No.534863

少年達の挽歌 日韓戦争編 第一話

BarrettM82さん

IS二次小説『学園の守護者』のサブストーリー。
少年達が虐げられるISの世界で彼らは様々な理由で戦争に赴く。
小野寺魁人の配属された部隊『第六小銃分隊』を通してISの世界の戦争、日本の社会を映し出していく。

2013-01-22 19:32:52 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:994   閲覧ユーザー数:952

第一話 釜山上陸作戦

 

ISが篠ノ之束の手により開発されてから十年、日本・・・いや世界の男女の立場は完全に逆転した。

『女尊男卑』と呼ばれる現象が発生し、就職や進学はすべて女性が優先されていた。

世界中で女性優遇制度が施行され、国家元首も女性に入れ替わる中発端となった日本では過激な制度を施行する。

それが『女性就職優先雇用政策』であり、多くの男性は限られた職業に入るしかなくなった。

その中で一番人気を誇ったのが軍隊であったが、女性の一部からは『必要のない組織』と見られていたがそれを一変させる出来事が『日韓戦争』であった。

八月七日の早朝。

釜山沖合いに何隻もの揚陸艦から上陸用舟艇や水陸両用戦闘車などがドックから吐き出され、松島ビーチの海岸に向っていた。

その中の一両の二十式水陸両用戦闘車に主人公小野寺魁人二等兵がいる第五師団第二七歩兵科連隊の第六小銃分隊が乗り込んでいた。

操縦者を除きこの車内にいる兵士は皆若く、平均年齢が十五歳の部隊だった。

小野寺二等兵は東京空中戦で両親を亡くし、通っていた中学校も空爆され友人をすべて失った。

その怒りが彼を動かして陸軍の『臨時兵候補生』を受けて、すぐに合格して数週間に及ぶ訓練を受けてここに来たのであった。

だがこの分隊にいる殆どが小野寺二等兵のような理由ではなく、ただ周囲の空気に流されて来た人間もいた。

この世界は女尊男卑であり、『男性が国の為に命を捧げるのは当然』という世論であった。

特に未成年の男性は大人の男性に比べ社会的立場は酷く低く、もはや『物』のように見られていた。

外からは砲弾が飛んでくる音が聞こえ、車内は緊張に包まれ小野寺の手は小刻みに震えていた。

すると隣の兵士が緊張で嘔吐して床に撒き散らした。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「・・・大丈夫だ。」

 

声を掛けた相手は音無雄大二等兵は家族の勧めで軍隊に入隊した少年だった。

彼の母は地元で有名な市議会議員の息子で、母は彼を自分の選挙ネタに使う程度の感覚で送り出したのだ。

元々文化部の彼はあまり体力はなく訓練では付いて行けなくなりそうになったが同い年の小野寺に助けられ、なんとか教育期間をクリア出来たが今度は戦場だった。

 

「もう少しで上陸するぞ!ランプが開いたら一気に出ろ!」

 

兵士達に指示をするのは分隊最年長の十八歳、荒瀬洋平軍曹はこの分隊の分隊長であった。

彼は国防陸軍高等学校出身で、卒業して半年で戦場に送られた。

小野寺は手に持っている十七式5・56mm小銃のボルトを引いて銃弾を装填する。

すると車体が傾き斜めになるのが分かり上陸したことが分かった。

 

「ランプ開放!」

 

ランプが勢いよく倒されると急いで出た。

先に出た兵士の胸に銃弾が命中して、倒れるのが見えた。

 

「姿勢を低くしろ!」

 

分隊長の指示で姿勢を低くして、艦砲射撃で出来た窪地に飛び込んだ。

 

「RPG!」

 

他の分隊員が叫ぶと先ほどまで乗っていた二十式水陸両用戦闘車に命中して吹き飛んだ。

すぐに窪地から身を乗り出して十七式小銃を敵の火点に向けて銃撃する。

今回の任務は釜山沿岸の限られた砂浜を確保して、LCAKによる十式戦車などを揚陸後港湾施設の確保であった。

海岸には艦砲射撃で崩れた建造物がいくつもあったが、一部残った建物から韓国軍の狙撃手がこちらを狙っていた。

また一人の兵士が狙撃され、頭を吹き飛ばされた状態で隠れていた窪地に落ちてきた。

 

