第1章 黄巾賊討伐・独立編 07話『江東動乱 前編 -太史 子義!・・・でごじゃる(ボソボソ)-』
荊州黄巾賊の壊滅後、荊州の緊迫度は最高潮に達していた・・・
というのも劉表達は、孫呉陣営が黄巾賊殲滅後、余勢を駆って襄陽と江夏に攻め寄せて来ると想定していたからに他ならない
何故その二都市であったのかというと、襄陽については黄巾賊を殲滅した場所と因縁の地(外伝参照)が比較的近かった為
江夏については黄巾殲滅作戦に際し、補給物資を長江経由で輸送していた為であった
そして江夏の守将である黄祖は、劉表への書簡に輸送だけでない事を指摘していた
というのも、物資だけの輸送にしては、どう考えても船の数が多かった為である
孫呉にその点を追及したところ、廬江へ帰還する兵員輸送の為であるとの返答であった
一応の辻褄が合っていた為、黄祖はそれ以上の追求は出来なかったのだが・・・
疑り深い劉表首脳陣と黄祖は、襄陽と江夏に攻めて来ると仮定し万全の準備を整えていた
しかし、孫呉勢は部隊を東と南への二手に分けて、争う事もなく言葉通り撤退して行ったのである
この状況には、さすがの劉表達の方が拍子抜けしてしまったのである
何かの策では?いつ反転して攻撃が来る!?と勘ぐって配備を中々解かなかった劉表達であるが
彼らが去ってから数日経っても何の音沙汰もなかった為、渋々ではあるが配備を解いたのである
彼らがこの後の孫呉の行方を知ることになった切欠は、ある一通の書簡を携えた使者が訪れた為である
そこで知る事になる 劉表達の杞憂はあながち間違っていた訳ではないことを・・・
この度は孫呉の”標的”が違っただけなのだ
■本隊・別働隊進軍予定経路
●本隊進軍予定経路 → → → → → ※長江
●別働隊進軍予定経路
↓ ↓ ※※※※※
○襄陽 ※ ※
↓ ↓ ※ ○秣陵城
※ ↑
↓ ↓ →※○阜陵港→
※※※ →※
※※ ○江夏 ↓ ↓ →※
※※ ○江夏港 →※
※※ ↓ 廬江 尋陽港→※
※→※→ → ○ ○※※
※※※↓※ ※※
○ ← ○ ※※ ※※
柴桑 九江港 ※※
※※
※
※
豫章○※
皆様は何進大将軍とのやり取りを憶えておられる方はいらっしゃるだろうか?(第1章 1話参照)
例の”密約”の変更を願い出た緋蓮と雪蓮達の行動を
今からの話は、変更となった大将軍との密約を遂行するべく、行動に移した孫呉の物語である
荊州黄巾賊の殲滅が完了し、撤退準備をゆっくりと開始する孫呉勢
時間をゆっくり使っていた理由の一つに、勝手に誤解している劉表達への嫌がらせの意味も含まれていたが
真意は、明命が一刀の書簡を青州にいる曹操へ届けた足で
洛陽の何進大将軍に報告と密約の履行に際して、最終確認をさせていた為である
何進は半信半疑であったものの・・・
長年の悩みの種であった荊州黄巾賊を殲滅させ、自身との約束を守り功を立てた孫呉に対し大変満足し
明命に”約束”は守るとの大将軍直々の言葉によるお墨付きを得た後、急いで荊州へ帰り支度をしている皆と合流したのである
それからの行動は、緩慢であったのが嘘のように迅速であった
鶴翼左右の軍勢を再編成の後に一まとめにし
雪蓮を総大将として冥琳・祭・楓・穏・亞莎・明命・珊瑚・子虎・瑠璃を率い、そのまま東方へ移動を開始
一方、鶴翼中央の部隊は、蓮華を総大将として一刀・紅・藍里・思春の面々が南方へ移動を開始していた
まだ青州黄巾賊に決着がついていない時期であり
大将軍派の軍閥らが全力で青州に注視している間に・・・と行動を起したのである
雪蓮本隊が目指すのは、この当時、秣陵太守であった劉ヨウがいる秣陵城こそが最終目的地であった
蓮華率いる別働隊は、船に乗り廬江に帰還するのではなく・・・とある場所に一刀が寄る事と柴桑を押える事が目的であった
というのも、目下の最大の敵は劉表軍と想定された為、本隊の後方の安全を守る必要があった理由により
長江を下ってくる劉表軍を塞き止める役目も担っていたのであるが・・・
昔のように、防衛に徹して迎撃する腹積りの劉表軍であった事と
荊州黄巾党がこの5年の長きに渡って居座っていた為に
