ゲルショッカー 街を襲撃するのこと
新たなゲルショッカーの怪人となった三人の黄巾党が部下を連れて街に向かっている時
本郷達は街で食事をとっていた。
外に停めていた愛車のサイクロンが珍しいのか、食堂の外には人がいっぱい集まっていた。
(あのお方が噂の天の御遣い様らしい・・・)
(言われてみればあの凛々しい顔つき。その雰囲気がある・・・)
(何にせよありがたや・・・ありがたや・・・)
外での会話が聞こえるなか、本郷猛はなぜ天の御遣いを探していたのかを桃香達に聞いて
いた。
本郷猛
「さてと・・・そろそろ聞いてもいいか?」
桃香
「何でしょうか?御遣い様」
本郷猛
「そもそもなんで君達は天の御遣いを探していたんだ?」
桃香
「はい私達はこの乱世の世を救うために闘っていたのですが、さっきの黄巾党の
人達の様に皆の幸せを奪う人が多く出てきて私達の力だけじゃどうしようもなく
困り果てた時、管路という占い師に会い、占って貰った所近いうちにこの世界を救
ってくれる天の御遣い様が現れると予言を聞いたのです。」
本郷猛
「黄巾党!? さっきの奴らの事か!?」
愛紗
「はい、私達はあの日天から光が降り注ぎ、我々3人でその場所に向かっている時
奴らと闘っていた貴方を見つけました。」
本郷猛
「そういう訳だったのか」
鈴々
「最初お兄ちゃんを助けようと思ったけど、素手で闘ってあいつらを追い払っちゃうなんて凄いのだ!」
桃香
「その強さ!貴方こそ天より私達を救いに来てくれた御遣い様に間違いありません。」
愛紗
「その強さを見込んでお願いがあります。 お願いしますどうか私達と一緒に戦って下さいご主人様!」
(ドテッ!)
愛紗から突然、「ご主人様」と呼ばれ、思わず座っている椅子から本郷はこけてしまう。
愛紗
「だ、大丈夫ですか!? ご主人様!?」
本郷猛
「ああ、大丈夫だ・・・それよりもその「ご主人様」はよしてくれ。俺にもちゃんと名前がある。」
桃香
「そういえばまだ貴方様から名前を聞いていませんでしたね。何という名前なんですか?」
本郷猛
「俺の名は本郷・・・本郷猛だ」
鈴々
「本郷猛・・・・よく分かんないけど、カッコいい名前なのだ!」
愛紗
「これ・・鈴々 ご主人様に失礼だろ。」
本郷は張飛が違う名前で呼ばれていた事に頭をかしげ関羽に尋ねる。
本郷猛
「ん? この子の名前は張飛じゃないのか?」
愛紗
「あ、いえ鈴々とはこの子の真名なんです」
本郷猛
「真名?」
桃香
「ええ、家族や親しい者の間だけで呼ぶ事を許される本当の名前で許可なくその人の
真名を呼んだら殺されても文句が言えないんです。」
本郷猛
「っ!!」
本郷は桃香の言葉に驚愕した。真名を呼んだだけで殺される。それだけ、その名前に
自分の誇り、志がある事を理解する。
本郷猛
「つまり許可なく真名を呼ぶ事はその人から、何かを奪うことと同じくらい
許されない事なのか」
愛紗
「ええそうです。・・・それよりも一緒に戦ってくれるのでしょうか?」
本郷猛
「その答えは・・・・駄目だ」
桃香
「ええっ!? ど、どうしてですか!?」
本郷猛
「答えは簡単だ。俺は『天の御遣い』じゃないからだ」
愛紗
「ええっ!?」
本郷猛
「俺は偶々この世界にやってきただけだ。君達の想像もつかない恐ろしい敵を
追ってな」
桃香
「敵?」
愛紗
「あの、その敵というのは?」
本郷猛
「その敵が何者か言っても信じないさ。それよりも君達は自分達だけではどうしようもないからその『天の御遣い』という訳のわからない存在に頼る気か? 君達だって必死に
人々の為に戦った筈だ」
愛紗
「ええ貴方様のいうとおり確かに戦いましたよ。でも黄巾党は数が多く、県令が逃げてしまった為に多くの人がもう朝廷を信じられなくなっているんです。この村だって私達が滞在
する前から何度も奴らに襲われました。何とかして追い払いましたが、もう私達
だけでは手に負えなくなってきているんです。」
本郷猛
「そういえば、この村、壊れている建物が何件かあったな。あれは黄巾党の襲撃に
よるものか?」
桃香
「はい・・・やっと・・・やっと・・・皆を助けてくれる人が来てくれたと
