No.530959 IS x アギト 目覚める魂 31: 俺の変身i-pod男さん 2013-01-12 21:17:07 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2450 閲覧ユーザー数:2348 |
カン!カン!カカン!ドサッ!
「く・・・・」
「剣道のルールに縛られてちゃ勝てねえぞ?お前は人殺せる武器持ってるんだから、そう言う風に振る舞えよ。ISバトルとはその名の通り
剣道場にて。一夏は木刀を肩に担いでしゃがみ込み、倒れた箒を気怠そうな目で見つめる。正直に言ってしまえば、歯応えが全く無い。訓練機を使っていた頃の箒が、まだ強かった。一夏はそう確信していた。
「お前、何で弱くなってるか知ってるか?」
「何だと・・・?」
「ああ、そうだ。お前は弱い。少なくとも、紅椿を貰うまでお前は強かった。だが今のお前は、第四世代と言うハンデに胡座をかいて戦っているに過ぎない。お前が勝っているのは、実力ではなく、性能だけだ。」
箒はそれを聞いて逆上すると、再び木刀を拾って一夏に向かって行く。両手を使っている箒に対して、一夏は片手だけで彼女を相手取っていた。木刀は両手で持って素振りを何百回もやれば腕が疲れる。だが、一夏は一時間半休み無しで右手で木刀を自在に操っていた。それもそうだろう。変身前はフレイムセイバー、変身後はアイスフレアフォームで己の体重以上の重量を誇るバスターフレアを手足の如く縦横無尽に振れるのだから。そして遂に箒の握力も限界が来たのか、木刀を宙に打ち上げられた。一夏はそれを掴むと、刃を交差させた状態で首元に木刀二振りを突き付ける。
「なあ。一つ聞いて良いか?お前は何で強くなりたい?強くなって力を得て、何をしたい?」
「・・・・・それは・・・・・」
「言えないのか?それとも分からないのか?まあ、どちらにせよそれじゃ駄目だな。ハッキリとした目標が無いのならば力を求める等無意味だ。目標無き探求は無駄足なり、探求無き目標は無意味なり。何をしたいかも分からないまま突っ走っても疲れるだけだ。目標があってもそれに向かって努力しないなら、無意味で虚しいだけだ。足踏みしてるだけじゃどこにも進まないぞ。自分の心に聞け。何が自分に取って正しいか。それは直感と良心を頼るしか無い。」
木刀についた手垢を拭き取るとそれを戻した。
「じゃあな。今日はこれで終わりだ。課題は、さっきの質問の答えを見つける事。だが、答える為に人に答えを求めないこと。期限は無し。以上。」
スポーツドリンクを一気に飲み干し、タオルで汗を拭き取ると道場から姿を消した。
「全く・・・・あいつの相手は疲れるぜ。縋り過ぎだって—の。」
木刀を握っていた手を回してストレッチをする。流石に指等が疲れてしまうのだ。簪は現在専用機の組み立てで忙しい為今はいない。秋斗も現在SAULの方で用事を済ませている。
「・・・・・暇だな。(久々に誘うか。)」
寮長室の扉をノックする。ドアが開き、ジャージ姿の千冬が現れる。
「どうした?」
「暇になった。千冬姉と久々に買い物に行こうかと思ってるんだけど。いつもいつもスーツばっか着てるからさ、たまにはお洒落して欲しいなと思って。家事もある程度は出来る様になったみたいだし。」
「・・・・・・二十分待て。モノレールの駅で会おう。」
「分かった。(着ていく服を選ばなきゃな。)」
一夏は部屋に戻って着替えると簪に姉と出かける事をメールで一報すると、一人部屋となった為に使えるクローゼット二つを開けた。中には様々な服が入っており、一夏はその中から色々と引っ張り出した。
(どうしようか・・・・?ライダーファッションで行くか?いやいや、千冬姉の事だからある程度機能重視の服を着ていく筈だ、ジーパンにシャツと上着みたいな無難な物しか着ないし。あ、そうだ。うん、これだ。これで良い。)
一夏は衣類を幾つか選び出し、身に纏う。ヘルメットを脇に抱え、ISによって完全にカバーされていない片手にグローブを嵌めると、モノレールの駅に向かった。それからしばらくして千冬がやって来た。一夏の予想通り、七分袖のシャツの上に薄手のパーカー、そして黒っぽいジーパンにコンバースを履いている。薄くだが、化粧もしていた。昔は外勤が多かった為にフォーマルな服しか着込まなかった千冬とのギャップもあってか、一夏の顔が少しばかり緩んだ。
「待たせたな。」
「べつに良いよ。二人で買い物ってのも久し振りだし。色々あったからさ。」
モノレールの中で千冬は必死に何らかの話題を持ち出そうとするが、結局何も浮かばなかった。
(話題が見つからん・・・・・どうすれば良い・・・?あかつき号での事もある。私は殆ど外勤で家に帰って来る事も殆ど無い。しかもアギトの事を聞いてしまうと殊更に気まずくなるではないか!!)
