No.540950 IS x アギト 目覚める魂 45: 自由国籍i-pod男さん 2013-02-07 01:00:44 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2253 閲覧ユーザー数:2172 |
昼休みが終わる十五分程前。職員室に箒、鈴音、シャルロット、セシリア、ラウラ、楯無、そして簪が呼び出された。
「一組のお前らは知っていると思うが・・・・織斑と門牙、両名がIS犯罪対策部に異動させる為に査察官が学園に来た。だが、二人は現在逃亡し、行方が分からない。」
「そんな・・・・」
「袈裟の騒ぎはそう言う事だったのね・・・・・」
隣のクラスである鈴音は兎も角、一番離れたクラスにいる四組の簪は相当なショックを受けていた。
「二人の捕獲命令も遅かれ早かれ出るだろう。当然この学園にも、その通達が来る筈だ。」
「そんな・・・・!!」
「めちゃくちゃですわ!一夏さん達は文字通り命をかけてアンノウンを何体も葬って来たのに、それを・・・・」
「・・・・・結局、指導者、独裁者なんて大半はそんな物なんだよ。自分の力が揺らぎそうになる可能性があれば、出来るだけ早くそれを潰そうとするか、支配下に置こうとする。僕は、何度もそれを見て来たから。」
「しかし・・・・流石にここまで圧力がかかれば今後我々も動き難くなる。従順に頭を縦に振るのはどうかと思うが、真っ向から反対すればそれもそれで問題視される。あの二人なら追跡を振り切れているとは思うが・・・・・・」
「連絡も未だにつかない。何度も呼び掛けてはいるが・・・・」
「今は、無事を祈るしか無い、か・・・・」
楯無がそう呟く。
「教室に戻れ。もうすぐ予鈴が鳴るぞ。」
簪は覚束ない足取りでフラフラと戻り始めるが、楯無が転びそうになった彼女を抱き止めて保健室に向かった。
「全く・・・・ウチの未来の弟はナニやってんのかしら、お嫁さんをこんなに心配させるなんて・・・・帰って来たらお仕置きね。」
場所は変わってイレイズドの基地内部では、一夏と秋斗はナターシャとアメリカ代表のイーリス・コーリングに事の顛末を話し終えて一息ついていた。
「大変だったな、お前ら。」
「アンノウンの事はネットとか映像とかでしか見た事無いけど、本当にISの武器を使っても何の効果も無かったなんてちょっとショックね。」
「まあ、百パーセント対応出来るのが俺達アギトってだけで、政府連中が血眼になるのは分かってたんですけどね。けど、まさか監査官が出るとは思わなかった・・・・」
「監査官?!マジかよ!?」
イーリスが目を見開いて驚く。
「監査官と言えば、IS委員会直属の表立って動ける諜報員みたいな物よ。結構、と言うかかなり特殊なポストだわ。人数も各国にほんの数人だけみたいだし。」
「成る程。あのピンバッジはそう言う意味か。ISのコアに似せた形で、中心にISの二文字、その周りにはI.I.S.C、英語で国際IS委員会の頭文字があった。」
「それが、監査官の証よ。大抵の国の機密にアクセスする権限を持ってるわね。アメリカにもいるわ。同僚のコだけど。」
再び沈黙が訪れた。
「とりあえず、相手が分かっただけでも御の字です。でも、これからどうします秋斗さん?流石にいつまでもここで匿って貰う訳にも行かないですよ。追跡してるんだったら、数日後には追っ手が来る筈です。」
「それなら問題無いわ。貴方達、代表候補でもないからどの国に所属するかはまだ決まってないでしょ?そのままじゃ本当に危ないわよ?」
「自由国籍があれば、ISは取り上げられても犯罪を興さない限りどの国にも拘束されないし出頭義務も無いですからね。・・・・でも、取得するには実力は勿論、それなりにお偉方にコネが無いと出来ないんじゃないですか?申請書すら手に入るのに手順を幾つか踏まなきゃ行けないし。確か・・・・代表クラスを一定の条件を満たして時間内に倒して、委員会の理事長、役員三名、所属国の大統領、もしくはそれと同等の立ち場と権限を持つ人間の合計五人のサインを記した上で期日前の提出が必要だとか・・・」
秋斗は記憶をたどりながら自由国籍取得の条件を暗唱した。
「その通り。良く知ってるな。」
イーリスは純粋に驚いていた。
「でも、それはそうでもないのよね。実は、例外もあるのよ?貴方達の場合でも適用されると思うわ。委員会の理事長の署名は必要だけど、貴方達を自由国籍にするべきだと言う思想を持つ国が協力して各国の代表からの署名が貰えれば、自由国籍を取得する事も出来るの。最終的な判断は理事長の手に委ねられてるから、向こうも流石に嫌とは言えないわ。IS条約を委員会のトップが遵守しないと示しがつかないもの。」
「でも、その方が余計に手間がかかる気がするんですけど・・・・」
一夏が思案に耽りながらそう呟いた。
「大丈夫よ。私が大統領に直談判して協力を要請する様に頼んだの。勿論、私も直々に色んな国に出向いたわ。殆どがあまり良い顔をしなかったけど、現在合衆国を加えてメキシコ、スペイン、サウジアラビア、後ロシアの五カ国が貴方達男性操縦者を自由国籍を与えるべきだと主張しているわ。」
「有利に働きそうだな。」
「確かに。」
