情けない表情を二人に向ける。
「………………ロムちゃんとラムちゃんの部屋に行けば分かるです……」
「ッ!?」
それを耳にした瞬間、バンッ!と大きな音をたててネプギアが廊下へと躍り出る。
「お、おいネプギアッ!」
少し遅れて、ソニックもネプギアを追いかけた。
バンッ!
ネプギアが勢い良くドアを開け放つ。
「ッ!!」
部屋の中にいたルミーとフィーがビクッと肩を揺らす。
「ね、ネプギアさん……!」
二人は目に涙を浮かべながらネプギアに視線を向ける。
ネプギアは息を切らしつつ室内を見回した。
――先程二人が横になっていたあのベッド……!
目にするとネプギアは室内を走りルミーとフィーを横切るとそれに駆け寄る。
「…………そん…………な………………ッ!!?」
二人の姿が――無かった。
ネプギアは震える手をそっと、掛け布団が無造作に敷かれたベッドに触れさせる。
「…………!!」
僅かに残る温もり。
無残に敷かれた掛け布団とベッドに残る温もり――それらが、先程まで二人がいたであろう痕跡をとどめていた。
ルミーがそっとネプギアに近寄る。
「――先程、お二人が公園に向かった後デシタ……ルウィーのシェアが…………」
それより後は聞こえなかった。
聞かなくても分かった。
自分の耳が聞くのを拒んでいるのか、そんなことどうでもよかった。
「……………………………!!!!」
足の力が入らずに、ガクンとカラフルなカーペットに膝をつく。
「…………ネプギア。」
隣からソニックの声が聞こえる。
「…………そん、な……嘘だよね……!?」
「……ッ!」
「……ねぇ、ソニック……これって……嘘だよね……!?夢だよね……!?だって……ロムちゃんと…………ラムちゃんが……………………ッ!?」
「…………ッ………………!!」
これ以上何も言わせまいと――ソニックは彼女を抱き寄せた。
「い……や………嫌だよぉ…………!わた、し……また……守れなか……った……!?」
ソニックの腕の中でネプギアは涙でぐちゃぐちゃになりながら必死に声を絞り出す。
「………………………」
慟哭するネプギアの髪を撫で続けながら、ソニックは視線をルミーに向けた。
ルミーとフィーも声を上げて泣いていたので少し声をかけづらかったが、状況を聞かないと何も始まらない。
「……ルミー。」
「ひっく、ふぇぇぇ…………!はいデス……」
「辛いとは思うが、色々教えてくれ……いつ、二人は姿を消したんだ?」
「……私が駆けつけた時は、既にいなくなってたデス…………」
「何か……変わったことはなかったか?なんでもいい。」
「……特になにもなかったデス。ただ……二人がいなくなった後、これがベッドの上に残されていたデス…………」
ルミーはしゃくり上げながらも、小さなバッグを取り出した。
「……What’s this?」
「……ロムちゃんが、常にぶら下げていたカバンデス……」
「中には何が入ってるんだ?」
「わ、たしも……まだ見てないデス…………」
「開けてみてくれ。」
ルミーは小さく頷くと、園児が持っているような小さな黄色いカバンのファスナーを開けた。
途端に、開けられたファスナーの間から光輝が放たれる。
刹那、ソニックの目の色が変わった。
「………………『カオス・エメラルド』………ッ!?」
その名を声に出す。
そう、カバンの中から出てきたのは水色のカオスエメラルド。
――七つ集めると、奇跡を起こすと言われる伝説の宝石…………――
――そして、ソニックが元の世界へ帰るための唯一の鍵……―――
「……綺麗デス……」
ルミーとフィーも泣くのを忘れ、カオス・エメラルドを見つめていた。
ネプギアはまだ涙は流していたものの、ソニックの胸から顔を外し水色に光り輝くカオスエメラルドへと視線を向けていた。
ソニックは眉間に皺を寄せた。
何が何だか分からない。どうしてこれがここにあるのか。
「……ルミー、それをちょっと貸してくれないか?」
「は、はいデス……」
とてとてとルミーがソニックに歩み寄り、カバンごとソニックに手渡す。
「…………」
ソニックはカバンに手を突っ込むとカオスエメラルドを取り出す。
室内の蛍光灯の光が反射され、光の強さが増す。
眩しさにソニックは目を細める。
「ソニックサン……それを知ってるデスか……?」
「……あぁ……」
知らないわけがない。
これがソニックをこの世界へとワープさせた張本人であり、同時に彼が元の世界へと帰るための鍵なのだから。
「……どうして、ここに………」
涙で潤されたネプギアの瞳に、水色の光を放つエメラルドがくっきり映っていた。
「それがソニックさんのものであるんデシたら、それはソニックさんが――」
「…………」
ソニックはカオスエメラルドをカバンにしまい込み、ルミーへとカバンを渡した。
「ソニック……?」
ネプギアが不安そうに彼の顔を見つめていた。
「…………そいつは、あの二人の物さ。俺が勝手に取っていくわけにはいかない。」
「え……!?」
一瞬ソニックが何を言っているのか理解できなかった。
「で、でもソニック……!?」
カオス・エメラルドを捜索することがソニックの目的の一つでもあったはずなのに……?
