No.554782 魔法少女リリカルなのは -九番目の熾天使-クライシスさん 2013-03-13 19:51:39 投稿 / 全4ページ 総閲覧数:4477 閲覧ユーザー数:3852 |
煉達が闇の書の闇と戦う時、地球の側の宇宙空間から一隻の艦が突如現れた。
その艦の名前は『メンレム』。管理局の最新鋭艦であった。艦底には二門のビーム砲を備え、艦首にはアルカンシェルが搭載されていた。
「カラレス提督、闇の書を発見しました。どうやら暴走間近のようです」
「うむ」
カラレス提督は頷き、モニターに映し出された闇の書の闇を見た。
「何と醜悪な……。流石は闇の書と言ったところか」
しかしながら、カラレスの顔は笑っていた。これでまた出世が出来る、そう考えると笑みが浮かび上がってしまうのだ。
「総員、これより闇の書を破壊する。アルカンシェルの発射準備をせよ! あの忌々しき闇のs「提督、アースラのリンディハラオウン提督から通信です」……ふんっ」
タイミング悪く自分の言葉に割り込んできた通信士を忌々しそうに睨むとモニターに視線を移した。
『こちらは時空管理局『アースラ』の艦長、リンディ・ハラオウンです』
「『メンレム』艦長のカラレスだ。用向きは何かね?」
『第97管理外世界における作戦行動は全て私に一任されている筈です。戦闘行動を中止し、すぐに撤退して下さい』
「うん? 何の事かね? 我々は別に戦闘行動などしておらんが?」
リンディ提督の言葉にカラレスは鼻で笑い飛ばしてこう言い返した。実に白々しい。
『っ……アルカンシェルのバレルを展開しておきながらよく言いますね! 兎に角、すぐに攻撃を中止して下さい。闇の書は我々で破壊します』
しかし、カラレスは指示に従わなかった。
「ふむ……君は何故アルカンシェルを撃たないのだ? 闇の書が現れたのなら撃てば破壊できるのに」
『……今アルカンシェルを撃てば地球に済む無関係な人々を数多く巻き込んでしまいます』
アルカンシェルの威力は凄まじい。よって何十万という人々が巻き込まれてしまうのだ。
「ふんっ、何を甘えたことを! 君が撃たないのであれば私が撃たせて貰う」
『な、何を勝手に!? この一件は全て私が預かっています! 勝手な事は許しません!』
「知ったことか。例え命令違反をしても闇の書を破壊してしまえば目を瞑ってもらえるだろう。すぐに闇の書を破壊しようとしなかった君よりかは評価されると思うがね?」
『だからそれはっ!』
「もういい。君はそこでゆっくりと見物でもしているがいい……ふははははは!!」
そしてカラレス提督はアルカンシェルを撃つためにチャージを開始した。
俺達がリンディ提督の報せを聞いたのは、ちょうど闇の書の闇の攻撃しようとした時だった。
「な、なんで!? 関係無い人を巻き込まずに闇の書を破壊できるのにどうして!?」
『ごめんなさい、なのはさん。でも、管理局の中にはそういう人もいるの……』
「ふざけやがって!」
「冗談じゃないよ! 折角皆が幸せになれるっていうのにさ!」
「なんてことを……」
「……下卑が!」
簡単にまとめると、自分の出世の為に地球に向かってアルカンシェルを撃とうとしているらしい……俺達もろともな。
実にふざけている。折角ここまで来て後一歩というところで全て台無しになるのだ。そんなのは俺が許さない。
【高町なのは】
「え?」
【貴方達はそのまま攻撃しなさい。宙は……私がやります】
「で、でも!」
【宇宙空間で活動できるのは私だけです。なら、私が適任でしょう】
「なのは、ここはルシフェルに任せよう」
「王騎くん……。うん……分かった」
高町は渋々ながらも了承してくれた。
「ルシフェル、頼んだぞ」
【はい】
さて、それじゃあ行きますかね……クソ野郎の所へ!
