町外れのとある一軒家。
そこには木こりの男が一人住んでいたが、数年前に亡くなり、そこは廃屋と化していた。
しかし、そんな廃屋に一人、また一人と人が入って行く。
入って行くのは全員男で、その人数は既に百を超えていた。
とてもそれだけの人間が入りきる大きさの家ではないにも関わらず・・・・・・だ。
その理由は、家の中の床にあった。
そこには、地下へ続く階段があったのだ。
続々と階段を降りて地下へ行く男達。
その先にあったもの。
それは・・・・・・
「しっとの心は!」
「「「「父心!!」」」」
「押せば命の!」
「「「「泉湧く!!」」」」
「見よ!」
「「「「「しっと魂は!暑苦しいまでに燃えているーーーー!!」」」」」
ガシィィィィン!と、コブシを突き合わせるしっとマスクスーパー1こと及川と男達。
そう、そこはもてない男達を救済する正義(?)の秘密結社、しっと団漢のアジトだったのだ。
「諸君!よう集まってくれたな!ほな、今回の活動を説明するで!!」
「「「「はい!総統!!」」」」
「今回のワイらの目的!それは、この忌まわしい日に!ハルマゲドンを起こし!アベック共に正義の鉄槌を下す事や!!」
しっとマスクスーパー1が腕を高々と上げ、そう宣言した。
「総統!今日が忌まわしい日とは、いったいどういう事でありましょうか?」
「それは今から説明したる」
しっと団員の質問に、しっとマスクスーパー1はどこか遠くを見ながら説明を始めた。
「ワイが居た世界では、今日の事をバレンタインデーと言うんや。その日はなあ・・・・・・」
「「「「そ、その日は?」」」」
「国中の女性が!意中の男にチョコと言うお菓子を渡して告白すると言う日なんや!!」
「「「「な!なんだとーーーーー!?」」」」
団員たちは揃って驚愕の表情を浮かべていた。
「それだけやない!既にくっついているアベック共も、女は男にチョコを渡してところ構わずいちゃついとるんや!街はアベックで溢れ帰り、阿鼻叫喚の地獄絵図となるんや!!」
「「「「な、何と恐ろしい・・・・・・」」」」
男達は恐怖で凍りついた。
「さあ!この忌まわしい日!ワイと一緒にアベック共を粉砕するんや!!」
「「「「うおおおおおおお!!」」」」
しっとマスクスーパー1に同調し、男達は雄叫びを上げた。
次々と地上へ上がっていくしっと団員たち。
そんな中、しっとマスクスーパー1に一人の団員が近付いてきた。
「総統。特殊部隊の任務、完了しました」
「ご苦労さん。・・・・・・ふっふっふ。この世界でまで悪しき風習を行おうとする怨敵よ。思い知るがええわ・・・・・・」
しっとマスクスーパー1は邪悪な笑みを浮かべ、地上へと上がっていった・・・・・・
さて、この世界には存在するはずもないバレンタインデー。
だが、ある男がこの風習について話したため、彼の周りでのみそれは行われる事となった。
無論、ある男とは一刀の事であるが・・・・・・
「お~い、北郷~~」
「・・・・・・ん?白蓮?」
城内を歩いていた一刀の後ろから、白蓮が駆けてきた。
「北郷。これを受け取ってくれ」
一刀の前まできた白蓮はおずおずと小さな袋を差し出す。
「これ何だ?」
一刀は白蓮から袋を受け取ると、中を見た。
その中には、クッキーに良く似たお菓子が入っていた。
「今日は、ばれんたいんとか言うんだろ?ちょことか言うお菓子は用意出来そうになかったから、お前から聞いたくっきーとか言うお菓子を作ってみたんだけど・・・・・・」
「おお、サンキュー。さっそく食べさせてもらうぞ?」
「う、うん・・・・・・」
一刀は白蓮手作りクッキー?、を口に運ぶ。
モグモグ・・・・・・
「ど、どうだ?」
「・・・・・・」
一刀は何だか微妙な顔をした。
「・・・・・・辛い」
「え!?そんな筈は・・・・・」
白蓮は袋に手を入れ、クッキーを口に運んだ。
「モグモグ・・・・・・ほんとだ。なんでだ?味付けには確かに砂糖を使ったはずなのに・・・・・・」
「この味は塩だよな?」
一刀は首を傾げる。
「・・・・・・ご、ごめん。これは捨てるから返して・・・・・・」
白蓮は一刀から袋を取り上げようとするが、一刀はその手をヒョイとかわした。
「もったいないから食うよ。せっかく作ってくれたんだしな」
「で、でも・・・・・」
ポン、と白蓮の頭に一刀の手が置かれた。
「いいから。ありがとな、白蓮」
「う、うん・・・・・・」
そう礼を言い一刀は白蓮の頭を撫でつつ、塩辛いクッキーを食べていくのだった・・・・・・
「・・・・・・変だ。明らかに変だ」
一刀は部屋で椅子に座り、お茶を飲みながらそう呟いた。
白蓮の後も、一刀は女性たちから次々と手作りお菓子をもらったのだが、どれもこれも調味料が間違っていたり、使われているはずのない食材が使われていたりと妙な物ばかりだったのだ。
一刀はその味について全て正直に言いつつ、返したり捨てたりせず全て貰って完食した。
