No.545827

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第百十話 脳髄までよ!

2013-02-18 15:06:50 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5128   閲覧ユーザー数:4602

 第百十話 脳髄までよ!

 

 

 

 喫茶店翠屋にて…。

 二人の妙齢の女性が二人。店の隅に用意された客席で口論をしていた。

 

 プレシア視点。

 

 「…プレシア。何を作っているの?」

 

 「何って言われてもスフィア対策としか…」

 

 「な・に・を作っているの?」

 

 「だからスフィア対策の物よ。試作一号機『フレイムアイズ』今は試作機二号機『スノーホワイト』。三号機。高機動での射撃を可能にする『ラッキー・スター』を作っているの」

 

 一応言っておくけど管理局への連絡は無しという条件で話している。

 だが、出資者のリンディとしては彼女が何に使うかが気になっていた。

 

 「さっきも言った通りよ。D・エクストラクターを作って…」

 

 「何をするつ・も・り・な・の?あれって思いっきり剣よね?兵器よね?」

 

 「………」

 

 「………」

 

 互いに長い沈黙が流れる。このままだと…。

 没収される可能性が出る。そうなると管理局に持っていかれて、兵器・部隊配備クラスで配備されるかもしれない。これは個人用で作ったのに…。

 リンディの方も巨額の資金を投じて何をしたのかと上から言われそれ繋がりでタカやフェイトを管理局に持っていかれる可能性が出てくる。

 

 「明日までに納得させることのできる要項をまとめきれてないと貴女が作っているDエクストラクター。全没収するわよ。まあ、私から借りたお金をあなた達が返してくれるなら分からないないでもないけど…」

 

 

 

 高志視点。

 

 「と、いう訳でタカ」

 

 「うん」

 

 リンディさんと話し合いを終えたプレシアは、今でゆっくりしていた俺に話しかけてきた。

英語の参考書を片手にソファーに腰かけていた俺は、もう片方の手でふとももに乗っけていたアリシアの頭を撫でていた。

 アリシアは暇さえあれば俺にくっついてくる。今のようにソファーでゆっくりしていたら、わんこよろしくで傍にすり寄ってくる。

 

 「貴方のお友達の中にアリサとすずかというお友達がいたわよね」

 

 「まあ、いるけど…」

 

 「その子達。…お金持ちよね」

 

 「たぶんね。お嬢様って言われているらしいから…」

 

 そう言いながらもプレシアの視線は俺。ではなく、くぅくぅ寝ているアリシアを見ている。

 …枕役、代わろうか?

 

 「…タカ。今からその女の子を誑かしてから金を巻き上げてきなさい」

 

 「そんなチャラ男なスキルは俺には無い」

 

 てか、したくないよ。そんな最低行為。

 こんな和んだ空間で最低なことを言わないでくれよ。

 

 「貴方なら簡単に年下の女の子を騙してくるなんてスフィアを抜き出すくらいに簡単でしょう」

 

 「いや、アレもアレでかなり難しいというか痛いんだけど!?というか、そんなにお金に困っているのかよ!」

 

 「まあ、ね。桁が違うもの。この国の単価だと…。両の手で足りるかしら?」

 

 両の手ねぇ…。

 一、十、百、千、万、十万……十億円以上?!

 

 「どんだけのスポンサーを集めればいいんだよ…」

 

 「だから大変なんじゃない。…リンディから借りたお金は、全部試作型に使っちゃったし…」

 

 どんだけ溜めこんでんだリンディさん。そして、それを使いきるプレシア…。

 

 「…聞いては見るけど期待はしないで」

 

 

 アリサ視点。

 

 春休みもあとわずかという日に、私は不機嫌度MAXだった。

 

 「…娘の恩人とはいえ、それだけの額。出資は出来ないね」

 

 「ですよねー」

 

 私の屋敷。そして、パパの部屋で、高志と私のパパの商談をしていた。

 高志が私の家にやってきていきなり…。

 

 

 

 「大切な話があるんだ。ご両親に会わせてくれ」

 

 

 

 なんて言うからびっくりした。け・ど…!