「ウワァァァ!」

 

その死体を見た音無二等兵はパニックに陥り、暴れだして窪地から飛び出そうとした。

 

「小野寺、音無を押さえろ!」

 

それを見た荒瀬分隊長は小野寺二等兵に押さえるように命じて、窪地から身を乗り出して狙撃手がいる建物に銃撃する。

小野寺は音無の首根っこを掴んで引き戻して、顔を叩いた。

 

「起きろ!このままだと死ぬぞ!」

 

なんとか正気に戻すと十七式小銃を手に取り、分隊長の傍に戻る。

 

「なんとか戻しました。」

 

「わかった。全員向こうの建物に走れ!」

 

分隊長は命じると窪地を飛び出すと、隊員達も窪地から飛び出して一気に崩れた建物まで走る。

建物に着くと瓦礫を盾に向こうを見ると一台の戦車と歩兵が多数接近していた。

戦車はロシア製のT-90E戦車で、主砲の125mm砲が火を吹いた。

瓦礫が隠れていた隊員ごと吹き飛ばした。

すぐに分隊員の一人が01式軽対戦車誘導弾を担いで、ロックオンすると発射した。

発射されたミサイルはトップアタックで戦車の砲塔に命中して爆発した。

 

「やった!」

 

発射した隊員は照準から目を離して見ると、煙が晴れたそこには健在の戦車がいた。

砲塔が回転すると同軸機銃から放たれた7.62mmの弾丸が分隊員を引き裂く。

小野寺は瓦礫に埋もれた隊員に駆けつけ、衛生兵を呼ぶが息絶えていた。

 

「通信兵!すぐに空軍に支援攻撃を要請しろ!」

 

分隊長が命じると通信兵はすぐに無線機でF-5B『飛龍』のパイロットと連絡をする。

すると二機の戦闘機が上空を飛び去ると、発射された二発の対戦車誘導弾が命中して戦車は跡形もなくなった。

 

「負傷兵は衛生兵に任せて前進するぞ!」

 

小野寺と音無も十七式小銃を持ち、瓦礫の山の間を低い姿勢で進んで行く。

すると先頭を走っていた隊員が接敵した。

小野寺は瓦礫の間から十七式小銃の銃口を突き出して引き金を引く。

敵兵の一人に銃弾が当たり倒れた、これが初の戦果であった。

敵を排除すると近くの建物に突入して確保すると停止命令が出た。

橋頭堡は確保され、これからは橋頭堡の防衛の後に機甲兵力の援護の下で港湾施設の奪取に移った。

 

 

 

 

作戦開始から五時間後の午後二時、第六小銃分隊は10式戦車の援護の下市街地を進んでいた。

突然ビルの窓から韓国兵が我々を援護している戦車に向けてRPG-29を撃ち下ろして来た。

弾頭は戦車の天井に命中したが、なんとか装甲で防げたが破片が周りにいた兵士に突き刺さった。

すぐに撃ち返すと韓国兵は身を引いて室内に戻った。

 

「衛生兵!衛生兵!」

 

倒れた兵士に駆け寄って、すぐに胸を見ると小さな破片が胸に突き刺さっていた。

衛生兵はすぐに駆け寄るとバックから医療具を取り出して破片を取り出してガーゼを傷口に押し付けた。

小野寺は手についた血を少しの間呆然と眺めた。

 

「上等兵、数人率いて制圧しろ。」

 

「了解。二等兵、ついて来い!」

 

新海上等兵は小野寺二等兵のほかに三人を選んでついて来るように命じた。

小野寺は掌から目を離して、十七式小銃を構えた。

 

「訓練通りやるんだぞ。」

 

上等兵はそう言うと壁に体を張り付き、ビルの裏口に銃口を向けた。

小野寺がドアを蹴破ると一気に突入して一階ずつ調べて行く。

すると小野寺は五階に上がる階段で韓国兵と鉢合わせした。

すぐに十七式小銃を韓国兵に向けて引き金を引くと、同時に韓国兵も銃撃してきた。

5.56mm弾が腹に命中して、強い衝撃を受けて階段から落とされて壁に体を打ち付けた。

 

