No.537841

IS x アギト 目覚める魂 42:学園祭

i-pod男さん

ようやくファントムタスク登場です。恐らくアンノウンに潰されるのがオチですけどね。(笑)

2013-01-30 09:20:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1880   閲覧ユーザー数:1818

一夏達二人が療養中で授業から不在の間、各クラスの学園祭の出し物が決まっていた。一組はラウラの提案でご奉仕喫茶となっている。二人は僅かに嫌そうな顔をしたが、傷は完治し選択の余地は無い為、参加した。

 

「フォーマルな服は来た事はあるが・・・燕尾服は初めてだな。」

 

「演芸部の人、気合い入れまくってましたからね・・・・てか俺達の寸法どうやって入手したんだか。サイズぴったりですよ、これ?それに小道具も凝り過ぎでしょう?懐中時計なんて実物久し振りに見ましたよ。ちゃんと動くし・・・・」

 

「言ってても仕方無い。行くぞ。」

 

二人は教室に入って行き、

 

「「「「「「「キャアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーー!!」」」」」」」

 

黄色い歓声を浴びた。一夏は首にかけるチェーン付きの伊達眼鏡をかけており、秋斗は総髪をそのままに髪をオールバックにしている為、余計に執事らしく見える。白い手袋と言うおまけ付きだ。

 

「執事よ!本物の執事よ!」

 

「欲しい!ご奉仕して欲しい!」

 

新聞部のカメラのフラッシュが幾度と無く焚かれる。毎度毎度ポーズを要求されるので、二人は黙って応対するしか無い。しかもどうやら写真の一部は雑誌に使われる為、かなり量が多い。

 

「何時まで撮るつもりだよ・・・・いい加減仕事させてくれ。」

 

そう、ご奉仕喫茶の目玉は男子二人なのだ。他にもメイド服を着せて手伝わせる生徒もいるが、客として来る生徒や招待客は二人が目当てで来ている。現在も待ち時間一時間半と言う信じられない事になっている。だが、売り上げもかなり凄い事になっている。この一部は当然二人にも流れるので、文句は言えない。

 

「あ、簪・・・・」

 

「一夏・・・・・かっこいい・・・」

 

第一声がそれだったので、がっくりと項垂れた。

 

「あのな・・・・これ動き難いんだよ・・・・特に肩とか。後、燕尾服を踏みつけそうになるし。」

 

「執事のご奉仕セット一つ、お願い・・・」

 

「(こいつ・・・まあ、簪なら別に良いんだがな。)かしこまりました。では、ご注文の物を御持ちするまで少々お待ち下さい。」

 

営業スマイルだけでなく、心からの笑顔を簪に見せて僅か数分で運んで戻った。

 

「御待たせいたしました。それでは、どうぞ。」

 

一夏はケーキを一口切って簪に食べさせる。顔を赤らめているが、嬉しそうな顔をする。

 

「美味しい・・・・」

 

「ありがとうございます。それでは、しばしの間演奏を御楽しみ下さい。」

 

「?演奏・・・?」

 

一夏が取り出したのは一本のフルート。それを口に当て、ゆっくりと静かに吹いた。水のせせらぎの如くブレない澄んだ音、心を掴む甘美な音色は部屋中に響き渡り、更には廊下で待っている客達をも魅了した。仕事中の生徒達も手を止めて聞き惚れていた。

 

「覚え立ての曲ですので、お耳に入れるのは如何かと思いましたが、喜んで頂けたのなら幸いです。では、失礼します。」

 

「いち」

 

「シーッ・・・・いけませんよ、お嬢様。そう言う事(・・・・・)は後ほど、ね?」

 

彼女の唇に指で触れて黙らせ、顎を一撫でして一礼すると、厨房に戻って行った。働き詰めだった為、どっかりと椅子に深く座り込んだ。

 

「”あー・・・・疲れた・・・・」

 

先程とは大違いの態度でダルさ丸出しの声を上げる。

 

「全くだ。まさかここまで繁盛するとは思わなかったぜ。休憩中もどこかの企業の奴がウチの武装を使ってくれないかって言って来たしよ。」

 

秋斗も座り込んでネクタイを緩め、チョッキのボタンを外した。

 

「この後は生徒会の出し物に出なきゃならないんだとさ。」

 

「えー・・・・どうせまた変な格好させられるんでしょ?」

 

「ああ。灰被り姫(シンデレラ)だ。それもアドリブ系、観客参加型。」

 

「は?ヒーローとヒロインは一人ずつじゃなきゃ、ストーリーが成立しないでしょ?なのに何で・・・?」

 

「さあな。まあ、やるしかねえって事だ。」

 

「てか、何で知ってるんですか?」

 

「計画書を作成していたんでちょろっと見てやった。詳しい事は分からんが、超能力が無くても嫌な予感しかしないぜ。まあ、行くぞ。」

 

「へーい。」

 

二人は十八から十九世紀辺りにでも出て来そうな衣装に身を包んだ。第四アリーナに向かい、スポットライトを浴びる中、ナレーションがスピーカーを通して響き渡る。

 

『昔々、ある所に、シンデレラと言う少女がいました。』

 

良かった、まともそうだ。と思った矢先・・・・

 

『否、それは最早名前ではない。幾多の舞踏会を抜け、群がる敵兵を薙ぎ倒し、灰燼を纏う事さえいとわぬ地上の兵士達。この序らを呼ぶに相応しい称号・・・・・それが『灰破り姫』!今宵もまた血に餓えたシンデレラ達の夜が始まる。王子の冠に隠された隣国の軍事機密を狙い、舞踏会と言う名の死地に少女達が舞い踊る!』

 

「嫌な予感しかしないな。逃げるか。」

 

