No.54280

強さと弱さ

ユウさん

投稿2作目の作品です。
またもや霞のIfストーリーです。
魏ED後、再び一刀がこの世界に戻ってきてからの話です。
たくさんのコメント待ってます。

2009-01-25 23:46:39 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:10944   閲覧ユーザー数:7240

 

俺がこの世界に戻ってきて、もう、どれぐらいの月日が経つだろうか?

俺は、あの日、この世界から、華林のもとから消えた。はずだった。しかし俺はまたこの世界に戻ってきた。理由はわからない、でもそんなことはどうでもよかった。また、華林や魏の仲間たちに会うことができたのだから。

 

 

 

俺がこの世界に戻ってきて間もない頃、魏の国では大陸平定の記念祭が開かれることになった。

 

「う~ん・・・・・・」

 

記念祭の開催が迫る中、俺は、一人机に向かっても出し物を考えていた。大陸きっての大祭、出し物にも力が入るのも当然である。すでに街では記念祭に向けて出店などの準備が着々と行われているらしい。

 

そんな中、出し物を考えているのも、どうせやるのなら、みんなが驚くような、なんというかインパクトのある出し物したい!そんな願いがあるからだ。

 

「う~ん、お祭りの出し物~」

 

ん~、あれなんてどうだろう。

 

「あ~、でもな~」

 

そう、さっきからずっとこの調子だ。案は出てくるものの、いまいちインパクトが無い。

 

「大食い大会なんかは・・・・・・確か季衣と流琉がやるって言ってたっけ」

 

「・・・・・・・・あ~、なんも思いつかね~」

 

いっそ、『魏の武将水着コンテスト』とかでもやるか?

 

・・・・・・・いや、やめておこう華林に殺されそうだ。

 

ふと窓の外に目をやる。ああ、あの広大な大空のようなインパクトがほしい・・・。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・・・ん?」

 

空?

 

「そうだ!あれなんていいんじゃないか?」

 

途端にアイディアが浮かんできた。エジソンもびっくりの閃きだ!

 

「材料は、あれだから、そうなると期間は・・・・・・」

 

材料・製作・準備、考えをまとめ計画書に書き込んでいく。

 

「よし、大丈夫だ。あとは、これを真桜に作ってもらえば・・・」

 

俺は、設計図を手にして真桜の部屋へと向かった。

コンコン 

 

「おーい、真桜、いるか?」

 

真桜の部屋につき、ノックをする。

 

「ん?隊長?入ってええよ」

 

返事が返ってきたので、俺は部屋に入った。部屋に入ると見慣れた奇妙な、からくりの山の真ん中に真桜がいた。

 

「なんや、隊長?うちに用事か?」

 

「ああ、この設計図の物を作ってほしいんだ、記念祭の出し物に使うだけど」

 

「記念祭に出し物か・・・・・・うん、わかったうちにまかせとき!」

 

「ああ、頼んだぞ。・・・・・・あっ!それと、その出し物については一切他言無用だぞ?」

 

「え?なんで?」

 

「その方が、みんながびっくりするだろ」

 

「あ~、なるほどわかったわ」

 

「ありがとう、真桜」

 

とりあえず、これは良し。こうして俺は次の準備へと向かった。

 

 

 

出し物の手配が終わり、一刀は部屋に戻っていた。あとは真桜があれを完成させてくれるのを待つだけだ。

 

「・・・・・・うまくいくといいな」

 

コンコン

 

「一刀~、おるか?」

 

「霞?・・・どうぞ。開いてるよ」

 

霞が俺の部屋に来るなんて珍しいな。

 

「どうしたの、俺に用事?」

 

「そうや。なあ一刀、記念祭、一緒に行かへん?」

 

「記念祭?・・・・・・。ん~、ごめん。昼は出し物の準備があるし、夜には祭りの警邏があるから多分無理だと思う。」

 

「いや、実は、夜は警邏の方は凪たちに頼んで一刀が空くようしてあるんや」

 

「へ?そうなの?」

 

俺、そんなこと聞いた覚えないんだけど・・・・・・。

 

