真・恋姫無双 黒天編“創始” 外史を終結させるために少女は弓を引く
第1章 夏の思い出 前編
「次は~~トウキョウ~~、トウキョウです」
ありきたりな車内アナウンスが聞こえると、少女は軽く体を伸ばし、リクライニングを元に戻して今までつけていたアイマスクを外した。
「ん~~~っ、やっと着いた」
夏休みという時期なのに幸運にも隣に人が誰も座らなかったので、隣の席においていた自分のカバンにアイマスクをしまう。
そのおかげもあって車内ではぐっすり眠ることができた。
昨日の夜はトウキョウに行くことができるという期待のせいで、あまり睡眠時間をとることができなかったが、その分はゆうに取り戻せたようだ。
その少女の名前は“北郷咲蘭”
地元、九州の中学校に通う中学三年生である。
今回は中学最後の夏休みを利用して、咲蘭自身の第一希望校である私立フランチェスカ学園のオープンキャンパスに参加するために上京した。
これが第一目的なのだが、せっかくトウキョウに来たのだから観光もせねばと思い、母と父に頼みこんで2泊3日トウキョウに滞在することになった。
この時、心配性の両親から出された条件と言うのが“観光する際は一人でなく、一刀と一緒に行動すること”であった。
普通の反抗期である女子中学生なら“何で兄貴と一緒に・・・”なんて言うかもしれない。しかし、咲蘭にとっては好都合だった。
咲蘭はもともと、トウキョウは一人でまわるつもりはなく、一刀に案内してもらう予定だったからだ。
それを聞いた両親は安堵の様子を浮かべ、この小旅行?を快諾したのだ。
初めは友達と一緒に行くから大丈夫というウソをつこうとも思ったのだが、そうせずに済んだのは幸いだった。
咲蘭は座席から立ち上がって新幹線を降り、一人では歩いたことのない広大な駅のはずなのに、咲蘭は迷うことなくスタスタと階段を上り下りし、出口までたどり着く。
「さて、お兄ちゃんに連絡しないと」
ここからはさすがに一刀との待ち合わせ場所である喫茶店の場所は分からなかったので、携帯を取り出し、兄である北郷一刀へ電話をかけた。
すると、ワンコール待たずにすぐに一刀へとつながった。
「大丈夫かっ!何かあったのかっ!」
開口一番、一刀はたたみかけるように話し始める。
「新幹線で隣に変なおっさん座らなかったかっ!アメあげるからついておいでとか言われなかったかっ!」
「ふふっ、大丈夫だよ、お兄ちゃん。私をどんだけ小さい子扱いすんのよ。もぉ~」
一刀のあまりの心配ぶりに咲蘭は笑わずにはいられなかった。
「今、言われた出口の所にいるのだけど、ここからどこ行けばいいの?」
「ああ、そうか・・・よかった。えっと、目の前に交差点あるだろ?そこを真っすぐ行ってだな・・・」
咲蘭は携帯片手に一刀の指示のもと初めての地に歩みを進めていった。
思ったよりも歩かされたため、咲蘭の額には薄く汗が浮かび始めた。
そして、やっと目的の喫茶店へと到着した。
見た目はどこにでもありそうな煉瓦造りの店であった。
店の外観を眺めているだけで心地よいコーヒーの香りが咲蘭の鼻をくすぐった。
扉を開けると上部に付けられていたベルがカランカランとなり、カウンターの向こうにいたいかにも店主らしい人がこちらを向き、低いバリトンボイスで“いらっしゃいませ”と咲蘭をむかえる。
咲蘭は店主に向かって軽く首を下げた後、店の中にいるはずの一刀の姿を探す。
すると、店の一番奥から咲蘭に向かって手を振っている人影を見つけた。
その瞬間、咲蘭からパアッと笑みが浮かびあがり、手を振り返して見せた。
「久しぶりっ!お兄ちゃんっ!」
一刀は4人座れるテーブルで先にコーヒーを頼んで咲蘭を待っていた。
咲蘭は一刀の横の席に座ろうとしたが、ふっと思いとどまって一刀と対面する席へ座った。
そして、隣の席へ荷物を置く。