【OBを使用します】
煉は一度、高町達から少し離れてOBを使用した。キィィンッとエネルギーをチャージし、次の瞬間にはもの凄いスピードで宙へと昇る。
「うぐぅぅっ!」
その際、とてつもないGが体に掛かるが、煉は普通の常人を遙かに超えた身体能力で問題は無い。普通の人なら良くて失神、悪くて内蔵が潰れているほどのGだ。
【接敵まで残り23秒】
しばらくすると目標が見えた。見た目はアースラと似ている。艦底にビーム砲が二門と、艦首にはアルカンシェルと思わしき物が一門搭載されていた。どうやら近接戦闘は想定されていないようで、対空火器が全くと言っていいほど無かった。
この程度なら煉の敵では無い。後はビーム砲とアルカンシェルをどうにかすればそれだけで終了する。
その頃、カラレス提督は……。
「っ! 何事だ!」
突然、艦内に警報が鳴り出した。
「敵と思わしき反応がこちらへ接近しています!」
「数は!」
「一つです!」
「一つ……だと? ……モニターに出せ」
カラレスは突然の事態に一瞬焦ったが、敵がたったの一機且つ2~3m程の大きさしか無い事に拍子抜けした。
「ふんっ、驚かせおって。たった一機で何が出来るというのだ! おい貴様、アルカンシェル発射までどれくらい時間が掛かる?」
「はっ、あと1分で完了します!」
「それまでディストーションシールドを張れ」
「はっ!」
カラレスは余裕の態度で命令し、艦長席へ座ってアルカンシェルの準備が整うのをゆっくり待っていた。しかし、カラレスは侮っていた。
このたった一機がどれ程の力を持っているのか知らなかったのだ。たった一機で一個艦隊を殲滅することが可能だという事を。
「ルシフェル、それぞれの状況は?」
【はい、地上では高町さん達が二枚目のバリアを突破。敵艦はシールドを張ってチャージを続けています。推定残り時間、1分です】
ルシフェルは淡々と答えた。
「それだけあれば十分だ」
煉は『Akatuki』を展開し、突撃する。しかし、メンレムのバリアを破ることが出来なかった。
「ふはははは! バカめ、その程度の攻撃でシールドが破れるものか!」
カラレスは未だに余裕の姿勢を崩さないでいた。しかし、この程度で煉もシールドが破れるとは思っていなかった。
「ルシフェル、一点突破だ」
煉がそう言うと胸部が開き、レンズ状の物が現れる。
【イエス、マスター。チャージ開始……70% ……80……90……チャージ完了】
その様子を見ていた通信士は慌ててカラレスに報告する。
「敵機、エネルギーを集束しています! もの凄いエネルギーです!」
「なんだと!?」
「そんな……これほどのエネルギーがあんな小さな機体で扱える訳が……!」
そして煉はそんな彼等の事はお構いなしに構える。
「喰らえ、『
そしてチャージを終えると迷うこと無く発射。敵艦のシールドに当たる。
「シールドに穴が空きました! シールド内に侵入されます!」
「バカな!? そんなことがある訳が『ズズゥンッ!!』な、なんだ!?」
「艦底ビーム砲がやられました! さらに被害拡大!艦内に火災発生!」
「バカな……」
煉はシールド内に侵入するとすぐに艦底にあるビーム砲を破壊した。そして所々に『Stardust』を撃ち込む。
「さて、後はアレだな」
そして次なるターゲットは艦首にあるアルカンシェル。もう間もなくチャージが完了するだろうアルカンシェルは異様な程の高エネルギーを溜め込んでいた。
ライフリングと思わしき魔法陣が回転を始めているので一刻を争う。よって、煉はアルカンシェルを止めに行く。即ちソレは破壊と同義。
そしてエネルギーが臨界にまで達した砲台を破壊するとどうなるか……。
【『Chaser』全弾展開、射出】
三十発のホーミングミサイルが展開され、煉の合図と共に飛翔する。そして、ミサイルは真っ直ぐにアルカンシェルの砲塔に向かい、爆散する。
「提督! アルカンシェル損傷! アルカンシェル発射できません! このままではエネルギーが暴発してしまいます!」
「な、なんということだ……」
少なからずにエネルギーを使っているので物理的に暴発を起こす。たとえ純粋魔力でも、これほどのエネルギーを溜め込んでいたらどうなるかは分からないのだ。
【目標の達成を確認。退避を推奨します】
「ああ、地球へ戻ろう」
煉は急いで戦闘区域を離脱する。
そしてカラレス提督は
「バカな……この私が……。私の出世が―――」
最新鋭艦『メンレム』と共に光りに包まれて爆散した。
「なんてこと……」
その様子をリンディ提督はモニター越しで見ていた。しかしながら、いくら地球を破壊しようとしても同じ職場にいる者を目の前で殺されるのはやはり気が引けた。
しかし、煉が破壊しなければ今度は自分の息子や罪の無い大勢の人達を巻き込んでいたのだ。結果、この件についてはルシフェルに責任は無いと思う。
それでも人殺しに関しては責めるべきなのだろうが、リンディは悩んでいた。それに、目の前で繰り広げられた圧倒的なまでの戦いを見せつけられて恐怖した。
「あの言葉は本当だったのね……。今後、彼女とは敵対してはダメね。それに、あの子の事も配慮は必要みたいね」
リンディは行動を共にしていたヴォルケンリッター、惹いてはその主である八神はやてに配慮して事を鎮める必要があると判断した。処置の如何によってはルシフェルが敵に回るかも知れないのだから。
さて、考え込むのはここまでにして、リンディは目の前の事に集中する。
「闇の書、間もなくポイントに転送されます!」
「エイミィ!」
「はい! アルカンシェル、バレル展開!」
目の前に環状の魔法陣が三つほど展開され、回転を始める。
「ファイアリングロックシステム、オープン! 命中確認後、反応前に安全圏まで退避します。準備を!」
リンディの目の前に小さなボックスが現れ、リンディは鍵を差し込んだ。
「アルカンシェル、発射!」
そして闇の書の核が転送された瞬間、リンディはアルカンシェルを発射した。
着弾後、広範囲に渡って反応消滅が起こり、闇の書の核は跡形も無く消滅したのであった。
「……終わったのね。…………クライド」
かつての夫を思うリンディ。その胸の内に感じたのは虚しさと寂しさであった。
こうして闇の書の事件は幕を閉じた。
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第二十二話「収束」