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真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ二十九


 お待たせしました!

 今回は遂に始まる曹操との一戦…の前に雍州と涼州

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2013-02-20 20:27:44 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:6038   閲覧ユーザー数:4636

 

 ~雍州にて~

 

「桃香様!ご無事ですか!!」

 

 耳をつんざくような大声と共に劉貞(元・劉備の事です)の屋敷へ入って

 

 来たのは魏延であった。

 

「何事だ、焔耶!無事も何も…何も起きてはおらんではないか!?」

 

 そこに関羽が出て来て訝しげな顔でそう聞く。

 

「おおっとと、そうでした。実は五胡の連中が境を越えて侵攻して来たとの

 

 知らせが来たようでして…」

 

「何と!?しかし主力は白蓮殿と共に出陣中ではないか!」

 

「そうなんです!伝令は出したようなので戻っては来られるでしょうが…しば

 

 らくは留守部隊のみで防戦せねばなりません。そこで私は桃香様の護衛に」

 

「桃香様の護衛なら私と鈴々で事足りる!お前の助けはいらん事位分かるだろ

 

 うに…どうしてお前はそう桃香様の事ばかりなのだ。白蓮殿も嘆いていたぞ

 

 『焔耶は碌に仕事もせずに桃香の所へばっかり行く』とな」

 

 関羽はそう言ってため息をつく。

 

 彼女がそう呟くように、魏延は雍州に来て劉貞と出会ったその日から三日と

 

 あげず屋敷に来てはささいな理由をつけては側に侍ろうとしているのである。

 

 何だかんだ言っても魏延も白蓮の客将という形になっていたので、最初の内

 

 は白蓮もそれとなく注意していたようなのだが、一向に改まる気配も無いの

 

 で、最近では半ば諦め状態で放置されていたのであった。

 

(一応、真名は預けあっているようではある)

 

 

 

「それはともかく桃香様は!?」

 

「それはともかくではなくてはな…はあ、もういい。桃香様は奥のお部屋にお

 

 られる。呼んでこよ『桃香様、ご無事ですか!?』…おい、無視するな」

 

 関羽が言い終わる前に魏延は奥の部屋へ走って行ってしまい、一人残された

 

 関羽は再びため息をついていた。

 

 ・・・・・・

 

「桃香様!!」

 

「ひゃっ!?な、何?焔耶ちゃん、何かあったの!?」

 

 突然扉を開けて入ってきた魏延の姿を見て劉貞は驚きの声をあげる。

 

「五胡の軍勢がこの地へ迫っております!私がお守り申し上げますので、桃香

 

 様は安全な所へ避難を!!」

 

「五胡が!?焔耶ちゃん、私の事なんかいいから早く行かなきゃ!」

 

「まずは桃香様の安全を確保してからと…『焔耶ちゃんは白蓮ちゃんに仕える

 

 将なんでしょう?だったら領民を守るのが先!!』は、はい!失礼しました!

 

 桃香様も早く安全な所へ!!」

 

 劉貞にそう言われ魏延は背筋を伸ばし回れ右をしてそのまま出て行った。

 

「やれやれ、焔耶の奴…桃香様の言う事だけはちゃんと聞くのだな」

 

 入れ替わりに入って来た関羽はしみじみとそう呟く。

 

「愛紗ちゃん、焔耶ちゃんが今言ってたのって…」

 

「どうやら本当のようです。街の者達も慌ただしく動いております」

 

 関羽のその報告を聞いて劉貞は少し考え込む。

 

「桃香様、どうかされました『愛紗ちゃん、私達も城へ行こう!』…確かに城

 

 にいるのが一番安全で『そうじゃなくて!私達もお手伝いしようって言って

 

 るの!』…桃香様」

 

 関羽の問いかけに劉貞はそう答える。それを聞いた関羽は驚きと感嘆の入り

 

 混じった眼で彼女を見つめる。

 

 

 

「わかりました。でも桃香様は一応幽閉の身、私が焔耶の手伝いに行って参り

 

 ますので、桃香様と鈴々は安全な場所へ避難を」

 

 関羽がそう言うと、何時の間にか近くにいた張飛が噛みつかんばかりの勢い

 

 で言い寄る。

 

「うが~っ、何で鈴々はダメなのだ!?」

 

「鈴々…お前も一応幽閉の身だろう。白蓮殿の許しも無しに行動させるわけに

 

 はいかん。それにお前までいなくなっては桃香様をお守りする者がいなくな

 

 ってしまうだろう?」

 

 そう諭された張飛は渋々ながら引き下がる。

 

「それでは行ってまいります」

 