「ああ、ひさしぶりっ!ごめんな。こんな分かりにくい所に呼んじゃって」
「ほんとだよっ!結構歩いたんだからね・・・駅出口のところに喫茶店あったじゃん」
「いや・・・あそこはダメだ」
「なんで?」
「ほんとはそこで待ち合わせしようと思ったんだが・・・ちょっとした事情があってだな」
「何?」
「まっ・・・まあいいじゃんかっ!なっ!年末年始帰れなかったからさ。久々に顔がみられてうれしいよ」
「なんか、あやしいな~~」
急に話を変える一刀の顔に、咲蘭はジトッとした視線を送る。
一刀はその視線をわざと避けるように目線を合わせてくれない。
「ふぅ~、いいけどね。母さんも心配してたよ?ご飯ちゃんと食べてるかとか、夜更かししてないかとかさ」
「相変わらず心配性だなぁ・・・はぁぁ。ところで、時間は大丈夫か?」
「うん、オープンキャンパスは明日だし。今日やることって言ったらあとはホテルにチェックインするだけだよ」
咲蘭は携帯の時計へとふっと目線を送る。
「えっと・・・、あと2時間は大丈夫」
「2時間か。どうする?ついでだから、どっか案内しようか?ここが地元の友達とかにいろいろ聞いてきたんだけど?」
「ん~、それは最後の日でいいよ。めいいっぱい案内してほしいし・・・それよりもお兄ちゃんのこと聞きたいな」
「オレの話?それはいつも電話でいろいろ話してるだろ」
「直接聞きたいのっ!まずは~~、彼女っ!!本当にいないの~~?」
「お前いっつもそれ最初に聞くな・・・」
こうして約1年ぶりに会う兄妹の話に花が咲いた。
「へっ~~、及川さんって面白い人だね」
「いや・・・ただ、頭のおかしい奴だよ。お前には会わせたくない・・・」
「ふふっ、余計に会いたくなっちゃった。あっ、お兄ちゃんごめんね。もうそろそろ・・・」
「おっ、もうそんな時間か・・・送るよ」
二人は席から立ち上がってレジへ行き、コーヒー2杯と紅茶の代金を支払って店を出た。
二人は咲蘭が来た道を戻り、トウキョウ駅を抜けて咲蘭が泊まるホテル近くの出口へ向かう。
「お前・・・結構いいホテル泊まるなぁ」
「お父さんがここがいいって言ってくれたから」
「まぁ、その方がいろいろと安心だしな、っと・・・あれは・・・」
二人並んで歩いていたが急に一刀が立ち止まり、眼を細めていた。
「ん?どうしたの?」
「あれは・・・お~~いっ!白蓮~~~っ!」
一刀はこちらへ向かってくる両手いっぱいに荷物を抱えた女性へ手を大きく振って声をかける。
「おおっ!北郷じゃないかっ!」
その声で白蓮も気がついたらしく、両手の大荷物をぶんぶんと振りながらゆっくりと一刀らの方へ近づいてくる。
「こんなところで会うなんてな・・・あっ」
白蓮は一刀の隣にいる咲蘭を凝視したあと、すぐに後ろを向いた。
白蓮の後ろには高級で立派なホテルが立ち誇っている。
「・・・・・・。北郷・・・すまん。ここで、私たちは会わなかった。これでいいか?」
「いやいやっ!お前の考えてるような関係じゃねぇしっ!後ろのホテルはそういうホテルじゃないっ!!それに、先に声かけたのオレだろうっ!」
「あっ!そうか・・・それじゃ、こちらの方は?」
「紹介するよ。妹の咲蘭だ」
「妹さんっ!あの北郷の話にいつも出てくる!!どうも、初めまして。私同じ高校で同じクラスの白蓮といいます」
白蓮は咲蘭に向かってぺこりとお辞儀をする。
その瞬間、白蓮の後頭部に鋭い何かが突き刺さり、背筋がなぜか少しだけヒヤッとした感触に襲われたが、あまり気にしないで頭をあげてサラの顔を見る。
すると、咲蘭は白蓮の顔をジーーッと見つめていた。
「はじめまして。妹の北郷咲蘭です。いつも兄がお世話になってます」
そして数秒たった後、咲蘭もペコリと小さくあいさつした。
「いやいや、お世話になってるのはいつも私なんだよ。田舎者の私にいろいろ学校のこととか教えてもらったりとか・・・」
