episode105 バインドとは何か…
そうして三日が経ったある日の事―――――
「全員集まったな」
と、千冬は集まったメンバーを見回す。
集まったメンバーと言うのが専用機持ちで、会議室に集められていた。
しかし今回は前回離脱していた楯無とエリーナも含めてのメンバーとなっている。
シャーリーはまだ怪我の療養の他ISの改良に手間取っているようでまだIS学園に帰ってきてない。
(そういや・・・)
その中にいた隼人は横目で一夏と箒を見る。
どうも昨日から二人の様子がおかしい。一昨日前より親しい感じになっていた。
(一昨日は結局最後まで見れなかったから、どうなったかは分からん)
「うーん」と内心で唸る。
(何があった?まさか一夏に限って箒の好意に気づいたって訳じゃあるまいし、箒だって告白が成功したわけでもないだろうし)
色々と頭の中で考えが過ぎる。
「新年早々悪いな」
「別に構いませんよ。それで、今回は一体なんですか?」
「今回集まってもらったのは、近々東京湾に接する国際センターで開催される世界サミットの防衛任務だ」
「世界サミット?」
一夏は首を傾げる。
「世界中のお偉いさんが話し合う会議さ。食糧問題、経済問題、内紛、そしてIS問題などを話し合うのさ」
「へぇ」
「しかし、サミットの開催は三月の頭なのでは?」
と、ラウラが聞く。
「本来であればそうなるはずだった。だが最近になってお前たちが戦ったアンノウン・・・バインドの出現頻度が高くなっている」
「バインドが?」
「あぁ。今までは殆ど現れなかったが、ここ最近になって世界各地で出現して、時には施設の襲撃を行っている」
「バインドの襲撃って」
「幸い死傷者は出てないが、いつ出てもおかしくは無い状態だ」
「やから、予定より大幅に早めての開催、ちゅう言うわけですね」
「そうだ。それに加えて亡国機業の襲撃もありうる」
「なるほど」
「世界のお偉いさんが集まるとなれば、可能性は否定できないわね」
「特に今回のサミットは重要視されている。なぜだか分かるか」
「えぇと、何でだ?」
一夏は隼人に聞く。
「お前なぁ、決まっているだろ。俺達の処遇だ」
「あ、そうか」
「全く」
「話を戻すぞ。今回のサミットの中でお前たちの今後の処遇についても話し合われる。何せ世界でもお前たちだけしかISを動かす男はいないからな」
「それはそうですが・・・」
「と、言う事はIS委員会も参加するのですか」
「そうだ。今回は異例の参加となる。二人をどこの所属とさせるか、どういう扱いにするか、話し合いの内容はそんなところだろう」
「・・・・」
「ちなみに織斑戦術教官はIS学園の所属となっているから、対象は二人だけとなる」
「そうなんですか」
「今回のサミットでは世界中より国家代表と代表候補生が集められての防衛だ」
「つまりISによる防衛戦ですか。こりゃ豪華な事で」
「それほど重要視している、ということですね」
「そういうことだ。それに加えて今回はかなり強力な助っ人が来るようだ」
「強力な助っ人?」
「・・・銀の福音だ」
「えぇっ!?」
鈴が驚く。
「銀の福音!?」
「しかし、あんな暴走事故があった後だと、そう簡単に出せるわけではないのでは?」
「確かにそうだ。福音はあの後厳重な凍結封印が言い渡された。暴走した軍用ISとなればよっぽどな事がなければ凍結封印は解除されない」
「と、言う事は」
「今の状況だ。強力な戦力を野放しにしておくわけにはいかないのだろう。厳密な検査と改修をして再配備となった」
「なるほど」
「でも、何か変な感じね」
「かつて戦った強力な敵が味方か」
「確かにそうだね」
「昨日の敵は今日の友・・・ちゅうわけやな」
「それで、IS学園の専用機持ちにも防衛に参加となりますか」
「そうだ。各代表候補生はそれぞれの国の部隊と共同して防衛に当たる。神風兄妹、織斑、篠ノ之、ハルトマンは代表候補生ではないが、所属している国である日本側と共同して当たってもらう」
「分かりました」
(姉さんと共同か・・・)
隼人は内心で呟く。
「私と山田先生、織斑戦術教官も防衛線に参加する」
「頼もしい限りですね。しかし織斑先生は普通にISを纏って参加して良いのですか?」
「既にIS委員会に一時復帰の申請をして承諾された。問題は無い」