思ったのに・・・貴方が天の御使い様では無いのでは仕方ありませんね。」
彼女達は次第に落ち込み始めて、劉備が泣きそうな顔になったとき本郷猛はこう思い始
める。
本郷猛
「(この子達も必死に人々を守るため戦ってきたに違いない。時には守ることができず
涙を流す事もあっただろう・・・・苦しんでいる人々を助けたい一心で『天の御遣い』を探して、
俺を『天の御遣い』と思ったのか? 歴史の書でしか見た事ないからよくわか
らなかったが、この時代はこの様な少女達まで戦わなければならないのか!?)」
本郷は彼女達の事情を察してか『天の御遣い』ではないといった事に申し訳ない
気持ちになり、彼女達に協力する事を決めた。ゲルショッカーの怪人タコガラスを
探して倒さなければならないが、困っている人を見て黙っている彼ではなかった。
本郷猛
「・・・フリだけでいいか?」
桃香
「えっ?」
本郷の意外な言葉に劉備は思わず目を見開いた。
本郷猛
「だから、フリだけでいいのかと聞いている。俺が天の御遣いと名乗れば
兵達の士気も高まるはずだ」
愛紗
「そ、それでは私達の主になって下さるのですか!?」
本郷猛
「ああ、少なくとも俺は悲しんでいる人の涙を見たくないし、困っている女性を
見捨てる程冷酷にも冷静にもなれない。」
桃香、愛紗、鈴々
「・・・・・・・」
本郷猛
「そういう訳だ。よろしく頼むぞ。劉備、関羽、張飛」
愛紗
「は、はいよろしくお願いします! ご主人様」
桃香
「私達はあなたこそが天の御使い様であると確信いたしました。」
鈴々
「これからは鈴々達を真名で呼んでほしいのだ!」
愛紗
「そうですね。 私の真名は愛紗です。」
桃香
「私は桃香。」
鈴々
「鈴々は鈴々なのだ」
本郷猛
「ああ改めてよろしく。桃香、愛紗、鈴々」
3人
「はいっ!(なのだ!)」
4人は本郷と手を合わせようとした時、街でなんか騒ぎが起こりだした。
「うわあああああああ!た、大変だ!黄巾党がまた攻めてきた!」
「た、助けてくれえええええええええっ!」
次々と人々が逃げ出していったのだ。
愛紗
「何っ!? あいつらこりもせず! 鈴々行くぞ!」
鈴々
「応なのだ!」
愛紗
「桃香様!危険ですからご主人様とここにいて下さい!」
桃香
「うん分かった」
本郷猛
「待て!俺も行く!」
愛紗
「駄目です!ご主人様はここにいて下さい!」
愛紗と鈴々はそういうと黄巾党の男達が襲撃している場所へ向かう。
現場へたどり着いた彼女達が見たものは男達、それも村で優れた武術の心得を
持つ男達を捕まえている黄巾党達であった。
しかし何か様子がおかしい。奴らは金品、食糧、女には一切手をつけず、男だけを
捕まえていたのだから。
疑問に思うところがあったが取りあえず、愛紗達は黄巾党の悪事を止める為、奴らに向
かっていった。
愛紗
「待て黄巾党!それ以上その人達を傷つけるなら、この私関羽雲長が相手になる
!大人しく立ち去るならそれでよし!それでも向かってくるなら我が青龍偃月刀.
の錆にしてくれる!」
鈴々
「鈴々も手加減しないのだ! 命のいらない奴だけかかってこい!」
大抵の悪党は愛紗達の一括で逃げるが、時には実力の差も理解せず、向かってくる
者もいた。ましてや目の前にいるのは戦った事のある黄巾党の三人組。
自分達の実力は知っている筈なので自分達の姿を見たら逃げるだろうと愛紗は
考えたのだ。
だが、三人の様子がおかしい。自分達の姿を見て逃げるどころか部下と思われる男達を
連れてこちらに向かってきたのだ。しかもただならぬ殺気を発して・・・・
そしてある程度近づくと、兄貴が愛紗に剣を向けてこういう。
兄貴
「ゲルショッカーにはむかうとはいい度胸だな関羽!」
愛紗
「はあっ?」
鈴々
「げ、ゲルショッカー? お前達は黄巾党じゃないのかなのだ!」
チビ
「これよりこの村は我々が占拠する!死にたくない奴は抵抗するな!」
デク
「抵抗しなければお前達には素晴らしい力が与えられるんだな!」
愛紗
「貴様ら何を訳のわからない事を言っている!」
愛紗は理不尽な言葉に怒り、青龍偃月刀をフンッと兄貴に振り下ろした。しかし・・・
(カキンッ!)
