No.539945

IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~

赤黒い災厄

2013-02-04 13:15:46 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1030   閲覧ユーザー数:966

時間は少し巻き戻る。

 

「…………………」

 

箒はベッドの上で膝を抱えていた。

 

(姉さん…)

 

脳裏に浮かぶのは、束が自分に見せたもの。

 

「………ッ」

 

夏場だというのに、寒気を覚えてしまうほどの衝撃。箒はそれに耐えることができず逃げるようにして宿泊するホテルの部屋に閉じこもってしまっている。

 

(どうして…また、現れたのだろう……)

 

去年の臨海学校で、束は箒に第四世代型IS《紅椿》を渡した。しかし今回は何をしてくるというわけではなかったことが箒は気がかりだった。

 

(姉さんが何の理由もなしに現れるとは考えにくい…それに、あの少女は一体………)

 

そこまで考えたところで箒の思考は中断された。

 

「篠ノ之さん、大丈夫?」

 

「静寐…」

 

ドアを開く音がしたと同時に、同じ部屋の静寐が呼びかけてきたからだ。

 

「具合はどう?」

 

「え…その………ま、まだ少し…」

 

「そっか…無理しちゃダメよ?」

 

一夏がどう説明したかは知らないが、どうやら自分は体調を崩したことになっているらしいと気付いたのはつい先刻のことだった。本当のことを言えず、胸が痛む。

 

「その…すまなかった」

 

「え? あードッキリイベントのこと? そんなのいいって」

 

箒が謝ると静寐は優しく笑った。

 

「篠ノ之さんが怖がって余計に具合悪くなる方が大変だわ。それに桐野くんの驚きっぷりが見れたから満足よ」

 

「しかし………」

 

なんと言えばいいか分からない箒の頭に、静寐はそっと手を置いた。

 

「気にしないの。今からそんな調子じゃ、明日の演習上手くやれないわよ」

 

その優しさに少し心が救われたような気がした。

 

「…ああ。そうだな」

 

だから箒は静寐に笑った。

 

「うん。それじゃ空気入れ替えようか。さっき天気予報でやってたんだけど、夜風が気持ちいいんだって」

 

静寐は頷いてから窓の方へ向かった。

 

「………?」

 

それと紅椿にメッセージが送られてきたのは同時であった。

 

(『窓を開けろ』…?)

 

待機状態の紅椿の上に浮かび上がった意味不明な文章に眉をひそめる。

 

「ん~、気持ちいいね。月も綺麗」

 

窓の方を向くと静寐が窓を開いて伸びをしていた。

 

 

《警告 未確認の機体信号がアクセスしてきています》

 

 

「あれ…? なんだろ?」

 

(なにか来る…!)

 

「静寐っ!!」

 

紅椿からの情報と静寐の言葉に直感し、箒は飛びつくようにして静寐の腕を引いた。

 

「えっ? わっ!?」

 

『……………』

 

直後、真っ黒な塊が現れた。風に遊ばれるように頭頂部から垂れた何十本もの赤く光る長いものが揺れる。高い位置で束ねられたそれに、箒は自分を見ているような感じがした。

 

「IS…?」

 

静寐が後ろによろよろと下がり、うわごとのようにつぶやく。

 

確かにその黒い塊は人の、細見の女性の形をしていた。装甲が施され、ISを展開しているように見える。しかしもっとも目を引いたのは、背中から伸びた腕から生えているものとは異なるもう一対の『腕』。

 

「何者だ!」

 

『……………』

 

異形は、答えようとしない。

 

「何者だと聞いているっ!」

 

『……………』

 

箒の強い問いかけを聞いた異形は顔面の中央を赤く光らせた。

 

『…闘エ』

 

「なんだと?」

 

機械音声に身構える。

 

『私ト闘エ。篠ノ之箒。私ハソノ為ニ生マレタ』

 

「どういうことだ…」

 

抑揚のないその言葉に不気味さを覚えた。

 

『拒ム事ハ許サレナイ。拒メバ、背後ニ居ル少女ヲ殺ス』

 

異形は背中の右腕で静寐を指差した。

 

