No.549652

リリカルなのはSFIA

たかBさん

偽りの空の下の黒羊。

2013-02-28 16:50:06 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:5483   閲覧ユーザー数:4904

 偽りの空の下の黒羊。

 

 

 

 力が欲しかった…。

 あいつ等と、あいつ等の傍で戦えるような力が欲しかった…。

 …ただ、それだけだったんだ。

 

 

 

 ???視点。

 

 魔法世界。ミッドチルダ。

 そこで法を守る集団。時空管理局の会議が進められていた。

 

 「と、このように人員を配備すれば犯罪検挙率を伸ばしながらも、市民や局員の命さえも守ることが出来るのです。どうか、ご英断を!」

 

 ざわつく会議場で俺は『質量兵器の配備』について再度申請していた。

 これが通れば、魔法だけの世界ミッドにも魔法を使わない兵器。スタングレネードや避致死性の銃器を配備できる。

 魔導師だけで世界を守るのではない!我々、正義の意志を持つ同志たちも守ることが出来るのだ!…だが!

 

 『今回の提案は不認可』

 

 ガンッ!

 

 会議を終えた俺は自室に戻ると自分の机を力任せに、拳を叩き付けた。

 

 帰ってきたのはいつもと変わらぬ『事なかれ主義』達の反応だった!

 こいつ等といったら上からパイプでつながっており互いに甘い蜜を吸いあっている。教会の奴等も同様だ!

 今は亡き聖王とやらを旗印に、強力な魔導師を抱えている。

 あれは過多とも言ってもいい!

 そんな不条理に頭を抱えていた時、一つのニュースが飛び込んできた。

 たった一人の賊に聖王教会に当時従事していた騎士。この場合は魔導師たちが全滅。死んでこそいないにしても全員が重傷というニュースが入り込んだ。

 そのニュースを知り、その調べ続けていると『闇の書』と言う存在を知り、更に『スフィア』というロストロギアの存在にたどり着いた。

 だが、その存在は既に無くなっていた。

 『闇の書』事件の情報はその時被害にあった魔導師のデバイスにあった情報。そして、編集された暴走体との戦い。

 『スフィア』という物に関しては口伝の情報が多い。

 金属の輪から光弾が出るとか、棺桶の中から収束砲が出るとか、フィジカルブーストに更にブーストがかかったかのような現象があった。

 ただ、多くの『スフィア』を用いた瞬間の画像・映像があまりに少ない。これは意図的に消されたものとみて間違いないだろう。

 映像として残っているものもある。

 『スフィア』を持った青年。黒の鎧を身に纏ったアサキムの映像は残っていた。

 彼は一人で聖王教会を。そして、時空戦艦一隻分の部隊を一人でいなしたという強者。

 歴戦の魔導師。エースオブエースのゼストでも勝てるかどうか…。

 

 「それは気にしない方がいいよ。…それよりも次の審査会には『ロストロギアを実戦配備する』という、議題があるんじゃないのか?」

 

 「…わかっている」

 

 この議案が通れば地上の本部の守りは更に頑強な物になる。

 この提案。そして、兵器導入案を通すためにも俺は…。

 

 「…例え悪鬼である貴様に魂を売り払おうと私は世界を守る」

 

 そして、その議題を押し通すという力を俺は手に入れた。

 そう、すぐ隣にいる青年から!

 

 「立派な愛国心だね。『偽りの黒羊』。いつでも僕は君を狩ることが出来る。それを忘れたわけではあるまいに」

 

 それが自分の命を隣に立っている青年に消されようともだ!

 

 「…消えろ悪鬼めっ。それとも俺をこの場で殺すか?」

 

 奴の実力を肌で感じている所為か、俺のすぐ隣にいる奴に顔を合わせることが出来ない。

 ただ横を見ないように前を見ながらアサキムに話すのが精いっぱいだった。

 

 「安心しなよ。『偽りの黒羊』。君はここでそのまま自分の心と世界に『嘘』をつき続けていればそれでいい」

 

 「…何が目当てだ?」

 

 俺の声を聴いてアサキムは悲しそうにそしておかしい物を見たかのように微笑みながら言った。

 

 「…『水瓶』に戦火と嘆きから生まれた願いと祈り。それを奉納して僕は王を目覚めさせる」

 

 「貴様!ちゃんと答えろ!」

 

 俺はあいまいな答え方をするアサキムへの怒りでやっと横に顔を向けることが出来たが、その時既にアサキムの姿は無かった。

 

 

 オーリス視点。

 

 「失礼します」

 

 私は父親で上司のレジアス少将。時期に中将になられる個室へ入室すると、目的の人は顔を真っ赤にさせて激怒した状態だった。

 

 「なんだ!」

 

 「本日の議題ですが、本局の方々の中には賛成派も少しずつではありますが増えてきております」

 

 「どの程度…」

 

 「二割ほど」

 

 「足りん!あまりにも足りなさすぎる!他の連中も本部を守るという重大性を理解してはいない!」

 

 「あと、もう一つ。レジアス少将に査察が入るという情報を手に入れました」

 

 「ふんっ!少し増えたと思ったら査察か!どうせ、増えた奴等も『魔法主義』の『事なかれ』組が仕込んだ奴だろう!」

 

 「このところの少将は質量兵器や人員配置の改革など過激なことが多いからでしょう。…如何なさいますか?」

 

 「ふんっ!すぐにでも来いと伝えておけ!」

 

 その言葉に私は驚いた。

 父は今まで整理された資料を渡して査察期間を短縮してきたのに、今回はすぐに受けると言ってきた。

 

 「ただし!俺は査察を受けている間も働かせてもらうぞ!」

 

 「行動は制限されると思いますが…」

 

 「オーリス!事務処理出来るものをその日にかき集めて来い!俺がそんなに気になるのなら隣で見ていろと査察官どもに行っておいてやれ!」

 

 「…畏まりました」

 

 私は一礼して少将の部屋を出ていく。

 彼に何かあったのだろうか。まるで査察など怖くないと言わんばかりの態度。

 少なくても正義を語るにはふさわしくない証拠も片づけなければ出てくるはずなのにそれを騙すこと(・・・・)など出来るのだろうか?

 

 「…ふぅ」

 

 私は今も平和な青い空を見上げてため息をこぼす。

 ゼスト様達とチームを組んでいた頃、過激な性格はそのままだが楽しそうだった父さん。

 もう、あの頃のように誰かと共に『世界の平和』を謳って笑う日は来ないのでしょうか?

 出来ることならもう一度、そんな日を迎えて欲しいと思う。

 

 「ゼスト様に今度、相談してみようかしら…」

 

 娘なのに部下なので私情を挟みにくい私は多忙な父の親友に連絡を入れる為、通信機器を手に取ったのだった。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
11
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択