No.538576

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第百二話 砕け得ぬ闇事件終結

2013-02-01 10:12:48 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:5110   閲覧ユーザー数:4632

 第百二話 砕け得ぬ闇事件終結

 

 

 

 リニスは右から左に向かって手にした杖を振るう。それによりアサキムに第一撃を真っ向勝負しかける。

 そして、ズバァアアアアア。と、ぶつかり合ったその時、足元にある水面からは円を作っている部分以外から吹き上がる。

 まるで、アサキムとリニスと足元は安定しているにも見えた。その時、リニスはいつの間にかバルディッシュを使って、自前の杖に魔力を込めて西洋の大剣にする。

 バルディッシュ大剣モード。ただこの時の刀身の色はライトグリーン、アサキムと剣の打ち合いを行う。

 この激しい数合、シグナムとレヴァンティンだった場合、この剣戟にはデバイスが砕ける。とは言ってもこの場所にいる戦闘員は、

 リインフォース(弱体)。

 高志(重症)

 そして、

 

 「うう、(リアクトが間に合ってよかったよ。)…まだ俺達も戦えそうだ」

 

 「…くぅ、レヴィ。急いで我々の回復を。…いや、お主の回復を優先にしろ」

 

 未来組のトーマ(リリィ)。そしてディアーチェが目を覚ました。

 これならいける!

 リニスはアサキムと剣戟をかわしながら彼等とアースラに向かって念話を使った。

 

 

 

 リンディ視点。

 

 「エイミィ!アルカンシェルの武装解除!いつでも撃てるようにしてください!」

 

 私はリニスさんから受け取った念話の作戦を聞いた時、この危機を乗り越えるにはこれしかない。

 アルカンシェル、スタンバイ!!目標軸固定!

 最終安全装置解除!

 

 攻撃目標は何もない(・・・・)宇宙空間。

 そこで待機すること。

 攻撃目標の所にはいずれアサキムが転送された瞬間にアルカンシェルを撃ちこむ算段だ。

 

 ディアーチェは魔力の回復を覗いながら、アサキムの動作に注意する。

 リインフォースはようやく二人のいる海岸付近についたが今のダメージでは足手まといになる。その為、ディアーチェの傍で彼女の声をしながら彼女に残り少ない魔力を与えていた。

 

 と、同時にアサキムはリニスの二本の剣(元鎌・杖)を避けきってリニスの空いた脇腹に攻撃を加えようとする。が、リニスは笑ってある単語を叫ぶ。

 

 「来なさい!SPIGOT!」

 

 すると高志の持つ待機状態のガンレオンの中から銀色のチャクラムが四枚吐き出されると、リニスの周囲を囲むかのように円陣を組む。その円陣は円刃であるのでアサキムの剣も弾いてしまった。

 

 「…ぐっ」

 

 剣を弾かれた瞬間に体勢を崩されたとこでリニスは追撃をかける。

 

 「SPIGOT・RUSH!!」

 

 まるで体を回転させて誘導しているかのように四つの光輪がアサキムの鎧に食い込んでいく。

 

 「くっ。魔力に対しての防御力が相も変わらず堅い!」

 

 投げつけたSPIGOTの内の二枚はアサキムの鎧に突き刺さってしまっている。が、それはリニスにとっては好都合だった。

 

 「ですが、敢えて、教えてあげます。ゼロ距離刺突。…ハァッ!」

 

 「…む!」

 

 ドスッ、ガズッ。と一つは肉を突いたかのような音を、もう一つは鎧を削った音がした。

 音の出元はアサキムの鎧。正確には鎧に刺さった二本のSPIGOTからまるで出現してきたスフィアで出来た魔力の刃が、突然生えてきたかのように出現した。

 方やリニスの方はというと突き刺さらなかったSPIGOTの光輪の中に押し入れるように二本の剣を別々に入れる。

 リニスの方にあるSPIGOTを介してアサキムに刺さったSPIGOTから剣を伸ばしたという事。つまり空間跳躍。

 それでリニスの攻撃は終わらない。

 リニスの攻撃を受け、SPIGOTを振り払うとSPIGOT達はリニスとアサキムを繋ぐ橋のように整列する。

 

 「ジェットスマッシャー!」

 

 それを見たリニスは収束砲を打ち込む。

 リニスから打ち出された収束砲は圧縮を繰り返しながらアサキム向かっていく。

 アサキムは最初、この攻撃なら大丈夫だと思い、リニスの収束砲を受け止める。

 動けばその先に罠が仕掛けられたこの収束砲こそが罠。

 

 「トーマ君!」

 「はい!やるよ、二人共!」

 (うん!)