「ひっ…!?」

 

静寐は腰を抜かしたようにして座り込む。

 

「静寐に手を出すな!!」

 

『ナラバ私ト闘エ。ソウスレバ他ノ者ニハ危害ヲ加エナイ』

 

異形は箒に背を向けた。

 

『来イ』

 

「……………」

 

箒は窓に手をかけた。

 

「し、篠ノ之さん…!」

 

箒は目に涙を溜めて震えている静寐に振り向いた。

 

「静寐、待っていろ。すぐに戻る」

 

そして窓から飛び降りた瞬間に紅椿を展開して浮遊する。

 

『………………』

 

異形はそれを待ってからブースターに点火し、飛び出した。箒もその後を追う。

 

「篠ノ之さんっ!」

 

自分の名を呼ぶ静寐の声が遠く聞こえた。

 

・・・

 

・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・

 

飛行すること数十秒。異形は空中で停止した。

 

「…もう一度問う。貴様は何者だ」

 

箒の言葉に、異形は頭から垂れるケーブルを揺らして振り向いた。

 

『………………』

 

「いや、最早聞くまでもないか。…無人IS」

 

『…ソノ通リ。私ハ無人IS。名称、《ゴーレムEx(エクス)》。アナタト闘ウ為に生マレタ存在』

 

「目的はなんだ」

 

『アナタト闘ウ為ダト、何度モ―――――』

 

突如、地鳴りのような音が轟いた。

 

「な、なんだ今のは!?」

 

『……………』

 

周囲を見渡すが、特に異常は見られない。

 

『話ヲ戻ス』

 

ゴーレムExが箒にその頭を向けた。

 

『私ハゴーレムEx。目的ハ、アナタト闘イ――――――』

 

「違う。私が聞きたいのは貴様を造った人間の目的だ。私になにか恨みでもあるというのか」

 

『…恨みなんてないよ』

 

その言葉だけが、急に人のような喋り方になった。

 

「ではなぜ―――――」

 

刹那、刃か迫った。

 

「くっ!!」

 

箒はそれに反応して空裂をコール。刃を受け止めた。

 

『戦闘時ニ、長話ハ不要』

 

再び声は抑揚のないものに変わる。

 

「そうだ…なっ!!」

 

重い一撃を押し返し、一瞬の隙をついて左手に雨月を呼び出してレーザーを発射。直撃コースだった。

 

 

バチイィッ!

 

 

しかしレーザーはゴーレムExに届く前に左手の刀で弾かれた。

 

『今度ハコチラガ』

 

ゴーレムExが右手の刀の切っ先を箒に向けた。すると刃の鎬から上がせり上がり、銃口が覗いた。

 

 

ババババッ!!

 

 

そこから放たれる連続したエネルギー弾が箒に襲い掛かった。

 

「この程度っ!」

 

弾丸を回転飛行で回避。

 

「はああっ!」

 

そして空裂の帯状のビームを放つ。赤い光の刃はエネルギー弾を飲み込みながらゴーレムExに飛んだ。

 

 

ドオォン!!

 

 

ビームは見事にゴーレムExに命中した。

 

『…………………』

 

しかしその漆黒のボディには傷はなく、まったく効いていない。

 

「無傷だと!?」

 

驚く箒にゴーレムExは高速で接近。両腕に持った刀を左右から振り上げた。

 

「ぐっ!」

 

箒は空裂と雨月を交差させて斬撃を止めた。

 

しかしそこで気づいた。相手には、まだ腕が残っている。

 

 

ズバッ!!

 

 

「うあああっ!!」

 

装甲から火花が散った。なんとか立て直し、ゴーレムExを睨みつける。

 

「四本腕…!」

 

ゴーレムExは四本の腕で四本の刀を握っていた。しかしゴーレムExはその四本の腕すべてを力を抜いたように下にさげた。

 

『…アナタノ『力』ハソノ程度ナノデスカ。ダトスレバ、拍子抜ケデス』

 

「なんだと!?」

 

『ソンナ事デハ、私ヲ止メル事ハ不可能』

 

ゴーレムExは更に続けた。

 

 

『織斑一夏ト肩ヲ並ベル等、出来ル筈ハナイ』

 

 

「…っ! 黙れぇぇぇぇぇっ!!」

 

展開装甲を変形させ、高速戦闘形態でゴーレムExに接近する。

 

「だああああああっ!!」

 

エネルギーの過負荷によってスパークした刃がゴーレムExの黒いボディに振り下ろされる。

 

『………………』

 

 

バシッ!!