荊州各地の国土は疲弊し、黄巾党に混ざったりして村々から人々が流出していた為、税の徴収がままならなかったことも相まって
孫呉の後背を突くという出征が出来る余裕等無かったのが実情であった
荊州黄巾党を殲滅させたという喧伝と共に、蓮華達別働隊が九江港へ上陸したとの一報が大々的に柴桑の街へ伝わったようで
蓮華達が柴桑の街へ近づく頃には、街の役人達が総出で城門まで出迎えに来ており
柴桑の民衆達も一目見ようと人で溢れかえっていた様子に
抵抗があるものと覚悟していた蓮華達の方が、逆に驚きを隠し切れなかった程であった
という経緯があったものの・・・憂慮されていた守備兵等の抵抗もなく、無傷で柴桑・豫章周辺を無事制圧でき
作戦の第一段階は完了した事になる
思春率いる水軍は、蓮華達を九江港で上陸させた後、廬江の東にある尋陽港で雪蓮本隊と合流し長江を下り阜陵港近辺へと差し掛かる
阜陵港に居た劉ヨウの兵達は、突如現れた軍勢に恐慌をきたし、蜘蛛の子を散らすように・・・逃亡
何の抵抗もしないで秣陵城へと逃げ帰っていったのである
敵の余りの不甲斐なさ、あっけなさ・・・に唖然とする雪蓮達本隊の将兵達は口々に愚痴を呟くものの・・・
冥琳は”兵を損なわず、戦わずして勝てれば文句などない”と一言の元に切り捨て、速やかに上陸を開始せよと指示を下していた
本隊の上陸が整った頃には、無事柴桑を制したとの明命の部下の斥候より報告を受け、本隊の士気も意気軒昂で上々の滑り出しであった
ここまでご説明すれば、もうお判りであろう
大将軍と交わした密約の正体とは、美羽からの独立の為に、江東を巡る覇権へと乗り出した孫呉勢であった
しかし、順風満帆であったのはここまでであった
秣陵城に篭る事を決意をした劉ヨウは、戦闘に関して太史慈に一任したのである
篭城し時間を稼ぎつつ、劉ヨウは次なる一手・・・
漢の皇族に連なる血族という立場を利用して、江東の有力豪族に打倒・孫策を呼びかけ、次々に糾合していったのである
これに気を良くした劉ヨウは、大将軍・何進経由で帝へも孫策の侵略を不当と弾劾し、救援を求める書状を送り
孫策の背後を脅かすべく、最後の切り札・奥の手を用意していたのであった
予め一刀に、劉ヨウが豪族を糾合する事態の推移を聞かされていた、孫呉首脳陣に動揺など一切なかったが
事情を知らない兵士達は・・・今までの楽勝ムードは一転し、これからの戦いに不安を隠しきれないでいた
「やはりこうなったか・・・」
「ある程度仕方ないんじゃない? 私達と違って心の準備なんて出来てないだろうしね」
「まぁ 先の黄巾党戦でやらせて正解だったか」
「ぷっ 冥琳が一番反対してたくせに・・・」
「ふん 煩い!」
「しかし一刀がここ数年鍛えただけあって、兵達も少しはしっかりしてきたようで一安心だ」
というように多少不安はあるものの・・・表に出さないように・・・黙々と自身の仕事を全うしている兵達の姿を見て一安心している冥琳達
そこへ城の城門が開いて、ぼん・きゅ・ぼんと世の女性がうらやむような理想の体型・・・でありながら惜しい・・・誠に惜しい
というのも身長が雪蓮ぐらいあれば・・・”美女”の聖域に達せようものの・・・どうみても瑠璃や鈴々とどっこいどっこいな為
愛らしい、可愛い系”美少女”に分類されてしまっていた・・・残念さんであった
「荊州黄巾党を殲滅させたという江東の小覇王と噂される孫策か天の御遣いの北郷 一刀はいる!・・・でごじゃるか(ボソボソ)
我が名は太史慈! 一騎打ちを所望する!・・・でごじゃる(ボソボソ)」
とこの時、太史慈の言葉の語尾が聞こえなかった孫呉の面々であった
「へ~ もう情報って伝わってるのかしら 面白そうな余興ね 冥琳行って来るわ!」
と喜色満面な笑みを浮かべた戦闘狂と化した雪蓮をみて・・・
「こうなる事はある程度想定内であるが・・・伯符 北郷がいないし向こうからの御指名だから
もはや止めれんだろうから・・・先に一言言っておく 兵達の士気をあげたい 勝って来い!」
とヤケと諦め半分、期待半分で雪蓮を送り出す冥琳
「りょ~~~かい 冥琳! いつもそうやって素直に送り出してくれると嬉しいのだけど?
