No.548864

司馬日記25 暑気払いにて。あるいは呉と蜀の惨劇

hujisaiさん

その後の、とある文官が暑気払いに出席した時の事です。

2013-02-26 11:48:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:14580   閲覧ユーザー数:9217

8月26日

三国各局の管理職級の親睦を兼ねた暑気払いが行われた。

 

珍しくかなり酔われた公達様が、やおら立ち上がるや郭淮を連れて宴席の前方へふらふらと出て行かれると、

「今日は無礼講だからね!一番荀攸公達、物真似するわよ!」

と宣言された。するといつ用意していたのか猫耳を頭に取り付け、両手を腰にあてて郭淮を睨みつける様にした。あれはきっと文若様の真似なのだろう、伯母だけあって面影があると思って見ていると、にやにやしながら

「この色情魔!何他の女の尻ばかり見てんのよ!」と郭淮を怒鳴りつけた。すると

「ああごめんごめん」と郭淮もにやにやしながら謝る真似をするが、あれは一刀様の真似なのだろうか?

「変態、全身精液男!あんたも万年発情男なら私にだけ発情しなさいよ!いい?他の連中にはわからない様に愛情表現してるだけなんだからっ、勘違いするんじゃないわよ!これは後でいっぱい虐めて欲しいって前振りなんだからね!恥ずかしいから他人から見たら絶対好きなようには見えないようにしてるだけなのよっ!」

「ああ分かってるさでもそんなににじり寄らないでくれ、あばら骨が突き刺さってちょっと痛いんだ」

「何ですって!あんたが痛がってないで私に痛くしなさいよ、この馬鹿ぁ!」

そんな掛け合いに宴席がどっと沸いたが、御本人が見られたらきっと烈火の如く怒られるだろう。

 

一頻りの笑いが収まると、今度は明らかに酔っている子敬が「それアリなら呉もやります、呉も!脚本、魯粛!女優、周泰と蒋欽!」と声を上げると同じく顔の赤い二人がとてとてと前方へと出てきた。

周泰殿が器用に団子型の髪飾りを着け、豊かな黒髪を服の中に入れて隠すと首に手ぬぐいを巻いた。そして蒋欽殿の背後へ廻ると目じりを吊り上げ、小刀を抜いて腕を廻し蒋欽殿の首元に突きつけた、あれはおそらく甘寧殿の真似ではないか?

「おい」

「な、なんだよぉ」

周泰殿が脅すような声色をし、蒋欽殿が怯える真似をする。

「私はやりたい」

「いきなり過ぎだよ!」

呉を中心に宴席がどっと湧く。

「お前の希望の通り、私は今日履いてない」

「履かないでくれなんて言ってないよ!」

「うるさい、お前のいやらしい目がそう言って居たんだ」

「人のせいにするなよ!」

げらげら笑う声に混じってこれ言いそー、とかやばいよー、という声の方を見ると徐盛殿と諸葛瑾殿が涙を流して笑っていた。

「明日は蓮華様の日だろう」

「そ、そうだけど」

「じゃあ蓮華様の御負担を減らすため、今日のうちにすべて出しておくんだ」

「それ自分の欲望だよね!?」

「幸い私がお前にらぶらぶちゅっちゅなのは誰にもばれていない」

「絶対みんな知ってるよ!」

「うるさい黙れ。特に蓮華様には完膚なきまでに知られていないはずだ」

「むしろその性癖心配されてるよ!」

 

あまりに調子のよい掛け合いにこれは本当に即興なのだろうかと感心する。

「いいか一刀」

「な、なんだよぅ」

「女は胸じゃない」

「分かってるよ、って明命ちょっと首食い込んでる!ちくってするんだけど!」

「最近成長してきた小蓮様の胸に嫉妬などしていない」

「わかった!わかったから、明命血!血出た!」

見てみると、彼女らは髪の長短は違うものの容姿は似ている。しかし蒋欽殿の方が確かに胸元がややふっくらしているようだ。

「それと一刀」

「いいからこの刀どけてくれよ!」

「メイドは好きか」

「す…好きだけど」

「お前が好きなのはつるぺたへぅメイドか?ツンツンメガネメイドか?それとも本当は普段との落差が萌え萌えな青色エプロンの素敵なお姉さんメイドが一番好きなんだろう?」

「聞き方に悪意を感じるよ!とあと一番初めのはやばいよあとで土下座しに行こうよ!」

「いいからどれが好きなんだ!」

「み…みんな好きだけど…」

「そうか多少むかつくが正直者のお前にはツンデレな青色エプロンのお姉さんを縛って犯る権利をやろう、もう縄なら用意してあるというか装着済みだ」

「はじめっからその落ちが狙いかよ!」

 

どうも有り難う御座いましたー、という二人には宴会場から惜しみない拍手が送られた。

 

すると御嬢様と子孝様、子廉様が宴席の前の方へ出られて、

「はいはーい、もう一つやります!」

と仰ったので見ていると、

子孝様が目を細めて真面目な表情を作り、

『張郃、頼んでいたあの仕事はどうなっている』

と鋭げな声色で言うと子廉様が

『出来ているわ、書類はここよ』

と言って渡す真似をし、それをしかつめらしい顔をして頷きながら受け取った。きっと子廉様が張郃役なのだろうが、特段似ている風でもない。

すると子孝様は今度は御嬢様の方へ向き直って急に満面の笑顔を浮かべるとで膝をついて胸の前で指を組み、

「ああん一刀様今日も素敵ですぅ、わんわん!」

と甘ったるい声で言うと会場から爆笑が起こった。子孝様は一体誰の物真似をしているのだろう?

