No.536595

IS~ワンサマーの親友~ep12

piguzam]さん

遂に開戦、元次が放つ怒りの鉄槌

2013-01-27 04:43:16 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:11808   閲覧ユーザー数:10058

 

前書き

 

やっと書けました……でも判った事が1つ。

 

俺バトル描写下手クソ過ぎワロタ(汗)

 

今回、やっとこさ元次のISが登場。

 

どんなISかって?ガンダム系?AC系?いえ違いますwww

 

ぶっちゃけ「コレかよッ!?」って思う方もいらっしゃると思います(汗)

 

でも、俺がワンサマー書いたのは、コイツをISとして出したかったからです。

 

ガンダムやACを期待されてた方がいらっしゃったら申し訳ありません。

 

今回のバトル運び、かなり強引ですのでまた指摘やコメントお願いします!!!

 

それではぁ……どうぞ!!!

さて、天気は快晴。

体調もすこぶる良好。

正にこれ以上ねえぐらいの喧嘩日和ってやつだな。

 

遂に訪れた土曜日の放課後。

 

今日、これから俺と一夏、そしてあの腐れアマとの盛大な喧嘩が始まるわけだが……。

既にアリーナの応援席には1組のクラスメイトが着席して試合が始まるのを今か今かと待っている。

更には2年、3年の先輩達が噂の男性IS操縦者の腕前を見ようとこぞって見学していた。

まぁ大半は興味本位なだけだろうがな。

刻々と喧嘩の時間が迫っているにも関わらず、俺と一夏、そしてアリーナの応援席ではなく、ここまで一緒に着いて来てくれた本音ちゃんと箒は、4人揃ってピットに居た。

サンサンと輝く太陽が浮かんでいる清々しいまでに青く澄み切った大空には、既にあの腐れアマが専用ISを纏って浮いているにも関わらずだ。

本来なら俺か一夏のドチラかが、もうあの大空へと乗り出して盛大に喧嘩をおっ始めている筈だった。

そう……その筈だったんだ。

なのに俺達4人が雁首揃えて未だにピットに居るのは……。

 

「……なぁ、兄弟?」

 

今正に大空に浮いて苛立ちを露にしてる腐れアマをモニターで見ていた一夏は、モニターから視線を逸らさずに俺に声を掛けてきた。

 

「……なんだ?兄弟?」

 

一方で、俺もモニターから視線を逸らさずに、一夏へ問い返す。

まぁ言いてえ事はわかっちゃいるんだがな。

 

「来ねえなぁ……IS」

 

「……来ねえなぁ……最悪、訓練機使う事になりそうだな」

 

「「ハァ……」」

 

俺達は2人揃って下を向いて溜息をつく。

そう、俺達がこんな場所でいつまでも燻ってんのは、政府から支援される筈の専用機が未だに届いてねえからだ。

何やら開発っつーか、調整がギリギリまで掛かったらしく、俺達は必然的に待ちぼうけを食らう羽目になった。

つうか俺達にプレゼントする予定があったならこんなギリギリまで掛かるなよな。

まだ宅急便の方が早いしサービスいいぞ。

これで着払いで送ったりしてきてみろ?俺キレちゃうよ?ほんとだよ?

 

「もうちょっと~待ってみようよ~。焦っちゃダメダメ~」

 

「布仏の言う通りだぞお前達、試合前にそんな落ち込んだ気持ちでどうする」

 

そんな感じで喧嘩に水を指されたようなアンニュイな気分で肩を落とす俺達に、本音ちゃんと箒は俺達に激を飛ばしてくる。

本音ちゃんはニコニコとした笑顔で、箒は凛とした雰囲気を携えた真剣な表情でだ。

しかしこんな時でも本音ちゃんは笑顔を忘れないのね。

その笑顔を見てるだけでなんか疲れた心が急速に癒されていくぜ。

 

 

 

荒んだ現代社会の荒波に疲れているそこの貴方。一家に一匹布仏本音は如何?

マイナスイオン溢れる笑顔とピコピコ動く耳と尻尾がチャームポイント☆

貴方の帰りを「おかえり~♪」とほわっとした癒しボイスで向かえてくれます。

 

 

 

うん、このキャッチコピーで売り出しゃ間違い無く完売御礼だろうな。

むしろ俺なら速攻買う。

ちなみに俺と一夏は既にISスーツを纏っているんだが、俺達はデザインがそれぞれ違う。

まず一夏は上下ピッチリとしたインナーのようなスーツで、何故か知らねえがヘソ出し短パンルック。

何やら教職員の方々からコレにするようにと強い希望があったそうな。

まぁ一夏は細身だからまだ見れるが……何処に需要があったんだろう……そーゆう趣味の職員が居たって事か。

そして俺だが……まぁ、ソコまで変じゃねえ。

上は一夏と同じでピチッとしたインナーみてえなモンだが、下は制服の様なダボっとしたズボンタイプだ。

しかもご丁寧にポケットまで付いてる。

俺としてはこれで良かったと思ったぜ、一夏みてえにヘソ出し短パンルックだったら……軽く死ねる。

 

「しっかしよぉ……いつ見ても、アレだな」

 

と、俺が自分の身体を見下ろしながらスーツについて考えていると、何時の間にかモニターから視線を外した一夏が俺の事を見ていた。

俺を見るその表情は感心してる様な呆れてる様な微妙な表情だった。

 

「なんだよ?何か変か?」

 

俺は自分の体が何かおかしいのかと思い、色々とチェックしてみるが、どこもおかしい所は見当たらなかった。

 

「いや、変っつーか……一体どうやったらそんなマッチョになるんだよ?普通俺達の年代では俺位が普通の肉体なんだぜ?」

 

一夏はそう言いながら俺の体を見つめくる。

やめれ、男に見つめられる趣味はねえっつの。

まぁ確かに俺の体は同年代の中でも抜きん出てるっつーか、ハッキリ言や異常だろうな。

腹筋は6つに割れて筋が浮き上がってるし、胸の筋肉も発達しまくって完全なブロックになってる。

意識していなくても浮き出ている背筋に、カチカチに固まって筋が出てる横腹。

肩の筋肉も盛り上がってこぶみたいになってるし。

ボディビルダー程ではねえが、それでもかなりマッチョな部類だ。

 

「鍛えりゃ自然とこうなるってだけだ。俺は只ひたすらに親父や爺ちゃんを目指してただけだしな」

 

「はぁ……そうかい」

 

俺はそう言って腕をグッと力を込めて曲げる。

すると俺の筋肉は盛り上がり、ISスーツの抵抗も関係無しにその存在を主張していく。

その様を見せ付けられた一夏はげんなりとした表情を浮かべてしまった。

多分、いつになったら俺に勝てるんだろうとか考えてたんだろう。

だが俺だってまだこれでも親父や爺ちゃん、それに冴島さんにゃ勝てねえだろうな。

もっと鍛錬しなきゃいけねえ。

 

「げ、元次さん元次さん元次さん!!!」

 

「ん?」

 

俺が今後の目標を考えていると、ピットに俺の名前を呼ぶ声が木霊した。

その声に従って視線を声のした方へ向けると、危なっかしい足取りで俺達のいる場所へ走ってくる真耶ちゃんがいた。

っていうか真耶ちゃん、3回も呼ばなくても聞こえて……おぉおッ!!?

ま、真耶ちゃんが走るにつれてあのドリームバルーンが左右にスッゴイ勢いで揺れてるぅッ!!?

何てこった!?そげなモン振り回して走り寄ってきたらアカンで真耶ちゃん!?

もはや俺の視線は真耶ちゃんの揺れるお胸様に釘付け状態だった。

 

「き、来ましたよ!!元次さんと織斑君の専用機が、きゃっ!!?」

 

「ちょッ!?真耶ちゃん!?(ダッ!!)」

 

しかし、危なっかしい足取りで走っていた真耶ちゃんは床に足を引っ掛けてしまったのか、体が宙に投げ出されてしまった。

俺はそれを見て瞬時に体を動かし、真耶ちゃんの元まで走る。

だが、距離が遠すぎて抱き止めるのは絶対に無理だった。

仕方ねえ!!こうなったら体を差し込む!!

俺は真耶ちゃんを抱き止めるのを諦め、そのままスライディングの要領で真耶ちゃんと床の間に体を滑り込ませる。

仰向けに滑り込んだので、そのまま空いた手で真耶ちゃんを抱きしめて、背中から床に着地した。

 

「(ズダァンッ!!)っと!!ギリギリだったな……大丈夫か?真耶ちゃん?」

 

「は……あ……」

 

俺はしっかりと抱きとめた真耶ちゃんに無事かと声を掛ける。

背中から床に落ちた時にかなりデカイ音が鳴ったが、俺からすれば全く問題無いくらいの衝撃だった。

真耶ちゃんが顔面から転けていたら只じゃ済まなかっただろう。

だが、俺が声を掛けたのに対して真耶ちゃんは返事を返さずに、何やら呟くだけだ。

一体どうしたのかと思ったが……今の俺達の体勢を思いだして冷や汗が出てきた。

現在、俺は床に寝そべり真耶ちゃんは俺の上で俺に体を預ける様に寝そべっている。

そう、まるで恋人の女がベットの上で男に甘える様にしな垂れ掛かる体勢……やっべえ。

 

「……元次……さん(凄い……カラダ……とっても……逞しい、ですぅ♡)」

 

「ま、真耶ちゃ……」

 

俺は急いでこの体勢から起き上がろうと真耶ちゃんに声を掛けたが……途中で俺は言葉に詰まった。

何故なら、俺の上に寝そべっている真耶ちゃんと目が合ってしまったからだ。

俺の上に寝ている真耶ちゃんは……何と言うか……スゲエ妖艶だった。

頬は赤く上気し、俺を見つめるその瞳はとろんとしている上に恍惚とした表情を浮かべている。

白雪の様に白く、強く握れば折れてしまいそうな程に繊細な指は、俺の胸を妖しくなぞる様に滑り、這う蛇の様だった。

真耶ちゃんの纏う何時もの幼げな雰囲気は成りを潜め、途轍もなく妖艶な雰囲気を纏っていた。

こ、これが年上の魅力ってヤツか!?そうなのか!?

