No.549696

魔法少女リリカルなのは 四天王始めました

バロールさん

無印編 2話 家族と衝動

2013-02-28 19:14:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1411   閲覧ユーザー数:1352

翌日、昨夜の事がニュース番組で放送されていた。

 

『ーー現場には3名の少年の遺体があり、一人は全身が焼け爛れており、もう一人は体の一部が無くなっており、最後の一人は胸元に大きな風穴、そして身体中の骨が砕けており、現場は悲惨としか言い様のない状況になっています』

 

ここまで見てテレビを消す。

 

ヤバイ……血を見たせいで……血が飲みたくなってきた。落ち着け、落ち着くんだ……。

 

「どうしたの?」

 

「っ、ああ、ちょっとぼうっとしてた」

 

ばつが悪そうに笑いながら言う俺にふーんと言いながらもリゼットは納得できないと言った表情を浮かべる。

 

「大丈夫だからさ朝食を食べよう」

 

俺はそう言ってリゼットの背を押してリビングに向かうのだった。

 

 

 

朝食はいつもと同じはずなのに昨日の朝食ほど満たされなかった。学校に向かう途中もリゼット達と会話していたが常に昨日の血の味が思いだされる。

 

油断していると今すぐにでもそこら辺にいる人を襲い血を啜りそうだ。それを理性で必死に抑えながら学校に向かって歩いていく。

 

なんとか学校に着いて教室に向かう。その途中でクラスメートや同学年、先輩、後輩とれ違う毎に本能が喰らえと叫ぶ。

 

それらを理性の鎖で縛り、耐え続けて授業を受ける。休み時間になると俺はすぐさま人のいない屋上に向かう。

 

屋上に着くと俺は貯水タンクのある場所に行き、それに背を預けて目を瞑る。

 

 

 

 

 

見渡す限りの赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤。

 

そして、それを歓喜の表情で啜り、飲んでいる自分。そして、その足元に転がるリゼット、レオン、シア、ヴァルド。

 

止めろ……止めろ……。

 

自分が笑いながらリゼットに食いついた。

 

俺じゃない……俺じゃない、アレは……俺じゃない。そして、リゼットに食いついている俺がこっちを向いて言った。

 

【これが……お前の望んだことだろう】

 

違う、違う……俺はそんなの望んでいない!

 

「ッ!!!……ハァ、ハァ……」

 

目を開き辺りを見渡しながら息を整える。

 

「……夢……か……」

 

最悪な悪夢だ……俺自身の手でなんて……本当に最悪だ。空を見上げると雲一つ無い快晴だが、俺の心は曇りに曇っている。

 

本当に最悪な気分だ……。休み時間の終了を知らせるチャイムが鳴るが貯水タンクに背を預けたままでいる。

 

こんな状態で人が多い場所にいたらいつ衝動を抑えきれなくなるか分からない。

 

そして……昼食の時間まで俺は屋上で過ごした。

 

(レイン、今何処にいるの?)

 

リゼットから念話で話しかけられた。

 

どうする……返事をするべきか?

 

(レイン、返事をして)

 

(……何、リゼット)

 

結局俺は返事をすることにした。

 

(何じゃないんだけど?今何処にいるの?一緒にお昼を食べましょ)

 

(ごめん無理)

 

(何でよ!)

 

(ちょっと……問題が発生してね)

 

実際にはちょっとってレベルじゃないんだけどね。

 

(……大丈夫なの?)

 

(……大丈夫だから……とりあえず、今日は諦めてくれ)

 

そう伝えて、俺は念話を終わらせる。

 

このまま此処にいると誰かが来そうでヤバイ。衝動が徐々に強くなっているのが分かる。

 

なので俺は屋上から校舎裏の木に飛び、人の目が無いのを確認すると道路に飛び降りて、一般人が視認出来ないスピードで山に向かって走り出す。

 

 

 

 

山に着くと俺は一番大きな木の枝に腰を下ろし、街を見回す。まだ時間はお昼時なので飲食店に入っていく人達の姿が多く見受けられる。

 

そして、俺を見つめる視線も……。

 

「何か用かな?」

 

姿を現さない視線の主に声をかける。

 

「やれやれ……バレていたか」

 

頭を振りながら一人の青年がおちゃらけた様子で木々の間から出てきた。

 

「もう一度訊く……何のようかな?」

 

今は余裕がないので単刀直入に問いかける。敵であるならば……すぐさま始末させてもらう。

 

「昨夜の三人を殺した犯人はお前だな」

 

へぇ……もうバレたんだ。でも、俺が殺したのは一人だけなんだがな……そこは、まだバレてない。

 

俺は目を細めて笑みを浮かべる。

 

「それがどうかしたのか?」

 

「認めるんだな?」

 

確認するように言う青年に思わず笑いが込み上げてきた。

 

「ク……ハハッ……もう分かってんじゃないのかな」

 

「ああ、確信してるさ……だからお前はここで俺が始末してやる」

 

そう言って青年がデバイスを取り出した瞬間に俺も木から飛び降り、青年から数メートル離れた位置に着地する。

 

「お前はデバイスを使わないのか?」

 

デバイスを出さない俺を訝しく思ったのか青年が問いかけてきた。正確には持っていないが正しいのだが、青年はそんなことは知らない。

 

「……使う必要がないそれだけだよ」

 

「っ!舐めやがって……後悔しても知らねぇぞ!タイタス、セットアップ」

 

『setup』

 

俺の言葉に切れた青年が中世の騎士甲冑のようなBJを纏い、太刀型のデバイスを両手で握り締めて構える。

 

「死んで後悔しやがれぇぇ!」

 