 

 

止められた。刀ではなく、その両の手に、渾身の一撃を握りしめられている。

 

「なっ…!?」

 

 

ドスッ

 

 

腹部に、鈍い衝撃を感じる。

 

「う…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀が二本、箒の腹部に突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…が………」

 

ゴーレムExがその刀を背中の腕で抜くと、刺された部分と口から赤い液体が噴出し、夜の林に落ちていく。

 

次の瞬間、激痛が走る。

 

「う…あ……うあああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『感情ガ昂ブルト隙ガデキル…変わらないね』

 

また、声が人のものになった。そして紅椿のPICが機能不全になったのか、箒は姿勢を崩してゆっくりと落下を始める。

 

朦朧とする意識の中、ゴーレムExの姿が自分と重なった。

 

(黒い…あか……つば…き…………)

 

返り血を浴びた無表情が、不気味に歪み、自分を見下している。

 

自分が、出力可変型ブラスターライフル《穿千》を構えて嗤っている。

 

「…ぐ……!」

 

《操縦者バイタルに異常を確認。機体制御率23パーセントまで減少 展開限界まで9秒》 

 

(構う…ものか………!)

 

「…紅椿!!」

 

肩の装甲が機体から離れ、《穿千》に変形した。

 

エネルギーチャージに2秒、照準固定に2秒使った。残り5秒でトリガーを引く。

 

 

バリバリバリバリバリバリバリッ!!!!

 

 

赤と黒の大出力ビームがぶつかり合う。そして爆発が起きた。

 

その衝撃で完全に紅椿はエネルギー残量が無くなり、展開を維持できずに消滅した。箒は重力に逆らえず落下する。

 

「う……あ…」

 

高度が低くなり、段々意識が遠のく。

 

川に着水する瞬間、それは幻覚だったのかもしれない。

 

(姉…さん……)

 

束の姿が見えた。

 

 

ザバン…

 

 

落ちた衝撃による波紋が広がっていくのが見える。

 

(痛い…痛いよ……)

 

川の水は冷たいのに、腹部が焼けるように熱い。

 

(助けて………)

 

手を伸ばす。しかし、その手は誰にも引いてもらえない気がした。

 

(こんな……ことなら…………)

 

今になって、そんな後悔がよぎる。

 

ここで終わるんだ。分かり合うこともできず、気持ちを伝えることもできず、これほど呆気なく。

 

箒は手を下ろしかけた。

 

(あ…)

 

けれど、来てくれた。

 

力強く、自分の手を握ってくれた。

 

(一……か…………)

 

視界が塗り潰される直前、箒の目から涙が零れ、緩やかな川の流れに溶けた。

 

 

 

 

瑛「インフィニット・ストラトス~G-soul~ラジオ!」

 

一「略して!」

 

瑛&一「「ラジオISG!!」」

 

瑛「読者のみなさんこんばどやぁー! はい!」

 

一「こ、こんばどやぁ」

 

瑛「そうそうそれでいんだよ。さ、というわけで今回もはりきって――――――」

 

楯「読者のみんなお待ちかね、楯無おねーさん登場よ!!」

 

瑛&一「「どわぁ!?」」

 

瑛「た、楯無さん! ちゃんとゲストコールしたら呼ぶって言いましたよね!?」

 

楯「だって全然呼ばないんだもーん。おねーさんつまんなーい」

 

一「全然って…まだ始まって一分くらいしか経ってない気が……」

 

セ「楯無さん! いきなり出るなんてずるいですわ!」

 

一「せ、セシリアまで…」

 

瑛「わーいカオスカオスー」

 

楯「まままま、とりあえず進行しましょ」

 

