No.54092

魏after 一刀伝00

三国堂さん

魏の一刀帰還イベント&エンディング時の一刀サイドを書いてみました。

もう何番煎じか分かりませんが、恋姫祭り最終日ということで見逃してください。

小説(のようなもの)を書くのは十数年ぶりかも。

2009-01-25 04:25:41 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:23088   閲覧ユーザー数:15466

 

 

 

早朝、実家の道場内での稽古を終え、俺はぼんやりと今までの事を思い返していた。

俺が元の世界に帰ってから一年と少し……。

あの世界の魏で過ごした数年は、こちらの世界では僅かな時間にすぎなかったらしい。

行方不明扱いされることが無かったというのは、不幸中の幸いというべきなのだろうか。

 

 

 

俺が消えたあの後、真っ白に塗りつぶされた意識を取り戻した俺は、何事も無かったかのように、寮の自室で目を覚ました。

僅かに感じる懐かしさと、混乱。

夢だったのか?

その恐怖は、数年間着続けて傷みが目立ち始めた制服と、訓練で付いた青痣の残る体を見ることで霧散する。

そして……、全てが現実だったと悟った瞬間、俺は頬を濡らす感触に気づいた。

グルグルと回る思い出。

春蘭、秋蘭、桂花、稟、風、季衣、流琉、凪、沙和、真桜、霞、天和、地和、人和、そして……。

「……華琳」

声を出したら、止まらなかった。

「愛していた……、愛していたんだ華琳!」

後悔はない、例えやり直すことが出来たとしても、何度でも俺は繰り返すだろう……。

「でも俺は、ずっと、ずっと君の側にいたかった!」

認めたくなかった。

「寂しがり屋の君を、ずっと支えていたかった!」

帰りたくなんて、なかった。

「ちくしょう」

目が熱い、涙が……、止まらない。

「うぁ……、うああぁぁああぁあぁぁぁ!」

 

 

それからの事は、正直余り覚えていない。

泣いていたのは半刻か、一刻か、それとも一日以上なのか……。

ただ、涙も声もかれ果てた時、華琳に笑われた気がしたんだ。

-情け無いわね、私の愛した男はこの程度なのかしら?-

って。

たぶんそれは単なる幻聴で、俺の思いが生み出したものに過ぎないんだろうけど。

俺に一歩踏み出す勇気を与えるには十分過ぎた。

だって、あの曹孟徳が愛した男が、蹲って泣いてるだけでいいはずが無いんだから。

 

 

 

それからはとにかく必死だった。

実際はともかく、体感は数年なもんだから、学校の勉強なんかほとんど忘れてしまったし。

警備隊なんかやってたせいで、どうにもトラブルに首を突っ込むようにもなってしまった。

でも、この一年で少しずつ成長できているとは思う。

「華琳、俺は俺の物語をぼちぼち無難にこなしているよ。君は……どう?たぶんうまくやっているんだろうな」

「次に会えたときは、別れてからの話、たくさん聞かせて欲しい」

「だから、いつかまた会えるときまで、俺は胸を張って生きるよ。俺らしく……、華琳に笑われないようにね」

風が吹き、掻き混ぜられた冷えた空気が体温を奪っていく。

「…………ふぅ」

「じゃあな!また会おう、華琳!」

 

 

 

 
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