No.529334

IS x アギト 目覚める魂 28: 接触!生徒会長

i-pod男さん

遅くなりました。そして今回は当主とコンタクト!

2013-01-08 08:59:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2466   閲覧ユーザー数:2362

福音の事件から数日が過ぎた。ようやく体が全快し、早速模擬戦やら組手を始める男子二人。そして千冬はそれを見ていた。

 

(・・・・似ている。一夏の最後に放ったあの捻りを入れた独特の拳。だが・・・あそこまで獣じみた動きはしていない。それに、門牙の蹴りを放つ前のあの構えも、どこか似ている・・・だが、考えてみれば警察で戦闘員と言う役回りをやっている以上、我流で磨いていると考えた方が良いのか・・・?)

 

防具無しの木刀を使ったスパーリングも達人同士の試合を見ているかの様だった。二人の動きは素早く、振り下ろす速度も全く殺さない。寸止めすらしない。だが、どちらもそれらを全てを受け、払い、反撃に転じようと隙を伺う。まるで何度もこれをやって来たかの様な立ち振る舞いは、どこか恐ろしい。剣道部員の何人かも震えを隠そうとしているのが見て取れた。それもそうだろう。いつどちらかの木刀が相手を捉えて傷害を起こすか気が気では無いのだ。更に、幾ら丈夫とは言え、言ってしまえば所詮は気で出来た棒切れだ。折れるのも時間の問題だろう。破片が誰かに当たってしまえばそれこそ冗談では済まない。

 

一旦離れると、木刀を地面に置いて二人は座り込んだ。

 

「よしと。飯行くぞ。」

 

「うーっす。」

 

二人は木刀を片付けると、そのまま出て行った。

 

「今回はどうする?」

 

「和食の日替わりランチで。今回は多目に食べとかなきゃ行けませんから。今日はもう授業無いんですよね?」

 

「ああ。無いぜ。俺はゆっくり昼寝をする。課題はもう済ませたからな。」

 

「流石、お早い事で。」

 

そんな軽口の応酬をやり合いながら道場を出て行く。立てかけられた木刀を見ると、既にひびが何本か入っており、持ち手は既に賭けてギシリと嫌な鈍い音を響かせた。どれ程の握力、どれ程の腕力でそれが振り下ろされ、ぶつかったか。それを知るには十分な証拠だった。

 

(凄い・・・・!一夏は、こんなにも強くなっているのか。私は・・・やはりまだ弱い。だが!私も負ける訳にも行かんのだ!)

 

二人の戦いを見て新たに決意を固める箒。

 

「ふーん・・・・・」

 

そしてそれを遠目から見ていたのは、口元の薄ら笑いを扇子で隠した生徒だった。二人が出て行くと同時に動き出し、後を尾け始める。

 

「随分と悪趣味な事だな、人を尾行するなんて。」

 

一夏は何も言わずにG4-Mild の一部を展開して銃を構えていた。安全装置も既に外されている。

 

「あら、残念。バレちゃった?」

 

尾行失敗と係れた扇子を持った女子が影の中から姿を現した。

 

「(感じる・・・・それに、あの髪の色。間違い無い。)簪のお姉さん、楯無さん、ですよね?」

 

それを聞いて、ぴくりとこめかみが一瞬引き攣るのを秋斗は見逃さなかった。

 

「知らないのも無理は無いか。一夏、行くぞ。」

 

「待って。何で貴方がそんな事を知ってるのかは分からないし、聞いても無駄だと思うけど・・・・簪ちゃんとどう言う関係なの?」

 

「本人に聞いた方が良いと思わないか?まあ、ヒントは、コレ。」

 

ネックレスを見せる。楯無はそれを見て記憶を必死でたどって行く。

 

(簪ちゃんは学園に行く前にこれを一生懸命作ってた・・・・つまり・・・・そう言う事に・・・?)

 

「お察しの通り。近い内にお姉さんにお目通りが叶うか思ってたけど、案外早かったです。それに、貴方も狙われてるんでしょう?『奴ら』に。」

 

「じゃあ、貴方も・・・?」

 

「そう。最近噂を聞いているでしょう?赤い目に黄金の角と体。人ならざる物を退けると言われる、都市伝説でも時折囁かれる仮面の怪人。」

 

「貴方達が、そうなの?」

 

「調べはついてるのに本人の言質を取りたいのか?流石は対暗部用暗部の若当主と言った所だな。俺に嘘をつこうとしても無駄だぞ。俺は全てを見聞き出来る。あまり俺達の周りをこそこそと嗅ぎ回らない事だ。痛い目を見るぞ。」

 