 切り出してきたのは何やら怪しい機械の話だった。

 だから…。

 

 「…それより。その、頬は大丈夫かね?」

 

 「いえ、俺も言い方がまずかったです」

 

 高志の頬にビンタをしても仕方がない事だ!

 いまだに赤くはれ上がった頬を撫でながらも隣の朴念仁は涙目だった。

 

 「…しかし、これが魔法の世界の武器。か。娘の話や君の鎧も見せてもらったが、その…。魔法と言うよりは機械じみているな」

 

 「メカっぽくてすいません!俺とガンレオンもビームを打てればよかったんですけど!」

 

 ガンレオンを元にした世界が『スーパーロボット』と銘を打っているものだからどうしてもファンタジーから遠ざかる。

 マグナモードを使う訳にもいかないし…。

 高志は今さらながらに自分のミスに気が付いた。

 

 「それに…。私が試しに振って見たんだが、うんともすんともいわないんだが…」

 

 「何分、実験段階な物なので…。一応リミッターはつけてはいるんですが…」

 

 「…だったらこれはただの玩具じゃない」

 

 私はひょいっと高志が持ってきた『フレイムアイズ』をパパからひったくるように持って見る。すると…。

 

 [スタンバイ・レディ…]

 

 フレイムアイズから機械的な声が響くと同時に機械じみた声が響いた。

 

 「え?」

 

 

 すずか視点。

 

 「…で、アリサちゃんも魔法使いになったの?」

 

 「まあねっ!」

 

 えっへん。と、胸を張って言うアリサちゃんはとても嬉しそうだった。

 逆に高志君はこの場に居づらそうにしていた。

 それもそのはず。お昼過ぎに高志君が…。

 

 

 

 「…今すぐ、逢いたい」

 

 

 

 なんて言うから慌ててお姉ちゃん達にからかわれながらもおめかして屋敷の玄関で出迎えたら…。

 

 「あ、あの、大丈夫ですか?」

 

 「ぷ、ぷくくく…。これが魔法使いの道具なの、ね」

 

 指の先には白い氷で出来たようなつけ爪にのようなアクセサリーに、手の甲に当たる部分には水晶をあしらった黒い上質な手袋。『スノーホワイト』。

 

 「…確かに、それからは不思議な力を感じますね」

 

 それの売り込みに来た高志君の頬を叩いても私は悪くないはずだ。

 その時既に高志君の両頬には紅葉がつけた高志君はもう諦めの極致だ。

 

 「誤解されるようなことを言って本当に申し訳ございませんでした」

 

 「…知らないっ」

 

 叩かれた瞬間に自分が何をしでかしたのか感づいたのか綺麗な土下座をしている高志君に私は冷たく言い放つ。

 ノエルは相変わらず無表情に徹しているように見えたがやや口の端が持ち上がっている。

 ファリンは高志君が叩かれた後に土下座をする彼を心配している。

 そして、そんな状況がおかしいのかお姉ちゃんはこらえきれずに笑っていた。

 

 「…バニングスさんのところでの言葉を返すようで悪いんだけど」

 

 「まあ、そうですよね」

 

 お茶会する中庭で商談をしている二人。そして、私とアリサちゃんも同じ席についている。

 

 「あら、潔いのね?」

 

 「女の子をわざわざ戦場に出すような真似に繋がりかねませんから。反対するのは当然かと…。ですので、こちらから出せるのは自衛の手段としてそちらが持っていてもらうというものです」

 

 「それでも、押しが低いわね。そちらが提供するだけの価値が見いだせないわ」

 

 「…『非殺傷設定』というのはどうでしょうか?どれだけ高出力で攻撃してもそれがかかっている以上は誰かを傷つけることはあっても、よほどのことが無い限り殺すことは無いです」

