No.551441

ドキ☆なんかよくわからん恋姫的なもの  2話(再うp)

ドラぱんさん

充電期間を終え、復~活ッッッッ!!!!!!

前回(エラーの回)コメントをくれた諸先輩の方々、ほんと~にありがとうございました!!

これから頑張っていきますのでよろしくオナシャス!!

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2013-03-05 01:00:08 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:805   閲覧ユーザー数:710

雑草と木々に囲まれた田舎道。

 

仕入れ目的の行商くらいしか通らないであろう畦道を、一人の少女が馬にまたがりながら闊歩していた。

 

本来は長いであろうその青い髪を後ろで一纏めにし、白い扇情的な服に身を包んだ切れ長の目が特徴的な少女。その口元は現在は固く結ばれてはいるが、それでも男ならば誰でも振り向かずにはおれないほどの色気と華やかさがあった。

 

 

ただし・・・

 

 

その肩に担がれた長大な朱色の槍さえなければ。

 

 

 

彼女の名は趙雲子龍。

 

後の蜀の中枢にして、真の忠臣とよばれる人物である。

 

 

そんな彼女ではあるが、現在の彼女は自らの道を模索する一浪人でしかなかった。

 

 

いや、道はすでに決まっている。

なぜならば趙子龍の胸の内には、義がまかり通らぬ世の中をなんとかしたいという強い思いが渦巻いていたのだから。しかしながらそれを実現させるための方法を未だ見いだせないでいるのだ。

だからといってそれを延々と考えるなどということは彼女の頭の中にはない。何よりも目新しい刺激を好む彼女にとってそれでは退屈に過ぎるのだ。

 

だからこそ、彼女はあっけらかんと楽天的、いや単純と呼べるほど簡単に自らの行動を決めてしまった。

 

 

つまり、まず目の前の悪を討ち果たし、目に見える範囲の義をなそうと。

 

 

その中できっと自らの道をかなえる良き考えも浮かんでくるはずと、確証が何もなくとも彼女らしく自信満々に豪語してみせるのだ。

 

 

10人に聞けばその過半数以上が彼女のことを馬鹿だとあざ笑うだろう。

しかし、その果断ともいえる性質こそが趙子龍の英雄としての資質なのかもしれない。

 

 

そんな未来の英雄は、今回もまず目の前の義をなすために馬を進めるのだった。

 

 

 

(さて、ここら辺りだと聞いているのだが・・・)

 

 

 

頭の中でそう呟きながら、趙雲は注意深く首をめぐらせる。

 

 

目で耳で鼻で気配で直感で・・・趙雲の用いるすべての感覚を動員し、注意深く探っていく。

 

しかし周りは今までと変わらず静かだった。

 

いや・・・静かすぎた。

 

 

趙雲は今回、この近隣を荒らしまわっているという賊を成敗するために、次の標的であろう村まで駆けつけたのだ。しかし、どれだけ気配を探っても、人の気配が微塵もしない。

 

 

(道を間違ったか?)

 

 

 

いままですべての場所にすんなり着いたわけではないが、それでも全く見当はずれの場所にでたことはない。なにより彼女自身、道を大きくは間違えていないという確信がある。

 

 

 

(とすれば、賊にとっくの昔に略奪され廃村になったか、それとも村を捨て逃げ出したか・・・)

 

 

 

今までもそういった経験がなかったわけではなかった。

それも一度や二度ではない。

 

そのたびに趙雲は自らの力不足を嘆き、憤怒の炎を育ててきたのだ。

 

 

(・・・・ッ!?)

 

 

と、突然口元に痛みが走り、手で唇を抑えた。

触れた指には血がついており、それは下唇から流れている。

どうやら、気づかぬうちに唇をかみ切っていたらしい。

 

自らの行動に、趙雲は自嘲気味に苦笑いをした。

自らの憤怒がここまで積もっていたとは、我がことながら気づかなかったからだ。

 

 

(すでに自らの心はその矛先を自らの至らぬ体に向けている。もしかしたらこの先私は自らの憤怒によって殺されるかもしれぬな。)

 

 

趙雲は自らの心が自らの体に最も強く憤怒するとはと自嘲せずにはいられなかった。

しかしながら、今は哲学を模索している場合ではない。

自らの心をこれ以上失望させてはいけないと、趙雲は力強く前を向く。

 

 

(とにかく急がねば・・・!)