何でいきなりこんなアダルトな展開になっちまったんだ!?

俺はいきなり訪れたエロティックな雰囲気に呑まれ、喉をゴクリッと鳴らしてしまう。

それほどまでに今の真耶ちゃんは……ヤバかった。

少し視線を下に向ければ俺の胸板の上で押し潰され、それでも持ち前の弾力で存在を忘れさせないお胸様が鎮座ましましている。

やばい、何だこの男を惑わす色香は。

 

「……元次さん」

 

俺のそんな心境もお構い無しに真耶ちゃんは俺の胸板を撫でていた手を蛇のように上へ上へと這わせてきた。

ISスーツという極めて薄い生地の所為でそれがリアルに感じ、背筋をぞくぞくっとした電流の様なものが走る。

止めて!?そんな切なげに俺の名前を呼ばないで!?色々な場所がのっぴきならなくなっちまうから!?

ええい、真耶ちゃんは化け物か!?これが真耶ちゃんの年上としてのチャームだと言うのか!?

助けてくれ兄弟!!このままじゃ真耶ちゃんに喰われ、いや俺が真耶ちゃんを喰っちまう!?

 

「……(ポカーン)」

 

「み、見るな一夏!!」

 

「む~~~!!な~に~し~て~る~のぉ~!!?(ぷく~~)」

 

だが、俺の心の叫びは兄弟には届かず、仕舞いには箒に邪魔される始末。

そして我がオアシスたる本音ちゃんの唸り声も聞こえたっす。

そんな外野の動きを見る余裕は俺には一切無く、真耶ちゃんから目を逸らせずにいた。

従って俺の逃げ場無し。野獣と化す数秒前なりー。

 

 

あぁ……もういい、喰っちまおう、こんなご馳走が目の前にあっちゃもう自分を抑えられねえよ。

過去の偉い人は言ってました、理性はブッ飛ばす為にあるモンだと。

では、手を合わせて い た だ き ま 。

 

 

 

「何をしてるこの馬鹿者がぁあああああああッ!!!(バゴォオオオオッ!!!)」

 

「すぼぐらびゅッ!!!??」

 

「きゃあッ!?」

 

いただけませんでした。

 

 

 

目の前にあるご馳走に被りつこうかと理性がメルトダウンしかけた瞬間、俺の側頭部は撃ち抜かれた。

正直、真耶ちゃんを落とさないように体を踏ん張った俺は偉いと思う。

俺の側頭部をサッカーボールの如く撃ち抜いたのは勿論千冬さん、今日も蹴りの威力は絶好調です。

俺の意識を一撃で刈り取れそうなぐらいには。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、……元次ぃぃぃ……オルコットとの試合前に私がお前を微塵に刻んで埋めてやろうかぁ!?あぁ!?」

 

「い、今まさに天に召されかけたところっす……痛え」

 

肩で息をしながら俺にヤクザも真っ青なガンを飛ばしてくる千冬さんに、俺は側頭部を抑えながら答える。

つうか滅茶苦茶痛えよ、この人ぜってー俺を殺す気で蹴ってるでしょ?

ある程度痛みが落ち着いてきたので、俺は俺にしな垂れてる真耶ちゃんを引き起こそうとしたのだが、それより早く千冬さんが真耶ちゃんの襟首を掴んだ。

しかもそのまま片腕で真耶ちゃんを猫の様に持ち上げてしまったではないか。

いやいや、その細腕の何処にそんなパワーがあるんです?

 

「それと……真耶!!貴様はいつまで元次の上に乗ってるつもりだ!!この盛りに盛った猫め!!(ガバァッ!!!)」

 

「ふえぇッ!?せ、先輩!?私は盛ってもいませんし、猫じゃありませんよぉ!?降ろして下さいー!!(じたばた)」

 

「貴様よくもいけしゃあしゃあと戯言を言えたものだな!!(お前は私から元次を掻っ攫おうとする泥棒猫だろうが!!全く油断も隙も無い雌猫め!!)」

 

千冬さんは真耶ちゃんを猫の様に持ち上げたままで何やら言い争いを始めてしまった。

つうか、真耶ちゃんが怪我しないように体張った俺にあの仕打ちはあんまりじゃございませんか千冬さん?

俺は言い争いをしてる2人から視線をそらして、一夏達の方へ向き直る。

 

「む~~~……(ぷく~~)」

 

「うげっ……ほ、本音ちゃん?どうしたんだ?」

 

「……む~む~(ぷく~~)」

 

だが、あんな酷い仕打ちを受けた俺を待ちうけるのは癒し本音ちゃんでは無く、むくれ本音ちゃんですた。

ゴメン、む~む~じゃ何か全くわかんねえ。

もうなんか俺の精神がゴリゴリと削られていくんですけど。

試合前だってのにこんなので大丈夫か俺?

俺は思いっ切り溜息を吐いて千冬さん達に視線を戻す。

後ろで本音ちゃんがむ~む~唸ってるが気にしない事にするぜ。

視線を戻した先には、未だに千冬さんに襟首を持たれたまま宙ぶらりんしてる真耶猫とそんな真耶猫にガミガミと怒る千冬さん。

なんだあのカオス。

 

「あ~、その~……千冬さん?」

 

「教師が生徒に色目を使うなど……今取り込み中だ!!後にしろ!!」

 

俺が遠慮気味に声を掛けると、千冬さんは眉を吊り上げて怒鳴ってこられた。

いやいや後にしちゃマズイでしょ!?

真耶ちゃんは何か重大な事伝えに来たからあんなに焦ってたんでしょうに!?

確か……俺と一夏の……専用機?……ッ!?遂に来やがったか!?散々待たせやがって!!

 

「千冬さん!!話しの腰を揉んで悪いけど、俺と一夏の専用機が来たんすよね!?」

 

「マジか!?やっと来たのかよ!!」

 

俺は真耶ちゃんに説教をしてる千冬さんに大声で声を掛ける。

すると、俺の後ろにいた一夏も俺の言葉に反応して俺の傍へ駆け寄ってきた。

まぁ一夏も今日まで地獄の特訓をしてきたんだ。

その成果を遺憾なく発揮できるのが嬉しくて堪らないんだろう。

 

「む……チッ、この続きは後だ」

 

「は、はぃ……あうあぅ」

 

すると、俺の言葉に反応した千冬さんは舌打ちを1つして真耶ちゃんから手を離して床に降ろす。

やっとこさ千冬さんの説教から介抱された真耶ちゃんは、目をグルグルとナルトみたいに廻してた。

何て言うか……お疲れさん、真耶ちゃん。

千冬さんはそんなヘロヘロ状態の真耶ちゃんに目もくれずに俺達に視線を移す。

 

「話が逸れたが織斑、鍋島、お前等のISが搬入された。すぐに準備を始めろ、アリーナの使用時間は限られているからぶっつけ本番でものにしろ」

 

千冬さんはそう言ってピットの搬入口に視線を向ける。

すると、ごごんっと重厚な音を立てながら搬入口のゲートが上がっていく。

ピット搬入口が開くとそこには……。

 

 

 

「……おぉ」

 

「ヒュウ♪……イカすじゃねえか」

 

 

そこには『白』と『蒼』がいた。

 

 

 

一夏はその佇むISに感嘆の声を挙げ、俺は余りの無骨さに口笛を吹いてしまう。

白のISは訓練機の打鉄と違って、左右に巨大な翼の形を模した非固定浮遊部位(アンロックユニット)……要はISから独立して宙に浮いてるモノが取り付けられている。

全体的に鋭利なフォルムは、いかにもスピード自慢ですって匂いがプンプンするぜ。

サブカラーは青で彩られ、手や足、非固定浮遊部位(アンロックユニット)のアクセントに色が入っている。

 

 

そして、蒼の無骨な輝きを放つISは、全体的なフォルムまでもが無骨だった。

見た目的には、1世代前のロボットアニメに出てきそうな造りで、従来のISの先進的なフォルムは欠片も持ち合わせてはいない。

どこまでも泥臭く、それでいて男を興奮させるハードな匂いがしてくる。

そして何より特徴的なのは……非固定浮遊部位(アンロックユニット)が無いってことだ。

その代わり背後にそびえ立つのは、これまた無骨なフォルムをした左右二対のウイングと大型のロケットブースターみてえなモンだ。

大型のロケットブースターが二門と小型のスラスターが片方二門、両方で四門という豪華さを誇っている。

全体のカラーは蒼が基本だが、足の真ん中の筋や腕のアーマーの継ぎ目にシルバーの装飾が施されていた。

 

 

「こ、こちらが織斑君専用IS、『白式』です!!そして隣の蒼いISが元次さんの専用機、『オプティマス・プライム』です!!」

 

 

俺と一夏が其々のISに魅入っていると、復活した真耶ちゃんが興奮冷めやらぬ表情で、俺達のISを紹介してくれた。

俺達は自分達の専用機……つまりはこれから背中を、いや俺達自身を預ける『相棒』に歩み寄って触れる。

これが、俺の相棒……オプティマスか……最高にイカすじゃねえか。

自分のISである『オプティマス・プライム』に触れると、ひんやりした鉄の中から熱い鼓動を感じとった。

あぁ……そうか、お前も暴れてぇんだな……オプティマス。

心の中でそう問いかけると、触れている部分の熱が滾り、鼓動がザワつくのがハッキリと伝わってくる。

間違い無くコイツは……俺の相棒だ。

感じ取れる最高のフィーリングに、俺は自分でもハッキリ判るぐらい獰猛な笑みを浮かべた。

 

「時間がないから初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)は実戦でやれ、出来なければ負けるだけだ」

 

「わかってますって、あらよっと(ヒュバッ)」

 

千冬さんの言葉に従ってオプティマスに飛び乗り、体を預けるとISの装甲が音を立てて俺の体に装着された。

そして俺は、オプティマスと一体になり、体全体のフィーリングがオプティマスと揃う。 

装甲が自身の肌となり全てのセンサーが俺の眼となり耳となる感覚、空をどこまでも飛べそうな開放感、訓練機に乗った時とは違う一体感、これが専用機というものってワケだ。

やべえ、この感覚、最高だ!!