お楽しみの前だし今はいいわ ウフフ・・・腕が鳴る! ゾクゾクしちゃうわ!」
一言余計な事が多いと、雪蓮に釘を刺すべく軽く肘鉄をくらわす冥琳
そんな二人を羨む宿将が二人・・・
「策殿・・・うらやましいのう」
「だよね~祭 あたいも行ったら駄目 冥琳?」
「はぁー 駄目に決まっておろう・・・自重してください祭殿、楓殿 うちはどうしてこう・・・血気盛んな輩が多いのか・・・」
「あはは~♪」
「冥琳さま お気の毒です」
と頭を抱える冥琳の嘆きに、お気楽な穏の笑いと師匠を気遣う亞莎の言葉が返ってくる
一方、呉の首脳陣から少し離れていた呉の三羽烏達もまた、太史慈の挑発に思うところがあったのか・・・
「御大将と隊長を名指しとはね~ どれだけ無謀なことか 判ってるのか?奴は・・・」
と呆れ顔の子虎が、近くにいた他の二人へ向かって投げかける
「知らぬが花とも言うしね~」
「・・・うん」
と子虎の投げかけた言葉に答える珊瑚と珊瑚の言葉に頷き同意を示す瑠璃
「あの人みてると・・・隊長に喧嘩ふっかけた昔のボク達を見てるようだね・・・」
と感慨深げに腰に両手をあてがい答える子虎であったが・・・
二人から返ってきた言葉は・・・
「・・・子虎と一緒にしないでほしい」
「・・・(ふんふん)」
と珊瑚は不満を述べ、瑠璃は珊瑚の意見に同意し、一人突き放された格好の子虎であった
「あのさ 珊瑚と瑠璃・・・ この周りにいる古参は皆知ってる周知の事実なんだから・・・いい子ぶってもバレバレだぞ?」
とちょっとムキになった子虎が反撃すると・・・
「さて・・・と、兵達の様子でも見てくるかな」
「・・・ぷいっ」
と珊瑚は知らぬ振りを通して立ち去っていき、瑠璃は何処吹く風でそっぽを向いている
「ちっ こいつらときたら・・・誤魔化して逃げやがった・・・」
と珊瑚と瑠璃に不満タラタラの子虎であった
そんな状況の中、雪蓮と太史慈は両軍中央にて対峙する
「近くで見たらホント貴方可愛いわね いい? お嬢ちゃん
旦那様・・・コホン!一刀ならまだここに到着していないわよ? もうすぐここに来るとは思うけれどね」
「はん? 旦那様でごじゃると? まぁこの際どうでもいい・・・問わないでおいてやるでごじゃる!
