蓮華「まさか、小蓮と一刀があんなに仲睦まじいなんて・・・」
昨日の小蓮とのやり取りを思い出し何やら怒りが込み上げてくる。
蓮華「だいたい一刀も一刀だ。なぜ小蓮なのだ。こんなに近くにもっと成熟した大人のだな・・・」
自分で言っていて恥ずかしくなり途中から言葉が詰まり顔が真っ赤になる。
蓮華「とっとにかく、この事は一刀とじっくり話をしないと」
祭「さっきから何をぶつぶつ言っているのだ?」
蓮華「さっ祭!?どっどうしてここに」
祭「どうして、とは・・・ここは城の廊下。歩いていて何らおかしい所などないと思うのじゃが」
――――――――――――――――――――
蓮華「・・・・・えーっこほん!・・・で、祭。なにか用か?」
祭「急に居住まいを正してもどうかと思うのじゃが、まぁよい。別に用というほどの事でもないのじゃが・・・何やら想い人を妹に取られた様な顔をしておるぞ蓮華様」
蓮華「な―――――――!!!」
その的を得た指摘に思わず絶叫する。
祭「何じゃ、図星か」
蓮華「ななななななな何を根拠にそのような事を!」
もはや、その挙動不審さが全てを物語っているのだが、当の本人はそれどころではないほど動揺しまくっていた。
祭「はっはっはっ。実を言えば、昨日たまたま部屋の前を通った時に二人のやり取りが聞こえてきただけなのじゃがな」
蓮華「ぬぬぬぬぬぬぬ」
自分がからかわれている事に気づき不機嫌さをあらわにする。しかし、そんな蓮華の様子などには気にも留めず、話を続ける祭。
祭「青春じゃな蓮華様。まぁ、あやつはモテるからのぅ。うかうかしてるとどんどん先を越されるぞ」
蓮華「おっ大きなお世話よ!」
豪快な笑い声と共にその場から立ち去る祭だったが、ふと立ち止まり振り返る。
祭「大きなお世話ついでじゃが、書庫にためになる本があるから読んで見るがいいぞ」
蓮華「もぅ!さっさと行きなさい!」
蓮華の怒りの言葉を背に豪快な笑い声とともに立ち去る祭だった。
蓮華「こっこれね」
司書からそれっぽい本の情報を聞き探し当てた本―――
―――乙女的恋愛術―――
蓮華「ま、まぁ読むだけよ、読むだけ。他意はないわ」
誰に対しての言い訳なのか、そんな事を呟きながら席につきピンクの花柄で彩られた本のページをめくる。
蓮華「えーと、何々・・・「恋愛成熟への第一歩!好きなあの人の体に優しく触れてみて♪触れ合いは人に親近感を持たせるの。これで彼との親密度も急上昇 !」・・・」
――――――――――――――――――――
蓮華「な―――――――!!!」
蓮華の叫び声がこだまする。
何事かと書庫にいる人達の視線が蓮華に集中するが当の本人はそれどころではない。
蓮華「ななななな何なのこれは!?ささささ触るだなんて・・・これが第一歩目なの・・・この後は、いったいどんな展開に・・・」
ゴクリと生唾を飲み込み、震える指先で次のページをめくる。
蓮華「「自然に彼の体に触れられるようになったら、次は思い切って彼の手をギュッと握っちゃえ♪そうすれば、二人の絆はより確かなものになるの♪」・・・」
――――――――――――――――――――
蓮華「――――――――!!!」
もはや声にならない声を上げる蓮華。
蓮華「ななななななな何てははははは破廉恥な!!!」
内容的にはたいした事はないが、そういう事に初心な蓮華にとってはかなり刺激的だった。
そんな蓮華の元にゆっさゆっさと近づく人物がいた。
穏「あの~、蓮華様ぁ?」
蓮華「へっ・・・あ―――!のののの穏!?」
振り返る蓮華の目の前には大きな胸・・・見上げて見ればそこには困った顔の穏がいた。
穏「あの~蓮華様ぁ、書庫は静かに・・・ですよ」
口元に指を当て、静かにを示す穏。
蓮華「あっ・・・」
ようやく、人々の視線の全てが自分に集中している事に気づいた蓮華は、恥ずかしさに身をすくめる。
穏「ふふふ、分かっていただければいいんですよぅ・・・あらぁ?」
穏の視線が蓮華の手元に移る。
蓮華「あっ!」
その視線に気づき慌てて、本を体で隠すが時すでに遅し。
穏「あらあらまぁまぁ、そういうことですかぁ」
蓮華「ちっ違うの!こっこれは!・・・」
穏「ちょ~っと待っててくださいね。今、もっといい本を持ってきますからぁ♪」
蓮華「ちょ、ちょっと穏!・・・」
こちらの言葉などまったく聞こえてない様で、ぶきっちょなスキップと共に書棚へと消えていく。
この場を離れるわけにもいかず、待つこと数分―――
穏「これですぅ♪」
うれしそうに抱えて持ってきた本を蓮華の前へと置く。
―――乙女的恋愛術・極―――
蓮華「あ、ありがとう」
うれしそうな穏とその好意をむげにもできず、本のページをめくる。
