第19魔 火風猫同盟
アスナSide
頭を下げたわたしへのユージーン将軍の回答は…、
「1人のプレイヤーとしては協力したいところだが、俺達にも事情というものがある。
今の話しを信用しないという意味ではないが、最も強い者がそれを従えられるというのはどうだろうか?」
「つまり、決闘…ですか?」
将軍の出した提案に問いかけてみると彼は頷いた。
「こちらからは俺が出る。そちらからは最も強い者が出てくれ」
将軍は空中で前に出る。こちらからは……、
「ハジメ、ヴァル、ルナリオ……俺が出ていいな?」
「「「ああ(はい)(はいっす)」」」
ハクヤ君が前に出た。その手には、深い青の柄と水色と真っ白な刃を持つ大鎌『アイスエイジ』を携えている。
「名を聞こう」
「ハクヤだ」
訊ねられたハクヤ君は自分の名を答え、2人は空中で武器を構えた……そして、
「「ハァァァァァッ!」」
勝負が始まった。
アスナSide Out
ハクヤSide
強い。ユージーン将軍は紛れもなく強者に入るだろう。
彼の持つ剣の特性なのか、こちらの鎌での防御をすり抜けてきた。
しかし俺はそれを回避する、空中であろうとも、翅の動かし方でステップを踏める。それはつまり、
「神霆流歩法術《
この技での回避を可能とする。微妙な翅の動かしでそれを再現した。
だが彼も俺からの攻撃を剣で防ぐ。
中々どうして、ここまでの相手はいるものじゃない。
右手で操る鎌と《影霞》で攻撃と回避を行いつつ、左手でメニューを操作し、
もう1本の大鎌『コロナリッパー』を持つ。
つまりは鎌による《二刀流》だ。
将軍にも動揺が見え、俺は一度大きく距離を取った。
「アハハハハ! アンタは強いよ、将軍! 俺もそれに応えて本気を出そう! 空気に呑まれてくれるなよ!」
俺は一気に『冷徹』の『覇気』を解き放った。周囲に震撼する冷たい空気。
「『神霆流』師範代、【
俺は超速で将軍に接近し、2本の大鎌で乱舞を始めた。
それはサイススキル《ヴァンディエスト》、
SAOにて存在し、この世界においては存在しないソードスキルを俺は体現させた。
「おぉぉぉぉぉ!」
1本の鎌で八連撃を起こし、もう1本でさらに八連撃を起こす、計十六連撃が将軍の体へと刻まれていく。
ついで発生する属性付加ダメージ、氷と炎の相乗効果、全ての攻撃が直撃した瞬間…、
「がぁぁぁぁぁ!?」
ユージーン将軍は爆散し、その場には1つの炎が残った。
さらに次いで、大きな歓声が沸き起こった。
ハクヤSide Out
リーファSide
勝っちゃった、ハクヤさん…あの魔剣『グラム』を持つユージーン将軍に、勝っちゃった。
「見事、見事だ!」
「ナイスファイト!」
サクヤとアリシャさんが声を上げて今の戦いを賞賛した。
さらに後ろにいたシルフとケットシーからも拍手と歓声が起こった。
そのうえ、サラマンダーの部隊からも沸き起こった歓声。
今まで、敵でしかなかった人達を巻き込んだ空気。
お兄ちゃんの仲間は、本当に凄い!
リーファSide Out
アスナSide
あのあと、サクヤさんがユージーン将軍を蘇生魔法で復活させた。
「まったく、恐ろしいまでの腕だな。あのような大鎌を2本同時に扱うなど、今までで見たプレイヤーの中で最強だぞ」
「ありがたい言葉だけど、ここにはいないが俺よりも強い奴がいる。
そいつは俺達よりもさらに一線を超えた怪物だよ」
「本当か? それは会ってみたいな…」
言葉を交わす将軍とハクヤ君、怪物って…キリトくんのこと?