 

 「それは魅力的ね。でも…、足りない(・・・・)わね」

 

 「ですよねー」

 

 アリサちゃんのところはというとアリサちゃんが飽きない限り、少しずつでは出資するそうだ。アリサちゃん自身が『フレイムアイズ』を気にいったこと。そして、高志君が先ほど言った利点も含めてだ。

 フレイムアイズは待機状態も設定されていないのでアリサちゃんは竹刀袋にフレイムアイズを入れてここにいる。

 

 「…と、なるとやっぱり担保みたいなものが必要ですか?」

 

 「そうね。それもあなた達がいう額に相当するような物じゃないと」

 

 ♪~~♪~♪

 

 高志君はお姉ちゃんと何やら小難しい話し合いをしている。と、不意に高志君の携帯電話が鳴った。

 

 「…あ、その」

 

 「交渉中に携帯電話を鳴らすのはNGよ…」

 

 お姉ちゃんは苦笑しながらも手で『でていいわよ』とひらひらさせる。

 それを見て高志君は一度頭を下げてから私達から携帯電話を隠すように電話に出る。

 

 『もしもーし。たっくんの携帯電話ですか~?』

 

 「…ゆうひさん?」

 

 「「っ!?」」

 

 今、高志君。『ゆうひ』って言わなかった?!

 

 『せやで~。と、折り入ってたっくんにお願いがあるんやけどええか?』

 

 「お願いですか?」

 

 『せや~、実はなー、たっくんが温泉で歌っていた歌を探してみたんやけど見当たらないんやけどどういう事か知りたくてなー』

 

 「ああ~、それは…。俺のオリジナル?だからです」(まさか、異世界の曲だなんて言えないしなー)

 

 『やっぱりぃっ!いくら探しても見つからんはずや。それならもう一つお願いがあるんやけど…。あの歌を売り出してみいひん?』

 

 あの『天使のソプラノ』から突然のオファー?!

 聞けばあのカラオケの後に二人はお互いの連絡先を交換し合っていたらしい。…いつの間に。

 

 「あの歌を?」

 

 『うちも思い出して歌ってみたら心が熱くなるんよ~』

 

 「でしょ!…あ、でも」(いち○サラファンとして、あの人の歌をお金儲けには使いたくないなぁ)

 

 高志君は何やら悩んでいる。

 よっぽどあの歌に思い出があるみたいだ。

 

 「あの歌、本当は俺じゃなくて他の人が歌っているのを俺が覚えていただけなんで何とも…。その人自身は色んな人に聞いてもらえるなら承諾してもらえるとは思うんですが…」

 

 『そうなん?ん~、それなら仕方ないかな。それじゃあ気が変わったらいつでも電話しぇな~。うちの社長にも話しつけとくから』

 

 「あ、はい。ありがとうございます。その時はこちらから電話をさせてもらいます」

 

 『ほなな~♪』

 

 ぴっ。と、高志君が携帯電話を切ると同時に頭を下げた。

 

 「あの、失礼しました。今回の出資の件は無かったことに…」

 

 「………はっ?!出資の話を受けるわ!」

 

 「…へ?」

 

 お姉ちゃんは気が抜けたような顔から一転してお姉ちゃんは高志君の方を掴んで揺する。そして…。

 

 「だからさっきの話を受けなさい!私をマネージャーにして!」

 

 「あんたどれだけゆうひさんが好きなんだ?!」

 

 「脳髄までよ!」

 

 「駄目だ!重症だ!」

 

 「…お姉ちゃん」

 

 あの人の歌は私も好きだけど…。

 思わず体が反射するほど好きではないよ…。

 

 結局、私達。月村の家からも高志君が温泉で歌った『ファイ○ーボン○ー』の歌の著作権を担保にプレシアさんの所に出資することが決まった。

 


 
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