EP11 妖精の世界へ・後編
リーファSide
駄目元で刻君をALOに誘ったけど、まさかOKをすぐに出してもらえるとは思ってもみなかった。
早速彼とALOのソフトを購入して、長距離移動を覚悟で彼の居る領地に向かおうと思ったのに、
まさかPT狩りに要請されるとは思わなかった…。
なんとか時間までに終わらせようとしたところで、今度は仇敵であるサラマンダーの部隊に見つかって、
そのまま戦闘になり仲間は全滅、必死に逃げ回るものの彼がALOに入る予定時間はとっくに過ぎていた。
滞空が行えなくなってしまい、ついには森の中で逃亡することになった。
しかしそれも先程見つかってしまったということだ。
サラマンダーの人数は4人、いくら私でも1人では相手に出来ない。
「さぁて、金とアイテムを渡してもらおうか」
「誰が…!」
相手の要求を突き返すように睨むけれど、多勢に無勢とはこのことだと思う。
「そうかよ、なら……終われ!」
甲冑で身を覆った4人のサラマンダーがランスやブレードを手にこちらに突進してきた……その時!
―――ドガァァァァァンッ!
「「「「「なっ!?」」」」」
奴らとあたしの前に何かが飛び込んできて、そのまま地面が爆発した。
あたしはバックステップで飛び退き、奴らは滞空中だったので空中制止を掛けた。
煙が晴れ、そこから出てきた姿を見てあたしは自分の眼を疑った。
「女の子1人に対して重装備者が4人でリンチってのは、随分と物々しいことしてるじゃないっすか……ねぇ…」
聞き慣れた口調と声の色、そしてリアルと同じ容姿。
違う点を挙げるとすれば、銀髪と向こうでは見たこともない冷めた笑顔、その体に似つかわしくない大きなハンマー。
それでも、彼に間違いない……刻君だ…。
リーファSide Out
ルナリオSide
《隠蔽》スキルのお陰で気付かれずに近づくことが出来たっすけど、
まさか襲われているのがスグだとは思わなかったっす。
部屋に貼ってあった写真と同じですぐに気付いたっすけど、
これが彼女じゃなかったらPK推奨ゲームということでもう少し穏便にことを進めたんすけど……これは無理っすね…。
「初心者が何をぬかしやがんだ」
どうやら防具が初期装備ということで初心者と思われているみたいっすね。
まぁ、確かに
「それとも、お前から消して(グシャッ!)―――」
「え……?」
「「「ぁ……」」」
何かを言いたそうだったけれど、問答無用で押し潰したっす。
リーファが小さな声を上げ、先方さんも僅かに呻いた。
『ヴェンダイヤ』を上げてみると、そこには小さな炎がふよふよと浮いているっす。
これがやられた時の残滓みたいなものっすかね?
まぁ、どうでもいいっすけど…。
「ゴチャゴチャ言ってないで、さっさと掛かって来るっすよ」
「ひっ……う、うあぁぁぁ!」
ボクがそう言い放つと、一人の重戦士が身を翻して飛び立とうとした。
ボクは一瞬で近づき、ソイツをハンマーで殴り飛ばしたっす。
そのたった一撃で紅い炎の塊となってしまったっすけどね。
「ク、クソォーーー!」
それを見たランスを装備した重戦士が突撃をしてきたっすけれど、
ランスを空いている左手で受け止めるとそのまま右手に持つヴェンダイヤで押し潰したっす。
残るは1人っすね。
ルナリオSide Out
リーファSide
凄い……圧倒的なまでの蹂躙戦、そうとしか言えない。
あたしは一瞬で理解した、これがSAOを最前線で生き抜いた者の力、これが刻君という人間の力、
これが武の高みにいる者の力…。
「こ、こんな…こんなことが……くっ!」
仲間3人がやられたことで、最後の1人が撤退しようと空へと上がった。
「慣れない左手でこの操作は大変っすね…」
刻君の言葉に彼の方を向いてみると、かなりの速さでメニューを操作していたので驚いた。
あんなことも出来るんだ…。
そして彼の武器はハンマーからこれまたトゲの付いた大きな鉄球が繋がっている鎖へと変わっている。
破砕球と呼ばれるものだと思うけど、あんな武器までALOに…。
そして彼はしゃがみ込むと、ダンッ!という大きな音と共に空中へと跳びあがった……って、えぇ!?