「愛紗ちゃん、気をつけてね」

 

「鈴々の分も暴れてくるのだ!」

 

 二人の見送りに関羽は微笑で返していた。

 

 ・・・・・・・

 

 関羽が城へ到着するとそこは留守の兵達が忙しなく動き回り、負傷した者も

 

 多数運び込まれていて、半ば混乱を呈していた。

 

「愛紗殿、どうしてここに?」

 

 そこに彼女の姿に気付いた魏延が寄ってくる。

 

 守将は他にいるのだが、現在いる留守居の中で彼女以上の武を持っている者

 

 がいない為、自然に指揮を執る立場となっていたのである。

 

「桃香様に言われてな、お前の手伝いに来た。桃香様は既に鈴々と安全な場所

 

 まで避難済だ」

 

 その関羽の言葉に魏延は安堵の表情を見せつつ言葉を続ける。

 

「それは有難いです。今、主力は白蓮様と星殿が率いて曹操軍討伐に赴いてい

 

 る最中でして…伝令が無事に到着すればすぐ引き返してくれるはずですが、

 

 ここは留守の者だけで持ちこたえねばなりません。でも、留守部隊の兵数は

 

 およそ四千…大半は練度の低い者ばかりで到底討って出るような態勢にあり

 

 ません。ここは…」

 

 

 

「籠城か…しかし、それでは城外の者達が蹂躙されるのを黙って見ているしか

 

 ないではないか。その者達を収容する事は出来んのか?」

 

「領民を全て収容してしまうと逆に収拾がつかなくなる可能性が…見捨てるよ

 

 うで心苦しいですが、これ以上は無理かと」

 

 関羽の問いかけに魏延は苦々しげな顔で答える。

 

「しかしここで見捨ててしまっては今後の白蓮殿の政にも障りが出てしまうだ

 

 ろう。ここは多少は無理をしても領民は出来るだけ収容すべきだと思うが?

 

 おそらく桃香様がここにおられても同じ事を言うであろうしな」

 

 関羽のその意見に魏延は黙り込んでしまう。

 

「守りに隙が出来るというのなら我らの武を以てそれを埋めれば良いだけだと

 

 思うが…しかしここは焔耶が指揮を執る立場だからな。私からはこれ以上は

 

 言えんぞ」

 

 関羽がそこで言葉を打ち切ると、じっと魏延を見つめる。

 

 魏延は少し考えてから搾り出すように言葉を紡ぐ。

 

「そうですね…どうやら私が間違っていたようです。この戦いはただ勝てば良

 

 いわけではないですね…誰かある!城外にいる領民を出来る限り収容せよ!」

 

「焔耶、私は領民が城内に入るまで外で警戒にあたる。中の事は任せるぞ」

 

 関羽はそう言うと一人城外へと出る。

 

 関羽が城外へ出ると、そこには多数の領民の姿があった。

 

「皆、良く聞け!皆の事は魏延将軍以下、公孫賛殿の軍勢が命にかえても守る!

 

 落ち着いて城内へと入れ!!」

 

 関羽のその言葉にそこにいた領民達の顔に安堵の表情が広がる。

 

「これで良し…さあ、五胡の者どもよ、この関雲長がいる限りお前らの好きに

 

 はさせんぞ!!」

 

 そう言った関羽の眼は強い輝きを放っていた。

 

 

 

 場所は変わって涼州である。ここにも五胡の軍勢が迫っており、留守居の者

 

 達は迎撃の為に走り回っていた。

 

 そんな雰囲気は幽閉中の姜維の所へも漂っていたのであった。

 

「何やら表が騒がしいようだな…五胡の連中でも攻めて来たのか?しかし、馬騰

 

 殿が周辺の部族はあらかた討伐済のはずだが…」

 

 姜維がそう一人ごちていると、そこへ扉を開ける音も荒々しく部屋に入って来

 

 る者がいた。

 

「姜維殿、ご無事でしたか!」

 

 姜維にそう声をかけた男は、馬騰の家臣で彼女の世話(及び監視)をしている

 

 見習い武官の龐徳であった。

 

「どうされた龐徳殿?何やら騒がしいようだが…」

 

「五胡の軍勢がこちらへ侵攻しています。ただいま留守部隊の者が迎撃に向かっ

 

 てはいますが、ここは少々危険なので私と共にこちらへ」

 

「五胡が?しかし五胡は馬騰殿が征伐したばかりではないのか?」

 

 ちなみに彼女にその情報を教えたのも龐徳である。

 

「確かにそうなのです…通常は一度撃退すれば数ヶ月はこないのですが、今回に

 

 限りすぐに…何故かはわかりません」

 

 龐徳はそう言って俯くが、姜維には何となく察しがついていた。

 

(この間の曹操殿の決起、そしてそれに合わせたが如くの五胡の行動…おそらく

 

 これは偶然ではあるまい。くっ、まさか五胡までも利用するとは…曹操殿には

 

 漢の民族としての誇りは無いのか…?)