「二等兵!」

 

すぐに新海上等兵が駆け寄ると、笑顔で答えた。

 

「なんとかこの防弾チョッキのお陰で。」

 

腹部を見てみると防弾チョッキの辺りに黒い弾痕が残っていた。

 

「動けるか?」

 

「大丈夫です。」

 

十七式小銃を手に取ると立ち上がり、階段を下りた。

その後10式戦車の援護を受けながら港湾施設に到達後、全部隊が集結して一気に攻勢に出た。

港湾施設の防衛を担っている韓国海兵隊は戦車などの機甲兵力をすべて失い、日本国防陸軍の陸上兵力に抗うことは出来ずに降伏した。

 

 

 

 

数日後、金海国際空港。

金海国際空港は空挺部隊の活躍により、釜山上陸作戦で一番最初に制圧に成功した拠点であった。

滑走路には日本の各飛行場から飛来してきた輸送機が着陸して物資を降ろすとすぐに離陸して日本に戻って物資を詰め込んで戻るのを繰り返していた。

駐車場には空輸された物資や車両が置かれ、さらに隣の空き地に天幕が大量に並んでここに野営していた。

ひとつの天幕の中で小野寺達第六小銃分隊の面々は簡易ベットの上で寝たり、トランプで遊んだり、本を読むなどして次の任務まで待っていた。

これだけ見ると学校の研修旅行でのワンシーンに見えるが、各ベットの横に立て掛けている十七式小銃がそうでないことを示していた。

小野寺二等兵は一緒にトランプでゲームをしている新海上等兵に質問した。

 

「そういえば上等兵、なんで軍に入隊したんですか?」

 

「そんなこと聞いてどうする?」

 

「ただ仲間のことが知りたくて。」

 

すると上等兵は少し間をおいて語った。

 

「俺の家は貧しい家だった。母は早くに死に、父はパートの仕事を転々として金を稼いでいたがそれでも俺とひとつ年下の弟の学費は払えずにな。俺は高校の奨学金を狙ったんだが、あいにく奨学金はどれも女性優先でな。でも弟だけは高校に行かせたくて中学卒業して入隊したんだ。できれば空軍の『臨時航空搭乗員課程』の方に行きたがったが試験で落ちてここに。」

 

それを聞いていた隣の長井一等兵は聞いた。

 

「弟さんは高校に?」

 

「ああ、公立高校の高一で学年トップだってさ。教師からは有名大学も夢ではないだと。」

 

「すごいですね、弟さん。」

 

「本当だよ、だが大学に行くには大量の学費が必要でな。ここで稼がないとな。」

 

すると天幕に荒瀬分隊長が入って来た。

分隊長は天幕の真中まで歩くと皆に注目するように言った。

 

「現在韓国軍は大邸市周辺に部隊を集結して防衛に当たろうとしている。司令部は明日総攻撃を掛けることを決定した。我が分隊はヘリで大邸国際空港に殴り込みを掛ける、午前三時に作戦開始だ。今の内に寝ておけ。」

 

午前三時、夜が明ける前に俺達は装備を纏めると駐機場に待機していた十機のUH-1J汎用ヘリの内二機に第六小銃分隊は二班に分かれて搭乗した。

十機の汎用ヘリは先に離陸したAH-64D『アパッチ・ロングボウ』と共に編隊を組んだ。

その光景は半世紀も前のベトナム戦争を題材とした戦争映画を彷彿とさせ、頭の中ではワーグナーの『ワルキューレの騎行』が流れた。

俺達はこれから敵の真っ只中に降下するのであった。

【後書き】

 

今回投稿した『少年達の挽歌』は本編のIS二次小説『学園の守護者』のサブストーリーです。

勉強の為に投稿する間隔が空くと思いますが、書かないと勉強に集中できなくなるので少しずつ書いていきます。

休日に見た『地獄の黙示録』『プライベート・ライアン』『プラトーン』『フルメタルジャケット』を手本として書いていき、狂気に満ちた戦場で少年たちの心が蝕まれていくところを書きたいと思います。

本編を投稿できない間、これで我慢して下さい。

しかし、二次小説でここまでサブストーリーを書く人も俺ぐらいかもしれない(笑)


 
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