愛紗
「何っ!?」
兄貴
「ふふふ・・・・」
何と愛紗の一撃が受け止められたのだ。しかも自分よりも強い力で受け止めており
これ以上押しだせない。
兄貴
「ふんっ!」
愛紗
「きゃあ!」
そして愛紗は兄貴に青龍偃月刀ごとはじき返されてしまう。
鈴々
「愛紗!」
鈴々は急いで姉である愛紗の元へと向かう。
鈴々
「大丈夫かなのだ!?」
愛紗
「ああ大丈夫だ。奴ら以前とは段違いの強さだ」
兄貴
「ふふふ・・・理解したようだな。関羽、お前も捕まえてやる。
そうすりゃ首領もほめてくれるだろうよ」
チビ
「きっとおいら達はすぐにも幹部になれるぜ。兄貴」
デク
「ふふふ・・・僕達はゲルショッカー三国時代支部最初の幹部になるんだな!」
愛紗
「お前達さっきから、ゲルショッカーとか三国時代支部とか訳のわからない
事をいっているがそれは一体なんなんだ!」
鈴々
「お前達は一体何者なのだ!」
兄貴
「知りたいか? なら正体を見せてやる・・・」
3人
「ハハハハハハハッ!」
三人が突然笑い出すと兄貴はクワガオオカミに、チビはサルカズランに、そしてデクはク
マヤスデに変身した。
クワガオオカミ
「ウオオオオオン!」
サルカズラン
「キィーキキキ!」
クマヤスデ
「グオオオン!」
そしてそれと同時に黄巾党の男達も来ている服を脱ぎ捨てると、ゲルショッカー
の戦闘員になった。
ゲルショッカー戦闘員
「ギイイイッ!」
鈴々
「はにゃ!?」
愛紗
「なっ!なっ!?ば、化け物・・・・」
愛紗は目の前で起こった現実が信じられなかった。三人が突然怪人に変身し
、そして配下の黄巾党の男達も見た事もない服を身につけたのだから。
クワガオオカミ
「ウオオオン・・・・化け物か・・・違うな・・・俺達は怪人だ」
鈴々
「怪人?」
サルカズラン
「キィーキキキ! 人間を超えた存在に俺達は生まれ変わったのだ!」
クマヤスデ
「さあおとなしく降参して僕達に従うんだな! そうすればこの力と同時に
安全が保障されるんだな! グオオオオオン!」
愛紗
「ふざけるなっ! 誰がお前らみたいな化け物の仲間になるか!」
クワガオオカミ
「くくく・・・やはり断ったな。これでお前を殺す理由ができたぜ」
愛紗
「何っ!?」
クワガオオカミは突然意味不明な事を言い出し、そしてクワガタの鋏のような剣を
愛紗、鈴々に向けて襲いかかってきた。
クワガオオカミ
「ウオオオオオン!」
愛紗
「くっ!」
鈴々
「うにゃあ!」
二人はクワガオオカミの攻撃を協力して受け止めたが、人間の時よりも凄まじい力で
押し返され後方に飛ばされてしまう。
(ドガッ!)
愛紗
「あ、あああ・・・」
鈴々
「う~ん・・・」
建物の壁に激突し、二人はもう戦える状態ではなかった。
「嘘だろ? あの二人が負けた?」
今まで二人に守って貰っていた人々は唯一の希望である二人が倒された事に驚愕する。
鈴々
「つ、強すぎるのだっ・・・」
二人は全身から激痛を感じ、動けないでいた。
そして三体の怪人は一気に二人に近づいてきた。
サルカズラン
「兄貴、いっその事殺しちまいましょうぜ! そうすりゃ奴らも抵抗する
意思をなくすはずだぜ キィーキキキ!」
クワガオオカミ
「そうだな・・・それも悪くない。」
クマヤスデ
「こいつらを痛めつけられるなんて気分がいいんだな」
そしてクワガオオカミは一気に愛紗達に近づき、剣を振り下ろそうとする。
クワガオオカミ
「くくく・・・今までのお礼をしてやるぜ・・死ねい!」
愛紗
「くっ!」
鈴々
「うっ!」
愛紗、そして鈴々が死を覚悟して目を閉じたその時、
???
「待ていっ!」
突如どこかから声がしてきた事に怪人、そして戦闘員達も驚き、声がした方向をみる。
愛紗達もその方向をみるとそこには自分達が主と認めた男がいた。
愛紗
「えっ!? ご、ご主人様?」
鈴々
「お兄ちゃん?」
本郷猛
「まさかこんな時代にまで手を出そうとしているとは、何を考えている!
ゲルショッカー!」
本郷猛はその3体の怪人と戦闘員達を上から睨みつけた。
(ル・ル・ル~ルルルルッ!『アイキャッチ 新一号』)
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ゲルショッカーの怪人たちが街に向かっていた頃、本郷は桃香達から天の御遣いを探していた動機を食事をしながら聞こうとしていた。