「おーし!あと十分も走れば着くぜ~~!」
「急いだかいがあったわねん♪」
貂蝉の言うとおりで、一刀たちはとにかく飛ばしてきていた。
食事は基本移動しながらで、馬を取り替えた数も二桁に昇っている。
そのかいあって、移動に使った日数は通常の三分の一以下となったのだが・・・・・・
「・・・・・・ぐう」
風はほとんど眠りながら馬で走っており(どうやったら速度を落とさずに居眠り運転できるのか不思議でならないが・・・・・・)
「く~~・・・・・・す~~・・・・・・」
美羽も馬車ですっかり眠りこけていた。
そして、一刀のいったとおり約十分後、一行は南陽城へと到着するのである・・・・・・
「美羽さま・・・・・・」
七乃は自室の寝台に座りながら、美羽の名を呟いた。
その目はうつろで、生気が無い。
ろくに食事もとっていないためその身体は痩せこけてしまっており、生きる屍と言う言葉がぴったりのありさまだった。
「美羽さま・・・・・・」
美羽の名を繰り返す七乃。
そんな時、
バン!
大きな音を立てて扉が開き、兵士が息を切らせながら部屋に入ってきた。
「ちょ、張勲様!し、失礼いたします・・・・ぜえ・・・・ぜえ・・・・!」
「・・・・・・」
七乃はうつろな瞳をちらりと兵士に向ける。
「た、ただいま袁術様が!袁術様が帰ってこられました!!」
「!!」
兵士の言葉を聞いたとたん、七乃の瞳に光が戻った。
「美羽様が帰ってきた!?それは本当ですか!?」
七乃は兵士に駆け寄ってその両肩を掴み、がっくんがっくん揺さぶりながら聞いてくる。
「ははははい!ただいま袁術様は、こちらへ、向かって、おられますうううううう!!」
揺さぶられながらも、何とか七乃に状況報告をする兵士。
そんな中、
コツコツ・・・・・・と
開いたままの扉の外から足音が聞こえてきた。
「美羽様!?」
七乃は兵士を突き飛ばすと、部屋の外へ走り出した。
そして、七乃は部屋を出る直前で誰かが部屋の出口に来るのを見た。
「美羽さまあああああああ!!」
七乃は力の限り、その人物を抱きしめた。
「美羽さまーー!会いたかったですーーー・・・・・・」
そのまま頬ずりを始める七乃。
だが、
「な、七乃?」
少し離れた所から、聞き覚えのある声がした。
「・・・・え?その声は美羽さま?・・・・・・と言う事は」
恐る恐る、七乃は自分が抱きついているものを見る。
目に映るのは、たくましい大胸筋で、視線を上に向けると・・・・・・
「いやん♪悪いけどアタシ女の子に興味は無いのよん♪」
身体をくねらせる貂蝉の笑顔があった。
「・・・・・・ふう」
その笑顔を真近で見た七乃は、即座に意識を失ったのだった。
「な、七乃~~~!!」
「・・・・・・まあ、当然っちゃあ当然か」
一刀たちは七乃を部屋に運び、美羽の部下に椅子を持ってこさせて全員着席していた。
「う~ん・・・う~ん・・・」
ちなみに、寝台に寝かされた七乃はずっとうなされていた。
今は美羽がそばについている。
「さて、こいつが起きるまで待っているほど時間がなさそうなので、今後の事について話し合おうと思う」
そう言って、一刀は七乃の机に目を向けた。
七乃の机には、一刀が美羽に頼んで持ってこさせた、美羽の所有している領地に関しての資料が山積みになっていた。
「風よ。資料に目を通した感想は?」
「ぐう・・・・・・」
「・・・・・・」
ムニーーーー
「ほ、ほにいしゃん!ひたい!ひたいれす!」
一刀は風の頬を横に引っ張っていた。
「まったく・・・・・・ほれ、きびきび質問に答えろ」
そう言って一刀は手を離した。
「うう・・・・・・分かりましたよ」
風は赤くなった頬を撫でながら、感想を言い始めた。
「ぶっちゃけた話、もういつ一揆や反乱が起きてもおかしくないですね~~」
「そんなに酷いか」
「そりゃあもう。この城の中だけとっても有能な文官は軒並み辞めてますし、残ってるのは私腹を肥やす事しか考えてない利権主義者たちばかりですね・・・・・・」
「そいつらクビにしたらどうなる?」
「十人残るか残らないか・・・・・・と言った所ですね~~」
「・・・・・・軍の方は?」
「たるみきってます。戦争では使い物になりませんね」
「治安は?」
「貧民街絶賛拡大中です」
「資産は!?」
「半分くらいちょろまかされてます」
「・・・・・・駄目じゃん」
あまりの惨状に一刀は頭を抱えた。
「はい~。どうしましょうかね~~」
「・・・・・・」
しばし場を沈黙が包んだ。
「・・・・・・風よ」
「何ですか~~?お兄さん?」
「お前に任せる」
「何を?」
「ここの政務全部」
・・・・・・
「お兄さんは風を殺す気ですか?」