「そやから、どうや?うちと一緒に見に行かん?それともうちと一緒に行くの嫌?」

 

「そんなことないよ。せっかく、霞が誘ってくれたんだ。行くに決まってるだろ」

 

「やったー!ほんまに、ありがとうな一刀。じゃあ、当日の夕方頃に城門のところに来て」

 

「うん、わかったよ」

 

こうして、俺の記念祭のスケジュールが決まった。

 

霞と記念祭を回るのか。だった早くあれを完成させないとな・・・・・・。

そして、大陸平定記念祭当日。午前中であるにも関わらず、街は多くの人で賑わっていた。

 

そんな中、俺は出し物の屋台の準備をしていた。

 

「隊長、例のやつ持って来たでうちにかかれば、こんなん作るの朝飯前や」

 

真桜に作ってもらったのは、中が円状に窪んだ不思議な形状のからくり。これをつい先ほど完成した屋台に運ぶ。

 

「よし、完成だ!じゃあ、凪、沙和、真桜あとは話した通りの手順でやってくれ」

 

「まかせといてなのー、隊長」

 

「隊長はここまで準備してくれたんです。夜は霞さまと祭りを思う存分に楽しんできてください」

 

「ああ、ありがとうな。それで真桜・・・例の夜の奴って、どうなってる?」

 

「ああ、それならもう準備完了や。点検とかも全部終わってる。抜かりは無いで」

 

「さすがだな。真桜」

 

これで、出し物の準備は終わった。予定よりもけっこう時間が掛かってしまった。俺は急いで城門へ向かった。霞はもう来てるかな?

 

 

 

城門に着いたが霞はまだ来てなかった。

 

待つこと、数十分。

 

「一刀~」

 

「霞、いくらなんでも遅すぎだぞ?」

 

「ごめん、ごめん、一刀。待った?」

 

「霞、いくらなんでも遅すぎだぞ?どうしかしたのか?」

 

「・・・ちょっとな。それより早よう祭りに行くで」

 

「ああ、そうだな」

 

「あっ!まって一刀」

 

そういうと、霞は自分の腕を俺の腕に絡めてきた。

 

「こうやって歩きたいんやけど・・・ダメ?」

 

「・・・俺が嫌だって言うはず無いだろ」

 

「うん!ありがと。一刀」

 

俺たちは、腕を組んで街に向かった。

 

 

 

「おー、相変わらずえらい人やなー」

 

大通りには、たくさんの屋台が並び多くの人で賑わっていた。こういう風景を見るといかにもお祭りムードって感じがする。

 

「霞、どこかいきたいところある?」

 

「とりあえず、片っ端から回っていくねん。これが祭りの醍醐味やろ」

 

「そうだな。それじゃあ、そうしよう」

 

しばらく歩くとたくさんの人だかりが見えてきた。確かあそこは俺の考案した屋台のところだ。

 

「お、隊長に姉さん」

 

「よお真桜、屋台の調子はどうだ?」

 

「ああ、隊長。すごいで、人気上々で作るんが追いつかんほどや」

 

「そうか。でもこの分だと俺らは買えないな」

 

「ふっふっふ、隊長、こんなこともあろうかと、二人の分取っといたで」

 

「おお!さすがだ真桜、ありがたく貰うよ」

 

「一刀、これなに?」

 

「ああ、これは綿あめって言って俺のいた世界のお祭りのときに食べるお菓子だよ。食べてみて」

 

「うん、はむっ・・・・・・あ!甘い」

 

「どう、おいしい?」

 

「うん!なんか、もふもふして不思議な感じや」

 

霞は、初めて食べた綿あめ驚いてるようだ。

 

「じゃあ、真桜例のやつもよろしく頼むな」

 

「まかせとき、隊長は姉さんと祭り楽しんでや」

 

そう言って、俺は屋台をあとにした。

「あら、一刀に霞、腕なんて組んで見せ付けてくれるわね」

 

次にあったのは、華林と桂花と春蘭と秋蘭たちだった。

 

「えへへ、ええやろ華林さま。今日は二人きりなんやで」

 

そう言って、霞は、俺の腕に抱きついてく。霞、胸が当たってるんですけど・・・。

 