そして将軍はわたしの方に向き直った。
「俺の負けだ、そちらの条件を呑もう。兄は俺が説得してみせる」
「ありがとうございます。これが800万ユルドです」
サラマンダー部隊の数人が近寄ってきて、お金の入った袋を受け取った。
「サクヤ殿、アリシャ殿。今回の襲撃、迷惑をかけた」
「いや、気にしないでほしい。良い策だったと思う」
「そうだヨ。まぁ、これはこれで丸く収まったシ」
将軍がサクヤさんとアリシャさんに声を掛けて2人はそれに応えた。
すると将軍の傍に1人の甲冑を纏ったサラマンダーが歩み寄ってきた。
「ジンさん、いいですかい?」
「どうした、カゲムネ」
その名前は確か昨日、わたし達が迎撃した10人の1人でリーダー格だった人だ。
「エスの件ですが、認めましょう。ここでアイツを放した方がいいと思いますよ」
「ふむ……それもそうだな…」
エス、確かスパイを示す隠語だったはず。もしかしたらシグルドのSなのかもしれないけど。
「それでサクヤ、シグルドはどうするの?」
「ふむ……ルー、闇魔法の《月光鏡》は使えるな?」
「うん。夜じゃないから長くはもたないケド」
「構わないさ」
リーファちゃんの問いかけにサクヤさんは何かをしようと思ったのか、アリシャさんに尋ねた。
するとアリシャさんはスペルワードを唱え、わたし達を夜空が覆った。
そこに鏡が現れ、その鏡にシルフ領で会った男の姿が映し出された。
「シグルド」
『っ、サ、サクヤ!?』
「ふふ、残念ながら生きているよ…」
張りのある声でシグルドと話すサクヤさん、シグルドはかなり動揺している。
『か、会談は、どうなった…』
「無事に終わりそうだよ、調印はこれからだが……良い来客もあったな…」
『客、だと…?』
サクヤさんが目で促すと、ユージーン将軍が鏡の前に立った。
『なっ!?』
「将軍とも良い会談が出来た。ケットシーとの同盟だけでなく、将軍の部隊も攻略に協力してくれることになったよ」
「そういうわけだ、シグルド。こちらも良い商談をさせてもらった」
『ぁ…あ…っ!? リーファっ!』
将軍の登場に驚愕し、次いでサラマンダーとの協力に驚いたシグルドは眼を見開き、
リーファちゃんの姿を確認してようやく事態を全て悟ったようだ。
『くっ、どうするつもりだ、サクヤ。懲罰金を取るか? 執政部から追い出すのか?』
「シルフでいるのが耐えられないようなので、追放させてもらうよ」
『なっ!?』
少しばかり余裕な態度を取っていたシグルドだが、サクヤさんの言葉に愕然としたようだ。
「レネゲイドとして旅でもしていれば、楽しみが見つかるかもしれない。それを祈っておく」
『きさっ……!』
シグルドが何かを言おうとした瞬間に彼は姿を無くした、おそらく領地外に飛ばされたのだろう。
そして鏡は消滅してわたし達を覆っていた夜空も消えた。
「ふぅ……ありがとう、リーファ。レネゲイドになったにも関わらずに助けに来てくれて。
アリシャ、済まなかったな、こちらのゴタゴタに巻き込んでしまって」
「いつでも帰ってこいって言ってくれたのはサクヤだもの、気にしないで」
「大丈夫だヨ、お互い無事で済んだシ」
サクヤさんの言葉にリーファちゃんとアリシャさんはともに快く答えた。
「では、俺達はそろそろ帰るとする…「あ、すいません。ユージーン将軍」ん、なんだ?」
「少しお話しをいいですか? サクヤさんとアリシャさんも…」
「構わないよ」
「うん」
「分かった」
自身の領地に帰ろうとした将軍をわたしは引き留め、
加えてサクヤさんとアリシャさんにも話しをお願いし、3人共了承してくれた。
わたし、リーファちゃん、ルナリオ君、ハクヤ君、ハジメ君、ヴァル君、
サクヤさん、アリシャさん、ユージーン将軍は他の人達から離れた場所で話を始めた。
「まずはごめんなさい! わたし、ALOの査察官とかじゃないんです!」
わたしはこれについてまず頭を下げた、すると3人は。
「ふふ、気付いていたよ、それくらい」