「はい。よーい、スタート!!!」

 

(BGM: Switchback - Celldweller)

 

二人はお互いの進行方向とは逆に向かって全力で走り出した。ドレスを来た女子達が次々と流れ込んで二人の頭に乗った王冠を奪おうと躍起になる。だが、一夏はフリーランニングの要領で人込みを素早く掻い潜り、秋斗は太極拳の円の動きを利用した柔軟な動きで女子達を受け流していた。ISの操縦も座学も五本の指に入る程の優秀さを叩き出した二人の王冠は、誰の指を掠りもしない。

 

「ISを使う・・・・訳にも行かないよな。あー、めんどくせ・・・・」

 

地面に落ちていた棒を蹴り上げて掴むと、それを棒高跳びの如く地面に突き刺して体を上に振り上げた。そのままピットに逃げ込んだ。一方、一夏は走りながら必死に簪を探していた。

 

(狙いが王冠なら簪に渡そう。他の奴らに渡してたまるかっての!)

 

走るスピードを上げる一夏。腰のメタファクターが一瞬光り、百メートルを十秒以内に走り切った最速の男、ウサイン・ボルト並みのスピードで文字通り稲妻(サンダーボルト)の如く第四アリーナの周りを駆けずり回って簪を探し求めた。

 

(御伽話は好きじゃないが、俺のお姫様は簪しかいないからな。)

 

「一夏、こっち!!」

 

いた。ピットから顔を出してぱたぱたと手招きしている。簪はあの女子の群れの中に入る事は考え難い。その為、一夏が逃げるのを待つしかなかったのだ。

 

「お待たせ。」

 

一夏は王冠を外し、仰々しくドレス姿の彼女に差し出した。

 

「何の景品があるかは知らないけど、男子の処遇が含まれるんだろうから簪に渡した方が良いかと思う。ほら。」

 

彼女はそれを受け取って一夏を抱きしめた。彼もまたナチュラルに彼女の腰回りに手を伸ばして抱き寄せる。

 

「さてと・・・秋斗さんは誰に掴まるのかね・・・」

 

「掴まらない気がするのは何でだろ?」

 

「まあ、あの人は強いからな。もしかして千冬姉より強かったりして。」

 

「一度はぶっ倒したからな。」

 

「あ。」

 

「いた。」

 

「やれやれだぜ。逃げ切れそうも無かったから楯無にくれてやった。・・・・・ん?おい、そこに隠れてんのはハイパーセンサーで見えるんだよ。さっさと出て来いや。」

 

両腕を部分展開させてマキシム・アンビウスを構えた。それを見て一夏もPICと両腕を部分展開させる。狭いピットの中で完全展開しても邪魔になるだけだ。

 

「お前・・・・あの時のセールスウーマンか。パンフレットの出来は良かったが、最近倒産した企業の名を騙らなかったのが失敗だったな。」

 

「ちっ・・・糞が。」

 

毒突く声とともに、展開されたISから銃弾が飛んで来た。だが、秋斗はガードディバイダーネオを展開し、それをブーメランの様に投げつけると同時にマキシム・アンビウスのレーザーキャノンを撃ち返した。

 

「あれは、アメリカの第二世代・・・?」

 

「簪、警報を鳴らせ。アリーナで今戦ったら他の生徒に被害が出る!」

 

「わ、分かった・・・・!」

 

飛んで来る銃弾の雨をかい潜りながらワンオフアビリティー、コキュートスを発動した。途端に銃声が止んだ。上手い事システムが誤作動を起こしてしまったらしい。

 

「よし!」

 

「まだだぜ!」

 

何かが秋斗のISに投げつけられ、それが右腕に絡まった。バチバチと放電し始め、そのISが外れる。

 

「く、そ・・・・!」

 

「コイツはリムーバーってんだ。試作型だが、威力は保証付きだぜ。」

 

「何!?」

 

一瞬の動揺が仇となった。エネルギーワイヤーがアラクネから放たれ、一夏を搦め捕った。

 

「暴れても無駄だぜ。その糸は暴れれば暴れる程絡まって行くんだ。さあて、どう料理してやろうか。」

 

「まだ終わってねえよ。」

 

『零落白夜発動』

 

白式が光に包まれ、エネルギーの糸が霧散した。

 

「零落白夜は攻撃じゃなくて防御にも使えるんだよ。」

 

「チィ・・・!」

 

反撃に転じようとするが、突如彼女が爆発に見舞われた。

 

「危なかったわね。」

 

「楯無さん・・・・来るの遅いです。」

 

「ごめんごめん、避難に手間取っちゃってね。」

 

「アギトの力だけじゃなくISまで奪われたら俺の立つ瀬が無いな。戻れ、デウス・エクス・ルーチェ!」

 

そう命じた。アラクネのIS乗りが強奪した秋斗のコアは光り輝き、秋斗の右腕に戻った。

 

「いい子だ。」

 

「遠隔コール・・・・!!?」

 

「そう言う事だ。お前には色々と喋ってもらうぞ。特に、何故俺達のISを狙うかをな。」

 

『コキュートス発動』

 

逃げようとした所、コキュートスで再び誤作動が生じ、動きが鈍くなった所を再び攻撃しようとした。

 

「駄目、逃げて!」

 

だが、楯無の声で反射的に停止してしまった。その瞬間、爆発が再び起こる。

 

「自爆か。」

 

そして殆ど密閉された空間内でその煙が蔓延する中、そのパイロットは逃走してしまった。

 

「糞・・・・・!」

 

一夏は苛立たし気に雪片を地面に叩き付けて低く唸る。

 

「アンノウンだけじゃなく、人間も俺達を狙うとはな。あーやだやだ。」

 


 
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