「そうですか」
「準備がいい事で」
「更識、ハルトマン。お前たち二人にとって復帰してすぐの実戦になるかもしれんが、周囲がサポートする」
「分かりました」
「出来る限りの事はしましょう」
「では、サミットの開始は明後日だ。その日まで各員は準備をしておけ」
「はい!」と専用機持ち全員が返事をした。
その頃
「新年早々サミットか」
「そうだね」
と、モニターに表示されるデータを束とアーロンが見ていた。
「無駄に話し合って、何が楽しいんだろうね。話し合いで解決するなら苦労はしないって言うのに」
「そうだな。だが、そういう連中だ」
「・・・・」
「ねぇアーロン」
「なんだ?」
「アーロンって、バインドをどんな存在だと思う?」
「そうだな・・・」
「人間の欲望の塊?闇の塊かな?」
「どっちもだろうな。現にバインドはそれから生み出されたとされている」
「そっか。まぁ、そうだよね」
「何がだ?」
「だって、今の世界って、そんなものだよね」
「・・・・」
「私がISを開発した事で世界中が私を求めた。私利私欲のためにね」
「確かに・・・」
「ISが女性にしか動かせないというだけで女尊男卑の世の中になって、世界中から私に非難を浴びせた。私だってそうなるように作ったわけじゃないのにね」
「・・・・」
「そしてISは私の理想とする本来の姿をかけ離れて、兵器へと転用された」
「・・・・」
「抑止力が核兵器からISに変わって、更に世界は変わって行った。酷い方向にね」
その表情はどこか哀しいものであった。
「そうだな・・・確かに・・・」
「何時からだろうね。人間が道を踏み外したのって」
「・・・・」
「戦争の科学を得た時から?世界大戦が起きたときから?白騎士事件が起きてから?」
「どうだろうな。戦争が科学の発展を促したのは事実だ。どこから間違えたのは、分からんさ」
「そうだよね」
「・・・・」
「私が思うには、やっぱりバインドってそんな人間が持つ欲望や闇が具現化したものって思うんだ」
「・・・・」
「現に、バインドが襲撃しているのは、軍事関係の施設。もしくはパワーポイントと呼ばれる場所だよね」
「あぁ。軍事関係の施設を襲い出したのは最近だ。なぜ今になって襲撃をしているのかは分からんがな」
「そっか。本当にバインドって何だろうね」
「さぁな。ただ言える事は、人類の敵だってことだな」
「だね」
「恐らく今度のサミット・・・何が起こるか分からん。亡国機業だって恐らく黙っている訳じゃなかろう」
「・・・・」
「俺も近くに潜んで様子を窺う。バインドが現れた場合は共同戦線を張るつもりだ」
「でも、崩壊したといってもアーロンは海賊。戦闘が終わった後絶対周囲のやつらは捕まえようとするよね」
「・・・・」
「そうなって捕まるの、私は嫌だよ」
「束・・・」
「仮に捕まっても、私がすぐに助けに入るけどね」
「頼もしいな」
「だから、捕まらないように出撃前にダークハウンドにちょっとした工夫を施すよ」
「工夫?」
「うん」
「そういうことか」
アーロンは束の意図を悟る。
「もちろん二人のISにも工夫を施すからね。って、言っても前の機体に施すけどね」
「いいさ。旧式でも強化をしているんだろ」
「うん」
「なら、任せるぞ」
「お任せあれ♪」
と、束は笑顔で答えた。
「―――――うん。分かったよ。僕も現場に向かうよ」
と、焚き火を起こして暖を取っていたティアはアーロンより依頼を受ける。
『今回は世界各国より代表と候補生が来る。無論IS学園より専用機持ちが防衛線に参加する』
「・・・・」
『戦闘になった場合は、正体を悟られないように行動しろ』
「分かっているよ」
そうして通信を切る。
(・・・いつまでこうしているんだろう)
両手を焚き火にかざして暖める。
(一刻も早く・・・すべてを終わらせないといけないのに・・・)
内心でそう呟いた。
(いつ・・・僕の真意を・・・隼人に伝えようかな)
焚き火を見ながら隼人の顔を思い浮かべる。
(・・・エリーナ。君にも・・・どう伝えるべきかな)
次に友達の顔を思い浮かべる。
「・・・・」
「はぁ」とため息をゆっくりと付いた。
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!