 

 そう思いながら姜維は唇を噛み締めていた。

 

 

 

「どうされました、姜維殿?」

 

「いや、ちょっと考え事をしていただけです」

 

「そうでしたか。さあ、お早く。下手をすればこの地にも五胡が来てあなたも巻

 

 き込まれかねませんので」

 

 姜維は龐徳と共に武威の城へと向かっていった。

 

 ・・・・・・

 

 二人が城内に入るとそこは喧騒に包まれていた。

 

「皆かなり苛立ってますね…」

 

「お恥ずかしい限りです…今は馬騰様は馬超様と馬岱様を連れて主力と共に冀州

 

 へと行っておりまして、混乱を収拾出来る者がいないのが現状でして…」

 

 龐徳はすまなそうにそう答える。

 

「龐徳殿では無理なのですか?」

 

「私!?私などではとても…どうにも戦う事は苦手でして、私はただ馬で駆ける

 

 事が好きなだけなんです…皆からは怒られてばかりなんですけどね。そんなの

 

 だから、私の言う事なんて誰も聞いてはくれないんです」

 

 龐徳はますますすまなそうにしていた。

 

「そうですか…しかしこのままでは五胡が攻め入って来る前に内紛が起きかねま

 

 せん。馬騰殿達がすぐ戻ってこれない以上、留守居の者達で何とかする必要が

 

 あるのではないのですか?流人である私が言うのも何ですが…」

 

「うっ…」

 

 姜維の言葉に龐徳は黙り込んでしまう。

 

 その時、城門に傷だらけの兵士が駆け込んで来た。

 

「ぐっ…迎撃に出た部隊は五胡の連中に返り討ちにあって壊滅だ。奴らはすぐに

 

 ここに来るだろうから急ぎ防備を…」

 

 兵士はそう言って気を失う。

 

 

 

 それを見た城内の兵士達は一気に恐慌状態になる。

 

「もうダメだ!奴らに皆殺しにされるんだ!!」

 

「馬騰様達さえいてくれれば…」

 

「だから俺は馬騰様達の出陣には反対だったんだ!!」

 

「うるせぇぞ、今更そんな女々しい事言ってんじゃねえ!」

 

「何だと…やるってのか、おおっ!?」

 

 そしてあちこちで言い争いや掴み合いの喧嘩が始まり、余計に収拾がつかなく

 

 なっていた。

 

「み、皆さん…落ち着いてください。今我々が争ってても…」

 

 さすがにその状況を見かねた龐徳が目の前にいる者達への仲裁に入ろうとした

 

 のだが…。

 

「ああっ?…何だ、腰抜け龐徳じゃねぇか。はっ、お前みたいなのが何を言って

 

 も誰も聞く耳持たねえよ。戦じゃ大して何もしやしねえくせして馬騰様のお情

 

 けでクビになってねえような奴が…すっこんでろ!!」

 

 逆に突き飛ばされてしまう始末であった。

 

「大丈夫ですか、龐徳殿!?」

 

 姜維が慌てて彼に駆け寄るが、

 

「大丈夫です…ほらね、誰も私の言葉なんか聞こうともしない」

 

 龐徳はそう言って諦め顔で苦笑いを浮かべるのみであった。

 

 それを見た姜維はムッとしたような表情でこう言い放つ。

 

「…少々気に障るような事を言うが、何時までもそのような根性だから皆にナメ

 

 られるのではないのか?本気で武官として生きていくつもりが無いのならすぐ

 

 にでもやめるべきであろう?何故あんな事を言われても武官をやめないのだ?」

 

 

 

 姜維のその言葉に龐徳は眼を伏せたまま話し出す。

 

「…私の家は代々、馬氏に仕えてきた筆頭武官の家系なんです。そして私はその

 

 嫡子であるが故に、幾らやめたいと思ってもそれを一族の者達が許してくれな

 

 いんです。馬騰様も何も仰ってはくれませんし…私こそ聞きたいですよ。どう

 

 すれば武官をやめられるのかって」

 

 龐徳が自嘲気味に語ったその言葉に姜維は考え込む。

 

(ふむ…龐徳殿の足りないのは自信だけのようだな。筋肉のつき具合や身のこな

 