それがないとソニックが元の世界に帰れないはずじゃあ……――
「いいんだ、これで。」
ソニックがネプギアに小さく微笑んだ。
「……さて、一度アイエフ達のとこへ戻ろうぜ。」
「……?」
ズッ、とネプギアが鼻を啜ると立ち上がり部屋の出口へと歩いていくソニックの後を追いかけた。
二人はその後アイエフ達の居る部屋へと戻り、先程までの事を報告した。
だが、先程半狂乱になっていたミナの姿はなかった。アイエフ達の話によると彼女はあまりのショックに教祖室で寝込んでしまっているらしい。
「カオスエメラルドがあった……!?」
「あぁ、どうやらあの二人が一つを持ってたみたいだ。」
「そ、それで……カオスエメラルドはどうしたんですか?」
「ルミーとフィーに預けてきた。」
「え?な、何でよ。」
「あの二人の物だからさ。」
「で、でもそれじゃあ――」
「もういいんだ。」
話を続けようとしたアイエフの言葉をソニックが遮り会話を強制的に終了させた。
「それより、今はルウィーのシェアをもう一度集めることが先決だろ?」
「…………えぇ、そうね。」
「でも、ゼロからもう一度シェアを収集するなんてことが可能なんですか?ゼロになったなら、その国の女神はギョウカイ墓場に葬られるはずです……」
「…………」
コンパの問いに一同は言葉を詰まらせる。
確かに、信仰すべき女神がとうにギョウカイ墓場へと葬られてしまっているならどうにもならない。そんな状況でシェアを獲得するのは不可能ではないかもしれないが、かなり困難な道である。
まして、今回はあのハリネズミの件もあって恐らくルウィーの国民に『国を守護してくれるはずの女神が守護してくれなかった』というレッテルが貼られ、信仰心どころか信頼性まで激減しているという可能性もあった。
「…………………………」
だが、今のままではルウィーは完全に無くなってしまう。
そうなってしまえば、ギョウカイ墓場で囚われの身となっているルウィーの女神も消失してしまう。
それを止める方法は一つしかない。
――『一刻も早く、ロムとラムを復活させる』こと。
「…………問題は、どうやって集めるかだねぇ……」
ソニックは腕を組みん~……と声を発し始める。
「…………今思ったんですけど、どうしてシェアが無くなって女神達が姿を消したのに国自体は無くならないんでしょう……?」
「……huh?」
ネプギアの問いにソニックは振り返る。
確かにその通りだった。
シェアがゼロになり、女神の姿が消えたならその女神が守護していた都市も消失するはずである。だが、現にルウィーは無くなっていない。
「…………」
ネプギアは徐にNギアを取り出す。
電源を入れるとスクリーンにタッチして色々調べ始めた。
アイエフを初めとする仲間達もNギアの画面を覗き込む。
『…………………ッ!?』
そして、一同は息を呑んだ。
「どうした?」
唯一、画面を見ていないソニックが振り返り尋ねる。
「…………ソニック、これ……」
「???」
ネプギアにNギアを手渡され受け取るとソニックは画面を覗いた。
どうやらルウィーのシェアの円グラフやゲームの詳細等が並べられている。
円グラフの頭上にはハッキリと『0%』と記されている。
「これがどうかしたのか?」
「……これ、押してみて。」
ネプギアの指さした箇所は『0%』と記されているすぐ横の『シェア詳細』と紫色の枠内に小さく書いてあるボタンだった。
ソニックは小さく首を傾げつつ、そのボタンをタップする。
そして、新たにスクリーンが映し出された。
「…………………ッ!?」
そして、眉を吊り上げる。
「――――『0.1%』…………?」
画面に小さくウィンドウが表示され、再び円グラフが表示される。
すると、数字の横に小さく『1』と表示されていた。