蓮華「えっーと、「朝は、大好きな彼を優しく起こすの♪彼の布団にこっそり忍び込んで、その・・・をやさしく口で・・・」・・・」
――――――――――――――――――――
蓮華「な――――――――――!!!!!」
これまでにない、蓮華の叫び声を響き渡る。
穏「蓮華様ぁ、書庫では静かにしてくださぁ~い」
蓮華「なっなななな何?・・・こっこれ・・・」
卒倒しそうになるのをこらえながら、何とか言葉を搾り出す。
穏「はいぃ~、今、街で大流行の本なんですよぅ」
蓮華「は?・・・ままままま街で、この様な破廉恥な本が流行っているの!?」
まさかの事実に驚愕の蓮華であったが、この本を持ってきた当の穏に至っては
穏「そうですよぅ、なかなか面白い内容でしたぁ」
と、楽しげな感じである。
蓮華「なっ何て事なの・・・私の知らない間に街がそのような事態に陥っていようとは・・・」
おおおっと頭を抱える蓮華。
穏「ですけどぉ、この本よりも一刀さんから教えてもらう方がたくさん勉強になりますぅ」
蓮華「っ!!一刀!?・・・なんで、ここで一刀の名前が出て来るの!?」
一刀の名前に反応し現実へと帰ってくる蓮華。
蓮華「一刀に教えてもらうって・・・どういう事なの!穏!!」
穏「んふ♪」
蓮華「あ・・・」
穏のその笑顔が全てを物語っていた。そのうれしそうな笑顔を直視できず俯いてしまう。
穏「私だけじゃありませんよ、他にもぉ・・・」
蓮華「やめて!!!」
―――それは自分でも分かるくらい悲痛な叫びだった・・・君主たる私が今はただの女として目の前の穏を含め一刀に愛された女性に対し醜く嫉妬していた―――
蓮華「あ・・・」
―――そんな私の手に不意に穏の手が重なった―――
穏「ですからぁ、蓮華様もその想いが早く一刀さんに届くようにがんばりましょう」
―――私は臣にも友にも恵まれている・・・こんなに温かな皆に囲まれているから私は王としてやっていけるのだ―――
蓮華「これではどちらが王かわからないな、ふふふ」
穏「ふふふ、そうですよぅ、だからぁ、しっかりお勉強しましょう、」
互いに顔を見合わせ笑った。蓮華の顔に先程の愁いはなかった。
穏「ほらほらぁ、これなんてどうですぅ?」
蓮華「ん?これか・・・」
――――――――――――――――――――
蓮華「な――――――――――!!!」
穏「ですからぁ、書庫では静かにしないとダメですよぅ」
しばらくの間、蓮華の叫びが城内に響き渡るのだった・・・
一刀「いててて・・・祭さんもこっちのレベルを考えて相手してくれればいいのに容赦ないんだもんなぁ・・・いてて」
祭に武芸の手ほどきを受け、ぼろぼろになった一刀が中庭で寝そべり体を休めていた。
一刀「それにしても、さっきからニワトリの首を絞めたような声が何度も聞こえてくるんだけど何なんだ?」
不思議そうに首をかしげる一刀の目にゆらりと揺れる人影が映った。
一刀「ん?・・・あれは・・・」
よく目を凝らして見てみると、それはよく知る人物だった。
一刀「蓮華」
人影の正体が蓮華であると気づき、寝ていた体をよろよろと起こし駆け寄る。
一刀「やぁ、蓮・・・ふぁ!?」
近づいて見た蓮華のやつれた表情に思わず声が裏返る。
一刀「どっどうしたんだ?蓮華」
蓮華「一刀・・・・・」
一刀「どうした、蓮華。何があったんだ」
蓮華「一刀・・・私には無理・・・」
一刀「・・・・・は?」
一瞬、一刀と蓮華の間に風が通り過ぎる―――
一刀「えっと・・・何が?」
蓮華「――――――!!!・・・そっそんなの、恥ずかしくて言えるわけないじゃない!」
顔を真っ赤にした蓮華が慌てふためく。
一刀「いや、言ってくれないと分かんないんだけど・・・って、そんな事よりそんなにやつれてるんだから、早く休まないと!・・・ほらっ」
蓮華「あっ・・・」
一刀が蓮華の手を引き歩き出す。
蓮華「かっ一刀」
一刀「まったく、蓮華はすぐ一人で無理するんだから」
蓮華「・・・」
優しくそれでいて力強く握られている自らの手に目を置き、ギュッと握り返す。
蓮華「・・・これが私の第一歩・・・」
―――何だか全然本とは違うけど、ここから始まる気がした―――
一刀「んっ?何か言った?」
蓮華「いいえ、何も」
そう言って蓮華は楽しそうに微笑んだ―――
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呉軍、蓮華の話です。蓮華の恋愛勉強奮闘記(?)です。蓮華の性格が破綻しているかもしれませんが、ご了承ください。
漫画用に考えた話を小説にしたので、かなり微妙ですが、読んでいたたげれば、幸いです。