No.554970

ALO~閃光の妖精姫~ 第38魔 奇跡の果てに

本郷 刃さん

第38魔です。
妖精の世界と剣の世界、2つの世界で再会した少年少女の想いが繋がる・・・。

では、どうぞ・・・。

2013-03-14 09:05:57 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:16011   閲覧ユーザー数:14689

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第38魔 奇跡の果てに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルナリオSide

 

キリトさんとアスナさんとユイちゃんが世界樹へと戻って行ったあと、ボクとリーファは2人で夜空を飛び回っていた。

他のみんなも各々が好きなように空を飛び回ったり、さっきの戦いの興奮が冷めやらないのか、騒ぎ合っていたっす。

そんな中で、ボクとリーファは手を繋ぎながら空を飛んでいる。

ただお互いに無言、言葉にしなくても何かが伝わっているようなそんな感覚がある。

そのせいか気恥ずかしいものを感じるけれど、嫌ではなくむしろ心地良い。

その時…、

 

『『アルヴヘイム・オンライン』をプレイ中の皆様にご連絡致します。

 これより緊急メンテナンスを行いますので、1分後に皆様を緊急ログアウトさせていただきます。

 勝手ながら誠に申し訳ありません。繰り返します………』

 

そんな音声アナウンスが流れた。

おそらくは現実世界でも何か動きがあったのだろう。

レクトがALOを緊急停止させるのかもしれない。

ボクもリーファも移動をやめて空中に留まった。

 

「もう少し、飛んでいたかったな~…」

 

「仕方が無いっすよ。こればかりは…」

 

残念そうにそう漏らしたリーファ。

彼女はなによりも空に魅せられていたことはボクが一番良く知っている。

彼女と2人でALO中を周っていたから、彼女の気持ちは良く解る。

そんな彼女の手を握り、ボクは言葉を発したっす。

 

「リーファ…。向こうに戻ったら会いに行くから、だから待っていてほしいっす…」

 

「うん…///」

 

伝えて、リーファの返答を聞いたボク達は抱き締め合い、この世界からログアウトしていった。

 

ルナリオSide Out

 

 

 

刻Side

 

眼を開けて、頭に被ったナーヴギアを取り外し、外の様子を見た…雪が降っているっす。

なるべく温かい格好に着替えてから、部屋を出て玄関の鍵を開け、外へと足を踏み出す。

直葉のいる桐ヶ谷家には徒歩3分程で着くので、ゆっくりと歩き出す。

心を落ち着ける為にもっていうのもあるっすけど、やっぱり感慨深さを感じたいのもあるから…。

SAOから帰って来て、直葉やみんなと再会できて、でも和人さんが眠ったままで、

だけど助ける為にまたみんなで冒険をした。

そしてキリトさんを、和人さんを助け出せた。

これであとは、自分の思いのままに進むだけ…。

辿り着いた桐ヶ谷家の前、呼び鈴を鳴らし、彼女が出て来るのを待った。

玄関に灯りが付き、彼女の影がそこに現れ、扉が開き…、

 

「刻君…」

 

「スグ…」

 

お互いの存在を確認したっす。

 

 

 

ボクはスグの部屋に彼女と共に移動した。2人でベッドに腰を下ろし、肩をぴったりとくっつける。

 

「終わったっすね、全部…」

 

「うん…」

 

小さく呟いたボクの言葉に、スグは短く相槌を打った。彼女は待っている、ボクの言葉を。

なら、想いを伝えなきゃならない。

ボクの中からいつもの口調が消えていく。

 

「SAOに囚われた時、一番最初に思ったのが……『スグに会いたい』だった…」

 

「うん…」

 

「家族にも、友達にも、会いたいと思ったけど……何よりもスグに会いたかった…」

 

「うん…///」

 

「スグに会って、声を聞いて、触れ合いたいって、そう思った…」

 

「…うん////」

 

何度も嬉しそうに頷いてくれるスグ。

 

「だからこそ気付けた…。ボクは……スグが好きなんだって…」

 

「っ、うん//////」

 

頬を紅く染める彼女を真っ直ぐに見つめて想いを伝え、スグは目尻に涙を溜めている。

ボクはその涙を人差し指でそっと拭うと言葉を続ける。

 

「直葉……キミの事が大好きだ。ボクと、付き合ってほしい…///」

 

「っ……、はい////// あたしも……刻くんのことが、大好きです//////♪」

 

想いだけは繋がっていたのかもしれない…だけど、

言葉にすることでそれが真に強固な絆に変わったことに気が付いた。

互いに抱き締め合い、そして顔だけを少しに離す。

不安そうになった彼女の表情をみやってから、その唇を自分の唇で塞いだ。

 

「ん、んぅ…///」

 

「ん…んちゅ、ん…//////」

 

