《オーシア海軍第三艦隊所属フリゲート艦オルフェウスCIC》
あの海戦から1日が経った。空母ケストレルからオーシア首都オーレッドへ飛び立ったユークトバニア首相、ニカノール首相はオーレッド空港にて、ハーリング大統領と合流。
また、オーシア軍の全指揮権はハーリング大統領の元に戻り、ハーリング大統領は現在実施されている作戦行動及び、今後予定されている作戦はすべて中止させた。
それと、ユークトバニアのナスターシャ・ヴァシ・オベルタス少佐が入手した、ベルカの情報が入っているディスクの解析が完了した。
現在、解析したディスクのデータもとにラーズグリーズ隊の最後の戦いのブーリフィグをしている。
「ガレ艦長。この光景は夢じゃないですよね」
「ああ、夢じゃない。現実だ」
ケストレルの周りにはユーク艦とオーシア艦の混成艦隊が出来ている。
最初はケストレルを含む5隻だった。
だが、今は違う。
ユークトバニア海軍ミサイル駆逐艦グムラク。
駆逐艦ドゥープ、チゥーダ、ブードゥシイ。
フリゲート艦ブイストルイ。
オーシア国防海軍イージス艦ハルシオン。
巡洋艦シバニー。
空母バーベットが合流し、計13隻の混成艦隊である。
この構成艦隊にいる者たちは両国の平和を信じている者たちだ。
「本当にいままでから想像できないな」
「信じていれば仲間は増える。この戦争もあと少しだ」
すでに、オーシアはハーリング大統領と第一艦隊所属の海兵隊により、オーシアはベルカの手から解放され、ニカノール首相はハーリング大統領と合流。
今日の深夜に戦争の真実を全世界に伝えるため、二人で共同声明を行う。
それと、同時にラーズグリーズ隊は旧ベルカ軍の本基地であるノース・オーシア・グランダーI.G社攻撃作戦を開始。
また、ユークトバニアもナスターシャ少佐の手引きによりレジスタンスが各地で一斉に行動をすることになっている。
「そうだな、戦争が終わったらオルフェウスもドックに入れて休ませないとな。昨日の戦いで、各所がガタが来ていることがわかったからな。」
「ああ、ハーリング大統領にこのことを伝えた。この戦争が終わったらすぐにドック入れだ。」
昨日の海戦が終わった後すぐに、本艦のレーダーの復旧作業に開始。
レーダーは復旧できたが新たな問題が出て来た。
レーダーの復旧作業のついでに、各所にダメージがないか確認したところ、各所にダメージがあり、修理には一度ドック入れが必要だと分かった。
このことをハーリング大統領に伝えたら、本艦隊は戦争が終わったあとに、全艦がドックに入れが既に決まっていると返事が返ってきた。
「あと、本艦がドックに入ったら、みんなで食べに行くぞ。もちろん、俺の奢りだ」
「本当ですか!ガレ艦長!」
「もちろんだ」
「「「「「よっしゃ―――!」」」」
乗組員たちは喜びの歓声を上げる。
俺はやれやれと思った。
だが、ここまで喜び仲間たちを見たのは初めてだった。
『????????????????????? ???』
「艦長、目標のオーシア空母を捕捉しました」
「対艦ミサイルの準備は?」
「いつでも発射できます」
「そうか…対艦ミサイル発射用意!目標オーシア空母『ケストレル』!ラーズグリーズ共に海の藻屑になれ!発射!」
『オーシア海軍第三艦隊所属フリゲート艦オルフェウスCIC』
《全艦に告ぐ!ケストレル右舷から対艦ミサイル接近中!迎撃できる艦は直ちに迎撃!》
先程の楽しい空気は無くなり一気に緊迫した空気になる。
「くそ!どこから撃って来た!」
「対艦ミサイルの目標はケストレルです!」
「迎撃!ケストレルをやらせるな!」
「駄目ですガレ艦長!迎撃間に合いません!」
対艦ミサイルは本艦とグムラクの間をすり抜け、真っ直ぐにケストレルに向かう。
ケストレルはファランクスで弾幕を展開するも、迎撃できずに右舷艦橋前方付近に弾着し、爆発。
ケストレルから黒煙が上がる。
「くそ!レーダーに反応は無かったのか!」
「レーダーに艦影、機影共にありません!」
レーダーに反応がないと言うことはステルス機による攻撃か、または潜水艦による攻撃のどれかである。
対艦ミサイルが発見された時には艦隊のすぐ近く。
ステルス機が艦隊の近くで対艦ミサイルを発射した場合、レーダーに反応しなくっても目視による発見が出来る。
だが、ステルス機は発見されるどころか、ジェット音さえ聞こえない。
だとすると潜水艦による攻撃しかない。
「ソナー音は!」
「音源無し!」
「くっ!引き続きソナー音を警戒しろ!」
《ケストレルから各艦へ。敵の攻撃は一度だけではないはずだ。第二次攻撃に備えろ。繰り返す。第二次攻撃に備えろ》
各艦が一斉に慌ただしく動き出し、第二次攻撃に備える。
だが、この艦隊のただ一つのイージス艦ハルシオンは左舷側にいる。
今から右舷に移動しても、敵が待ってくれるはずがない。