 (…承知)

 

 リニスはいつの間にか自分の後ろに回ったトーマに声をかける。

 そして、トーマもまたリニスから念話を受け、作戦通りに自分の晩になったという事を確信する。 そして、自分の持つ力。トーマ自身・リリィ・銀十字の力を最大にして渾身の一撃をリニスの並べているSPIGOTに打ち込む。

 

 「ディバイドゼロ・エクリプス!!」

 (さいだいしゅつりょくぅううううう!)

 

 トーマの雄叫びとリリィの叫びが入り混じるかのように、彼が持つ機械剣にも似たデバイスから極太の拡散砲にも似た砲撃がSPIGOTに吸い込まれていく。一つ、二つ、三つとくぐり抜けていくたんびに、その砲撃は威力を高めながらアサキムに迫る。

 

 ガキィン。

 

 「なっ」

 

 アサキムは、何かやばいと感じ取ったのかその場から引こうとしたがリニスの攻撃を受けた右腕がまるで空中に貼り付けられて動けない状態だった。

 ここで気づいた。

 リニスの放った攻撃は収束砲ではなく拘束用のバインドをただ筒状にして放ったのだ、と。

 そして、最後のチャクラムを通過する時、トーマの放った一撃はリニスのSPIGOTで強化された収束砲は最後のSUPIGOTを越えることなく、むしろその光輪を砕いて自分の一部にした。

 すると、最初は黒味がかかった白い砲撃が、SPIGOTの欠片が混ざった所為か、純銀の砲撃へと変わりアサキムへと襲い掛かる。

 回避は無理と判断してアサキムは両腕を前にして砲撃を耐える。

 

 ズッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

 

 「…ぬ、ぐ、ぐ、ううううううううううううううううっっ」

 

 「「うおああああああああああああああああああ!!」」

 

 トーマとリニスは今放っている砲撃に全魔力を注ぎ込みながらアサキムを吹き飛ばそうとする。

 アサキムはうめき声を上げながらも少しずつ後退していく。それを見てリニスは叫んだ。

 

 「ディアーチェ!今です!」

 

 「転送魔方陣!展開!」

 

 ディアーチェが叫ぶとアサキムの背部に所々色違いのある魔方陣が展開される。見方によっては、それは虹のようでもあった。

 

 「トーマさん!もう少しです!あの転送魔方陣の中にアサキムを押し込んでください!」

 

 「わかりました!う、おおおおおおおおおおおお!!」

 

 ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

 「…っ。なるほど、君達の狙いはあれか!?」

 

 『知りたがる山羊』の力でリニスは自分が考えた作戦をアサキムに知らされてしまった。

 

 彼女達の作戦は簡単だ。

 今の状態。アサキムの後ろにある転送陣にアサキムを入れて宇宙に転送。アルカンシェルで撃破。というのが狙いだ。

 どんなに強固だろうとアルカンシェルの威力ならシュロウガすらも倒せる。

 

 

 何故、リニスがアルカンシェルことを知っているか?

 

 それは高志がリニスを助けるために使ったピリオド・ブレイカ―。ではなく、それと一緒に出てきた『揺れる天秤』があったから。

 

 もともと魔法の才能が無い高志はスフィアを持っていたとしても『傷だらけの獅子』だけしかまともに扱えない。ピリオド・ブレイカ―を使うと何故かスフィアをもぎ取ったり、取り零したりする。これは『傷だらけの獅子』の技量の高さと高志の技量の低さが由来している。

 

 『揺れる天秤』は一度、自分を高志に使わせようとしたが断られ、損傷した状態で封印された。

 そんな時、思わず外に出てしまう機会があったのだが、そこにいたのは消滅寸前のリニス。

 『揺れる天秤』はその時のリニスの核になった。これは偶発的な物である。

 更には結構ダメージを受けた状態で外に出た『揺れる天秤』の意志はリニスに完璧にびっくりして意識下の中で隠居してしまった。

 つまり、今のリニスは『揺れる天秤』の化身と言ってもいい。

 『揺れる天秤』の記憶も持っている。とはいっても高志のガンレオンの中にあった頃からの記憶ではあるが、それでも大体の事は把握している。

 

 

 「…だけど、一手足りない」

 

 アサキムの右肩から一匹の炎を纏った烏が飛び出す。

 その烏は砲撃している二人の方に向かって飛んで行く。そして、

 ドンッ!

