No.531672

チートでチートな三国志・そして恋姫†無双

第3章 北郷たちの旅 新たなる仲間を求めて

今年もよろしくお願いします。

2013-01-14 15:17:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2103   閲覧ユーザー数:1848

第25話 望郷の念にかられて ~北郷、目覚める~

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず部屋でゆっくり休もうか。節約のために二人部屋だけど、勘弁してくれよ。」

 

「いえ、充分です。後で、どう動くかの相談をしましょう。」

 

「ではご主人様、また後で。」

 

福莱と愛紗はそう言って自分たちの部屋へ向かった。

 

「さて……。ここならゆっくり休めそうだな。? どうした甄?」

 

珍しく、女媧が何も言わずにいる。どうかしたのだろうか。

 

「そろそろ、”コレ”の中身をきちんと確認したらどうか……と思ってな。結局、愛紗にペンとノートを見せただけだろう?」

 

女媧はそう言ってカバンを指さした。といっても……。

 

「他には教科書、ノート、と電池の切れた携帯くらいしか……。いや、他にもあるか。ちょっと貸してくれ。」

 

よく考えれば電卓とかもあったような……。とりあえず机の上に全部出してみるか。教科書、ノート、参考書、問題集、筆記用具、ポケットティッシュ、ハンカチ、電卓...アレ? 何だコレ? 内ポケットになんて何か入れたっけ?  あ、音楽プレーヤーと携帯の充電器がある。電卓はソーラーだからいいとして……。音楽プレーヤーと充電器の電池は無くなって……ない。まだある。

 

 

「な、なあ……。どうして電池が減っていないんだ?」

 

「夢の中で時が経とうとも、お前の世界のものは劣化したりしない。お前が老いないのと同じだ。」

 

「じゃ、じゃあこの携帯は?」

 

「巻き込まれる前に電池切れとなったのだろう。」

 

スマホの減りは早いからなあ……。早坂さんの真似をしてスマホにして、サブバッテリーまで買って……。俺ってバカだな。あの人になれるわけでもないのに……。

 

「充電、してみてもいいか?」

 

「好きにしろ。」

 

「電池はどうなるんだ?」

 

「使えば減るぞ。」

 

複雑だな……。

 

携帯があったところで何が出来るわけでもないんだけど……。なんか、この充電待ちの時間がもどかしいな。でも、音楽を聞くのは最後の楽しみに取っておこう。

 

 

ん? 携帯ってことは写真撮れるよな。

 

「なあ、愛紗たちの写真を携帯で撮ることってできるか?」

 

無理だろうけど……。

 

「できるぞ。」

 

「本当か!?」

 

「お前が元の世界に戻ったときには消えるがな。」

 

「……。」

 

それなら撮れても意味無いじゃないか……。そんなに上手くいくはずないか。さて、そろそろ使えるようになったかな。コード繋ぎっぱなしでも電源は入るし。

 

あれ? 未読メールが3通もあるぞ。

 

 

えーっと。早坂さん!? 不動先輩!? 羽深さん!?

 

 

 

……。どれからあけようか……。早坂さんのは添付ファイルまである。なんか怖いから最後にしよう。

 

 

とりあえず羽深さんのから見てみるか。

 

 

”インターハイ頑張ってくださいね”「兄はアレで先輩と不動先輩が挑戦に来るのを楽しみにしています。私は先輩が優勝するのを祈っていますし、必ず応援にいきますから!」

 

 

……。

 

 

不動先輩は……。

 

 

”打倒 怪物二世!” 「明日からもしっかり練習をするために、それがしもインターハイが終わるまで寮から通うことに致した。残り2週間、悔いの無いように鍛錬を積もうぞ。今日のお主との練習、それがしにも大変勉強になった。明日以降も、もしできる時間があるのならよろしく頼む。」

 

 

……。不動先輩……。

 

で、早坂さんからは……。

 

 

”Re:”「下らない課題のことを考える暇があったら、少しでも練習をして”高み”へいくことができるように頑張ってごらん。私や藤田の居る”究極の領域”に、お前や不動先輩ならば入る資格があるかもしれないのだからね。そんなわけで、鏡の資料を添付しておいた。県大会のような真似はもう止めてくれよ。」

 

 

……。女、女媧……。頭を撫でられたことに気づいた。いつのまにか、しがみついて泣いていたことにも。

 

「女媧……。ありがとう……。」

 

「構わぬ。」

 

「音楽……か。今、全てを聞いて未練をなくす。」

 

「そうか。」

 

 

……。また、いつのまにか女媧にしがみついて泣いていたことに気づいた。

 

 

「あ、ありがとう。」

 

「もう大丈夫か?」

 

「ああ。……。多分。」

 

「1年以上、この地に”異界人”として居るのだ。望郷の念にかられるのも無理はない。」

 

「そうか……。」

 

 

教科書、ノート、参考書……?