直葉は驚いた様子を見せたものの、すぐに落ち着くと受け入れてくれた。

ほんの少しのキス、たったそれだけでも幸せによって満たされる。

唇を離すと上気した夢見がちな彼女の表情が分かる。

そしてボク達はもう一度、唇を重ね合わせた。

 

刻Side Out

 

 

 

明日奈Side

 

病院の中に駆け込んだわたしは、灯りのついているナースステーションを見つけてそこに近づいた。

当直らしき2人のナースさんがいた。

 

「あの、すいません!」

 

「あら? 貴女は確か桐ヶ谷君の彼女さんの…」

 

「結城さん、だったわね? こんな時間に一体どうしたの?」

 

ナースさんに話しかけてみると、和人くんのお見舞いに来た時に会ったことのあるナースさん達だった。

 

「駐車場で、ナイフを持った男に襲われたんです…前に和人くんの部屋にも来たことのある男で眼鏡を掛けている…。

 わたしは通りがかった男性に助けられて、だけどまだ駐車場の方に…」

 

「っ、警備員に連絡して! 結城さん、貴女は怪我はない?」

 

1人のナースさんが細いマイクを使って警備員に連絡を入れてから、駆けつけた警備員と共に駐車場へと向かい、

残ったナースさんはわたしの安否を気遣ってくれた。

 

「は、はい…。あの、でも、少し不安で…和人くんのところに行っても、いいですか?」

 

「ええ、そうしなさい…。でも何かあったらすぐにここに連絡を入れてね」

 

「ありがとうございます」

 

わたしの言葉を聞いたナースさんは許可をくれたので、エレベータを使って和人くんの病室へと向かった。

エレベータがその階に着くと、彼の病室の前へと早足で辿り着いた。

スライドドアに手を掛け、それをゆっくりと開き、中に足を踏み入れる。

 

 

 

黒い髪は肩よりも長くなり、ベッドに上体を起こし、白い雪が舞い降りる窓を眺める彼。

枕元には彼を拘束し続けてきた兜がある、ナーヴギア。

その役目を終えて沈黙しているようだ。

わたしは1歩ずつ彼のベッドに歩み寄り…、

 

「キリト、くん…」

 

あちらの世界の彼の名前を呼んだ。

ゆっくりと彼はこちらに振り向き、驚いたような表情を浮かべたけれど、すぐに微笑を浮かべた。

 

「アスナ…」

 

わたしの名前を呼んでくれた、多分あちらの世界の名前を。

漆黒の長い髪と吸い込まれそうになる程の黒い瞳、中性的な顔立ちも痩せてしまったせいか儚げに見え、

だけどその身に纏う凛々しい雰囲気は決して失われていない。

彼のベッドに近づいてそのまま座り込む。

彼は僅かに辛そうな表情を浮かべながらも、右手をわたしの頬に添えてから……涙を拭ってくれた、涙?

どうやらわたしは泣いているらしい。

 

「何か、あったのか?」

 

少しだけ掠れる声で尋ねられた、彼にはなんでもお見通しみたいだ。

 

「大丈夫だよ…。最後の、戦いが…終わったの…」

 

「ごめん…。まだあまり聞こえないけど、でも……分かるよ、アスナの言葉が…。怖かっただろ…?」

 

労わってくれる彼の優しい心。こんな時でも、他人のことばかり心配して…。

だけどそんな彼が、やっぱり愛おしい…。

 

「これが、本当の始まりだから…。はじめまして、結城明日奈です……おかえりなさい、キリトくん…」

 

「桐ヶ谷和人です……ただいま、アスナ…」

 

今度は彼からも銀に輝く涙が流れた、わたしも同じだと思う。

そしてわたし達は唇を重ねた。

少し離し、もう一度、軽くそれでいて強く、お互いを抱き締め合いながら…。

 

 

 

わたしと和人くんは涙を流しながらも、ふと窓の外に顔を向けた。

雪が舞い降りていく中、2つの人影がみえた。

漆黒のコートを纏い背に剣を背負った少年と、白地に赤の騎士服を着て腰に細剣を据えた少女。

わたし達に向けて笑みを浮かべた後、手を繋いだ2人は身を翻して遠ざかっていった。

 

明日奈Side Out

 

 

 

魂は何度でも巡り合う、愛しき者を想い、強く願えば幾度でも…。

 

空に浮かぶ大きな城で、善でもなければ悪でもない、混沌の覇道を掲げる剣士の少年と、

心の奥で温もりを求めていた、料理が得意な少女。

 

2人が出会い、恋に落ちた。

 

かの世界の2人はもういない、けれど幾多もの世界の果てに、2人が想い合う限り、2人は出会い続けるだろう…。

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

ついに和人と明日奈が再会し、刻と直葉が結ばれました。

 

特に和人と明日奈の再会のシーンは『ALO編』では最も書きたかったので、感慨深いものがあります。

 

本編は残すところあと3話です、終わりも近づいて参りました。

 

是非とも、最後までお付き合いください。

 

このあとは番外編を投稿しますねw

 

それではまた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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