 

 

 

そして、胸に渦巻くもやもやとした嫌なものを抑え込むように、趙雲は手綱に力を込めたのだった。

 

 

 

穴を掘る、掘る、掘る・・・

深く深く、外の喧騒が聞こえないように、外の世界を感じなくて済むように。

 

 

穴を掘る、掘る、掘る・・・

いくつもいくつも、一人で安らかに眠れるように、自分の世界に浸れるように。

 

 

穴を掘り、かつては動いていたソレを穴に埋め祈る。

それを何度も繰り返す・・・たった一人で。

 

 

死の香りの強くする、常人であればどこかおかしくなるであろうその場所で、北郷一刀は黙々と作業を繰り返した。

 

 

その表情には感情はおろか生気すらなく、そのヨロヨロとした動きと相成ってまるで幽鬼が死体をむさぼっているかのようだった。

事実、その光景の唯一の目撃者である趙雲も、はじめソレが人間であるとは思えなかったほどだ。

 

 

 

 

趙雲がそこに至る少し前、彼女はやっと村にたどり着くことができた。

 

しかしそこに広がっていたのはまさにこの世の終焉を描いたかのような絵面であった。

家は燃え朽ち、代わりに転がっているのは矢や折れた剣や馬の死体。

地面や壁、いたるところが赤く染まり、人の吐息一つしない。

 

 

(・・・賊の仕業ではない)

 

 

趙雲はすぐに確信した。

これほどの破壊、賊ごときができるわけがない。

確かに賊に慈悲などない。いきなり襲い掛かり全てを奪っていく。

 

 

しかし・・・・これほど徹底して壊さない。

 

 

(もしや・・・。

 

・・・・・・・・・・っ!?)

 

 

と、思案しながらも村を探索する趙雲の目の前に、飛び込んできた光景。

それは趙雲の確信の域にあった推理を現実のものとするものだった。

 

村の広場らしき場所に建てられた風にはためく巨大な旗、その中央に書かれる「漢」の一文字。

 

 

 

(やはり・・・官軍か。)

 

 

 

こぶしが軋む、肩が震える、噛みしめた口元からはあまりの強さに血が垂れる。

 

趙子龍は憤怒していた。

 

何度目かもわからぬしかし想像を絶するほどの激情が渦巻いたのだ。

 

 

 

(おのれ・・・・ハイエナどもめぇ・・・・・)

 

 

この非道に・・・そして何よりもこの非道に対して怒り狂うことしかできない自らのふがいなさに。

 

 

趙子龍は憤怒していた。

 

 

だが、止まるわけにはいかない。

ただ怒り狂うだけではいけない。

まずは自らができる義を行わなければ。

そう心のなかで、憤怒するもう一人の自分に言い聞かせ、深い深呼吸をしながら徐々に心を押さえつけていく。

 

 

(・・・・・・よしっ!)

 

 

踏ん切りはついた。後は動くだけ。

 

趙雲はさっそく生存者を探すことにした。

現状人の気配を感じることはできないが、手遅れと断じてしまうのは早い。

生きている者は保護しよう。

そして未だ生と死の狭間にいるものは・・・楽にしてやらなくてはいけない。

それが現状趙雲にできる、唯一のことであった。

 

 

いくばくか歩いたころ、趙雲はある異常に気付いた。

 

まずいくら官軍の仕業とはいえあまりに仕打ちが過分であること。

全ての家屋を破壊し、一人の生存者も見当たらない。井戸が破壊されていることから、賊の目的が収穫物などではなくこの村自体であることはわかるが、それにしてもひどい。

 

 

そしてもう一つ・・・

 

 

死体がないのだ―――――――――――ただの一つも。

 

 

(まさか、追剥でもいるのか?)