「そうなんですか。兄は誰にでも優しいですからね」
「だろっ?だから、学校で人気者でさ。北郷といると飽きないんだよ」
白蓮はいろいろと表情を変えながら話しているが、咲蘭はニッコリと笑みを浮かべたまま白蓮の顔をジーーッとみつめている。
「言いすぎだよ。白蓮、妹の前で恥ずかしい。ところで白蓮は何でこんなところにいるんだ?」
一刀は白蓮の両手にぶら下げられた荷物を見ながら白蓮に問いかける。
「ああ・・・これな。麗羽が持って帰れって言って渡してくれるんだけど・・・いつも多いんだよ」
「ああ・・・麗羽ね」
一刀はそう言いながら、白蓮が歩いてきた道の先へと目をやる。
その先の道は確か高級住宅が立ち並ぶ区画だったはずだ。
麗羽の家がそこにあるということは、麗羽と言う存在を知っている者ならだれでも想像ができる。
「斗詩と猪々子はどうした?」
「あいつらとは逆方向だよ。なんだかんだであいつらの家も相当な富豪だからな。金持ちでもない私が仲良くしてもらってるのが不思議なくらいだ」
白蓮はハハハッと笑みを作りながら、両手に持たれた荷物を軽く持ち直した。
かわいらしい紙袋の中に入っているのは雑貨やお菓子といったもので、それ自体は別に重そうではないのだが、何分量が多いようで紙袋はパンパンに張っていた。
「その荷物大変そうだな・・・持ってやりたいけど・・・でもな」
一刀はそう言いながら、横に立って白蓮のことをジッと見ている咲蘭へと目線を移した。
それに気がついた咲蘭がハッとした様子で一刀の顔を見た。
「私はここでいいよ。お兄ちゃんは白蓮さんを手伝ってあげて。学生寮で帰る場所も同じでしょ?」
「そうか?悪いな。んじゃ、そうするよ。明日は9時にフランチェスカ学園の正門前に集合だからな」
「わかってるよっ!それじゃ、白蓮さん。これで失礼します」
「悪いね。サラちゃん・・・お兄ちゃん取っちゃって」
「いえいえ、お気になさらず・・・」
「気にすんな。ほら、こっち側が重そうだな」
一刀は白蓮が左手に持っていた紙袋を受け取ると、咲蘭の横から白蓮の横へと移動する。
「じゃあねっ!お兄ちゃんっ!また明日っ!!」
最後に咲蘭は最高の笑みを浮かべると、二人の間を抜けるようにしてホテル方面へと走って行った。
「オレらも帰るか」
「・・・うん」
「ん?白蓮、顔が赤くないか?辛かったらもう一個の方も持つぞ?」
「なっ!!それは・・・夕陽だっ!!夕陽のせいだっ!!それで赤く見えるんだっ!ほら、先行くぞ」
白蓮は少し朱を帯びた顔で、一刀よりも先に駅の方へと歩き出した。
「お・・・おい。待てってば!!」
先に歩きだした白蓮の後を追うように一刀も歩みを進めるのであった。
「やっぱりお兄ちゃん。モテるんだなぁ~」
一刀と白蓮が横に並んで歩くのを、咲蘭はホテルの入り口前で眺めていた。
「白蓮さんってたしかお爺ちゃんの家に行く時に知り合った人だよね」
咲蘭は携帯電話につづっているデータを眺めながら独り言を言う。
「それに・・・たぶんだけど、白蓮さんとの会話で出てきた人の名前・・・全員・・・女・・・」
右手に握っている携帯からミシミシと軋む音がする。
「私だって・・・荷物持ってたのに・・・」
そして、携帯のデータから自分の持つ荷物へと視線を変えると、小さくため息をついた。
「あの人もお兄ちゃんを・・・・・・よしっ!私がしっかりと見定めてあげないとね!!お兄ちゃんの・・・彼女にふさわしい人をっ!!!それで・・・私の眼鏡にかなわない人だったら・・・ふふふっ・・・」
小さく、そして深い笑みを浮かべた後、咲蘭はホテルへと入って行った。
「とりあえず、白蓮さんは第一印象オッケーだから保留・・・っと」
右手に持っている携帯のデータを編集しながら・・・
その携帯の画面を見てみると・・・