『0.1%』。
つまり、ルウィーのシェアは完全に無くなっていなかった。
「これって……!?」
ソニックは思わずNギアを落としそうになる。
「きっとまだルウィーの女神を信仰してくれている人がいたんだよ!まだシェアは無くなってなかったー!」
日本一の言葉で仲間達が喜びの声を発し始める。
「……………………」
そんな仲間達の隣で、怪訝そうに黙り込む三人。
「…………アイエフ。」
ソニックはNギアをネプギアに返すと視線をアイエフに向けた。
「えぇ………」
ソニックが何を言いたいのか分かっているのだろう。アイエフは小さく頷く。
シェアが完全に無くなっていないのだとすれば、残された問題は一つ。
「……ロムちゃんとラムちゃんがどこに消えたのか……ですか……?」
「……あぁ。」
そう、もしルウィーのシェアが完全に無くなったのであれば当然女神候補生であるロムとラムも姿を消し同時にギョウカイ墓場にへと葬られる。
だが、現にシェアが完全になくなる一歩手前――わずか0.1%ではあるがルウィーのシェアは確かに残されている。
それならば、何故あの二人の姿が無くなっていたのか。
「…………」
こちらに残されているのは、少し息をかけただけで消えてしまいそうなか弱い蝋燭の火のような量のシェア。そして、失神しているミナ。
嫌な予感しか、しなかった。
刹那、その予感は的中した。
「ッ!?」
外から爆音。
室内の全員が窓に振り向く。
ソニックが目で合図するとネプギアがソニックにカオスエメラルドを投げ渡す。
「カオス・コントロールッ!」
一同の姿は瞬時にして消えた。
一同がワープしたのは、ルウィー国内で最も人通りの多い教会前の大きな商店街だった。
初めて一同がルウィーへ訪れた時に、この活気溢れる商店街の壮麗さに仰ぎ見た記憶もある。この光景を見た者なら誰もが平和であると口にするだろう。
だが、再びこの地に足を踏み入れた一同は目を疑った。
―――あの商店街が、あの活気溢れる店の並びが変わり果てた姿となっていた。
「う、そ…………!?」
上層部がまるごとなくなった建物。
パチパチと音を立てて燃える飲食店か何かの広告用の旗。
コンクリートが抉られ、埋まっていた土がさらけ出されている。
まるで空襲にでもあったのではないかと思う程の無残な姿。
カァッ!!
再び爆音。一同は振り向く。
だが、ネプギアにとって最も目にしたくないであろう光景が広がっていた。
「…………ロムちゃん、ラムちゃん……?」
女神化したロムとラム。
ゴォォと燃え盛る崩れ落ちた建物をバックに二人は髪を靡かせ立っていた。
「もし……かして……!?」
二人がやったの!?……――喉まで出かけたが、その行動は許されなかった。
「よーぉ、久しぶりだなぁ?」
二人の間からリンダの姿が現れる。
「アンタ……ッ!?」
咄嗟にアイエフが身構える。
「あの人は……?」
「昨晩話した犯罪組織の下っ端よ。」
5pbの問いにアイエフは素早く答える。
「お前……ロムとラムに何をした!?」
ソニックが一歩前に出るとリンダに問う。
「まぁ……簡単に言えば、俺の子分にしてやったってとこだな。」
にやり、とリンダが口端を吊り上げる。
「二人共、そんな頭おかしい奴について行っちゃダメだよ!」
「あ、日本一さんッ!?」
日本一がロムとラムめがけて走り出す。
リンダはラムに「やれ」と合図をするとステッキの先端を日本一へと向けた。
「チッ!」
ソニックは舌打ちすると走り出す。
ブァッ!
ステッキの先端から吹雪を彷彿させるようなビームを放つ。
「ッ!?」
日本一は目を見開く。
「わぁぁッ!?」
間一髪、ソニックに腕を引かれビームをかわす。
一同も跳躍しビームをかわした。
ドォォォォッ!!!