すると貴様が孫策ということで良いでごじゃるか!?」
「ちゃんと聞こえてたのね・・・地獄耳・・・だこと ぷぷっ それにしてもごじゃるって・・・面白い娘ね
そそ お嬢ちゃん 私が噂の孫策 字は伯符よ」
「うっ・・・ うっさい! いちいち語尾に突っ込むな!・・・でごじゃる(ボソボソ)
・・・だからツッコまれないように用心して早口で・・・ブツブツブツ
ハッ! 拙者は太史慈 子義!でごじゃる(ボソボソ) これでも17歳でごじゃる!(ボソボソ)
幼女扱いするでない!・・・でごじゃる(ボソボソ) では尋常に勝負!!・・・でごじゃる(ボソボソ)」
と叫ぶや腰の剣を抜き放ち雪蓮に猛然と突撃してくる太史慈に
「ええぇーーーーーー! ホントに私と同い年!? ありえない・・・」
と太史慈に散々失礼な事を口にしていた雪蓮であったが
突進してくる速さに油断ならないと感じた雪蓮も南海覇王を抜き放ち応戦を開始する
雪蓮と太史慈・・・二人の死闘が江東の覇権を賭けた争いの幕開けとなった
パキィィィーーーーーンという甲高い剣撃音が響き渡り、宙に舞っていた折れた剣先が地に突き刺さる
「勝負ありね! 私の勝ちーーー」
「オオォォォォーーーーーーーーーーーーーー!」
という歓声が両軍勢より響き、太史慈が手にしていた剣は見事、雪蓮の南海覇王に叩き折られたのだった
「・・・そのようでごじゃる 腰に刷く剣に感謝するでごじゃる」
ともうバレてしまったので諦めたのか、語尾を気遣う様子もなくなった太史慈の強がりだったのだろうか・・・
捨て台詞を吐き、折れた剣をその場にうち捨て、そのまま立ち去ろうとする太史慈に雪蓮はカチーーンときた
「・・・ちょっと待ちなさいよ」
「”負けた”拙者に何か用でもごじゃるかな?」
「南海覇王は良い剣なのは認めるわ ただ・・・さも腕は貴方のが上っていう・・・さっきの言葉が気に食わないのよね」
「フッ それは失礼でごじゃった」
鼻で笑い太史慈のすました顔を見る雪蓮の顔は、益々不満タラタラなのが浮き彫りとなり
「そこの君! そそ貴方 大至急 剣を数本取ってきてくれる?」
「ハッ 承知しました!」
と急いで剣を取りに行かせる事態となっていた
その頃本陣では、雪蓮が勝って何事もなく済んだ・・・とホッと胸を撫で下ろした処に
先程の雪蓮の言を聞いた冥琳は卒倒しそうになる・・・
「同じ剣同士なら、わしが出てもよいじゃろ!」
「だな! 雪蓮様の次はあたいが・・・」
「はん? 順番からいってわしが先じゃろうが・・・」
と睨み合い牽制しあう祭と楓の両宿将が、再び出張ろうとするのを必死で止めに入る穏と亞莎
「ええい! はなさんか! 亞莎!」
「祭さま 自重してくださいーーーーぃ!」
「穏! じゃましないでぇーーーー!」
「楓さま~ ダメですよぉ~~~~」
という4人の叫びが本陣に木霊していた・・・
本陣で孫呉の将によるコント?を開催している間に、雪蓮達の元に同じ剣が数本届けられ、地に突き立てる終ると
「これで同条件よね! さっきのような暴言・・・次は許さないわよ?」
と言い放つと剣を数回振り感触を確かめている雪蓮に・・・
「本当に面白い御仁でごじゃるな 得手は違えど受けて立つでごじゃる!」
と不敵な笑みを浮かべ気合を入れなおし、突き立てられた剣を引き抜くと雪蓮に向かって構えを取る
雪蓮と太史慈は互いの剣を軽く打ち合わせると、お互いの剣技を尽くした死闘へと切り替わった
お互いを倒さんと・・・二人の剣戟が宙で交わる度に火花を散らす
二人は無心で剣撃を繰り出す応酬を繰り返してはいるものの・・・
雪蓮が一刀の修行により急激な成長を遂げていた事、太史慈の得手は弓であった事の二点が、徐々に力の差となって結果に出始めていた
太史慈の剣は・・・雪蓮の剣を受ける回数が多くなり、自然と剣に欠けが生じ
替えの分僅かではあるが・・・速度が鈍り体力を余計に消費していた
その都度、太史慈は地に刺さっている剣と交換するものの・・・
太史慈自身にも雪蓮と実力に差があることに気付いていた
しかし太史慈の武人としての矜持が、先程とは違い得手が違うからと諦める事を止しとしなかった
雪蓮も自身にはまだ余力が残されており、太史慈の動きが鈍ってきている事を見抜いていた
しかしお互い決定打に欠ける事も判明していた このままでは二人とも疲れて動けなくなるのは自明の理であった
一刀に修行をつけてもらわなければ・・・勝敗はどちらに転んだか判らなかった それほどの相手だと感じていた
修行で身につけた力さえ開放すれば・・・動きの鈍っている今なら一瞬でカタをつけられる
でも雪蓮は力を解放しようとはせず、黙々と太史慈に一撃、一撃の太刀筋を考えながら相手を観察しつつ繰り出していく
緊迫した戦いの中でも、今まで”勘”や閃きといった感覚で戦っていた雪蓮に、戦いをコントロールする戦術眼が加わっていたのだ
また一歩、一刀に近づいたといえる瞬間であったが・・・当の本人は全く気付いていなかった
というのも・・・今の二人は、本気で戦える好敵手が目の前にいる事が嬉しかったのである
雪蓮は一刀と修行を重ねるものの・・・自身と追いかける一刀との実力が追いつく処か、益々開いていくことに焦りを感じていた
そんな荊州黄巾賊殲滅戦の折、一刀から一騎打ちを請われていた呂布が・・・羨まして仕方なかったのだ
いつか自分は・・・一刀から必要とされない時が来るのではないか?