女性の顔の上から大きく赤色のバツが描かれた写真が画面いっぱいに映し出されていた。
そして、白蓮の写真の下に作られた欄の第1項目の部分に小さな青丸が描かれた。
その項目の詳細を見てみると・・・第120項目もあった・・・
そして翌日の朝
咲蘭はオープンキャンパスで必要な荷物を確認し、鏡で自分の姿をもう一度確認した後、一刀との待ち合わせ場所であり、今回のトウキョウへ来た最大の目的地である私立フランチェスカ学園へと向かった。
慣れない土地の電車にもかかわらずスイスイと電車を乗り換えていき、全く迷うことなくフランチェスカの最寄り駅まで到着した。
そして、昨晩調べておいたフランチェスカ学園までの地図を携帯電話のマップ機能で確認しながらスタスタと歩いていく。
フランチェスカ学園は比較的高地にあるらしく、ゆったりとした坂道を延々と昇って行った。
そして、最後の曲がり角を曲がるとそこには大学のキャンパスと見間違えるくらい広大な校舎と、真っ白で神聖さを感じる大きな正門が視界に入った。
そして、その正門には「フランチェスカ学園学校見学会」という生徒の手作り感満点の看板がアーチ状になって立てられていた。
正門の前は混雑しながらも自分と同じ中学生と、その保護者らしき人たちがそのアーチを次々と潜っていく。
その人たち相手にパンフレットや校内図案内を配っているのは、フランチェスカ学園の生徒の証である真っ白の制服を着た在校生たちだ。
咲蘭は正門に近づきながら、携帯電話で時計を確認する。
現在の時刻は8時45分
少し張り切ってきりすぎたかなと思いつつ、咲蘭は正門の端っこの方で一刀が来るのを待つことにした。
(あの制服・・・かわいいな・・・)
正門でパンフレットを配っている女学生を遠目に眺めながら、その女学生がきている清楚でかつかわいい制服に目を奪われた。
(リボンが赤ってことは・・・3年生かな?)
「おっ!もう来てたのか。早いな」
咲蘭は聞き慣れた声にハッとして後ろを振り向くと、そこには制服に身を包んだ兄である北郷一刀の姿があった。
「ううん、今来たとこだよ。それにしても・・・お兄ちゃんの制服姿なんて初めて見たな。かっこいいよ」
「いやいや、みんな着てるただの制服だって。カッコイイも何もあるか」
一刀はそんなことを言っているが、咲蘭は先ほどから横を通り過ぎていくオープンキャンパス参加者であろう女子中学生達が、一刀の姿に目を奪われていることを敏感に察知していた。
さらに、娘、息子についてきていた奥様方の視線も奪っている始末である。
ついさっき横を通り過ぎて行った二人組の女子中学生は小さな声で「きゃ~」と黄色い悲鳴で騒いでさえもいた。
そんなことを全く気にしない一刀の鈍感さに、咲蘭は軽くため息をつくのであった。
「ねぇ、もうそろそろ学園の中を案内してよ。フランチェスカの受験説明会兼対策会は11時からだし」
「ああ、そうだな。まずは・・・」
一刀はポケットにあるはずのオープンキャンパス案内地図を取り出そうとしたその時・・・
「ほいっ、旦那のお探しのもんはこれで?」
一刀の背中の方からパンフレットを持った腕がニョキッと伸びてきた。
「ああっ・・・ありがとう」
一刀はそれを何の疑問も持たずに受け取り、中身を確認する。
「それじゃあ、まずは・・・」
「クラブ見学会とかがええんとちゃいますか?運動部の催しは9時半からですぜ、旦那」
「そうだな。その案、採用・・・・・・んっ?」
一刀はやっとこの不自然な会話に疑問がわいたらしく、あたりをキョロキョロと見回した。
その後、咲蘭の顔を見ると咲蘭の視線は一刀の後ろの方へと向いていることに気がついた。
「この声・・・まさか・・・」
一刀は油が差されていないロボットのような動きでギギギッとゆっくり後ろを振り返る。
「チャオッ!かずっち!」