 しから見るに、おそらく一通りの武の心得はあるはず。おそらく馬騰殿が何も

 

 言わずにいるのも、龐徳殿自身が自分の殻を破るのを期待しての事であろうが

 

 …このままでは変わりようもなさそうだな。しかしこのままでは彼自身だけで

 

 なく西涼の為にも良い事はないだろう。何だかんだ言っても龐徳殿には世話に

 

 なってるし、馬騰殿のおかげで幽閉の身ながらかなり自由に過ごさせてもらっ

 

 た。西涼を守る為に何か私に出来る事はないのだろうか?何かこの場を打開出

 

 来るような策を考え出せれば…こんな時、諸葛亮殿なら何を考える?…いや、

 

 諸葛亮殿の事はどうでもいい。私とて軍師のはしくれ、私が私の全てを賭けて

 

 この地を五胡の軍勢から守ってみせる)

 

 そう思い定めた姜維の眼は今までに無い輝きを放っていた。

 

 

 

 場所は変わり冀州との境。

 

 曹操討伐軍の前に『夏』の旗を翻して夏侯惇が軍を率いて現れる。

 

 それを見た討伐軍の先鋒を任された華雄はいきり立つ。

 

「夏侯惇め…我が前に現れたが運の尽きだ!皆の者、進ぐ『ダメですよ、勝手な

 

 突撃は』…ぐっ、何故だ雛里?目の前にいるのは夏侯惇の軍のみ、しかも数で

 

 はこちらが勝っている。このまま一気に揉み潰せば…」

 

「それがダメだと言っているのです。曹操がわざわざ少ない兵数のままで展開さ

 

 せるわけはありません。何より夏侯惇が全く動かないのがその証拠です。間違

 

 いなく華雄さんを引きずり込む作戦でしょう。ここはこのまま対陣しているの

 

 が良策です。あとはあちらからの合図を待ってから攻撃に移るのみです」

 

 いきり立ったまま突撃しようとする華雄を雛里が止める。華雄も何故か雛里の

 

 言う事には逆らわずに椅子に腰掛ける。しかし、またしばらくすると同じよう

 

 に喚き出し雛里になだめられていたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「なかなか動き出さないわね…本当に向こうの先鋒は華雄なの!?」

 

 遅々として動き出さない戦況に曹操は苛立ちを覚えていた。

 

「…おそらく誰か抑えになる者がいるものと思われます。少々予想外でした」

 

 荀彧は忌々しげにそう答える。

 

 曹操と荀彧は敵の先鋒が華雄だと知ると、わざと夏侯惇の軍を目の前に出して

 

 華雄に攻撃させて深追いさせて伏兵で討ち取る作戦を立てていたのだが、華雄

 

 が一向にのってこないので、焦りを覚えていた。

 

「くっ、このままでは数の少ないこちらが不利ね…後は稟の作戦に賭けるしかな

 

 いという事ね」

 

 ・・・・・・・

 

「ご主人様、雛里ちゃんはうまく華雄さんを抑えているようです」

 

「ああ、さすがは朱里、よく人を見ているな」

 

 俺がそう言って朱里の頭を撫でると、朱里は『はわわ~』と言いながらも嬉し

 

 そうにしていた。

 

「さて、後はあっちの方がどう動くかだな…燐里と風なら問題は無いだろうけど」

 

「でもおそらく向こうは郭嘉さんとかいう新たな軍師が指揮を執っているはず、

 

 油断は禁物です」

 

 朱里のその言葉に俺は頷きながら戦いが始まるであろう方角の空を見ていた。

 

 

 

                                           続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 日数をかけた割にはあまり出来が良くなくて申し訳ありません。

 

 何とかなけなしのモチベをフル稼働させてはいますが…モチベさん、

 

 帰って来て~。

 

 それと今回出て来ました『龐徳』ですが、本来なら雛里が『鳳統』

 

 である以上『鳳徳』とするべきなのでしょうが、どうも『鳳徳』と

 

 いうのが自分の中でしっくり来なかったので『龐徳』とさせていた

 

 だきました。でも雛里は『鳳統』のままですので。そして少々ここ

 

 の龐徳さんはチキン野郎になっていますが、ご了承の程を。成長が

 

 あるのかどうかは次回以降にて。

 

 とりあえず次回は稟さんが何やら画策してそれに燐里と風が対抗する

 

 みたいな所などをお送りしようと思っていますが…うまくいかなかっ

 

 たらごめんなさい。

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ三十でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 追伸 次の投稿も遅れるかもしれません。でも漢女の口づけはいりま

 

     せんので。

 

 

 

 

 

 

 


 
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