その事がいつしか頭から離れなくなり、自身の力量を正確に捉えられなくなっていた
一方の太史慈も幼少の頃より故郷では負けなし 母の推挙によりこうして劉ヨウに仕えても
周りに自分と比肩する武将等一人も存在しなかった
この日強敵が現れ、しかも自分より強い事が判った 大陸にはやっぱり自分を超える強さを持った人物がいた
楽しい・・・実に楽しい 私はこの者に負け今日果てるであろう・・・母上 先立つ不幸をお許しくださいませ・・・
願わくば・・・もう少し・・・今少しの間、戦わせて欲しいでごじゃる! 身体よ 限界を超えて動くでごじゃる!
それが雪蓮との死闘の中で見出した、太史慈の一縷の望みであった
二人の死闘は3時間の長期に渡り、今やお互い初期の頃の動きは見る影もなく・・・
酸素を求めて呼吸も荒くなり、身体も思い通りに動かなくなっていた
しかしお互いを見つめる眼差しだけは・・・戦う意思をその目に宿らせ、相手を燃やし尽くさんと輝きを放っていた
両軍勢の兵達は、その壮絶な死闘の決着がつくのを固唾を呑み、今か今かと手に汗握り・・・黙って二人の死闘を見守り続けていた
死闘の終りが見え始め・・・両者の渾身の一撃が放たれた・・・まさにその刹那に二人の一撃を受け止め割って入った人物がいた・・・
その人物こそ、援軍として遅れてやってきた一刀であった
「はぁ・・・ はぁ・・・一刀 今いいとこだったんだから・・・邪魔しないで・・・くれる?」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ そうだ・・・ 止めなければ・・・今、拙者の一撃が入ったはず・・・でごじゃったのに・・・」
二人は肩で荒々しく息を吐きながらも、お互い視線を外さずに一刀に強がりを言う
「今日は二人共十分満足したろう? 今決着をつけるのは不本意じゃないのかい?
次の機会に改めて決着をつけるっていうのはどう?」
「・・・いいわ それまで貴方の命、預けておいてあげる」
「・・・ふんっ それはこちらの台詞でごじゃる・・・」
と、もはやボロボロのクタクタの二人であったが、口だけは未だ健在であった・・・が
やはり雪蓮と言わずには、いられない切り替えの速さで・・・
「旦那様 おんぶか抱っこ!」
「あ~ はいはい 雪蓮ちょっと待っててね
送ってあげれないけれど、君も気をつけて城へ帰りなよ? それじゃまた戦場で」
と太史慈へ苦笑いしつつ、甘えてくる雪蓮を背におぶって
手を振ってから、本陣へ”とぼとぼ”と歩いて帰っていく一刀
「敵に気遣うとは・・・二人揃って間の抜けた可笑しな奴らだ たしか一刀・・・・と言ったでごじゃるな
初見でごじゃるのに・・・拙者を幼い者扱いしなかったし・・・語尾にも一度も触れなかったでごじゃる・・・
奴が北郷 一刀 天の・・・御遣い・・・と噂の人物でごじゃるか・・・」
疲れ果てた脳を無理やりフル回転させ、特に天の御遣いと噂される一刀に注視しつつも・・・
一時は死を覚悟した太史慈であったが・・・今、生きている事が不思議と嬉しいと考える奇妙な瞬間でもあった
しかし、さすがの太史慈も気の弛みと共に精根尽き果て、呆然と二人を見送ってしまうのであった
■■■【オリジナル人物紹介】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
○孫堅 文台 真名は緋蓮(ヒレン)
春秋時代の兵家・孫武の子孫を称し、各地で起こった主導権争いに介入し
『江東の虎』の異名で各地の豪族を震撼させた
優秀な人材を率い転戦、やがて軍閥化し孫家の基礎を築いた
○張紘 子綱 真名は紅(コウ)
呉国の軍師の一人で主に外交を担当。 魏の程昱(風)の呉版と考えていただけると理解しやすいだろう
『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、姉の張昭と共に臣に迎え入れられる
張昭と共に『江東の二張』と称される賢人
※史実では、呉郡の四性でも張昭と兄弟でもありませんのでお間違い無きように。。。
呉郡の四性の中で張温しか見当たらなかった為、雪月の”脳内設定”です
○魯粛 子敬 真名は琥珀(コハク)
普段は思慮深く人当りも良い娘で、政略的思考を得意とし、商人ネットワークを駆使し情報収集・謀略を行う