そこには片足を曲げ、両手ピースしながらウインクを決める男の姿があった。
「・・・・・・行くぞ、咲蘭」
「えっ、きゃっ!」
一刀は咲蘭の腕をつかむと、さらに有無も言わさずスタスタと気持ち悪い人物の横を素通りして校門の方へと歩いていく。
「ちょっ!待ってーなっ!せっかく休日出勤してきた親友に向かってその態度はないんとちゃいますか」
「一生寝てればよかったんだよっ!及川っ!」
「アホなこと言うたらあかんでっ!外部の女の子(しかも年下)が大量に来る祭りの時に、この及川さんが休むなんか考えられんやろがっ!!」
「だいたい何か委員会かクラブに入ってないといくら在校生でも学校に入れないはずだろっ!」
「ふっふっふっ・・・舐めてもらっちゃ困るで、かずっち・・・。めんどくさがってた美化委員会の奴とこの期間だけ変わってもらうことになったんや・・・」
男は首に下げられた美化委員と書かれたカードを一刀につきつけながらニヤッとした。
ちなみに一刀はオープンキャンパスの企画や立案を生徒会役員とともに取り仕切ってきたため、首に下げられたカードには生徒会役員補助の文字が書いてある。
「じゃあ、仕事はどうしたっ!!」
「委員長にあなごサンドを一週間献上するという約束のもと、免除や」
「なっ・・・おまえっ!どうやってあなごサンドを準備するつもりだ!!」
「購買部のおばちゃんにハリウッド俳優のセイロ・ガンのファンミーティング参加権をプレゼントしたら“おばちゃんの名にかけてっ!”って言って約束してくれたわ」
「・・・ぬかりないな。さすが、我が親友よ・・・」
「いやいや、旦那にはかないまへんがな・・・」
急に二人が身を寄せ合い、グフグフと訳が分からない笑い声を発しているのを、咲蘭は遠目に眺めていた。
一刀はその視線に気がつくと
「はっ!!・・・ゴホン。とにかく、お前の目的は分かったっ!!けど、今日だけは俺に関わるなっ!!」
「え~~、なんでぇ~な。かずっちの横おったら女の子寄ってくるんやもん」
「そんなわけないだろっ!とにかくっ!!今日はダメだっ!!」
「ねぇ・・・お兄ちゃん。その人が昨日話に出てきた及川さん?」
「・・・ああ。だけど、お前は全く関わらなくていい。一生な」
「ちょっ!ひどっ!!って・・・お兄ちゃん・・・やて?」
咲蘭の言葉に敏感に反応した男は、自分のかけている眼鏡をクイッとやった。
そして、咲蘭と一刀の顔を交互に見たあと、一刀の肩へと手を回すと一刀にこう耳打ちした。
「かずっち・・・そんな趣味があったんか・・・大丈夫、誰にも言わん」
「お前・・・」
一刀は自分の肩に乗せられている手をかっちりつかむと、背負い投げの要領で思いっきり男を地面へ叩きつけてやった。
「ぎゃふんっ!!」
投げられた男は地面に大の字になって寝転がり、頭には幾数もの星が散らばっている。
「さてっと、行くよ、咲蘭。まずは、クラブ見学会だ」
「う・・・うん」
咲蘭は大人しく一刀に腕を引かれながら、背後に寝転がる男の姿を一瞥した。
そして、心の中で兄の交友関係に不安を募らせるのであった。
もう一つ、自分がフランチェスカに入学したとしてもあの寝転がっている人物とは最低限しかかかわらないでおこうと心に決めるのであった。
(喫茶店で会いたいって言ったことは忘れることにしよ)
END
あとがき
どうもです。
今回のような“のほほん”とした章があと少しだけ続くことになるかと思います。
物語が動き出すのは第2章の中盤辺りかと思います。
そこまで行くのにどれくらいかかるか分かりませんが
自分にできる範囲でやっていきたいと思います。
では、短いあとがきですが、これにて失礼いたします
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どうもです。
黒天編第2部始動です。