 

 

襲われたばかりの廃村にその手の輩がわくのは至極当然のことだ。

彼らには彼らの言い分があるのだろうが、いかんせんタイミングも相手も悪かった。

 

いまの趙雲にとっては追剥など単なる憂さ晴らしのカモでしかないのだ。

 

 

「これは・・・成敗せねばならんな。」

 

 

ゾッとするようなしかし美しい、そんな壮絶な笑みを浮かべ趙雲はつぶやいたのだった。

 

 

さらに村の奥にいき、おおよそ村のハズレといってもいい場所まできて、やっと趙雲は人に合うことができた。

だがその人物は誰がどう見ても怪しかった。

 

血のこびり付いたボロボロの服をまとった男。

年のほどはわからないが、おそらく趙雲よりも年上だろう。

 

そしてその男はふらつく足取りで、しかししっかりと運んでいたのだ。

 

 

 

―――――――――――――――死体を。

 

 

 

男をみる趙雲の目は、まさに獲物を見つけた肉食獣のそれだった。

しかし肉食獣ほど冷静で慎重な性質を持つ。この時の趙雲も心を爆発させながらも、頭は至極冷静だった。

 

 

(村中の死体の追剥をするなど一人ではできん。きっと仲間がいる。

 

奴を泳がせて仲間もろとも一網打尽にしてくれる・・・!)

 

 

上体を沈み込ませ、槍の矛先を地に擦るように構えながら、悟られぬよう慎重に尾行を続ける。

男はそんな趙雲に一度も気づく素振りすらみせず、村のすぐ裏手の森に入っていった。

趙雲の胸ほどの高さのある林、その中を男に気づかれぬよう頭の先まで隠れるように屈みながら、男の足音と気配を頼りに進んでいく。勿論、ほかの人間の気配も探ってはいるが、男以外の気配を感じることはなかった。30分ほど歩いただろうか、男の足音がやみ、かわりにドサッっと唐突に死体を置く音がした。

 

 

 

(尾行がばれたか・・・?

   

 ・・・いや、目的地についたのか。)

 

 

 

趙雲の槍を握る手もそれに比例するように強くなっていく。

しかし逆に体はだらりと余分な力が抜けていき、いつでも男を突き殺せる状態を作り上げていった。

 

そして頭の中で一呼吸置いた後、少しずつ繁みから顔を出していった。

 

いくら趙雲が相当の腕の持ち主とはいえ、所詮一人。

であるからして、仲間は何人でどの位置にいるのか把握したうえで、必殺で仕留めていく必要があるからだ。

 

 

だが、目線を完全にあげたとき、そこに映し出された光景に趙雲は呼吸がしばし止まった。

 

 

積み上げられた死体と、いくつもの穴・・・幽鬼のようにフラフラと穴を掘り続ける先ほどの男。

 

 

まるで黄泉の国の光景であった。

 

 

そして趙雲は気づく。

彼は追剥などではない。彼は・・・・

 

 

 

 

「・・・・・・・生き残り。」

 

 

 

 

――――――――――――――――――であると。

 

 

その趙雲のつぶやきに、男はバッと振り返り、その濁った目を向けた。

 

その瞳にはほの暗く淀んだ影が映りこんでいる。

 

それは趙雲をして唾をのみこむほどの異様な眼力であった。

 

 

「・・・・い、いや驚かせてすまなかった。

 

私は旅のもので、たまたまここに寄らせてもらったのだが、村にはだれもいなくてな。

 

あなたをたまたま見かけて後についていったんだ。」

 

 

真実ではないが、言い訳はすんなりとでてきた。

むろん笑みは引きつっていたが、その程度であるならば問題はないだろう。

 

現に男は先ほどよりも険をほどき、頭を下げながら小さく「これは無礼をいたしました・・・」とつぶやいた。

 

その態度に、趙雲は内心で感心した。

以外にしっかりとしている。心が完全に壊れてしまったわけではないようだ。

 

そうとなればと趙雲は目の前の人物に対して対話を求めることにした。

何事も話してみなければ始まらない。

 

 

「私は趙雲という。あなたの名をうかがってもよろしいかな?」

 

 