一同の後方に建っていた半壊状態の建物にビームが当たり爆発する。
着地した一同に爆風で飛んでくる瓦礫が襲いかかる。
「キャッ!?」
それぞれ伏せたり屈むなどしてなんとか瓦礫の餌食にならずに済んだ。
「アンタッ……!」
アイエフがカタールを取り出す。
「おぉっと待ちな!いいのかぁ……?こいつらがどうなっても……」
リンダがロムとラムを一瞥すると余裕の笑みを浮かべたまま再びアイエフに見直る。
「こんのッ……!」
悔しそうに歯軋りする一方でリンダは高笑いをあげた。
「ハハハハハッ!今回ばかりはてめぇらにも邪魔はさせねぇぜ?せいぜい街が壊されるのを指くわえて見てるんだなッ!」
「あ、待ちなさいッ!」
リンダが大きく跳躍するとロムとラムも続き飛び去っていった。
「ロムちゃん、ラムちゃん……ッ!!」
ネプギアが腕を伸ばすも、力なく降ろした。
「……どうして……ッ……!?」
ネプギアの問いに返答するかのように、ヒュオオォォォと冷たい風が彼女の髪を靡かせた。
「…………………」
すこし離れた場所でソニックが固く拳を握っていた。
表情は確認できなかった。
「どうにか……ならないのかな……」
5pbが不安気に声を発する。
一同にその答えを知る者はいない――否、いるわけがない。
「あの下っ端!絶対許せないよ!早く追いかけようよ!」
「追いかけたところでどうなるのよ!」
悔しそうに地団駄を踏む日本一にアイエフが振り返り言い放つ。
ビクッと肩を震わせた日本一はそのまま黙り込んでしまった。
どうしようもない―――その場の誰もがそう思った。
「がすとに、考えがあるですの。」
「………え?」
一同ががすとに振り返る。
「何だか、タイミングが良すぎる気がするですの。」
「ど、どういうこと?」
「ルウィーのシェアが急激に下がって、がすと達が動いてる最中にあの二人の様子がおかしくなったですの。どこか裏があるはずですの。」
「た、確かに……!」
がすとは言葉を続ける。
「これはがすとの推測ですけど……さっきあの下っ端は『子分にした』って言ったですの?だとしたら、きっとシェアが極限状態にまで減ってすっかり衰弱したあの二人に下っ端が何かしたんだと思いますの。」
「つ、つまりどういうことですか?」
「きっと、あの二人を正気に戻すにはシェアが必要だとがすとは睨むですの。」
「な、なるほ……ッ!」
日本一は明るい表情に戻りポンと掌に拳を置くが、すぐに意気消沈した。
「……どうやって?」
アイエフが口を開く。
確かに、ひょっとしたらがすとの考えがあの二人を救うための唯一の方法かもしれない。
だが、ルウィーの国民達が自分達にとって信仰すべき女神に自分達の国を攻撃されている状態でどうやってシェアを獲得すればいいのか。それは限りなく不可能に近かった。どう考えても無理である。
「……いえ、まだ手は残されています。」
ネプギアが顔をあげる。
「ふぇ?ど、どうするですか?」
「プラネテューヌのシェアを使うんです!」
「え!?」
咄嗟にコンパが聞き返す。
「いますぐいーすんさんにお願いして、プラネテューヌのシェアで『シェアクリスタル』を作ってもらうんです!」
「で、でもあれは作るのに最低でも一時間は必要よ!?そんなに待ってたら街が壊滅するのも時間の問題よ!」
「でも、これしかありません!」
ネプギアはバッと、未だに背を向けているソニックに視線を送る。
「ソニック!」
「……what?」
背を向けたまま、ソニックは振り返ろうとしなかった。
「今すぐプラネテューヌに向かって!いーすんさんには私から連絡しておくから!」
「…………All right。」
ソニックはそっと、ネプギアから借りたままだったカオス・エメラルドを取り出す。
「…………ッ!」
そのままワープするのかと思いきや、ソニックは突然ネプギアに向かってカオスエメラルドを投げ渡した。
「わッ!?」
突然のことにネプギアは肩を揺らすがなんとかカオス・エメラルドを受け取る。
「……すぐに戻る。」
ソニックはそれだけ言い残すと走り去っていった。
「………………………」
唐突すぎて、思わずボーっとするもすぐにハッとなりNギアを取り出す。
素早い手つきでイストワールにメールを送るとホルダーにしまいこんだ。
「急ぎましょう!」
そして一同はリンダ達が飛んでいった方へと駆け出していった。
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