「あっ霞!早くその変態から離れなさい!妊娠するわよ!」

 

相変わらず桂花は、俺に対して敵意剥き出しだ。

 

「まあ、確かにそうね。でも私としては一刀の方が羨ましいわ。こんなにかわいい服を着た霞と腕を組んでいられるんですもの。どう霞、今から私たちとお祭りを回らない?」

 

「ん~、華林さまには悪いんやけど、今日は一刀と回るって決めたから断るわ」

 

「そう、残念だわ」

 

「なあ北郷よ、あの『綿あめ』やらなかなかの物だな。姉者もうまいと気に入っていたぞ」

 

「こら、秋蘭私はそのようなことは、断じて言ってない!」

 

「いや春蘭、そう言いつつ、両手に持っている物は何なんだ?」

 

春蘭の手には、綿あめが両手に二本ずつ握られ、それを交互に食べていた。

 

「そうね。一刀、あなたの考えたあの『綿あめ』とか言う菓子なかなか人気だったわよ。でもあの程度のものじゃ私は満足しないわ。もっと、私があっと驚くようなものを用意してほしかったわね」

 

「はは、俺もあれで華林が驚くとは、思ってないよ。でも俺に秘策があるんだ。今は、言えないけどきっとみんなびっくりすると思うよ」

 

「そう、それは楽しみだわ。それじゃこれ以上、二人の邪魔しないために私たちは行くわ」

 

 

 

大きな広場に出ると、中央を囲むように人だかりができていた。中央の看板にはラーメン大食い大会と書かれていた。どうやらここは季衣と流琉が主催した大食い大会の会場らしい。中央には大柄な男たちが大盛りのラーメンを食べた数を競っている。

 

・・・・・・ん?

 

その男たちに混ざって小さな女の子も大盛りのラーメンを食べている。

 

女の子の正体は季衣だった。男たちに負けず劣らずの食べっぷりだ。いや、むしろ男たちよりも、かなり早いペースで食べている。あっ、食べ終わった。

 

「流琉、ラーメンおかわり!」

 

「はい、追加のラーメンお待ち!・・・・・・って、もう季衣も食べてないで手伝ってよ!」

 

「えー、ぼく作るよりも食べるほうが得意なんだもん」

 

「ははっ、流琉も大変そうやな」

 

っていうか、季衣は主催者側なのに参加していいのだろうか?

 

 

 

こうして俺たちは一通りの出し物を回り終えた。

 

そろそろかな。

 

「なあ霞、城壁の上に行かないか?」

 

「へ?なんで?」

 

「いや、ちょっと見せたい物があるんだ」

 

「?べつにええけど、見せたい物ってなんや?」

 

「今はまだ秘密だよ。それじゃ早く行こう」

 

「お暑いですねー。お二人とも。」

 

声を掛けてきたのは風と稟の二人組みだ。

 

「これは、一刀殿に霞殿。祭りはもう見て回られたのですか?」

 

「ああ、それで今から城壁のところへ行くところなんだ」

 

「城壁へ?なぜですか?・・・・・・はっ!まさか、人気の無い城壁で霞殿に・・・い、いやらしいことを!

 

「え、一刀そうなん?」

 

「いやいや、違うから」

 

「おうおう、若いってのはいいことだが、それはやりすぎってもんじゃないかい。兄ちゃん」

 

「だから、違うって!って言うか早く稟を止めないと」

 

「い、いくら人気が無いからと言って・・・そ、そんな不純なーーーーー」

 

「ぶふーーーーーーーーーーー!」

 

は~、遅かったか。稟は噴水の如く鼻血を出して倒れてしまった。

 

「ふ~、やれやれだぜ」

 

そういうと風は稟の首の後ろをとんとんした。

 

「ぐ、ふ・・・・・・す、すまない風」

 

「稟ちゃんは多分大丈夫です。それでは、お二人とも。急いでいるところ邪魔して悪かったのです」

 

「あ、ああ、それじゃあ稟お大事に」

 

風は瀕死状態の稟をずるずると引きずって行ってしまった。

 