オプティマスと一体になった事で俺のテンションに炎が灯り、心が熱く鼓動を刻む。

 

「背中を預けるように……そうだ座る感じでいい、後はシステムが最適化をする」

 

俺の隣で一夏も千冬さんの言葉に従ってISを……白式を身に纏う。

オプティマスと同じ様に白式も一夏の身体に吸い付く様に装着され、その勇姿を俺達に見せ付ける。

全く……イケメンって何着ても似合うから腹立つぜ(笑)

 

「馴染む……理解できる……コレが何なのか、何の為にあるのか……わかる」

 

そう言いながら、一夏は身体の各部位を動かして調子を確かめていた。

 

『アクセス』

 

と、そんな一夏の姿を眺めていると、オプティマスの機能が起動し目の前にウインドウを展開していく。

 

『高火力殲滅型IS、ISネーム『オプティマス・プライム』初期化(フォーマット)及び最適化(フィッティング)終了まで残り20分。その間、武装は全てロックされます。シールドエネルギー残量1300』

 

まずは自分自身のデータを開示してきたな。

しかし、武装は全てロック状態か……まぁいいか。

こちとら千冬さん相手に拳と足だけで戦ったんだ。

今更あの腐れアマと喧嘩すんのに武器がねえぐらいで怖気づくかよ。

そして、オプティマスのデータを分かる部分だけ読んでいくと、今度は別のISのデータを開示してきた。

 

戦闘待機状態のISを感知。操縦者セシリア・オルコット。

ISネーム『ブルー・ティアーズ』。

戦闘タイプ中距離射撃型。特殊装備あり。

 

オプティマスが開示したデータは、空に浮かんでいるあの腐れアマのISのデータだ。

只詳しいデータってわけじゃなく明くまで相手の戦闘タイプとかの小さな情報だけだ。

まぁ知った所で武器がねえんじゃ手の打ちようがねえからどうでもいいがな。

 

「さて、試合の順番だが……どちらが先に行く?」

 

俺と一夏が其々ISの具合を確かめたりデータを見たりしていると、横に居た千冬さんが俺達に問いかけてきた。

どっちが先?そんなモン決まってんでしょうに。

 

「そりゃあもち、俺が先に戦るに決まってんでしょ?」

 

俺が自分を親指で指しながら名乗り出ると、千冬さんはやはりそうか、みたいな目で見てくるではないか。

一方で残りの4人は、俺の事を心配そうな表情で見てくる。

そんな顔すんなっての。

 

「一夏、喧嘩の最初は譲ってもらうぜ?」

 

「ま、お前ならそう言うと思ってたけど……やるからには勝てよ!!」

 

一夏はそう言って笑顔で俺に拳を突き出してくる。

俺はそんな一夏に獰猛な笑みを見せながら、拳を突き返す。

 

「はっ、誰にモノ言ってんだテメエ?あの程度の腐れアマ、グチャグチャにしてやるっての」

 

そうだ、思いだせ鍋島元次。

あの腐れアマは愚かにも、誰を貶した?

 

 

 

俺の大事な家族……親父、お袋、爺ちゃん、婆ちゃんを……俺の誇りを貶しやがった。

 

 

 

その事を思いだすと、腹の底から湧きあがる様な怒りが俺の心を満たしていく。

ヤル気はOK、後は奴をブッ飛ばす事を考えろ。

威風堂々腰据えて行きゃいいんだ。

思いだせ、アイツに抱いた怒りを、引きずりだせ、この1週間腹の底でグツグツと煮込まれた怒りを。

それをここで全部アイツにぶつけるんだ。

 

あの腐れアマには俺の家族を貶した賠償金を払ってもらうぜ……代金は、アイツのちゃちなプライドだ。

俺の怒りが収まるまで、粉々にブチ砕いてやる。

 

「元次」

 

しかし、そんな俺の荒ぶる心を落ち着かせるような厳しくも優しい声が俺に掛けられる。

若干俯き気味だった俺は、その声の主の姿は見えない筈だったがISに搭載されたハイパーセンサーとやらの補助で、360度は全て見える。

そして、そのハイパーセンサー越しに見えた声の主は、千冬さんだ。

 

「お前は否定するだろうから、言い方を変えてやる……元次、お前はこの私をあそこまで追い詰めたんだ。高が代表候補生如きに負ける等、断じて許さん」

 

千冬さんはそう言って……とても綺麗な微笑みを浮かべてくれた。

全くこの人は……人を乗せるのが上手いモンだぜ……何があっても勝つって思いが『勝って当たり前』に早代わりしちまったよ。

俺は俯き気味だった顔を上げて、千冬さんに正面から向き直ってちゃんとした笑顔を見せる。

 

「やれやれ……千冬さんにそんな事言われたら、どんな事でも頑張っちまいますよ?男ってのぁ単純な生き物なんすから」

 

「ふっ、それでいい。お前はそれだけの力がある男なんだからな(どんな事でも……か……全く、嬉しい事を言ってくれる)」

 

「お褒めにあずかり、光栄ってね……一夏」

 

「ん?何だよ?」

 

俺は背中越しに、白式に搭乗している一夏に声を掛ける。

一夏の声は、まるで俺が負けるなんて考えていない様な気軽さがあった。

これは兄弟の信頼にも応えなきゃな。

 

「俺の今の力……目ン玉引ん剥いて、よぉく見とけ」

 

俺は一夏にそれだけ言って、アリーナへISを射出するカタパルトってヤツにオプティマスの足をセットする。

さぁ、あんまり寝ぼけてんなよオプティマス?テメエが起きるまでは俺1人だが起きたら俺と一緒に喧嘩してもらうからな。

 

「……ゲ、ゲンチ~~!!がんばれ~~~!!」

 

「ゲン、勝ってこい!!男の、いや大和男児の力を見せつけてやれ!!」

 

そしていざ喧嘩の始まりを待っていた俺の耳に、箒の凛とした応援と、本音ちゃんのふわっとした応援が届いた。

……ありがとうよ、箒……本音ちゃん!!

俺はその声に手を振って笑顔を見せておく。

そして、カタパルト脇のシグナルがグリーンに点灯した。

 

「進路オールグリーン!!……幸運を祈ってます!!元次さん!!どうぞ!!」

 

「ありがとうよ真耶ちゃん!!鍋島元次!!オプティマス・プライム!!一暴れしてくるぜ!!」

 

そして、真耶ちゃんのオペレートに従って、カタパルトが俺を強力な力でアリーナへ向けて射出する。

身体全体に感じるGの感覚を受けながら、俺は大空へとその身を躍らせた。

空に飛び出る前にまずは飛行のイメージだ。

これは前方に角錐をイメージするだなんだと参考書には書いてあったが、俺にはちんぷんかんぷんだった。

そこで、知識面のコーチである本音ちゃんに聞いてみると……。

 

『私は~試験の時に飛んだけど~自分を、鳥さんだと思ってみたんだ~~♪』

 

『と、鳥さん……っすか?』

 

『うん~♪だってだって、飛んでるっていうイメ~ジが~す~ごい判りやすいでしょ~?』

 

『確かに……身近で飛んでる物っつったら、まず生き物の鳥とか飛行機なんかを思い浮かべるもんな』

 

『でしょでしょ♪だから~ゲンチ~も~自分を何かに置き換えてみたらいいと思うよ~?』

 

『な~るほどなぁ……うし、参考になった。ありがとうな、本音ちゃん(なでなで)』

 

『あぅ……にゅ~~♪』

 

ってな事でした。

 

つまりは、イメージは自分が理解しやすく想像しやすいものをセレクトするのがベストなワケだ。

そこで俺がチョイスしたのは、ある映画に出てきた俺の憧れた宇宙船だ。

見た目は継ぎ接ぎで汚いが、その映画の中では外す事は出来ない程の大活躍をした英雄の船。

例え見た目はボロくても、その脅威的なスピードと強力な武装、そして船長の大胆不敵とも言える無茶でアクロバティックな操縦。

その性能と見た目を合わせて、『銀河一早いガラクタ』と謳われた密輸貨物船。

 

 

俺は自分をハン・ソロの持つ宇宙船、『ミレニアム・ファルコン』号に重ねて空を飛ぶイメージを頭の中で描く。

 

 

すると、オプティマスは俺のイメージ通りの軌道を描きながらブースターから蒼い炎を撒き散らして、空へ向かって飛翔した。

よし!!これで飛行は問題ねえ。

 

後はあの腐れアマをブチのめすだけ『メールだよ♪メールだよ♪わ~い♪』……は?