「・・・・・・・私は北郷と申します。」

 

 

趙雲の名を聞いたとき、男――――――――北郷一刀はかすかに反応したが、すぐになんでもなかったかのように口をあけた。

目ざとい趙雲もその一瞬の反応には気づいたものも、気づかないふりをして華やかな笑顔を振りまきながら一刀へと近づいて行った。

陰気に俯くどこにでもいそうな平凡な男と、誰もが見とれる美貌に笑顔を咲かせる女。

そしてその周りには死体の山と穴。

 

もしかしたら、趙雲自身もかなりずれた感性の持ち主なのではないだろうか・・・。

 

だが当の趙雲はそんなことは露にも思わず、なおも言葉を続けていった。

 

 

「見たところ死者を弔ているようだが・・・」

 

「・・・・はい、戦がありましたので。

 

私一人生き残ってしまったので、せめて村の仲間たちを弔おうと。」

 

 

趙雲はフムと一言つぶやくと辺りを見回した。

それを見ればなるほど、一刀の目の前にある穴には、一つの死体がおさまっているようだった。

しかし、解せないこともある。

 

 

「見たところ、官軍の死体もあるようだが・・・」

 

 

そう、その中には官軍らしき鎧をきたものもあったのだ。

はたしてこれはどういうことなのか。

いや、答えはわかっている。しかし趙雲には信じられなかった。

 

普通はあり得ないのだ。

普通の精神ではできないのだ。

 

 

 

自らの破滅の元凶を弔ってやるなど・・・

 

 

 

しかし彼は弱弱しく、しかし初めて見せる微かな笑顔で答えて見せた。

 

 

「どうでもよくなったので・・・」

 

「どうでもよくなったとは?」

 

 

怪訝な表情を浮かべながら趙雲は返した。

しかし一刀は表情を変えぬまま、弱弱しく・・・しかししっかりと答えた。

 

 

「最後の際に彼らはこういったんですよ。  助けてってね。

 

そしたらなんか憎んでた自分がバカみたいで・・・。」

 

 

信じられない。

心から、そう心からそう思う。

それは人間の考え方じゃない。それは人間ができる考え方じゃないのだ。

 

 

「ならば・・・誰も恨まぬとおっしゃるか?」

 

 

声を震わせながら、趙雲は口を開く。

喉も唇も渇き舌もおぼつかない。しかし趙雲には気にならない。

それほどまでの緊張であった。まさかこの方が噂に聞く神の使い・・・

 

 

 

 

 

――――――――――――――――それは劇的な変化であった。

 

 

 

 

 

 

趙雲の問い。

その問いの後、一刀の表情は一変した。

先ほどとは違い、気力と活力に満ち満ちている。

 

そしてその表情は・・・・・・・・・・・・・・・・憤怒で煮えたぎっていた。

 

 

 

 

その時趙雲は理解した。

 

 

 

 

「恨まない?それはあり得ない。

 

何べん八つ裂きにしてもし足りないほど憎い。

 

必ず復讐してやる・・・!」

 

 

 

 

この方・・・いやこいつは、神の使いでもなければ間違っても聖人などではない。

 

 

 

「だがそれはこんな下っ端にじゃない。

 

ましてや盗賊でもない。

 

こいつたちを操る奴ら、王、国・・・・」

 

 

 

 

こいつは・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「この糞みたいな世界を作った奴ら全員に復讐したいッ・・・!」

 

 

 

私と同じなのだ・・・・と。

 

 

 

やりかたはわからない、だけど必ず復讐してやる―――――――そう涙をにじませながら慟哭する一刀に、趙雲は自らをだぶらせて見ていた。

 

同じだ。この国をどうにかしたくて、だけどできない。

そう毎日心のなかで泣いていた昔の自分にそっくりなのだ。

 

 

今のように変に割り切る前の――――――――――諦めてしまう前の自分に。

 

 

だからかもしれない。

すんなりと言葉がでてきたのは・・・

 

 

「ならば私についてこられてはどうか?」

 

 

これが北郷一刀と趙雲子龍――――――星の初めての出会いであった。


 
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