そう、千冬は殆ど留守を一夏に任せていた為に口頭での直接的なコミュニケーションを碌にしておらず、どうすれば良いか分からないのだ。それにモンド・グロッソでの誘拐事件以来、一夏は対人恐怖症とまでは行かないが、人と接する事を避ける様になった。唯一の肉親である自分にさえも半ば程しか心を開かない。
「千冬姉。」
「どうした・・・?」
同様を悟られまいとモノレールからの景色に集中して受け答えする。
「一緒に買い物って言うのは本当だけど、呼び出したのは別の理由があるんだ。」
「別の理由・・・・・?何だ?」
「それは、もう少ししたら話す。大事な事だから、一対一じゃなきゃ話せない事なんだ。でもこの事は門牙さん以外には言わないで欲しい。それだけ約束して。」
「・・・・・・・分かった。良いだろう。(おおよその察しはつくが、まさかな。一夏である筈が無い。)」
駅の近くにある駐輪場の個人スペースに止めてあるバイクに鍵を差し込んだ。アクセルを捻るとエンジンが軽快な音を轟かせる。千冬にヘルメットを渡すと、自分もフルフェイスを被った。
「乗ってよ。俺、運転上手いから。」
千冬はタンデムシートに乗ると、一夏の腰回りに腕を回した。
(いつの間にかお前も大きくなっているのだな・・・・肩幅も、以前より断然広い。体も引き締まっている。)
一夏の背中に自然と体を預けた。何故か安心感が千冬を包み込んだ。バイクをスタートさせると、車道に出た。今回は乗っている人が人なので普段の何倍も気を使って安全運転を心がける。着いた先は小洒落たレディース専門のブティックだった。ショーウィンドーに小綺麗な衣服を纏ったマネキンが見える。
「こ、ここに入るのか・・・・?!」
千冬は全く予想だにしなかったこの場所に多少違和感を覚えた。自分が入る様な所ではないと直感的に感じ取ったのだろう。
「ほら、行こうぜ。」
一夏は千冬の手を取って中に入って行く。
「最初に見て千冬姉に似合うと思ってたのは、これ。」
一夏が指差したのは白と水色のワンピースだった。同じ布切れで作られたコサージュの様な物が左胸辺りに縫い付けられている。
「ふむ・・・・・」
一夏の服のセンスは中学時代から磨きがかかっている事は知っているが、やはり抵抗があるのか、表情が少し硬い。だが、弟の頼みなので断る訳にも行かず、試着した。
「ど、どうだ・・・?あまり、似合わんだろう?」
「寧ろ逆。やっぱり千冬姉は明るい色が映えるね。イイね、それ。よし、買おう。」
「何?!(待て待て、先程値札を確認したが一学生が易々と買い求められる額ではないぞ!)」
値札についた五桁の数字を既に見ている為千冬は驚いた。
「大丈夫だって。俺もテストパイロットみたいなモンだからさ。その分の給料はちゃんと振り込まれてるし、休みの間はバイトとかしてて殆ど使わなかったから。俺もそうだけど、千冬姉は俺以上に物欲無さ過ぎ。もう少し色々と気を使った方が良いよ。」
「余計なお世話だ!お前こそさっさと女の一人でも作ったらどうだ!」
「もういるって。」
噛み付く千冬に一夏は去り際にそう呟き、そのワンピースを丁寧に畳んで会計に進んだ。買い物を済ませた後は売店でコーヒーを飲み、公園のベンチで一息ついた。
「それで、話とは何だ?」
「アギトの事。千冬姉は、あいつを委員会に突き出そうとしたりはしないよね?」
「・・・・・私個人としては恩を仇で返す様な真似はしたくないと言うのが本音だ。しかし私も組織の歯車の一つでしかない。もしそうしろと言う命令が下れば・・・・」
「っ!!・・・・・・来る・・・・・」
「何?」
「千冬姉、避けろ!」
何らかの気配と敵意を感じ取ったのか、千冬はその場から飛び退いた。地面の中から金色の亀の様なアンノウンが現れた。トータスロード テストゥード・テレストリスだ。
「アンノウン!」
「やっぱりか・・・・千冬姉と俺どっちかを襲いに来るとは思っていたけど。こんなに早く来るとはね。流石アギト狩りには猟犬並みにしつこい。千冬姉、しっかり見てて。これが俺の、新しい力。俺のもう一つの姿。誰に何と言われようと俺は戦い続ける。俺には、その力があるから。変身!」
両腕を交差させ、広げた。腰のベルト、メタファクターが光り始める。その光に包まれながら、一夏はトータスロードに向かって歩いて行く。繰り出される拳を受け止め、握り潰し、痛みに跪かせる。そして顎に膝蹴りを叩き込み、一夏の姿が完全に変わった。
「一夏・・・・!!?そんな、まさかお前が・・・!?」
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御待たせしました。リアルの事情により遅れてしまいました。すいません。あー・・・・歴史のレポートなんて無くなれば良いのに。