 

漸く腐れアマをブン殴れる所まで漕ぎ付けた俺の耳に、オプティマスの音声とは全く別物の楽しげな声が、メールの着信を知らせて来た。

余りにも有り得ない事態に、俺の頭は軽くショート。

え?メールて……誰から?いやそもそもISって携帯みてーな機能付いてんの?ていうか付いてたとしてもなんでアドレス知ってんの?

何これ?もしかしてカスタマーセンター的なヤツ?この度は弊社のISをお買い上げ有難うございます的な……ねーよ。

空間モニターに浮かぶメールをもう一度良く見てみると……デフォルメされたウサ耳のマークが……ってぇ!?

 

「束さんかい!?」

 

間違い無い、ぜってー束さんだ……っていうか、ISにメール送信なんて、俺の知人じゃあの人ぐらいしかいねえ。

俺は一度通信機……オープンチャネルとやらを閉じる様にオプティマスに命令を出して、メールを開いてみる。

すると、可愛らしい封筒が空いて中からデフォルメされた束さんがうんしょ、うんしょと封筒をよじ登る様に出てきた……やべっ可愛い。

 

『うんしょっと……ふぃ~、ハロハロー♪皆大好き束さんだよ!!ゲンくん元気にしてる!?束さんはゲンくんに会えなくてとっても寂しいよークスンクスン』

 

すると、唐突に音声が流れ出して、その声に合わせてデフォルメ束さんがモニターの中で一喜一憂するではないか。

今は目から零れる涙を手で拭ってるデフォルメ束さん……略してデフォ束さん。

無駄に凝ってんなこのメール、可愛いけどさ。

 

『ゲンくんがこれを聞いていると言うことは無事に届いたみたいだね~? あ、ちなみにこれ機体説明の為にあらかじめ入れといた音声だから返事しても聞こえないよ!!束さんとしてはゲンくんとお話したかったけど、それはまた今度の楽しみにとっておくのさ!!』

 

ん?無事に届いた?

機体説明の為に……っておい、まさか……。

俺の焦る気持ちを感じ取ったかの様に、デフォ束さんはニヤリ、とした表情を浮かべていく。

 

『にっしっし~♪ゲンくんならもう察してると思うけど、このオプティマス・プライムはなんと!!束さんがゲンくんの為だけに一から創りあげた特別性のISなのだー!!』

 

「束さんコレ本当に録音っすか!?なんかドンピシャリ過ぎて怖えんだけど!?」

 

何で俺の考えてる事にピンポイントで答えられるんだよ!?

超怖えんですけど!?絶対録音じゃねえだろコレ!!?

っていうか待て!?束さんが造っただと!?

俺が内心恐怖しまくってるにも関わらず、デフォ束さんはクルクルと回りだす。

 

『ゲンくんがイギリスのバカに貶されたのは束さんも知ってたんだよね~、しかもゲンくんだけじゃなくちーちゃんや箒ちゃん、いっくんや束さん達全員をバカにしてたでしょ?アッハハハ♪もう笑えすぎちゃってさぁ……』

 

束さんがそこで言葉を切ると、デフォ束さんは回るのを止めてハイライトのないどんよりとした目を浮かべた……って怖ッ!!?

 

『イギリスのIS全部止めた上で、そのバカを社会的にも物理的にも抹殺してやろうと思ったんだけど……それじゃゲンくんは納得しないでしょ?自分でキッチリブッ飛ばしたいでしょ?』

 

その一言に、俺の血流という血流が激しい勢いで身体中を巡りヒートアップしていく。

そうだ、束さんの言う通りだ。

俺が、俺自身の手であの腐れアマをブッ飛ばさなきゃ、俺自身が納得できねえ!!

そんな俺の怒りに満ちた表情が見えているかの様に、デフォ束さんは瞳にハイライトを戻して満面の笑みを浮かべる。

 

『だ・か・ら♪束さんからのせめてものプレゼントが、このオプティマス・プライムなのさ!!急造だったから初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)が完了するまでは弱いけど、完了したら規格外の理不尽ISにジョブチェンジしちゃうんだお!!だおだお!!』

 

デフォ束さんは音声に従って両手に扇子を持ってまたもやクルクル回りだす。

そうか……だからISが届くのがこんなギリギリだったのかよ。

俺がIS学園に入る事になってから大体1ヶ月弱、そんな短い時間の内で束さんは俺の為にコイツを造ってくれてたのか。

 

『一応これで録音は終わりだよ!!残念無念だけど、武装は一次移行(ファーストシフト)してから確認ヨロ!!かなりスッゴイのが沢山詰まってるから、期待してくれたまえ~♪……それと♪最後に束さんからゲンくんに応援メッセージを送るね?……やっちゃえやっちゃえ!!あんなバカ、思いっ切りブッとばしちゃえー!!……それじゃあまーたね♪バイチャー♪』

 

束さんの最後の音声が終了すると、デフォ束さんは俺に手を振りながら封筒の中へ帰り、そのメールは消去された。

全くよ……ホントーに束さんは身内に甘いよな……態々俺の為にISを拵えたって?

こんなビックなプレゼント……嬉しすぎて仕方ねえじゃねえっすか。

俺は空へと視線を移して、俺を睨み付けている腐れアマの近くまで飛翔を続ける。

 

間も無く喧嘩の始まりだ。

 

「束さん……アンタ、どんだけ良い女なんすか……危うく惚れちまうトコだったぜ」

 

俺は飛翔している間に、ポツリとそれだけ口にしてオープンチャネルを開く。

もうメールは消去されたし、誰にも聞こえてねえだろう。

ありがとうよ、束さん。

俺とオプティマスの初陣……造ってくれた束さんの為に、しっかり勝利で飾ってやりますから。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

~とあるラボ

 

「ぬふふ~♪ホントは録音じゃなかったけど、ビックリしてるゲンくんは中々にオツでしたなぁ~♪さてと、良きゲンくん見れたしぃ、箒ちゃんの専用機の続きに取り掛かろうかね~♪」

 

イイ物が見れたと上機嫌な束は座っていた椅子をクルリと回転させて降りようとするが……

 

『束さん……アンタ、どんだけ良い女なんすか……危うく惚れちまうトコだったぜ』

 

「……にゃ?……良い、女?……惚れ?……ふへッ!?にゃ、にゃにゃにゃああぁああああああああああああああああッ!!!???(真っ赤)(どんがらがっしゃーんっ!!!)」

 

次にスピーカーから流れた音声に驚き、椅子ごと後ろにひっくり返って身悶えした。

 

メールは消去しても回線は繋ぎっぱなしだったので、元次の恥ずかしい呟きはしっかりと聞こえていた束であった。

その日から何週間か、束は元次の言葉が脳に焼きついて他の事に集中できなかったそうな。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「……最初は貴方ですか」

 

「……」

 

俺が腐れアマを視認できる位置まで飛翔すると、腐れアマは俺を憎々しげに睨みながら言葉を発した。

だが、アイツからツラが見えないように俯いている俺はそれに一切取り合わない。

 

ハイパーセンサー越しに見える腐れアマのIS……ブルーティアーズ。

その機体は鮮やかな青色で特徴的なフィンアーマーは中世の騎士の様な雰囲気を醸し出している。

ブルーティアーズを駆る腐れアマの手には長いライフル銃が握られていた。

それを感知したオプティマスがサーチしたの検索結果には六十七口径特殊レーザーライフル『スターライトmkⅢ』と記されている。

 

「ふん、これだけ長い時間を待たせた割には、非固定浮遊部位(アンロックユニット)すら存在していない旧式のISとは……世代的には恐らく退役した第一世代を改修したような旧式中の旧式じゃないですか……貴方の様な人間にはお似合いの『ポンコツ』ですわね?」

 

腐れアマはそう言って俺を侮蔑の笑みをもって見下してくる。

この会話がオープンチャネルで観客席まで届いている所為か、観客席の女子達がざわついていた。

だが、それにすら俺は取り合わない。

取り合わないで只、静かに俯いているだけだ。

そんな俺の態度に業を煮やしたのか、腐れアマは開始の合図すら鳴っていないというのに、ライフル……スターライトmkⅢの銃口を俺に向けてエネルギーをチャージし始めた。

 

「どこまで人をコケにする気かしら!?いいですか野蛮人!!最後のチャンスをあげますわ!!よく聞きなさい!!わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。そのポンコツIS共々ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで土下座でもして、泣いて許しを請いなさい!!」

 

『警戒、敵IS操縦者の武装が射撃モードに移行。セーフティーロックの解除を確認』

 

もはや青筋の浮かび上がった顔で俺に喚き散らしながら、腐れアマは脅す様に銃口を俺から外さない。

そんな腐れアマの状態を感じ取ったオプティマスが警告信号を発してくる。

全く、アッチもコッチも急かすんじゃねえよ……もうちょいで、『怒り』が身体中に巡るんだからよ。

1週間もの長きに渡って俺の腹の底で煮え滾っていた怒りの感情が、俺の純粋な戦闘力を底上げしていく。

その怒りに応じて、俺の身体がオートで『猛熊の気位』を発動させ蒼き炎が身体を揺らめく様に纏われる。

 

テメエが強い?チョーシこいてんじゃねえよボンクラ。

テメエ如きじゃ千冬さんや冴島さん、ヤマオロシの足元にも及ばねえ。

全くもって怖くも何ともねえんだよ。

許しを請う?俺が?テメエに?冗談でも有り得ねえぞコラ。

やっと俺の闘志が起き上がってきた所で、俺は伏せていた顔を上げた。

 

「『うざってぇゴミ屑がぁ……チョーシにのってんじゃねえぞッ!!!』」

 

俺は攻撃的な顔を浮かべながら、威圧の咆哮を腐れアマに浴びせる。

束さんが丹精込めて造ってくれたISが……俺のオプティマスが『ポンコツ』だと?