「稟・・・大丈夫やろか?」

 

風が付いてるんだ心配ないだろ。・・・多分。

「ふ~、楽しかったわ」

 

「そうだな、けっこういろいろな屋台や出し物あったからな」

 

「・・・でも、この祭りも終わってしまうやろ。そう考えると寂しくなるわ」

 

そう呟くと、霞は少し悲しそうな顔でにぎやかな、街のほうを見ている。

 

「それで一刀うちに見せたい物って何?」

 

「ああ、もうすぐだから、待ってて」

 

「?」

 

霞は不思議そうな顔でこちらを見ている。

 

すると、どこからともなく銅鑼の音が聞こえてきた。

 

「な、なんや?」

 

「そろそろ、始まるよ霞」

 

「始まるって、何が?」

 

そう、これは合図だった。

 

そして第一発目が上がった。

 

ボッ、ヒュルヒュル~、ドーン。

 

「・・・・・すごい」

「一刀!一体、何なんやこれ!」

 

「これはね、俺のいた世界で夏のお祭りにやる行事で『花火』って言うんだ」

 

「・・・花火」

 

「前々から真桜に頼んで作ってもらってたんだ。みんなには驚いて貰いたかったから、今日まで秘密にしてたんだけどね」

 

次々と打ち上げられ、夜空に咲く花火に霞は釘付けになっていた。

 

「じゃあ、うちに見せたかった物っちゅうのは」

 

「そうだよ。この城壁からが一番よく見えると思ったからね。すごいだろ?」

 

「うん。・・・うち、こないにきれいなもん見たの初めてや・・・」

 

「そう、喜んで貰えてよかったよ」

 

俺たちはその光景に見入っていた。しばらくすると、霞が腕を絡めてきた。

 

「なあ、一刀・・・・・・これってもしかして・・・雰囲気ってやつ?」

 

「はは、そうかもな」

 

 

「・・・・・・なあ一刀、・・・一刀はうちのことどんな風に見える?」

 

「なんだよ急に?霞は強くて、やさしくて、かわいい女の子だろ」

 

「あんなあ、一刀。うちは一刀が思ってるほど強くないなん。今日だってどんな風に一刀の前に立ったらええのかわからなかった」

 

だからあの時、遅れてきたのか。

 

「あの時もそうや」

 

「あの時?」

 

「一刀がいなくなった、あの日からうちの胸にはぽっかり穴が開いたみたいになったんや」

 

「最初は、時間が経てば元に戻ると思ってたんやけど、どんなに時間が経っても治らんかった。この国には一刀との思い出が多すぎる。だからうちは旅に出たんや。旅に出ればこんな想いしなくて済む、一刀のことを忘れられると思ったんや」

 

「でも・・・でもダメやった。なにしても、どこ行っても・・・一刀のこと忘れらんかったんや」

 

「・・・霞」

 

霞の目には、涙があふれていた。

 

「せやから、一刀がこの魏に戻ってきたって聞いたときは、ほんまに・・・うれしかった」

 

「・・・霞、・・・俺もまたこの世界に戻ってこれて本当によかったと思ってる」

 

俺は霞を抱きしめた。

 

「俺がなぜ世界に戻ってきたのか理由はわからない、でもそんなこと、どうでもよかったと思ってる。俺はまた霞や魏のみんなとこうして話したり、触れたりすることができる。それだけで十分だと思ったからだ」

 

「・・・・・・一刀」

 

「ごめんな、霞。こんなに悲しい想いをさせて」

 

「そう思うんなら・・・もう二度と・・・二度とうちらの前からいなくならんと・・・約束して」

 

「ああ、約束するさ。もう二度と霞たちを残して行ったりしない。もう二度と悲しい想いをさせない。絶対にだ」

 

「・・・約束やで」

 

俺はさらに強く抱きしめた。

 

「霞、もう少しこのままでいよう」

 

「うん・・・ええよ」

 

 

決して彼女をおいて行ったりしない。絶対に悲しい想いをさせない。

俺はこの決意を守り通すと、この胸にそして今、抱きしめている彼女にそう誓った。

 

 

 

 
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