瑛「楯無さんとセシリアがいる時点で質問誰宛てか分かるよな。まあいいか。じゃあ最初の質問。竜羽さんからの質問! 楯無さんに質問です。システマってできますか? もしできるなら熊倒せますか? ですってよ楯無さん」

 

一「システマって、あのロシアの格闘術か」

 

セ「護身術と聞いたことはありますが…それで熊を倒すとは・・・・・?」

 

瑛「さすがに…なあ?」

 

楯「できるよ。ていうか、倒したし」

 

瑛&一&セ「「「そんなあっさり!?」」」

 

楯「うん。手強い相手ではなかったわね」

 

一「俺、楯無さんと勝負した時はカポエラでボッコボコにされたけど、システマもできるんですか…」

 

瑛「熊って倒せるんだ。出会ったら死んだふりをしなきゃいけないとは聞いてたけど」

 

セ「瑛斗さん、それ実はまったく意味無いんですのよ」

 

瑛「え、マジで?」

 

楯「熊に遭遇したら、熊と目を合わせてゆっくり後ずさりでその場を離れるのよ。死んだふりなんかしてたら、食べられちゃう」

 

瑛「へ、へえ~…良いこと聞いた。今度試してみよう」

 

楯「や、熊と遭遇する方が難しいわよ」

 

一「てか、楯無さん熊と戦う機会があったんですか」

 

セ「確かに、そっちの方が気になりますわ」

 

瑛「なんですか? 山籠りでもしてたんですか?」

 

楯「んー、たまたま行った動物園で熊が脱走してこっち来たところを、軽ーく相手してあげたら呆気なく倒せちゃったってだけよ」

 

瑛&一&セ「「「もうなんなのこの人!?」」」

 

楯「でもまあ、その後檻に戻ったところ見に言ったら、私に気づいたみたいで身体丸めて小さくなって可愛かったわねー。芸を見せてくれたんだわ」

 

一「単に怯えてただけなんじゃ………」

 

瑛「まあ、これ以上は触れないでおこう。次の質問! カイザムさんからセシリアへ質問! イギリスではウサギを食べるそうですが、もし食べたことがあるなら一番好きなウサギ肉料理はなんでしょうか? だって」

 

セ「あら、わたくしへの質問ですわね」

 

瑛「前回に続き、世界の料理の話だぜ」

 

一「ウサギの肉か。食ったことないな。美味いのか?」

 

セ「もちろんですわ。煮込み料理などが特に。イギリスの秋の味覚ですの」

 

一「へぇ、そこまで言われるとちょっと興味あるな」

 

瑛「ウサギかぁ。今度食ってみようかな。食堂にあっかな? ウサギ料理」

 

一「さ、流石にどうかなそれは…」

 

楯「わ、私の知る限りではなかったような」

 

セ「よろしければわたくしが取り寄せてお作りして差し上げますが?」

 

瑛「………エンディング行こうか!」

 

セ「いきなりですのね!?」

 

 

流れ始める本家ISのエンディング

 

 

瑛「今回は熊とウサギの話だったんで、熊とウサギに歌ってもらったぞ」

 

一「…あのウサギと熊っぽいあれか?」

 

瑛「そうそう。あれあれ」

 

楯「み、妙に手足がしっかりしてて…」

 

セ「少し不気味ですわね……」

 

瑛「おっと、そろそろ時間みたいだ。それじゃあ!」

 

一&セ&楯「「「みなさん!」」」

 

瑛&一&セ&楯「「「「さようならー!」」」」

 

???「ねえ、そう言えばさっき私の下着が盗まれたの」

 

???「わあ、それは大変だ。許せないね犯人は」

 

???「ええ、許せないわね…で、あなたが被ってるパンティはなにかしら?」

 

???「……………………」

 

???「……………………」

 

???「……………………」

 

???「……………………フッ」

 

 

バタン ウーウーウー…

 

 

一「…なんか、熊の方がパトカーで連行されていったぞ」

 

楯「ウサギの子の方、目が凄いわ……」

 

セ「あの熊…なんだったんですの?」

 

瑛「あの熊の達観した目な」


 
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