ホンットーに、テメエは俺をキレさせんのだけは天才だな……ブッ殺す!!

 

『これより、鍋島元次対セシリア・オルコットの試合を開始します!!……試合、開始!!』

 

 

 

その瞬間、試合開始のブザーがアリーナに響いた。

 

 

 

「ヒッ!!?あ、あぁぁあああああああああああああああッ!!!(ダァアンッ!!!)」

 

そして俺と目が合った腐れアマは俺に睨まれた時の事を思い出したのか、恐怖を抑えつけるかの様に叫びながらスターライトをブッ放してくる。

 

「『うぉらあッ!!』」

 

俺はブースターを吹かして、放たれたレーザーに向かって真っ直ぐ飛翔し、自分自身をドリルの様に回転させてレーザーの横スレスレを通り抜ける。

確かにレーザー、いや弾丸は滅茶苦茶早えが、近づいた距離なら千冬さんの居合いの剣速の方が早かった。

オマケに居合いってのは体勢状どの辺りで抜刀されるかは判断しにくいが、銃は引き金を引いたら銃弾が放たれる。

なら話しは簡単だ。

奴の引き金に視線を集中して、引き金を引く瞬間に銃口の線から身体を外せばいい。

弾は剣みたいに弧を描いたり出来ない、真っ直ぐの線だけが当たるポイントだからな。

 

「なッ!?」

 

俺が初弾を避けたのが意外だったのか、腐れアマは驚愕の声を挙げて身体を硬直させる。

俺は腐れアマに近づいてる体勢から、右腕を後ろに真っ直ぐ伸ばして拳を力の限り握りこむ。

とりあえず、あん時に殴れなかった分は殴らせてもらうぜ!!

 

「『ストロングッ!!ハンマァァアアアアッ!!』(ズドォオオオオオンッ!!!)」

 

「ぐふっ!!?」

 

俺は気合を入れる意味で技名を叫びながら、後ろに引き絞った『砲弾』を腐れアマの腹部を狙って穿った。

俺の拳をピンポイントで食らった腐れアマは苦悶の声を挙げて、アリーナへ向けて落下していく。

よし、ありゃ完璧に入ったな。

『ストロングハンマー』とは只、力いっぱい殴るだけ。要は普通のヘビーパンチだ。

だが、あれだけ綺麗に入ったんだ。

多分絶対防御は発動してる筈だから、シールドエネルギーはかなり減っただろう。

 

絶対防御。

 

これは全てのISに搭載されている、あらゆる攻撃を受け止めるシールドの事だ。

どんな状態でも最低限、操縦者の命だけは守ってくれるトンデモ便利システム。

但し、絶対防御が発動するとシールドエネルギーを極端に消耗するというデメリットがある。

この事から、操縦者の命に関わる緊急時、救命措置を必要とする場合以外は発動しない。

そしてその判断はIS側が行う上に、操縦者側では絶対にカットできないシステムだ。

つまりISの試合では、絶対防御が発動すればするほどシールドエネルギーの消耗が早い。

これも本音ちゃんが参考書を交えながら一生懸命に教えてくれた。

マジでサンキューです本音ちゃん。

 

「うぅッ!?くッ!!(ギュオンッ!!)」

 

俺のストロングハンマーの勢いのままアリーナへ向かって落下していた腐れアマだが、奴は空中で回転して体勢を整えなおした。

だが、パンチの威力はかなりのモノだったのか、腹を抑える様に身体をくの字に曲げてゲホゲホと咳き込んでいた。

 

「げほっ!?はぁ……そ、その程度のヘナチョコパンチ、効きませんわ!!」

 

腐れアマは俺を忌々しく睨みつけながらそう叫ぶ。

いや、滅茶苦茶効いてるだろうに。

強がりっつーか、バカもここまでくりゃ見上げたモン、いや今の体勢なら見下げたモンか。

俺が白い目で腐れアマを見ていると、奴は下から俺を指差してきた。

 

「大体!!武装を展開しないとはどういうつもりですの!?ふざけているんですか!?」

 

あーもー、いい加減本気でウゼエなこのアマは。

まぁ展開しねえんじゃなくて、できねえってだけだがな。

 

『『『『『ワァアアアアアアアアアアッ!!!!』』』』』

 

俺が攻撃を避けただけではなく、逆に相手に一発カマしてやった事に観客席からデカイ歓声が沸き起こる。

まぁ代表候補生相手にこの間まで一般人だった男が優位に立ってんだからな。

この歓声は当たり前だろうよ。

 

「こ、この……!!ティアーズ!!」

 

俺のだんまりに激高した腐れアマは何かに命令を下すかの様に叫ぶ。

すると、奴の背中に取り付けられていた4つの非固定浮遊部位(アンロックユニット)の内2つが外れて、俺に向かって飛んできやがった。

 

「お行きなさい!!ティアーズ!!」

 

腐れアマがそう叫ぶと同時に、オプティマスが緊急警告を発してきた。

 

『警告!!敵IS特殊装備使用。周囲に警戒態勢』

 

そして警告を確認した直後、飛来してきたティアーズとやらがレーザーを射撃してきた。

 

ビュン!!キュイン!!

 

「『うおっと!!らあ!!』」

 

ギリギリのところで俺はティアーズから発射されたレーザーを身体を捻る事で何とか回避した。

あのティアーズとやらがアイツのISの特殊装備ってワケか。

なんつうか……ロボットアニメのビットって奴みてえだな、てゆうかまんまだ。

周りを見てみるとそこにはビット?と思われるものがさっきより増えて4つ、俺の周りに浮いている。

へっ、こっからがモノホンの喧嘩ってわけだ……上等だぜ。

俺は意識を集中させて足元の腐れアマを睨む。

下に居る腐れアマはスターライトを構えて、俺をしっかりと狙い定めていた。

 

「さぁ、踊りなさい!!わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!!」

 

「『生憎、ダンスならもっと良い女としか踊らねんだよ……だらぁああああああああああッ!!!』」

 

腐れアマはスターライトを構えたままティアーズを従えて俺を待ち受け、俺は烈火の勢いで腐れアマに突撃していく。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

所変わって此方はピット、其処には先ほど空へ飛翔した元次を除くメンバーがモニター越しに観戦していた。

 

「なんでゲンは武器を使わないんだ!!おかしいだろ!?」

 

「一夏、落ち着け!!お前が焦った処で何も状況は変わらん!!」

 

「それはわかってる!!……わかってるけどよ!!(ギリッ!!)」

 

ピットのモニターで元次の喧嘩を見ていた一夏が武装を展開しない元次を見て切迫した様に叫び、手を握る力を強めていた。

幼馴染みである箒の諌める声を聞いても、一夏の中に渦巻く漠然とした不安は取り除かれなかった。

かく言う箒も本音や真耶でさえ、困惑した表情で元次の戦いを見ている。

 

「お、おかしいよ~!!どんなISでも武装は必ずあるはずだもん!!あっ!?危ない~~ッ!!」

 

本音の視線の先のモニターでは、セシリアのビットのレーザーが腕に一発被弾して体勢を崩しかけた元次の姿があった。

先ほどからレーザーの雨を掻い潜ってはセシリアに攻撃を加えているが、どれも拳か蹴りというIS本体を使った攻撃ばかりだった。

従って元次は先程の言葉通り、一度も武装を展開していない。

正しくは初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)が終了していないので武装が展開できないのだが、それを知る者はこの場では元次だけだった。

その為ピットにいる全員は、ISの故障かとハラハラした雰囲気になりつつある。

 

「今は辛うじて元次さんが押していますけどこのままでは!!織斑先生、ここは一旦中止にした方が……」

 

真耶は武器無しでライフルと特殊装備相手に立ち回り、かつ優位に試合を運んでいる元次の技量に見惚れていたが、やはり一抹の不安は拭えず千冬に進言する。

モニターに映る元次はまたもやレーザーの隙を突いて肉薄するが、今度はティアーズの狙撃で進路を阻まれ後退してしまっていた。

双方のシールドエネルギー残量は元次が優位に立っているが、このままではその差も逆転するのは時間の問題だ。

 

「……いや、このままでいい、試合は続行だ」

 

「っ!?そんな!?」

 

だが千冬が口にしたのはこの場に居る人間からすれば驚くべき答えだった。

普通だったらこの試合を見たものは中止にするか試合を延期するかにするはずだが千冬はこの試合を続行すると言い放つ。

しかも千冬の顔はまるで面白いものを見るかの様な表情だったので、全員の驚きは更に倍増した。

 

「千冬姉!!千冬姉はゲンが負けてもいいって言うのかよ!?アイツは家族の為に……」

 

一夏はぞんな千冬の表情が理解できなかった為、千冬に食って掛かった。

先ほどまで一夏は自分の誇らしい兄弟分が、いつも強く生き、戦ってきた自分の親友が負けるとは微塵も考えていなかった。

だがそれは元次が普通に戦っていればの話しだった。

今、目の前のモニターの中で奮闘している兄弟は、銃は愚か武装すら一つとして展開していない。

その事実が、一夏の心に不安を煽らせてしまったのだ。

 

「そんな事は一言として言っていないだろう!!それと織斑、学校では先・生・だ!!(バゴン!!)」

 

「ぼへぇ!?」

 