発明に携わる時、人格と言葉遣いが変化し、人格は燃える闘魂?状態、言葉遣いは関西弁?風の暑苦しい人に変化する
このことから「魯家の狂娘・後に発明の鬼娘」と噂される
※穏(陸遜)は本をトリガーとして発情しちゃいますが、、琥珀(魯粛)は発明に燃えると・・・燃える闘魂に変身って感じです
○張昭 子布 真名は王林(オウリン)
呉国の軍師の一人で主に内政を担当。 冥琳とはライバル同士で互いに意識する間柄である
『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、妹の紅(張紘)と共に臣に迎え入れられる
張紘と共に『江東の二張』と称される賢人
妹の紅は「人情の機微を捉える」に対して「政(まつりごと)の機微を捉える」という感じでしょうか
○程普 徳謀 真名は楓(カエデ)
緋蓮旗揚げ時よりの古参武将であり、祭と並ぶ呉の柱石の一人 「鉄脊蛇矛」を愛用武器に戦場を駆け抜ける猛将としても有名
祭ほどの華々しい戦果はないが、”いぶし銀”と評するに値する数々の孫呉の窮地を救う働きをする
部下達からは”程公”ならぬ『程嬢』と呼ばれる愛称で皆から慕われている
真名は・・・素案を考えていた時に見ていた、某アニメの魅力的な師匠から一字拝借致しました・・・
○凌統 公績 真名は瑠璃(ルリ)
荊州での孫呉崩壊時(※外伝『砂上の楼閣』)に親衛隊・副長であった父・凌操を亡くし、贈った鈴をもった仇がいると
知った凌統は、甘寧に対して仇討ちを試みるものの・・・敵わず返り討ちにあう間際に、一刀に救われ拾われることとなる
以来、父の面影をもった一刀と母に対してだけは心を許すものの・・・未だ、父の死の傷を心に負ったまま
呉の三羽烏の一人として日々を暮らしている
姿はポニーテールに短く纏めた栗色の髪を靡かせて、山吹色を基調とした服に身を包んでいる小柄な少女
(背丈は朱里や雛里と同じくらい) 真名の由来で目が瑠璃色という裏設定もございます
○朱桓 休穆 真名は珊瑚(サンゴ)
『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の朱氏の一族
槍術の腕を買われ、楓の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人
部隊内では『忠犬・珊瑚』の異名がある程、一刀の命令には”絶対”で元気に明るく忠実に仕事をこなす
○徐盛 文嚮 真名は子虎(コトラ)
弓術の腕を買われ、祭の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人
『人生気楽・極楽』をモットーにする適当な性格であったが、一刀と他隊長である珊瑚と瑠璃・隊長としての責に接していく上で
徐々に頭角を現し、後に部隊内では『猛虎』と異名される美丈夫に成長を遂げていくこととなる
○諸葛瑾 子瑜 真名は藍里(アイリ)
朱里の姉 実力にバラツキがあった為、水鏡から”猫”と称される
その後、水鏡と再会時に”猫”が変じて”獅子”になりましたわねと再評価される
天の御遣いの噂を聞きつけた藍里が冥琳の元を訪れ、内政・軍事・外交とそつなくこなす為、未熟であった一刀の補佐に転属させられる
初期には転属させられた事に不満であったが、一刀に触れ与えられる仕事をこなす内に
一刀に絶大な信頼を寄せるようになる
後に亞莎が専属軍師につくと、藍里の内政面への寄与が重要視される中で、藍里の器用な才を愛し、軍師としても積極的に起用している
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【あとがき】
常連の読者の皆様、お初の皆様 こんばんは雪月でございます
まず最初に、今回も地名だけでは捉え難いかと思いまして、手抜きとも思える略図を今回も使用しております(笑
ぱっと見て判ればいいんです ハイ(苦笑
地図が見難い、判り難いという・・・ご指摘だけはご勘弁くださいませ・・・(泣
切り替えて次に参りますと、前話で西湘カモメ様のコメントに、次は董卓編だったかなと書かれていらっしゃったので