一刀様役らしい御嬢様が

「有難う、今日も可愛いね」

と言うと

「はぁうぅ~ん!褒められちゃいました、私、幸せです~!」

と言いながら頬に両手を当ててくねくねと体を捩じらせる子孝様。さらに御嬢様と

「お茶淹れてくれるかな」

「はいっただいま!わんわん!」

「太陽、西から昇らせてくれるかな」

「はいっただいま!わんわん!」

「稟をいじっといてくれるかな」

「はいっ容赦無く!わんわん!」

等とやり取りをして一礼すると会場からは爆笑が止まらず、周囲から『本人の前でそれってアリなの』『さすがに誇張し過ぎだけど雰囲気出てるわ』等と聞こえていたが、それにしても子孝様は一体誰の物真似をしているのだろう?

 

笑いと拍手が止むと今度はまた別の一角から『はいはい!これだけの芸を見せられて蜀だけ黙っている訳には参りません!』と声が上がったと思うと例の近親上等☆姉妹こと劉封殿と関平殿が、嫌がる風の魏延殿の腕を掴んで立っていた。

関平殿は右の前髪を垂らして後ろ髪を縛り、裙子(スカート)を下着が見えてしまうぎりぎりまで詰め上げた上、胸元に宴会で出された肉饅を詰めている、これは間違いなく彼女の義母の関羽殿の真似だろう。

劉封殿はいつの間にか紫色の衣装に着替えており、よく見ると左足の切れ込みを態々手で破いたのか腰上まで切り込んでおり、この席には女性しか居ないから良いようなものの下着が見えてしまっている。しかも胸元にはこれでもかというほどの肉饅が詰め込まれており、しかもそれをこれ見よがしにしなを作りながらぶるんぶるんと振りたてている。ひょっとしてあれは黄忠殿の真似だろうか?

二人は困惑顔で『藤香様も玲紗様もお止め下さい』という魏延殿を両側から挟んで腕を取り、

 

 

 

 

 

 

「うっふ~ん一刀様ぁ…わたs

「藤香お姉ちゃんと玲紗お姉ちゃん、誰の真似をしてるのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会場の入り口でにこにこと笑っている璃々嬢の声に会場が静まり返った。

 

誰の真似をしてるのかな、という璃々嬢の重ねての問いに誰も答えられずにいると

「璃々分かんないから、お母さんと愛紗お姉ちゃんに見てもらおっか?」と言いながら姉妹の元へ行って手を引くと三人は涙目で首を横に振り、がくがくと震える姉妹の胸からは肉饅がぼとぼとと落下した。

姉妹はとても力を入れているように見えない璃々嬢に引かれながら、

「璃々、可愛いぱんつ欲しいんだぁ、刺繍があってお尻が透けてるやつ。藤香お姉ちゃん達買ってくれるかな?」

「かっかかか買いますよ買います!買わせて下さいね璃々ちゃん!」

「あとあさっての午後、ごしゅじんさまと遊ぶって言ってたよね?いいなぁ、璃々もごしゅじんさまと遊びたいなぁ」

「あっ私達その時間急用が出来ちゃいました!だから璃々ちゃん代わりに一刀様と遊んで下さいね、それはもう好き放題!夜遊ぶ予定だった焔耶も用事が出来ちゃったって言ってますからずっと遊べますし一緒にねんねも出来るんじゃないですか!?」

「ワ、ワタシを巻き込まないで下さい!?あと藤香様も玲紗様も手を離して下さいっ、ワタシは止めてたじゃないですかぁ!」

等と言いながら四人は宴会場を出ていった。

 

静まり返ってしまった宴会場に公達様が、

「まあ、うん、他人事だし?あの姉妹が体を張ってオチをつけてくれたところで切りも良いので、ここでお開きにしましょ」

と声をかけ、『皆様の益々の御活躍と近親上等☆姉妹の冥福を祈って』とひどい掛け声で乾杯を行い、閉会とした。

 

三日後、伯達姉様と黄忠殿、馬騰殿が立ち話をしているところへ通りがかり『璃々もあと一息でしたんですけど』『実力主義は分かりますけれど順番は守って頂きませんと』『うちの馬鹿娘達は本当にそういう頭が回らんで』などという声が聞こえたが、なんとなく聞いてはいけないような気がして素通りした。

 

またその後日、周泰殿と蒋欽殿が大怪我を負い当分の間甘寧殿が二人の担当日も一刀様の警備を担当することとなった。士季よると、例の近親上等☆姉妹が腹いせに先の周泰殿と蒋欽殿の宴会芸を甘寧殿に密告し、激怒した彼女が二人を闇討ちにしたというのが警備部内の専らの噂であるという。

その件でふと思い出し、士季に子丹御嬢様方が物真似されていたのは誰の事なのか知らないか、これこれ斯様という感じだったが誰も教えてくれないのだがと聞いてみたところ、

「…一応先輩の名誉の為に言っときますけど凪さんじゃないですよ。なんなら一刀様に聞いてみたらどうです、多分御本人連れてきてくれるんじゃないですか?」

と口元を歪めて笑われた。

 

管理職級でそんなほいほい連れて来れるような暇そうな官吏は居るのだろうか、居たとしたら今少し業務に励んで頂きたいものだ。

 


 
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