そして公私混同した一夏にすかさず千冬の出席簿アタックが炸裂した。

普段は千冬も元次の名前を呼んでしまう等と公私混同してる部分も多いが、それは割合する。

一夏に制裁を加えた千冬は、ため息を付けながら全員に向き直る。

 

「まったく……頭を冷やせ馬鹿者!!……大体私は、元次が負けるとは微塵も思っていない」

 

「……え?そ、それは何故ですか?織斑先生」

 

この場に居る全員を代表して箒は千冬の言葉に質問する。

元次の対戦相手であるセシリアは武装を展開、あまつさえ特殊装備も展開している。

一方で元次の方は武装もなく初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)も出来てない状態、明らかにセシリアの方に分がある。

そんな状況にも関わらず、千冬は何のためらいも無く元次の勝利を宣言していた。

そんな箒からの疑問に満ちた問いかけも、千冬は即答ともいうべき速度で答える。

 

「入試の実技試験で元次は、拳と蹴りだけで私の訓練機のエネルギーを1000から120まで追い詰めた……アイツが武器を使ったのは、最後の一撃の時だけだったぞ?」

 

千冬の言葉に、ピットに居た全員は息を呑んだ。

目の前にいる女性はISの世界最強の位置に君臨する女性で、その実力は一切衰えていない。

そんな千冬相手に、互いに訓練機とはい言え拳と蹴りのみで戦いを挑み、あまつさえ追い詰められたとまで言わせたのだ。

元次が千冬に勝ったというのはクラス代表を決める授業の時に聞かされていたが、それは銃や刀を使っての戦いだと全員思い込んでいた。

それは試験の内容を知らされていない一夏達からすれば仕方の無いことなのだが。

だが、今明かされた真実は武器を最後以外一切使わずに千冬を追い詰めたという驚愕するに値するものだった。

 

「それに、私が元次と戦った時は私のスピードも剣速もオルコットの倍以上は出していた……あの程度のスピードに、元次が追い着けないワケがないだろう……今、アイツが攻めあぐねている様に見えるのは、単純に今のオプティマス・プライムの性能がオルコットのブルーティアーズに追い着いていないからだ。もし同じスペックを持つ機体で戦っていたなら、元次はもっとエネルギーを削っている……それに、アイツは今もオルコットに食らい付いているぞ?」

 

千冬はそう言いながらモニターに視線を移したので、それに従って一夏達もモニターに視線を向けると……。

 

『どらぁっ!!!(ズドオッ!!!)』

 

『キャッ!?こ、このぉッ!!(ピュイン!!)』

 

『スットロいんだよボケ!!』

 

一夏達が視線を向け直したモニターの先では、セシリアの狙撃を紙一重で回転しながら避け、その勢いのままブルーティアーズの脚部をサッカーボールキックで蹴り抜く元次の姿があった。

オマケにセシリアの苦し紛れに放たれたビットのレーザーを、お返しとばかりに狙われた脚部を上げる事で掻い潜り、ビットの包囲網から抜け出していく。

正しく、戦況はヒット&アウェイを繰り返す元次が優位に立ったままであった。

 

「す、凄い……IS搭乗時間が1時間も無い元次さんが、ここまで代表候補生のセシリアさん相手に立ち回れるなんて……まだ一次移行(ファーストシフト)すら終了していないのに……』

 

「当然だ。奴は、私に『勝った』男だぞ?あれぐらいしてもらわないと困る」

 

初めてISに触れてから3回目の起動だというのに、セシリアとほぼ互角の戦いを繰り広げている元次に真耶は驚愕の表情を浮かべる。

代表候補生のIS稼動時間はアベレージで300時間。

それはその時間分だけ、代表候補生がISの訓練をしてきたという証でもあり、事実でもある。

一方で元次のIS稼動時間は約50分……たったそれだけの稼働時間で、元次は代表候補生と対等に戦っていた。

 

「……が、頑張って~!!ゲンチ~!!行け行け~!!」

 

「ゲン!!お前なら勝てる!!勝ってオルコットを見返してやれ!!」

 

そんな元次の姿に、本音と箒は心からの応援を送る。

箒はモニターを見つめたままに強い言葉を、本音は長く余った裾をパタパタと振り回しながら身体全体で応援していた。

 

「……スゲエ……これが……今のゲンの……力かよ」

 

一方で、一夏は応援するわけでも無く只モニターに映る元次の姿を見つめ……いや、魅入っていた。

泥臭く、拳や蹴りといった原始的な戦い方であるにも関わらず、何故かその立ち回る姿には『華』があったからだ。

一夏はモニターの先で暴れまわる自分の兄弟分の戦い……喧嘩から目が離せなかった。

 

『俺の今の力……目ン玉引ん剥いて、よぉく見とけ』

 

そこで一夏はハッと思い出す。

カタパルトから射出される前に、親友が自分に残した言葉を。

 

「……遠い、な」

 

自分の兄弟分の本当の力。

 

それは最強だと信じていた自分の姉を負かしたという規格外な力であり、自分との実力の差を如実に物語っていた。

今日までの鍛錬で相手をしてもらった時とは、まるで比べ物にならない程に今の元次は強い。

ずっと傍に居て、一緒に育ってきた兄弟分である男との圧倒的な差に、一夏は顔を悔しさで歪めて俯いてしまう。

 

「アイツは、1ヶ月前に別れた時よりも遥かに強くなっている……恐らく誰かに鍛えられたんだろうな」

 

そして、そんな弟の様子に、千冬は苦笑いを浮かべながら話しかけた。

千冬としては、たった1ヶ月で元次をあそこまで鍛え上げた人物に興味はあった。

恐らく自分と同じくらいの猛者であるという事も……それが『女性』では無いかという不安も一緒に……とゆうかソッチが大半を占めていたが。

 

「一夏……良く見ておけ」

 

そんな千冬の言葉に、一夏は顔を上げて千冬の顔を見た。

一夏の視線の先に映る千冬は、モニターにしっかりと目を向けている。

 

「これから先、お前が元次に並び立ちたいと……追い越したいと言うのなら……アイツの強さを、しっかりと目に焼き付けておけ……お前が目指す強さを……焦らずに目指していけ」

 

「……あぁ」

 

千冬からの、自分の姉からの不器用な励ましの言葉を受け取った一夏は、今一度モニターに視線を向け直す。

自分の誇らしい兄弟分の雄姿を目に焼きつけんが為に……。

 

「(今は無理でも、いつかは絶対に追い着いてやるからな、ゲン……待ってろよ!!)」

 

モニターの先で暴風の如く猛威を振るう兄弟分に、一夏は心の中で闘志を燃やし始めた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

ピュン!!ピュンピュピュン!!

 

左や右とありとあらゆる角度から飛来するレーザーの雨を交わしつつ、俺はブースターを吹かして腐れアマとの距離を詰める。

 

「く!?ちょこまかと鬱陶しいですわ!!いい加減落ちなさい!!(ダァン!!)」

 

「『ちっ!?クソが!!あっちこっちから邪魔くせえ!!』」

 

しかし、レーザーの雨を掻い潜ったと同時に、今度は正面に控えていた腐れアマのスターライトからの狙撃が俺を狙い撃ってきた。

その射線から逃れる為に、俺は1度右横にスラスターを吹かしてビットの包囲網から離脱する。

俺が離れた隙に、腐れアマはビットをISに戻して、非固定浮遊部位(アンロックユニット)に取り付ける。

恐らくエネルギーを回復してるんだろう、幾らなんでもあのビット単体にエネルギーが沢山あるとは思えねえし。

俺は腐れアマを注意深く見ながらファイティングポーズをとる。

しかし面倒になってきやがった……今ので通算3回目の離脱だ。

さっきからパターンが同じ様になってる上に、ライフルによる射撃の精度も増してきている。

試合開始直後の1300からオプティマスのシールドエネルギー残量は現在800、そこそこ食らっちまった。

俺はオプティマスの状況をモニターで把握しながら、距離を保つ。

ビットで彼方此方から撃ってきたと思ったらライフルで撃ってくるし、ライフルの射撃を避けたと思ったら次はビット。

この繰り返しで近づけば離されてばかりだ。

ここまでで腐れアマに当てた打撃は通算で12発、まぁ上等なモンだろ。

さあて、どうしたモンか……近づきゃライフル、離れりゃビットの二択……か。

くそが、ビットに攻撃させてる時は悠々しやがって、余裕のつもり……いや、待てよ?

何かが引っかかった俺は、今までの腐れアマの行動を思い返してみる。

 

「さあ!!続きを始めますわよ!!(ダァアンッ!!)」

 

「『うおっ!?考え事ぐらい邪魔すんじゃねえよアホンダラ!!』」

 

俺が腐れアマの行動を思い返していると、ビットのエネルギー補充が終わったのか、ビットが再び俺を取り囲んでレーザー射撃を始めた。

辺りを飛翔するビットからの射撃を狙われている部位をなるべく動かして避ける。

またビットだけの攻撃……もしかしてアイツ……。

そして、ある考えが浮かんだ俺は腐れアマをハイパーセンサーで覗き見てみた。

 

「くうぅ!?何故当たりませんの!?」

 

すると、視線の先に居た腐れアマは苛立ちに顔を歪めたまま、俺を凝視していた。

しかもさっきと変わらない位置でだ。

おかしい、何でアイツは俺を撃たねえんだ?あの位置からならライフルで撃ちゃ確実に俺に当てられるってのに。

顔も悔しそうに歪んでるって事は、余裕の表れってワケでもねえ……ってことは結論は1つ。

 

ピュンピュピュン!!