食堂に向かう間、簪は密かにこのやり取りを見ていた。そして別の道を取って食堂に行き、偶然を装って二人に近付いた。

 

「おお、簪。どうした?」

 

「食べ終わったらで良いから、一夏と話させてくれませんか?」

 

「今でも別に良いぞ?ま、人に聞かれたくないってんなら構わないが。」

 

「ありがとうございます。」

 

簪は一夏に目配せして口元を動かした。

 

『一夏の部屋で』

 

「じゃ、後でな。」

 

一夏は食べている間終始ネックレスを指で摘んで弄っていた。何か考え事があるその都度無意識の内にやってしまういつもの癖だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一夏は部屋に戻って部屋着に着替えると、お湯を沸かしてお茶の準備を始めた。入れ終わった所で扉が開く。簪だと言う事を本能的に感じる。

 

「それで、話って?」

 

「お姉ちゃんと、話したの?あの事。」

 

「話すしかなかったんだ。下手に隠そうとすれば余計に疑いが増すから。最悪俺を消そうとするだろう。最悪の事態を避ける為に取った行動だ。ごめん。所で、まだ仲直りしようとは思わないのか?自分の姉が苦手だなんて本人に言ったら泣くぞ?」

 

「だって・・・・」

 

「まあ、その話はまた別の機会にでも。さてと、実は俺も話があるんだ。言ったよな、福音との戦いを終わらせたら言いたい事があるって。回復に手間取ったから言う機会が中々無かったから待たせたけど。」

 

「うん・・・」

 

「俺は」

 

(コンコン)

 

一夏が口を開いた正にその瞬間、再びドアがノックされた。一瞬にしてシリアスなムードが台無しになってしまった。一夏はやれやれと天を仰ぎながら扉を開けた。

 

「箒・・・・今ちょっと立て込んでるんで少し待ってくれるか?」

 

チェーンロックをかけたまま扉を開く。

 

(箒の事だ、簪がここにいる事がバレたらまたある事無い事怒鳴って来るのが目に見えている。個々は上手い事追い返さなきゃならないな。)

 

「何故だ?」

 

「今ちょっと重要な話をしているんだ。これは俺にも関係している事だから今俺は手が離せない。だから後にしてくれ。それか、すぐに済むのなら外で承るが。」

 

「すぐに済む。だから、少しだけ時間をくれ。頼む。」

 

一夏は簪が箒の視界に入らない様に移動しながら扉を閉めた。

 

「で、何だ?」

 

「わ、私に稽古をつけてくれないか?」

 

「何で?セシリアや鈴、シャルロットやラウラもいるだろうが?」

 

「それは分かっている。だが、その、道場でのあの手合わせを見ていると改めて自分がどれ程弱いかを見せつけられている様で、歯痒いのだ。」

 

「自主練・・・・はもうしてるか。だが、相手をしているのは代表候補だぞ?それに、まだ完全に機体を使いこなせていないのに俺と試合をしたいとはな・・・・まあ、今はまだ無理だ。今はまだ、な。話はそれだけか?」

 

「あ、ああ・・・・」

 

一夏の底知れない虚ろな瞳に何故か怯えてしまい、逃げる様にその場を後にした。

 

「話の腰を折られてしまったが、仕切り直しだ。俺は簪の事が誰よりも好きだ。十年前から、一度も忘れた事は無かった。簪は、俺にとって大事な人だ。今まで何も言わなくて心配させて本当にごめん。分かってる筈、だなんて思ってるなんて、失礼だよな。言葉に出して伝えた方が、それが本当だと言う事が分かるのに。大好きだよ、簪。」

 

一夏は小さく息をついた。

 

「あー、もう、真顔で言えねえ・・・・・恥ずかし過ぎるわ・・・・」

 

隣に座っていた簪はポスンと一夏の胸板に寄りかかった。

 

「良かった・・・・」

 

緊張の糸が切れたのか、軽い寝息を立てていた。それ程までに心配だったのだろう。

 

「ごめんな。俺の所為でいらん心配かけて。」

 

簪の頭をゆっくりと撫でてやる。彼女の髪は指通りが良く、するりとまるで液体の様に指の隙間から零れた。十年前のあの頃のあどけなさはまだ少し残っているが、こうまで女らしくなった顔を見たのは初めてだった。学園で再開してから熟そう思った。

 

「俺が、守ってやらなきゃな。」

 

その頃、時を同じくして秋斗が足を運んだ先は生徒会室だった。ノックをすると、楯無が直々に応対する。

 

「話があるんだ。重要な、お前の命に関わる話が。」

 

「・・・・中で話しましょう。」

 


 
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