 

そういえばあのとき、早坂さんから”身分違いの恋を成就させる方法”を聞いたっけ。

 

学院でどうも気になる人が居て、でもその人は俺みたいな庶民じゃなくて”超”お嬢様。しかも、自分でもどうかと思うけど、”1人”じゃなくて”2人”居て……。”告白”したわけでもないけど、それでもふざけた話だよな……。それでも、”身分違いの恋を成就させる方法”は無いのか……と思って早坂さんに相談したんだった。ちょっとその話を思い返してみよう。

 

確か、俺が聞いて、それに

 

 

「……。お前は幕末、明治維新に出てくる人物が好きだよな? 大久保、西郷、木戸....彼らはもともと貧乏人、”下級武士”だって知っていたか? 上級武士への反発、ちょっと難しい言葉で言うと、”門閥への反発”がとても強いんだ。福沢諭吉はそこまで貧乏でもなかったけれど、”門閥制度は親の敵”なんて言葉まで残している。

 

それを見返す方法は何かないか……と考えた。答えは『学問』だ。『漢学方』と『蘭学方』に分かれてひたすら勉強したんだ。そんなときにとんでもない事件が起こった。」

 

「とんでもない事件?」

 

「ああ。日本がずっと真似をし続け、手本としてきた国――お前にとっての不動先輩みたいなものかな――である中国がアヘン戦争でボロ負けした。皆が思った。『次は日本だ!』ってね。それが原動力となって明治維新は成功したんだ。”ハングリー精神”とでもいうべきかな。まあ、このときは日本にとって幸運なできごとがあったのも大きいけどね。」

 

「幸運なできごと?」

 

「ああ。ペリーの親書を持ってきたのは13代、フィルモア大統領という人物だ。さて、15代大統領は誰かな? そして、その時に起こった出来事は?」

 

「リンカーン。……! 南北戦争ですか?」

 

「そう。そしてヨーロッパではクリミア戦争、普墺戦争、普仏戦争とあった。クリミア戦争はロシアvsトルコ・イギリス・フランス。普墺戦争はドイツvsオーストリア、普仏戦争はドイツvsフランスだ。ちょうど、明治維新と同じ頃なんだよ。だから日本に外圧は来なかったんだ。ついでに言うと、ドイツとイタリアもこの頃にできている。私と藤田がたまに話をしている”ビスマルク”や”カヴール”はこの時代の人物だよ。

 

……。ちょっと話がズレたね。私には財界の知り合いが沢山いるけど、技術者以外は相応の大学を出ている人しか居ないよ。どうせ、大学を卒業するまでは結婚なんてできないわけだし、”学問”で認めさせることだね。」

 

「ちょっと話を戻してもいいですか。」

 

「いいよ。」

 

「どうして中国は危機感を持たなかったんですか? 日本は直接叩かれたわけじゃないのにこれだけ危機感を持って対応しているのに、中国はのんきじゃないですか。」

 

「それはね……。○○思想というものがあるからだよ。今も歴然とある。ついでに言うと、だから中国人のナショナリズムは燃え上がりやすい。」

 

「○○思想?」

 

「ああ。~」

 

 

 

ここには無限の時間がある。余った時間は勉強と運動につぎ込もう。そのためには……。まずはより朝型の生活にすることから、かな。

 

 

そこまでを思い出してふと思った。俺に“軸”はあるのかと。彼らが考えていることを伝えるだけの存在であるなら。果たして俺であっていいのか、俺である意味はあるのか、という疑問が頭に浮かんできてしまった。ましてや俺の命令で桃香は軍を率いていまも戦っている。それに、これまでも、桃香が、愛紗が、鈴々が、星が、桔梗が、福莱が、朱里が、藍里が、兵たちが、命を懸けて戦っていた。俺は、その責任を背負い込んだ覚悟はあってこれまでいたのだろうか。”頼むよ”、”任せるよ”と言って戦場へ送り出していた。そこに“俺”の軸はあったのか、考えれば考えるほどわからなくなってきた。彼らのコピーであるなら、俺である必要はどこにあるのか、ということすら思い浮かんでしまった。

 

要は、俺が、自分自身の意志でやるんだと責任感を持って取り組んでいたのか、という話なのだろう。

 

 

 

……。

 

 

「どうした?」

 

「ちょっと愛紗と福莱を呼んでくる。」

 

「そうか。」

 

「ご主人様!? 目は赤いですし、顔色は悪いですけど大丈夫ですか!?」

 

「ああ……。ちょっと俺の部屋に来てくれないか?」

 

「わかりました。」

 

「唐突にどうしたというのですか?」

 

「ちょっと、冷静に話を聞いてくれるかな?」

 

「わかりました。」

 

 

そうして俺は愛紗と福莱に”軸と責任”の話をした。

 

 

 

 

 

乾いた音が響いた。

 

頬を張られた……ことに気づいた。


 
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