 

「『そらっ!!』」

 

アイツは『撃たねえ』んじゃねえ、何かの『理由』があって『撃てねえ』んだ。

その証拠に、アイツが移動するのは決まってライフル射撃中か、ビットを戻して使ってねえ時だけ。

なら、アイツが動けないのは……恐らくビットの所為って事なんだろう。

俺はあらゆる方面から射撃を繰り返すビットをしっかりと観察する。

すると、さっきまで流暢に動いていたビット達が、最初と比べるとかなり動きが単調になっているのが判った。

最初は俺の見えない所から狙う様に撃ってきたビットが、今じゃ堂々とした位置からオプティマスの手足を狙ってきやがる。

ビットという機械の動きが変わる……これはつまり。

 

「この!!この!!このぉ!!落ちなさい!!」

 

操縦者の焦りが反映されてるって事か……間違いねえ。

このビットは4つ共全部、あの腐れアマがフルマニュアル操作してやがるってワケだ。

そうでなきゃビットの動きの変わり様が説明つかねえしな。

つまり、腐れアマはビットを使ってる間は、集中しなきゃいけねえから他の行動が一切できねえんだ。

だからライフルで撃つ事もせず、動く事もしねえんだ。

アイツがビットを使ってる間は動けないってのはかなりの有力情報だぞ。

それなら遣り様は何とかある。

残りのエネルギーもまだそこそこ残ってるし、一気にカマしてやる。

俺は腐れアマから注意を外してビットのレーザーに意識を集中していく。

 

ピュンピュピュンピュピュン!!

 

右足、胴体、左足首、右肘、左ウイング!!

 

ありとあらゆる方向から縦横無尽に放たれるレーザーを避けながら、俺は翻弄されている様に少しずつ今居る位置から腐れアマへ距離を縮めていく。

 

ズガンッ!!

 

「『うおっと!?』」

 

警告。左ウイングに敵機レーザー命中。

機体状態、小破、シールドエネルギー残量753

 

が、全ては避けきれず一発もらってしまった。

俺は崩れそうな体勢をなんとか踏ん張って少し流された辺りで踏み止まり、そのまま次のレーザーを大げさに避けていく。

くそったれ!!やっぱり機械の軌道って奴は読みにくい。

野生の動物達と違って殺気がまるでねえからな。

だが、今の一撃をもらったことで、腐れアマまでの距離は大分縮まった。

腐れアマは中々俺にレーザーが当たらない事に焦っているのか、弾幕は苛烈さを増すが、精度に欠けている。

よし……後はタイミングを計るだけだ。

仕掛けるタイミングは奴がビットを戻す命令を下した時……そん時に一気に勝負を賭ける。

そして、俺が仕掛けるタイミングを虎視眈々と狙ってから数分。

 

「く!?戻りなさ……」

 

今だ!!

 

「『うぉらぁああああああああああッ!!!』」

 

絶好のチャンスが舞い込んできた瞬間、俺は雄たけびを挙げながら腐れアマに向かって全速力で突っ込む。

 

「な!?ま、まさかティアーズの特性を!?」

 

腐れアマが俺の雄たけびに意識を移してしまった為か、ビットの動きは急速に悪くなり、俺は安々とビットの包囲網を突破した。

しかも俺が少しづつ距離を詰めていたお陰で、既に奴に到達するのはそう遅くない位置まで飛んでいた。

この時点でビットの線上には俺と腐れアマが並んでいる。

例えビットの操作が間に合って俺を射撃したとしても、下手をすれば奴自身も射撃の餌食になるだろう。

しかもこの位置なら奴がライフルで狙撃してきても、撃てるのは精々1,2発。

それぐらいなら耐えて、奴に肉薄できる。

そのまま近距離の殴り合いに持っていけば、ビットを戻す命令も出来ねえ。

ここで押し切ってやる!!

俺は腐れアマに向かって飛びつつ、近距離戦の準備を行っていく。

 

 

 

 

 

……だが。

 

「……かかりましたわね」

 

俺を出迎えたのは、不適に笑う腐れアマの顔だった。

その表情を見た俺は全身に悪寒が走る。

ヤベエ!!マズッた!!まだ何か奥の手を持ってやがったのか!?

 

「お生憎様!!ブルーティアーズは……」

 

腐れアマは不適な表情を崩さずに、腰元のスカートを展開する。

すると現れたのは……。

 

「『6機』あってよ!!(ボシュウウウッ!!!)」

 

他のビットとは違う、砲身が白く塗られたタイプのティアーズだった。

その吸い込まれそうな程に大きな口径から、俺を蹂躪せんと2発の『ミサイル』が発射された。

そして、俺の視界を塞ぐ勢いでミサイルは俺に迫ってくる。

俺はそのミサイルを憎々しげに睨みつける事しかできなかった。

くそ、怒りに任せて勝負を逸り過ぎちまったか……もうこの距離じゃ避けるのはぜってー無理だな。

だがもしもエネルギーが残れば、力の限り叩き潰してや『初期化(フォーマット)及び最適化(フィッティング)が完了しました。確認ボタンを押してください』……え?

 

 

 

 

 

そして、俺の視界を強烈な光が埋め尽くした……。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

チュドォオオオオオンッ!!!

 

 

ピットのモニターを眩い閃光が埋め尽くし、爆音とともに煙が上がった。

元次にセシリアの放ったミサイルが直撃するのを見ていた箒は歯を食い縛り本音、真耶の2人は顔を真っ青にしてしまう。

 

「ゲン……く!?」

 

「モ、モロに当たっちゃったよぉ……ゲ、ゲンチ~……」

 

「……元次さん」

 

誰が見ても間違いなく直撃コースだった。

未だ爆発の衝撃で広がった煙幕は晴れなかったが、晴れたところで見えるのは勝ち誇っているセシリアと地面に落ちた元次だと、3人の心の中は確定していた。

ここで箒はハッとして一夏に視線を送る。

この場で一番この結末が信じられないのは、他ならぬ一夏と千冬の筈だからだ。

 

「……」

 

「……一、夏?」

 

だが、視線の先に居た一夏は未だに真剣な表情でモニターを見つめていた。

まるで、まだ試合が終わっていないと言っているかの様に。

 

「……漸くだな」

 

そして、一夏の隣りに立っていた千冬は待っていた瞬間がやっと来たかの様に声を挙げる。

その声が聞こえた本音と真耶、箒の3人は千冬や一夏と同じようにモニターを見つめ直した。

 

「ここからが……元次にとっての、本当の『喧嘩』だ」

 

千冬は力強くそう言ってモニターをしっかりと見つめる。

ただその煙の先にいる、愛しい男の姿を……。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「……所詮は男、ということですわね。幾ら強がっても、女に勝てる筈もありませんわ」

 

セシリアはミサイルの爆発で起きた煙幕を侮蔑の笑みを持って見ていた。

あの瞬間、間違い無く自身のIS、ブルーティアーズの放ったミサイルは寸分の違いもなく元次に直撃したのを自分の目で見たからだ。

よってこれで試合は終了、自身に恥を掻かせた忌々しい男を奴隷に出来た事に、セシリアは心の底から満足していた。

余りにも予想外の戦い方で翻弄され、1800あったシールドエネルギーは500まで減らされたがそれでも勝利には違いない。

教室で二度に渡り、自分の言葉を否定し、あまつさえ自らの事をゴミ屑呼ばわりした無礼者だ。

二度と生意気な口が聞けない様に精々扱き使ってやろうと心の中でこれからの学園生活をシュミレートしていく。

 

 

 

 

 

……そう……取らぬ狸の皮算用を……。

 

 

 

 

 

「もう1人の男……織斑一夏は、あの口だけ男よりマシだといいのですが……まぁ、有り得ませんわね。あんな口だけ男に叩きのめされているようじゃ、程度は知れ……」

 

 

 

ぞくりっ

 

 

 

「『勝手に終わらせてんじゃねえぞ……あぁ?』」

 

その声を聞いた瞬間、セシリアは感じたのだ。

とてもおぞましく、凶悪な面構えをした『悪魔』の様な形相で笑う『ナニカ』の存在を。

その『ナニカ』が元次の声を自分の耳元で囁く様な、まるで理解できない……いや知りたくも無い絶大な恐怖を全身で感じ取ってしまった。

 

「ヒッ!!?そ、そんな馬鹿なッ!!?まだエネルギーが残ってましたの!!?」

 

セシリアは仕留めていなかった事に驚愕し、同時にオープンチャネルから聞こえてきた声に恐怖し、悲鳴を挙げる。

セシリアはそんな訳の判らない恐怖を払拭しようと、煙の中に向かってスターライトmkⅢを油断無く構える。

今度こそあの無礼者を、完膚なきまで仕留めるために。

 

そして……。

 

「『……やっと起きたみてえだな……寝ぼすけな相棒だぜ』」

 

「……あ……ぁ……う、嘘……」

 

煙の晴れた先に……。

 

 

 

「『さぁ……こっからが『本番』だぜ?……ダイヒョーコーホセーさんよぉ』」

 

セシリア・オルコットは、本物の『悪夢』を見た。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

一次移行(ファーストシフト)が完了しました。これより全武装のロックを解除します』

 

俺の耳に届いてくる一次移行(ファーストシフト)完了の合図と共に、オプティマスに内蔵された全武装の一覧リストが表示された。

だが、俺はそんな事よりもっと驚いた事がある。

それは、オプティマスとの一体感だ。

さっきまでのオプティマスは、波長が合うと言った感じで自分の身を守る鎧に近い感覚だった。

だが一次移行(ファーストシフト)した今は違う、もうオプティマスは俺の身体になっていた。

俺の思う通りに、自分の脳から命令が送られそれを忠実に実行する本物の身体と一緒の感覚だ。

全体を見下ろすオプティマスのボディは、一次移行(ファーストシフト)を終えて色が変わっていた。

基本色は同じ蒼だが、輝きがまるで違う。

さっきまでの色はダークブルーだったが、今は太陽の光を浴びて綺麗に輝くメタリックブルーの光沢に変わっている。

それだけではなく手首から肘にかけてのアーマーの色は、煌くメタリックレッドにカラー変更が施されている。

良く見ると胸当てのアーマーも中央がメタリックレッドになっていた。

 

やれやれ、ミサイルが目の前に迫った時はかなり焦ったが……これで俺もやっと武器を使えるってわけか。

 

「そ、そんな……一次移行(ファーストシフト)……今まで、初期設定のISで戦ってたという事ですの?……あ、有り得ませんわ!!」

 

腐れアマは何かを喚いているが、俺はそれに取り合わず機体のチェックをする。

なんせさっきのミサイルでかなりのダメージを負った筈……なんだけど……あるえ?