「うそでしょ…」
かなりの重量があるはずの武器を片手に最後のサラマンダーが逃げた高さまで跳びあがり、
そのまま鉄球を奴へとぶつけた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!???」
鉄球がぶつかった奴はそのまま地面へと直撃して炎へとなり、彼は地面へと着地した。
リーファSide Out
ルナリオSide
あ~、スッキリしたっす~。スグの方を向いてみると、呆然としたまま固まっている。
すると周りにあった炎の塊が全て消滅した。なんだったんすかね~?
「あ、あの、刻君……だよ、ね?」
「そうっすよ、スグ…いや、こっちではルナリオっすよ、リーファ」
「……ありがとう、ルナリオ君!(ぎゅっ!)」
「な、あ、ス、リーファ//////!?」
ボクであることを確認するように聞いてきたので、頷きながら答えるとそのまま抱きつかれてしまったっす。
ふ、ふくよかな膨らみが~//////!?
「あの、リーファ…//////」
「(はっ)ご、ごめんね、あたし…//////」
呼びかけに気付いたリーファは顔を真っ赤にして離れてくれたっす///
「その、ルナリオ君が助けてくれて、凄く嬉しくて…///」
「えっと、無事で良かったっす…///」
お互いに照れてしまい言葉に詰まったっすけど、
少ししたらどちらともなく笑みが零れて、空気が柔らかくなったっす。
「色々と聞きたいことがあるの。なんでここに居るのか、それと
「是非聞いてほしいっす。こっちも訳が分からなくって…」
ボクは、ゲームを始めた時からのことをリーファに話したっす。
「……………以上が、話せることっすね…」
「つまり、パラメーターやアイテム、容姿はSAOのデータが引き継がれたからかもしれないんだね…」
「まぁ、予想っすけどね…」
落ち着いて考えてみた結果、ナーヴギアの影響でSAOのデータが引き継がれて、
こういうことになっていると考えられた。
問題は何故、遠く離れたシルフ領付近の中立域の森に落下したかということなんすけど…。
「ここに落ちたのは多分だけど、あたしがプレイしていたからだと思うよ」
「? どういうことっすか?」
「聞いた話しなんだけどね。近くを通っている回線とか同じ回線を使っていると、
さっきのルナリオ君みたいに別の場所に落とされるっていうことがあるみたいなの。
別の場所っていうのは、その回線を使っている人がいる近くね」
なるほど、それなら十分に説明がつくっすね。
納得して頷いていると、彼女から視線を感じたっす。なにやらそわそわしているっすね…。
「どうしたっすか? リーファ」
「あの、ルナ君って、呼んでもいいかな///?」
「それは構わないっすけど」
大丈夫だというと、彼女は頬を紅潮させて笑顔を浮かべたっす……ホントに可愛いっすね。
「ルナ君……あたしと一緒に、レネゲイドになってくれないかな?」
「『レネゲイド』…?」
聞き返してみると彼女は答えてくれたっす。
『
領地から脱した者のことを総称してこう呼ぶとのこと。
異種族間でPTを組む者達でさえも、このように呼ばれることがあるという。
「あたし、領地のスイルベーンは気に入ってるし、領主のサクヤとも仲が良くて、
悪いなって思うところもあるんだけど……縛られたくないの、この世界を自由に生きたいの…」
リーファの、スグの考えを聞いて、ボクが断るはずがないっすよ。
「空の飛び方、この世界のこと、全部教えてくれるんすよね?」
「う、うん」
「それじゃあ、一緒に行くっすよ!」
「っ、うん///!」
ボクの答えがOKだと気付くと、リーファは凄く嬉しそうな表情をしたっす。
ボク達はレネゲイドとして、この世界を巡ることにしたっす。
ルナリオSide Out
To be continued……
後書きです。
ハッハッハッ、ルナリオ怪物www
ちなみにやられたプレイヤーの中にカゲムネはいませんよ、彼は続編の方で登場しますので。
それと如何にも続きそうな感じですが、このあと2人はアルン以外の領地を周るだけですので特に書くことはありません。
というわけで、次回の話しで『黒戦after story』シリーズは最終話になります。
ついに我らがキリトさんと下種郷(下種+須郷)の登場になります。
先に言っておきましょう・・・キリトさんがメチャクチャ黒いです、漆黒以上に闇黒並で!
加えて驚きの人物も登場します、シリアスに見えてギャグ要素があると思います。
それでは、次回の最終話でお会いしましょう・・・。
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EP11です。
前回の続きですね、果たしてルナリオが向かった先には・・・。
どうぞ・・・。