「張勲が復活すれば、何とかなるだろ?」
「ならないと思いますが・・・・・・」
「なんとかしてくれ。最低限でいいから」
「う~~・・・・・・」
風はうらめしそうに一刀を見る。
「ご主人様。アタシはどうすればいいのかしらん♪」
「お前にはいままでどおり美羽の育成に力を入れてもらう」
「あらん?それでいいのかしらん?」
「美羽が一人前になったら舞台に立たせる。美羽の人気が上がれば不満もちっとは抑えられるだろ・・・・・・」
ちらりと、一刀は美羽に視線を向けた。
うなされている七乃を美羽は心配そうに見つめている。
「こんな予定でアイドルにしようと思ってたわけじゃないが、仕方ない。使えるものはとことん使うぞ」
「分かったわん♪任せておいて。ご主人様♪」
貂蝉はドンと胸を力強く叩いた。
色んな意味で頼もしかった。
「それで、お兄さんはどうするんですか~~?」
「俺か?俺は・・・・・・」
「孫家のやつらを何とかしてくらあ」
おまけ
その日の夜
一刀は美羽に言って用意してもらった部屋で眠りについていた。
「くかあ~~・・・・・・」
大きく口を開いていびきをかく一刀。
そんな中、
キィ・・・・・・
小さな音を立てて一刀の部屋の扉が開いた。
その隙間から、何者かが部屋に入ってくる。
部屋に侵入してきた何者かはパタン・・・・・・と、扉をゆっくり閉め、一刀にゆっくりちかづいていく。
そして、
ごそごそ・・・・・
一刀の布団に潜り込んできた。
ごそごそ・・・・・
「う~ん・・・・・・」
一刀は何かにのしかかられているような重さを、身体に感じていた。
「・・・・・・んん?」
妙な違和感に目を覚ます一刀。
見ると、布団が妙に膨らんでいるではないか。
「何だあ?」
一刀が布団を剥ぐと、そこには・・・・・・
「おや?お目覚めですか、お兄さん?」
下着姿の風の姿があった。
見ると、一刀のズボンもいつのまにか脱がされている。
「・・・・・・いちおう聞いとくが、何やってる?」
「多分、お兄さんが想像しているとおりだと思いますよ~~?」
そう言いながら風は一刀のパンツに手をかけた。
「・・・・・・」
「抵抗しないんですか?」
「いや、俺は別に構わないんだけどよ、何つうか、意外だよな」
「風が夜這いをかけに来たことがですか?」
「まあ・・・・・・な」
「風だって女なのです。性欲は当然あるんですよ?」
「いや、それはそうだけど、お前俺の事好きなの?」
「お兄さんは風が好きでもない人間に夜這いをかけるような売女だと思っているのですか?」
風の問いに一刀は首を横に振った。
「んな事思ってねえよ。でも、何で今なんだ?」
「いいですか?寝ることが大好きな風は、これから寝る暇もないくらい死ぬほど仕事をしなければならないわけです。お兄さんのせいで」
「俺のせいかよ。ここのやつらのせいじゃないのか?」
「いいえ、お兄さんのせいです。お兄さんが風をここに連れてきたのが原因なのです」
「・・・・・・確かに」
「ですからそのご褒美に、お兄さんに抱いてもらおうと思ったのです」
「ふむ・・・・・・」
「前々から機会を伺ってましたが、お兄さんはほとんど麗羽さんと寝てましたし・・・・・・」
「・・・・・・そうか」
一刀はポンと、風の頭に手をやった。
「待たせて悪かったな」
「はい、待たされました・・・・・・」
その夜
風は一刀と結ばれた
そして行為を終えた後
「く~~・・・・・・」
風は朝まで、一刀の腕枕で幸せそうに眠るのだった・・・・・・
おまけ2
翌日
美羽の兵士たちを全て集め、一刀は大きな声で言った。
「おまえら!よく聞け!たるんだおまえらに一言言っておくことがある!!」
ざわ・・・・・・ざわ・・・・・・
ざわめく兵士たちに一刀は続ける。
「これから訓練で不真面目にやった者、さぼった者、一定の基準に達しなかったものには・・・・・・」
一刀は大きく息を吸い込み、
「こいつと一日恋人として過ごしてもらう!!」
「いやん♪デートから夜の同衾までたっぷり堪能させてもらうわよん♪」
シーン・・・・・・
その日から
「「「「うおおおおおおおおお!!」」」」
文字通り死ぬ気で訓練をする兵士たちの姿があった
もっとも
数人明らかにわざと基準落ちした者がいたのだが・・・・・・
どうも、アキナスです。
南陽に来た一刀くん。
でも風たちを残し、すぐに旅立つようです。
孫家の面々に対し、一刀くんはいったいどう出るのでしょうか?
では次回に・・・・・・
「はイィイイイ!!首だけコプタァーー―ーーーー!!」
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走りだした一刀たちは・・・・・・