「おい、お前。ニキビできてるぞ?」
通学路の林を通ってる時、そんなことを平気で言う彼は、私の友人だ。
正直、そんなこと言われるとさすがに私も不愉快を感じざるを得ない。今日、いきなりできてしまってすごく気にしているところなのだ。
「おいおい、なんだよ。その顔」
「べっつに~」
こんなこと言う奴のことなんて相手してられるか。私は彼から顔をそむけ、そのまま無視を決め込んだ。
「おいおい、なに怒ってるんだよ。なにが悪いってんだよ」
「……」
まったく、この男は……。私の気持ちも分からないでそんなことを言う。本当に空気の読めない人。
「ったく……」
さすがに彼も観念したようなのか、しばらく私たちの間には会話などなかった。ただ、私たちが地面を踏む音だけが響いている。
そうして、林から抜け出す直前、またあの男は口を開いた。
「あのさ……そのニキビ……」
またこの話題か。本当に懲りない男だ。
「そこにできるニキビってよ、確か思われニキビなんだろ?」
ああ、そう言えばあまり意識していなかったが、思われニキビとか呼ばれる場所だった。
「それがどうしたの? そんな迷信、信じてるの?」
「いんや、今まで信じてなかった。でも今日お前と会って信じるようになった」
「はぁ……? あんた何を言って――」
その瞬間、彼の言わんとすることが何となくわかった。思わず私は顔が熱くなってきた。彼も同じように熱いのだろうが、林の木の葉を通した光で彼の顔は緑に染まっている。そして、彼は微笑んでいた。
「おうよ、そういうことだ」
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お題:緑の微笑み 必須要素:ニキビ
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