舌の感覚はすっかり麻痺してしまっている。
ちなみに、今飲んでいるお茶は既に二十杯を突破していたりする。
「誰かが細工してるとしか思えねえ。いったい誰が・・・・・・」
一刀がそう呟いていると、扉を開けて華雄が部屋に入ってきた。
「一刀!私達の菓子を台無しにしたやつらが見つかったぞ!!」
「ほう・・・・・・分かった。すぐ行く」
一刀は席を立ち、華雄の後について部屋を出て行った・・・・・・
華雄に連れられ一刀たちがやってきたのは中庭。
そこには一刀に手作りお菓子をプレゼントした魁陣営の女性たち(白蓮、袁家トリオ、小蓮、華琳、張三姉妹、恋)が揃っており、数人の兵士、文官、調理師など様々な職種の男達が正座させられていた。
「さて、どうしてこんな事を・・・・・・」
白蓮が彼らを問いただそうとしたその時、
「た、大変です!」
一人の兵士がその場に駆け込んできた。
「ま、街に暴徒たちが押し寄せてきました!人々を次々と襲っています!!」
「な、何だと!?」
白蓮たちは驚きの表情を浮かべた。
それとほぼ同時に、正座させられていた男たちはくっくっくと笑い始めた。
「何がおかしい!」
白蓮の怒りをもろともせず、男達は笑いながら言った。
「「「「聖戦が始まったのだ」」」」
「せ、聖戦?」
「そうだ」
「私たちの救世主が、この腐った世の中を変えてくださるのだ」
「「「「はっはっはっはっはっは」」」」
揃って笑い声を上げる男達。
「・・・・・・おい、白蓮」
「な、何だ?」
「こいつら牢に放り込んで、街に行くぞ」
「あ、ああ!そうだな!!」
「きゃああああああ!!」
「うわああああああ!!」
街は阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。
「それそれ!ハルマゲドンじゃあああ!!」
「天罰天罰ううううう!!
「汚物は消毒だあああああ!!」
しっと団の男たちは次々と人々、主にアベックたちを襲っていた。
被害はアベックだけに留まらず、アベックに人気の店も次々と叩き壊され、人々は逃げ惑うしかなかった。
「そうや!アベックに関わるモンはみんな消してしまうんや!!」
しっとマスクスーパー1は先頭に立ち、次々とアベックを血祭りに上げていった。
しかし・・・・・・
「そこまでだ・・・・・・」
しっとマスクスーパー1の前に、最大の怨敵が現れた。
「出てきよったな、北郷一刀。どうや?貰った菓子は美味かったか?」
「・・・・・・お前がやらせたんだな」
「そのとおりや。お前のところで働いていた人間に、ワイらの仲間がおったんでな。調味料の中身を入れ替えたり、材料にまったく合わないような素材を混ぜ込んだりさせたんや。もてない男達からのプレゼントってところやな・・・・・・」
「お前ら!!」
「許せんな・・・・・・」
「シャオも本気で怒った!!」
「猪々子さん!斗詩さん!あの男達の髪の毛一本この世に残すんじゃありませんわよ!!」
「アイアイサーー!!」
「了解!!」
「この曹孟徳の贈り物を台無しにした罪、楽に死ねるとは思わないことね・・・・・・」
「・・・・・・殺す」
一刀にプレゼントを贈った将たち(戦えない三姉妹は城で留守番)は全員怒りを露にしていた。
いっぽう一刀は、
「・・・・・・おい、しっとマスク、だったな」
「なんや?」
「・・・・・・お前ら」
一刀はゆっくりと続けた。
「死ぬより辛い目って、どういう事だと思う?」
「ぐあああああああ!?」
「ひぎいいいいいい!?」
男達の悲鳴が響きわたる。
あの後、しっと団は十分もかからず壊滅した。
そして、捕まった男たちは世にも恐ろしい拷問を受けていたのだ。
その拷問とは・・・・・・
1・男の股下に角材を通し、両端を持って持ち上げる。
↓
2・股間に角材をぶち当てる
↓
3・そのまま足のつかない位置まで持ち上げる
というものであった。
「これぞ、エクスカリヴァーの刑だ」
一刀は腕組みし、仁王立ちで刑にかけられる男達を見ていた。
そして
「つ、潰れるううううううう!!」
刑にかけられているしっとマスクスーパー1も耐えられないとばかりにもがき苦しんでいたのであった・・・・・・
戦いは終わった。
しっとマスクスーパー1も敗れ去り、全ては終わったのだ。
だが・・・・・・
しっと団のアジトには、こんなメモが残されていた。
(第二次ハルマゲドン、12月24日クリスマスイヴ)
どうも、アキナスです。
特急で書き上げました。
せっかく出したのだから、こういう所で使わないと、と思いまして・・・・・・
できれば他の陣営の方々も出したかったのですが、全員出すほど余裕がなかったんですよね・・・・・・
クリスマスイヴ、書けるかなあ・・・・・・
さて、そんな所で次回に・・・・・・
「無宿剣法バーチカルギロチン!!」
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あの男が再び・・・・・・