『flashmove』

 

一気に数メートルの距離を詰めて太刀を上段から振りかぶる青年。でもまだ遅い。妖力の解放をせずに避けれる。

 

そのまま太刀が俺の幻影を切り裂いた。

 

それが幻影だと知らずに笑みを浮かべる青年。そんな隙だらけな青年を背後から鋭利に尖らせた手で貫く。

 

「ガハッ!ば……か…な…!?」

 

『m、master!』

 

信じられないと言った表情の青年。目の前て俺の残像が消え失せ、目を見開く。

 

幻影……それは残像を残すスピードで移動する技。それは本来なら妖力を瞬間的解放してやるのだが今回は解放せずに使用した。

 

「さようなら」

 

俺は腕を引き抜くともう片方の腕を振るい青年の首を切断し、吹き飛ばす。

 

青年の体から噴水のように血が吹き出して、その血が俺に雨のように降りかかり聖祥の制服を赤く染め上げる。

 

そして、俺はその血を啜った。既に片腕が青年の体を貫いた時から限界だったのだ。腕に付着した血を舐めとり、次に崩れ落ちた頭の無い青年の体を持ち上げて垂れてくる血を飲む。

 

数分後、衝動が鎮まり正気を取り戻す。そばには首の無い胴体に風穴を開けた青年の死体。どうやら血しか飲まなかったようだ。首が無いのと風穴以外の外傷はない。

 

ハァ……やっちゃったか…………今は大丈夫だがいつ衝動が出てくるか分からないのがキツイ。何かしらの対策を立てておかないとな……。

 

それに、こんな状態じゃな……。自分の着ている服に視線を移すと真っ赤に染まっている。これじゃ表に出られないから迎えに来てもらうか、夜になるまで待つしかない。

 

そう思いどうしようか考えているとーー

 

(レイン今何処にいるの?)

 

リゼットから念話で呼び掛けられた。

 

(学校の外の山の中だよ)

(ちょっ!何でそんな所にいるのよ!)

 

(ちょっとばかり問題が発生してね。それで迎えが欲しいんだけど)

 

(問題?何があったのよ)

 

(返り血が酷くて服が汚れちゃって)

 

(返り血って!?レイン、貴方ねぇ…まあ、いいわ。とりあえず、そこで待ってなさいすぐに迎えに行くから)

 

念話が終わり、すぐにリゼットが此処に転移してきた。そして俺の姿を見るなり。

 

「うわ~真っ赤ね」

 

と顔をしかめなが言った。

 

俺はそれに苦笑しながら、

 

「まあね」

 

とだけしか言えなかった。

 

あの青年が使っていたデバイスはリゼットが回収して家に持ち帰った。

 

リゼットは学校に戻らずに持って帰ってきたデバイスに自分のデバイスでハッキングしてデータを取り出すために早退した。

 

俺はこの姿ーー血に染まった制服ーーでは問題があるのでリゼット同様早退すると学校に連絡した。

 

 

 

 

 

その日の夜、リゼットが真剣な面持ちで俺の部屋にやって来た。

 

「コレはどう言うこと?」

 

そう言ってリゼットはデバイスから映像を映し出した。

 

その映像には満面の笑みを浮かべて青年の死体から血を飲む俺の姿が映っていた。

 

そっか……知られちゃったか。内心苦笑するなか俺は映像が終わるのを待つ。

 

「見た通りだよ」

 

「……いつからなの?」

「昨日から」

 

「どうして言ってくれなかったの?」

 

「耐えるのに必死にだったのと、登校中も授業中でも衝動が大きくなっていって、いつ襲い始めるか分からなかったから」

 

「そう……」

 

俯くリゼットに俺は言う。

 

「一緒に住むのが嫌なら出てくから……必要なら今すぐにでもね」

 

俺がそう言ったらリゼットが怒鳴った。

 

「そんなこと言わないで!」

 

そして、床に押し倒され、リゼットにマウントポジションを取られる。

 

「レインは私の家族の一員なの!ようやく出来た初めての家族なの!!」

 

「……もしかしたら殺されるかも知れないのに?」

 

「ええ……それでもよ。私はそれでも家族と一緒に過ごしたいの」

 

「……後悔するかも知れないよ?」

 

「後悔しないかも知れないじゃない?」

リゼットはそう言って不敵に笑う。

「また衝動が出てきたらどうするの?」

 

「その時は私の血を飲みなさい……他の誰かの血を飲むんじゃなくて私のを」

 

「俺は吸血鬼じゃないから相当痛いよ、きっと」

 

「それでもよ」

 

「もう、後悔しても遅いよ?」

「構わないわ。後悔なんてしないから」

 

ありがとう、俺は口に出さないで心のなかでそう告げる。たった一人の同族のいない俺の家族になってくれて、本当にありがとう。

 

「後、心配をかけた罰として今日からコレ着用ね」

 

そう言って渡されたのはメイド服。

 

コレを着ろと?確かに罰と言えば罰なのだがこれはリゼットの趣味も入ってるのではないか?

 

マジ?といった視線でリゼットを見ると瞳をキラキラと輝かせながら期待に満ちた目で頷かれた。

 

色々と負い目があるから断れない。……仕方ないと覚悟を決めたのまでは良かったのだが着方が分からない。

 

「着方が分からないのだが」

 

俺がそう言うと待ってましたとばかりにリゼットに着せ替えられた。

 

「あっ、今度から家にいる間はずっとその格好でね♪」

 

リゼットは上機嫌な声でそう言った。

 

ついでに言うと女装に段々と抵抗感を感じなくなっている自分に気づき俺は少し悲しくなった。

 


 
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