がんがんと、殴打された様な頭の痛みで覚醒する
どうやら気絶していたようだ
痛みを振り払うように、頭を振りながら身体を起こす
そして現状を確認しようとして、自分が今まで寝ていた部屋の様子を見渡す
そこはいかにも、お姫様の部屋。と言った雰囲気だった
年代物の家具と、大きい鏡台。クローゼットにはドレスがズラリと並んでいる
自分が寝ていた寝台も、お約束と言わんばかりに天蓋付きの豪華なものだ
自分がこのような部屋に寝ていたのかを疑問に感じ、気絶する前のことを思い出そうとする
そして、一瞬の思考の後に愕然とする
何故なら、自身の記憶が―
「起きたかの!?もうこの二日間罪悪感が半端じゃなかったのじゃ!!早速謝らせてッ!?」
バタンッ!と扉を開ける音で思考が中断される
部屋に入ってきたのは、声から判断すると女の子だろう。それもかなり幼い
その子はドアを開け、直後にダッシュで来た為に躓いて、鼻を打ってしまった
流石に無視できるほど冷血漢でもないので、近づいて手を取り彼女を立たせてやる
近づいたときに彼女の姿を良く見てみる
褐色の肌に、豊かに伸ばした金色の髪
そして何よりも目を引いたのが、その幼女の頭から生えている一対の角だった
「君は、一体…?」
人にある筈の無い異形を目にしてしまい、思わず声が出る
「それは、此方が尋ねたい事なのでありますが」
言葉を発した瞬間に、
「しかし姫殿下のお命を救ってくださった事を踏まえて、此方から名乗るであります。私は『ヴィルヘルミナ』と申します」
ヴィルヘルミナ。と名乗った女性は漸く姿を見せた
服装は聞けば直ぐにそれと分かるような、ロングスカートのメイド服
そして桃色の髪にヘッドドレスを付けた彼女は、まるで一枚の絵画のように整っていた
暫し見惚れていると、ヴィルヘルミナさんは視線を僕から移して、いまだ涙目でいる幼女の方を見て驚愕の事実を告げた
「そしてこの方は、ヘラス帝国第3皇女。テオドラ・バシレイア・ヘラス・デ・ヴェスぺリスジミア様であります」
…皇女?この涙目で自分を見上げている、威厳も何も無い、強いて言えば可愛さしかないこの娘が?
ヘラス帝国という国は聞いた事も無いが…
しかしこの部屋がこの娘…テオドラちゃんの物だとして、なぜ自分が此処にいたのか?なぜ気絶したのか?
その疑問を告げると、ヴィルヘルミナさんは少し驚いたような表情で答える
「覚えていないのでありますか?…まあ仕方ないであります。まずは事情を説明するでありますよ」
そしてヴィルヘルミナさんが説明した事は、到底真実とは思えないような世迷言の様だった
僕が魔法を使ってオークを倒した?
オークという空想上の生物が実在している事は、この際信じても良いだろう
角が生えた幼女、という存在がいるのだ
オークが実在していても何らおかしくは無い
しかし自分が魔法を使った。という事は信じられない
自身にそんな不可思議な力が宿っているとは思えない
「しかし現実にテオドラ様は貴方が魔法を使い、オークを殲滅するさまを目撃しているであります。テオドラ様が信じられないと?」
「さっき会ったばかりの人を信じられると思っているんですか?」
僕とヴィルヘルミナさんが睨み合い、部屋に陰惨な雰囲気が立ち込める
その雰囲気に耐えられなくなったのか、テオドラちゃんが僕とヴィルヘルミナさんワタワタとしながらも仲裁する
「ま、まあまあ!とりあえず、その事実確認は後で良いではないか!それよりも妾は恩人の名前を知りたいのじゃ!!教えてくれんかの?」
その必死に訴えかける姿に毒気を抜かれて、双方共に矛を収める
だがテオドラに投げかけられた疑問は、答えられなかった
数十秒経っても返答をしない俺を見咎めてか、またもヴィルヘルミナさんが俺を睨みつける
「なぜ答えないのでありますか?まさか名前が無いと言うわけではないでありましょう?」
「名前が無い訳じゃないんだろうけどね…」
歯切れの悪い返答を聞いて、さらに顔を顰める
次の言葉を聞いて、呆気にとられる事になるのだが
「―――記憶が無いんだ。名前も、故郷も。自分に関することは全部思い出せない」
っと言うわけで、前回出てきた幼女はテオドラでした!
まあ、大多数の読者様が予想していたかと思いますが…
そしてハヤテが記憶喪失と相成りました
このまま何事も無く順調に行ったら物語としてどうなんだろう?と思いまして、ハヤテには少し苦労してもらいます
ちなみに記憶喪失の理由は、直撃の
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第十七話です。無理やりな部分があるので、許容できない方はブラウザバックを推奨します