 

 「がはっ」

 

 「お姉さん!」

 

 リニスの横腹を猛スピードで体当たりする烏。

 その衝撃でリニスは今撃っている砲撃の集中力が減ってしまった。

 

 ガッ!

 

 「ぐぅっ!」

 (トーマ!)

 

 そして、トーマもまたリニスと同じような目に逢い、収束魔法をキャンセルしてしまう。

 これにより砲撃組はその場に崩れ落ちてしまう。

 トーマはこれまでの連戦で。リニスは復活したてという事とスフィア連発で使用したことによる疲労。

 

 「…おのれ!おのれぇえええ!あと少しの所で」

 

 「残念だったね。だけど君達の抵抗もこれまで」

 

 悔しがるディアーチェを見てアサキムは何の感慨もなく彼女を見下す。だが、その動作につけいる者がいた。

 

 ―エンシェント・マトリクス!!―

 

 ゴオオオオッ!

 

 と、紅色の巨大な水晶を放つユーリがいた。

 彼女はしばらくの間目を覚ますことが出来なかったが、トーマとリニスの打ち合い。ディアーチェの張った転移魔法で何をするかを感じ取り、自分の中にあるエグザミアを使い、アサキムに攻撃をしたのだ。

 

 「…ふ」

 

 だけど、アサキムはそれすらも読んでいた。

 少なくても今、自分の半径一キロメートル圏内にいる者達の行動を『知りたがる山羊』で把握している。だから、ユーリの奇襲も読めていた。

 避来してくる赤い水晶を自分の剣で受け止めよう振りかぶった瞬間だった。

 

 ビキィイイイ。と、これまでにない純粋な魔力での拘束感を覚えた。と、その直後に。

 

 「な?!ぐはっ!」

 

 ズドオオオンッ!!

 

 クロノじゃない。なのはやフェイトでもない。今まで自分が相対したことが無い魔力が自分を拘束している。だが、それを確認する前にアサキムはユーリの放った水晶に体を貫かれ、ディアーチェの張った転送陣に放り込まれる。

 そこでアサキムは自分を拘束した人物を確認した。

 

 「ディアーチェさん!転送を!」

 

 「わかっておる!でぇいっ!指定した空域に転送!」

 

 ディアーチェの声とアサキムが転送されたのを見て彼女(・・)は頷き、先程までいた自分の船に指示を出す。

 

 「エイミィ!艦長命令です!艦長代理においての権利でアルカンシェルを撃ちなさい!」

 

 

 

 碧の髪を頭頂部で一つにまとめ上げたアースラの艦長。

 リンディ・ハラオウン。

 

 P・T事件時。艦長も務めていたが、プレシアがジュエルシードを暴走させた時、その暴走したジュエルシードを抑え込んだことがあることがある魔導師でもある。

 

 正直、彼女もアサキムを抑えきれるとは思ってもいなかった。それでもリニスとトーマの援護をしようとアースラから地球に転送した時には二人は倒れていた。代わりにユーリの攻撃が出た時はこれに便乗するしかないと思い、アサキムの動きを封じたのであった。

 

 

 アサキム視点。

 

 ふふ、また『傷だらけの獅子』に負けてしまったね。

 今僕を包み込んでいる超重力フィールドを形成している現状だと。シュロウガでも持たない。

 まあ、僕は不死身だからいずれは復活するだろう。次回までだいぶかかるだろうがね。

 だけど、『偽りの黒羊』も手に入った。今回の頑張りに対してはまあまあか。出来ることなら『傷だらけの獅子』『悲しみの乙女』もほしかったのだけれど、ね

 しかし、これは『知りたがる山羊』とは相性が悪い。…そうだ。クロウの原作(・・)に確か僕に似た人物がいたな。

 …彼にこれを託してみるとするか。

 僕と同じ『枷』に捕らわれた存在に。

 

 

 

 そこでアサキムの意識が途切れた。

 それはシュロウガごと超重力の空間で欠片も残さず消し飛ばされたからだった。

 こうして、ようやく。

 

 ようやく、砕け得ぬ闇事件は終結した。

 

 


 
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