しかも、相手は海面スリスリに飛ぶ対艦ミサイル。
今右舷にいる本艦と僚艦では迎撃はかなり難しい。
だが、やるしかない。
「音源あり、敵潜水艦は第二次攻撃を準備ty…いや!対艦ミサイル発射!数2!」
「こちらオルフェウス!敵潜水艦の対艦ミサイルの発射を確認した!ケストレル右舷から来る!迎撃準備!」
「対艦ミサイルが海面に出るまで残り10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、来ます!」
海面から水柱が上がり2発の対艦ミサイルが姿を現す。
「迎撃!ファランクス撃ち方始め!」
本艦と僚艦のファランクスが一斉に撃ち出し、次々と弾丸を打ち出す。
海面には弾丸の弾着時の水柱が多数上がり、対艦ミサイルは海水のシャワーを浴びながらケストレルに向かう。
だが、1発の弾丸が対艦ミサイルに命中。
対艦ミサイルは爆散し、海面に黒煙が上がる
「やったか!」
誰もがそう思った。
だが、黒煙の中からもう1発の対艦ミサイルが姿を現す。
「対艦ミサイル一つ迎撃に成功!しかし、もう1発は健在!」
「駄目です!迎撃間に合いません!抜けられます!」
またも、対艦ミサイルはグムラクと本艦の間をすり抜け、今度は右舷艦橋後方付近に弾着し、爆発。
ケストレルはもう一つ黒煙が上がる。
「くそ!」
ケストレルは辛うじて水平維持しているが、いつ傾斜してもおかしくない。
《こちらジバニー。敵潜水艦を発見した。これより本艦が敵潜水艦を沈める。他の艦はケストレルの護衛を!》
《ケストレルから各艦に緊急連絡。現時刻をもってケストレルは射出員を除く乗組員に退艦命令が発令。また、射出員もラーズグリーズを発艦させたのちに退艦する。また、旗艦はケストレルからハルシオンに移す。以上》
この通信を聞いて茫然とした。
退艦命令が発令されたことはケストレルは長くは持たないことを意味する。
そう、ベルカ戦争から戦い抜いた艦が、ケストレルが沈もうとしている。
しかし、すぐに意識を変える。
「全乗組員へ!ケストレルの最後の仕事を終わるまで、警戒を緩めるな!」
「「「「了解!」」」」
そう、ケストレルの最後の仕事を見届ける。
それが今俺たちが出来ることだ。
すでにケストレルから多数の救命ボートが降ろされている。
甲板ではラーズグリーズを打ち出すために射出員が慌ただしく動いているのが確認できる。
だが、俺は目を疑った。
カタパルトに接続されている機体はF-35CライトニングⅡではなく、ベルカが開発した新型戦闘機であり、戦略レーザーTLSを搭載し、キャノピーがない戦闘機。
ADF-01ファルケン。
どうやら、カタパルトがイカれても打ち出す気だ。
すでに3機のX-02ワーイバーンが打ち出され、残りはファルケンのみ。
《圧力を限界まで上げろ!どうせ、次の発艦は無いんだ!》
《バリアー上げろ!》
《ブレイズ!最大出力まで上げろ!》
《了解!》
ADF-01ファルケンはアフターバーナを点火する。
《カタパルト圧力限界!いつでもどうぞ!》
《ブレイズ打ち出すぞ!》
《了解!ブレイズ発艦する!》
限界まで圧力されたカタパルトが解放され、ADF-01ファルケンは一気にスピードを上げ、ケストレルから打ち出された。
《発艦を確認した。これより、射出員は退艦します!》
ラーズグリーズを打ち出した射出員も退艦を始め、残った救命ボートが降ろされていく。
《こちらシバニー、これより敵潜水艦に攻撃をする》
シバニーから放たれた魚雷は海へと沈んで行く。しばらくして、海面が膨れ上がり巨大な水柱が上がる。
「敵潜水艦、撃沈!」
その報告を受け喜びの歓声が上がる。だが、その歓声はすぐに終わった。
「ケストレルが!ケストレルが沈むぞ!」
乗組員たちが一斉にケストレルが映しだされているモニターを見ると、今まで水平を保っていたケストレルが一気に傾斜を始める。
すでに救命ボートは安全地帯にいる。
まるで、救命ボートが安全地帯に着くのを待ってたように、一気に傾き始め、艦首から海へと沈んで行き、スクリューが姿を現し、横倒しながら海へと姿を消していく。
だが、大爆発などを起こさずに静かに海へと沈んでいく。
「(ケストレル。今までありがとう。安らかに眠れ)」
俺はそう心の中で言い、ケストレルに敬礼する。
そして、他の乗組員たちも一人また一人と敬礼していくのであった。
2010年12月30日
環太平洋戦争終戦目前にしてオーシア国防海軍第三艦隊所属空母ケストレルはユーク潜水艦による攻撃を受け沈没。
だが、ケストレルの最後はケストレルから退艦した乗組員に見届けながら、眠るように静かに海へと沈んで行った。
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ケストレル今までありがとう。安らかに眠れ