「でも、幾ら例外とは言え、可能性はそこまで高くないの。審査に通るまではかなり時間が掛かるし、もし落とされたら今までの時間、手間は全くの無駄になる。少なくとも後五カ国から署名を集めないと申請が通る可能性は低くなるでしょうね。」
「五カ国・・・・あ!」
ピコーン、と一夏の頭で電球が点灯した。今まで気付かなかった自分を呪って膝を力強く叩いた。
「そうだ・・・・!!あいつらに頼めば良い!」
「あいつら・・・・そうか!そうだ、その手があった。可能性はまだあったんだ!」
「どう言う事だ?」
イーリスは二人の歓喜の理由が良く分からずに首を傾げた。
「実は、俺達代表候補と代表一人が友達なんです。その中の何人かはある程度政府に顔が利く・・・・筈です。だから、彼女達と連絡を取れば協力してくれるいくらかの可能性が現れます。出来るとすれば・・・・日本、イギリス、中国、ドイツ、ロシア、そしてフランスです。」
「そんなに!?」
「はい。でも、今連絡を取る訳にも行きません。逆探されたら逃げて来たのが無駄になります。それに、ここに踏み込んで来たらナターシャさんやイーリスさんに迷惑がかかりますから。」
「それなら、問題無いわ。私達のスクランブル回線を貸してあげる。逆探不能よ。」
「ありがとうございます!」
その時、爆発が起こり、地響きがした。
「地震・・・・?」
「いや・・・・これは。」
「ああ。」
「「アンノウン。」」
二人は外に急いだ。そして、案の定、そこにクラゲの様なハイドロゾアロード ヒドロゾア・イグニオと、青い体色のクラブロード クルスタータ・パレオがアメリカ兵を翻弄していた。
「やっぱり来ましたね。」
「G4で行くぞ。ここでアギトの姿を見られたら後の説明が厄介だ。場合によったら追い出されかねない。幾らアメリカ代表と軍属のテストパイロットとは言え、庇い切れないからな。」
「了解です。」
「「変身!!」」
『『Initiate』』
G4-X0、そしてG4-Mildが二体のアンノウンに向かって突撃した。
「オラッ!」
「ハァッ!!」
Mildは跳躍からのパンチでヒドロゾアロードを、G4-X0はプロレスの如き飛び蹴りでクラブロードをぶっ飛ばした。
「We’ll handle this! All of you get everyone out of here! (ここは俺達がやる!皆早く逃げろ!)」
秋斗の言葉に無事な兵士は怪我人を運びながらもその場から避難し始めた。
「一夏、蟹野郎は任せろ。お前はあのクラゲを料理してやれ。」
「了解。」
G4-X0はコブラとヴァイパーを構え、G4-Mildは投げ渡されたアラクニスを構えた。
「殲滅開始。」
だが、ヒドロゾアロードは瞬間異動の如くノラリクラリと銃弾を回避しては雷撃を喰らわせ、今の所一発も被弾していない。クラブロードも蟹の甲殻類の特性を活かした頑強なボディーでダメージを全く受け付けない。
「何だコイツ・・・・全然当たらない!」
「こっちは只利いてないだけだ。火力上げるぞ。GXランチャーとギガントで吹き飛ばしてやるぜ。海の方に奴をぶっ飛ばせ。」
「そう、したいの、は!山々、なんですけ、どぉ!?この、落雷攻撃の所為で、迂闊に、近づけ、ないです!!」
ボクサーの様にステップを踏みながらヒドロゾアロードの放つ落雷を避けるが、援護に回れない。
「分かった。こっちは兎に角場を繋ぐ。早くソイツをどうにかしろ!」
(コイツは恐らく自由に瞬間移動が出来る。なら、現れた瞬間を狙って・・・・!)
目の前から姿を消し、背後に現れたヒドロゾアロードが再び落雷を放とうとした瞬間、アラクニスを投げ捨てると左肘の関節の間に銃身を乗せ、タウラスの引き金を引いた。左肩を撃ち抜かれたヒドロゾアロードは地面に倒れ込む。
「今だ!」
タウラスのシリンダーに残った銃弾とアラクニスのマガジン一本分の銃弾を喰らわせ、止めにイフリートのグレネード二発を発射した。
「っしゃあ!次ぃ!」
アラクニスを使ってクラブロードの背中にグレネードを命中させた。ダメージこそ無かった物の、衝撃は殺し切れなかった様で、数メートル吹っ飛んでしまう。マガジンを変えて再び射撃体勢に入ろうとした時には、既にG4-Mild の目の前まで迫っていた。
(間に合わない!)
振り下ろされた鋏は装甲を・・・・・貫かなかった。
「アギトを・・・・・人間を嘗めるな!」
腹にコブラ、ヴァイパーの二丁を押し付け、引き金を引き続けた。零距離射撃はいくらか効果があったらしく、後ろに押されてしまうクラブロード。砂浜に落ちているイフリートを拾い上げると再び水の中に吹き飛ばした。
「上出来だ、下がってろ!」
ギガントをベルトの左腰部分に接続し、右側のレバーを回した。
バシュウウウゥゥウゥゥウウウウ!!!!
一基のミサイルがクラブロードに命中し、その爆発は空まで届く巨大な水柱を起こし、再び落ちた。
「戦闘終了。ナターシャさん、終わりました。アンノウンは倒しました。」
『ありがとう。また、借りが出来たわね。』
「あいつらは俺達を狙って来たんです。感謝されるどころか、普通なら非難されてもおかしくない立ち場にいるんですよ、俺ら?」
『アメリカ人はそこまで小さい器を持っちゃいないわよ。ありがとう。』
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お待たせしました。四十五話です。どうぞ。