俺は現在のオプティマスのステータスを見て、目がおかしくなったのかと思った。

何故なら700近くまで減らされていた筈のエネルギーが……。

 

『高火力殲滅型IS、ISネーム『オプティマス・プライム』操縦者、鍋島元次。全武装開放状態。シールドエネルギー残量4500』

 

あれ?なんか全回復どころか大幅にレベルアップしてるんだけど?……束さんぇ……規格外にも程があるってマジで。

……ま、まぁいいや。さて次は武装を……。

もはや理不尽以外の何者でも無いオプティマスのオーバースペックに軽く現実逃避をカマして、俺は武装リストを呼び出す。

すると、ウインドウに呼び起こされたのは、カテゴリ別の武装リストだった。

えーっと?……『拳系リスト』に『斬撃系リスト』に『銃火器系リスト』に『光学兵器系リスト』に、って多いわ!?

まだ今挙げたリスト以外にも何個かリストが存在しているというこの理不尽っぷり。

束さん、マジで鬼畜すぎるってこのISのスペックは。

まぁとりあえず、目の前の腐れアマを地獄へ叩きこめる装備を……拳系リストから選ぶ事にする。

銃とか練習しねーと使えねーのは目に見えてるしな。

そして俺は呼び出した武器リストの中から……迷わずある武器を認証した。

これがあの腐れアマにはお似合いだろう。

 

俺は首を廻してゴキゴキと音を鳴らし、右腕を思いっきり後ろに振りかぶった体勢で停止する。

そして視線の先にあの腐れアマを捉えた。

腐れアマはあのミサイルで俺を撃墜できたと思っていたのか、予想外の事態に顔を青くして震えている。

まぁ、格下の格下だと思ってた男が、実は一次移行(ファーストシフト)すら終わってない機体で互角以上に戦ってたのが信じられないってトコだろう。

アイツはかなりの安いプライドの塊みたいな奴だしな。

 

俺は震える腐れアマを正面に捉えた状態で……。

 

「『……ガードするか、避けるかしろよ』」

 

一言だけ、アドバイスをしてやる。

俺の突拍子も無いアドバイスに、腐れアマは愚かアリーナの観客席にいる女子までもがポカンとした表情になる。

まぁ目の前で戦ってる奴がいきなり忠告してきたらそうなっても不思議じゃねえか。

そして、俺の忠告を聞いた腐れアマはポカンとした表情から鬼の首でも取ったような得意顔に戻っていく。

 

「ふ、ふふふ……何を言いだすかと思えば……大方、一次移行(ファーストシフト)しても武装が無かったといった処なんでしょう?やはり貴方にはお似合いの『ポンコツ』ですわね?」

 

腐れアマはそう言って俺を再び余裕を持った笑みで見てくる。

……忠告はしてやったぜ?

一応『コイツ』の威力が判らなかったから言ってやったんだが……腐れには必要なかったな。

俺はその体勢を維持したまま、ブースターの出力を上げてスラスターを吹かす。

相変わらず視線はあの腐れアマに固定したままだ。

 

「あらあら?馬鹿の1つ覚えもここまで来ると大したモノですわね?またヘナチョコパンチでもおやりになるんですか?」

 

「……」

 

俺は腐れアマの戯言には取り合わず、スラスターの準備が終わるまで静かに待っていた。

既にオプティマスのメインブースターはエネルギーを最大まで溜め込み、余波でブースター本体が唸りを挙げて振動し始めた。

もうそろそろか。

 

『メインブースターのチャージ終了。右腕兵装、装填完了しました』

 

そして、オプティマスの報告を見た俺は、ブースターを開放し……。

 

「『……歯ぁ食いしばれッ!!!!(ズドォオオオオオオオッ!!!)』」

 

先程までとは比べ物にならないぐらいの、爆発的な加速に身を任せる。

それこそ瞬間的な加速は訓練機の打鉄の比じゃなかった。

すると、オプティマスの加速力が想像の域を超えていたのか、腐れアマは驚愕に顔を染めた。

だがもう遅え、このスピードじゃあ今更回避したって間に合わねえぞ。

 

「速いッ!?ティアーズッ!!」

 

ピュンピュピュンピュピュンピュピュンピュンピュピュン!!

 

回避は間に合わないと直ぐに判断したのか、腐れアマはビットを自分の周囲に展開して怒涛の連射を浴びせてくる。

さっきまでとは全く比較にならないレベルのレーザーの雨が俺に降り注ぐが……。

 

ズガガガガガガガガガッ!!!

 

『全弾被弾、シールドエネルギー残量4451』

 

オプティマスはその暴力的なスピードを一切緩めずに、強引にレーザーの雨を突破してしまった。

どうやらコイツはとんでもなくタフなISみてえだ。

あれだけ命中しても機体のバランスは一切失っていないどころか、シールドエネルギーの消費すら殆どしてない。

ホントに規格外なISだなオイ。

 

「なっ!?何て出鱈目をッ!!?」

 

俺がレーザーの雨を無理矢理力技で突破してきた事に腐れアマは更に表情を焦りに歪める。

だが、もう遅え。

既にオプティマスは腐れアマに肉薄し、『武器』の射程距離に入り込んでいるからだ。

俺は驚愕している腐れアマより上の位置まで来た所で、力の限り振りかぶった右腕を腐れアマのどてっ腹に向けて振り下ろす。

 

テメエが俺の『家族』を馬鹿にした馬鹿さ加減を……俺の『怒り』をしっかりとその身体で味わえッ!!!

 

 

 

「『STRONG!!!HAMMER!!!!!(ドゴォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!)』」

 

「あぐぅうッ!!!???」

 

 

 

俺の怒りの『鉄槌』が、腐れアマのどてっ腹に深々と突き刺さり……。

 

 

 

『IMPACT(ズガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!)』

 

「キャアァアアアァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!?????」

 

 

 

オプティマス・プライムの『砲弾』が腐れアマのどてっ腹に追加のダメージを送り込む。

『STRONGHAMMER』。

オプティマスのチャージブーストの勢いをそのままに拳で一点に叩きこむ超ヘビーパンチの事だ。

威力の程はスピードが乗れば乗る程増していく。

 

その直撃を受けた腐れアマは、トンデモないスピードでアリーナへ落ちていき……。

 

ズガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!

 

『『『『『キャアァアアアァアアアアアアアアアアアアアアッ!!??』』』』』

 

青い雫は、流星となってアリーナの外壁に轟音を響かせながら直撃した。

腐れアマが直撃した外壁の上の観客席に座っていた女子達から悲鳴が挙がる。

まぁかなりの衝撃だったよな、すまねえ。

そして直撃した時に巻き上がった土煙が晴れていくと……。

 

「……」

 

そこには、アリーナの外壁にめり込んで無様な姿を晒す腐れアマの姿があった。

 

「……悪かったな」

 

俺はその様を上空から笑顔で見下ろしつつ、『謝罪』を口にする。

いやはや、ここまで派手に喧嘩しておいてなんだが、『一個』だけあの腐れアマに謝んねえといけねえ事があったぜ。

俺は笑みを絶やさずに右腕を軽く横に向ける。

すると、バシュゥウウウウウッ!!!と右腕のアーマーの一部から煙が噴出し、アーマーの一部がスライドコッキングした。

だが、俺はそれには構わずに言葉を続ける。

 

「さっきまでの俺のパンチは……」

 

ボォンッ!!ガランッ!!ガラガラ……。

 

俺が言葉を一度切った所で、右腕のスライドコッキングした箇所から大型の『薬莢』がアリーナの地面へと排出された。

それを確認した俺は、今浮かべている笑みを更に歪めて『獰猛』な笑みを周囲に見せつけ……。

 

 

 

 

 

「確かに『ヘナチョコ』だった」

 

腐れアマに対する『たった1つの謝罪』を口にした。

 

 

『し、試合終了ッ!!!勝者ッ!!!鍋島元次ッ!!!』

 

『『『『『……ワァアアアアアアアアアアッ!!!!』』』』』

 

そして、アナウンスが俺の勝利宣言を下して少しすると、アリーナから歓声が爆発した。

俺はその歓声を受けつつ、アリーナを後にする。

 

さあ、次はテメエが男を見せる番だぜ?兄弟。

 

ピットに向かって飛ぶ俺の視界に捉えた闘志に満ち溢れている一夏を見ながら、俺は心の中で応援を送る。

……そういや、あの腐れアマ、次の一夏と戦えるのか?

まぁどうでもいいけどな。


 
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