「やっぱりブラフだったんだネ♪」
「まぁ察しはついたがな」
サクヤさん、アリシャさん、将軍さんの反応。
あれ? 嘘だってバレてたんだ…。
「アスナ、多分他の人達は本当に査察官だと思っているぞ」
ハクヤ君の言葉を聞いて、あくまで3人は騙せなかったということだと理解した。
「ですがアスナさんがレクトの関係者というのは本当ですよ」
「む、そうなのか?」
「あ、はい。そうです」
ヴァル君がフォローを入れてくれて、将軍さんが聞いてきたので答えた。
「それで、お話しの方なんですけど…明日くらいの攻略は無理でしょうか?」
「俺達の方は68人だから先程のユルドで十分に整えられるが…」
わたしの言葉に将軍さんは問題無いと答えたけれど、
「さすがに装備を整えるのには時間が掛かる」
「とても1日や2日じゃ無理だヨ…」
サクヤさんとアリシャさんは申し訳なさそうに答えた。その時、
「……資金が足りないのなら私も出そう」
そう言ってハジメ君はユルドの入った袋を取り出した、2つも。
「こ、こんなに、良いのか!?」
「……ええ、目的の為ですから」
驚くサクヤさんに淡々と答えるハジメ君。
「それなら俺も…」
「じゃあ僕も…」
「ハクヤさんとヴァル君は駄目っすよ。2人はリズさんとシリカがやる時に取っておかないといけないんすから」
「「ぐっ」」
ハクヤ君とヴァル君がユルドを出そうとしたけれど、ルナリオ君がそれを封殺し、2人は理由に怯んだ。
わたしも納得です。ルナリオ君は既に大分消費してしまったとのこと、鍛冶師は大変だからね。
「1つ聞いてもいいか?」
「どうしましたか?」
将軍さんがわたしに訊ねてきた、なんだろう?
「何故ここまでして世界樹の攻略に拘るのだ?」
「そうだよネ。グランド・クエストのクリアなら、別に自分の種族の部隊で行けばどうにかなると思うケド。
わたし達にサラマンダーの部隊を繋ぎとめてまで、どうシテ?」
将軍さんとアリシャさんの言葉にわたし達は詰まってしまう。だけどわたしは…。
「人を、探しているんです…。世界樹の上にいるかもしれないから…」
「妖精王オベイロンのことではないのか?」
「それは違うっす」
わたしの回答にサクヤさんは首を傾げて言ったけれど、ルナリオ君が短くキッパリと言い放った。
「うむ、なにやら事情がありそうだな」
「まぁ、かなり込み入った事情が…」
将軍さんの呟きにハクヤ君が応じる。
「ともかく、これだけユルドがあればすぐにでも装備を整えられる。準備が出来次第、連絡を入れよう」
「ありがとう、サクヤ」
「すぐに準備を整えるネ」
「ありがとうございます、アリシャさん」
「俺もすぐに動こう」
「お願いしまっす、将軍」
サクヤさんにはリーファちゃんが、アリシャさんにはわたしが、将軍さんにはルナリオ君が応じた。
将軍は領主を説得する為に領地に戻り、サクヤさんとアリシャさんはケットシー領へと移動した。
「なんだか、凄いことになりましたね…」
「まぁ、こういうものっすよ」
リーファちゃんが呆然と言葉にし、ルナリオ君が答えた。
「さて、それじゃあアルンまで行こう♪」
「「「「「「おぉ!」」」」」」
わたしはみんなに声を掛けて、応じてくれると一斉に飛び立った。
アスナSide Out
To be continued……
後書きです。
一騎打ちでしたが・・・ハクヤが相手なら仕方ないですよねw
だってハクヤですよ?
黒衣衆のNo.2の実力者で、神霆流の師範代ですよ?
キリトの次に強いんですよ?
むしろユージーン将軍は良く耐えたと思います!
まぁこれで火・風・猫・妖精族による同盟が決定しました、心強いですね~。
次の話しは現実世界での動き、シャインとティアの話しになりますので。
それではまた・・・。
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第19魔です。
アスナの頼み、将軍の回答は如何に・・・。
どうぞ・・・。