コメントにカキコするかどうか・・・結構迷っていたのですが、少し驚いていただこうかなと思いスルーしてしまいました
お答えする事が出来ずに、誠に申し訳ありませんでした
この度の江東動乱と銘打ちました物語でございますが
新章には移すことなく、”第一章内の出来事””黄巾編の延長”と位置付けております
孫呉独立の機会は何時なのか? 読者の皆様の関心事の一つであったとご推察いたしております
初期の段階で、酒の流通や保険制度等で資金力をUPさせていたので、予想されていた皆様方も多く
早い段階であろうことは、コメントにも寄せて戴きました通りでございます
理由の一つと致しましては、正史との流れが違っていた事で、軍閥、特に曹魏の軍容はこの度の黄巾編終了時点で
春蘭・秋蘭・季衣・流琉・桂花・仲達・稟・風・魏の三羽烏がすでに幕下におり、極めつけには張三姉妹まで加えちゃいましたしね
魏シナリオのフルメンバー+仲達という全く隙のない状況になっておりまして・・・( -`Д´-;A)
このままですと、蜀編の雪蓮と冥琳の言葉通り(計算違いもいいとこよ並びに曹魏の膨張が早すぎた)
このまま大陸を制しちゃいそうな勢いの曹魏であります
そうなってしまうと表題が曹魏千年の大計とかに変更!? ヒロインは華琳へ!?
皆様から総ツッコミを受け、物語の存続すら危ぶまれる事態となりそうですがががヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ
一部の方々?には受け入れてもらえそうな気がしなくもありません・・・(苦笑
変えませんよ? 変えません! そう、大事な事なので2回言いました これで良し!
正史の流れと違って、華琳達軍閥が早くから台頭していた弊害が、曹魏の早期のメンバーの大集結へと繋がった訳なのですが・・・
その対処の一環として、酒の流通と保険を使って資金が集るように細工し、孫呉独立の時期を早めた訳です
ただ、孫呉と曹魏だけではなく、性悪・劉表達や賢く改変された麗羽達を含めた他の軍閥達
義勇軍を率いている桃香達の台頭、十常侍の暗躍等
どう転ぶのか・・・展開の余地はまだまだ残されており、そしてまだまだ制作する部分も数多く残されており
江東動乱も含めまして少しづつではありますが、着実に組み上げて行きたいと思っております
前回のあとがきにも書きましたように、初期で爆死を考えていた人間とは思えない(苦笑 長編となりそうですが
皆様に長く愛して戴けるような作品を制作していきたいと思っております
これからもご支援・ご指摘・ご意見・ご感想よろしくお願い致します
次に今回初登場となりました太史慈さんですが
いつものように暴露いたしますと、毎度お馴染み?設定が二転三転したキャラでございます・・・
初期は雪蓮に瓜二つの美貌で、並び立つと実の姉妹のように見え
陰から”黒”蓮華様がハンカチを銜(くわ)え嫉妬する程という設定であったのです
それがいつの間にやら・・・SD雪蓮さんと実姉妹?悪童?という設定に変化しており(苦笑
口調も最初は雪蓮と同じ口調が→ゴザる・・・と変化し・・・→最終的には”ごじゃる”とひらがな表記になり、幼児化してしまいました・・・OH!NO!
なんでこうなった・・・状態であります(´・ω・`;A)
この調子で皆様に受け入れて戴けるか・・・かなり謎ではありますががが・・・
このまましばらくガンバッテ戴くことに致します・・・
最後に毎回コメントを戴きます皆様、今まで読んで戴いています皆様には本当に有難く嬉しく存じます 心より感謝申し上げます
ご意見・ご感想・ご指摘・本当に何でも構いませんので、お気軽にカキコください
私に次回作を制作する”お力”をお与えくださいませ お待ちしております
それではヾ(*'-'*) 次回更新までマタネ~♪
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常連の皆様&お初の方もこんばんは いつもお世話になっております
この作品は真・恋姫†無双・恋姫†無双の2次創作となっております
主人公は北郷一刀 メインヒロインは雪蓮と蓮華と仲間達でお送りしております
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