No.528302

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ二十三


 お待たせしました!

 拠点話第四弾という事で…。

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2013-01-05 23:30:33 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:5958   閲覧ユーザー数:4664

 

「全員揃ったな。それでは朝議を始める」

 

 朝食後、円卓の間に皆を集めて朝議を始める。

 

 ちなみに「円卓の間」とは玉座の代わりに用意した物で、俺自身あまり玉座

 

 に座るとかに抵抗があったので、こういう形を採用したのであった。

 

「ここで改めて朝議を行うっちゅう事は、何か重大事件でも発生したっちゅう

 

 事やな?」

 

 霞がそう聞いてきた通り、特に重大な事案が無い限り朝食後にそのまま食堂

 

 で朝議を行う事が多いのであった。しかし、改めて議題にかけなければなら

 

 ないような事件・事故が発生した場合に円卓の間に皆を集めて朝議にかけて

 

 いたのだ。

 

「ああ、実は陛下より各諸侯へ特別なお達しがあってね」

 

 俺のその言葉で皆に緊張が走る。それはお茶を配っていた侍女達も同じであ

 

 った。

 

 侍女長の梓美さんはその空気を察し、部下の侍女達をすぐに下がらせて一人

 

 で後片付けを始める。他の侍女の娘はこういう空気では緊張のあまり失敗を

 

 する事があるのだが、彼女はそういう事がまったく無い。さすがは侍女長と

 

 いった所だ。ちなみに彼女は輝里の知り合いで、輝里の推薦で侍女となり、

 

 すぐに侍女長にまでなっていたのであった。他の侍女達も、彼女には全幅の

 

 信頼を寄せており、彼女の登用は大成功だと皆思っている。

 

 

 

「それで、陛下は何と?」

 

 朱里も少し緊張した面持ちで聞いてくる。確かに陛下からの特別なお達しと

 

 くれば、誰でもそうなるけどね。

 

「皆も洛陽や周辺の都市で頻発する殺人事件については聞いていると思うが…」

 

「確か、以前官僚を務めて私腹を肥やしていたり、そういう者達と結託していた

 

 者達が次々に殺されているというものでしたね」

 

 凪が思い出すようにそう述べる。

 

「ああ、最初の内は世の乱れが正されると歓迎の流れもあったんだけど、最近に

 

 なっておかしな事になっているらしい」

 

「おかしな事ですか?」

 

「今までは標的の者のみが殺されていたのだけど、最近はその家族、特に赤ん坊

 

 まで殺されている事が多いそうだ。それに確かに昔は悪行に手を染めてはいた

 

 が、今では改心して皆の為に尽くしてくれているような者も標的にされていて

 

 ね。しかもその範囲は拡大の一途にあるようなんだ。だから陛下より各諸侯に

 

 警戒を怠る事の無きようにとのお達しが来たというわけだ」

 

 俺がそこまで話すと、場を静寂が包む。梓美さんが急いで後片付けをしている

 

 音だけが聞こえてくる。ちなみに梓美さんはこういう話を人に洩らす事も無く、

 

 他の侍女達の噂話も抑えてくれるので、あえて彼女には話を聞かせているよう

 

 にしていたのであった。

 

 しかし、次に燐里が発した一言で少し空気が変わる。

 

「それは間違い無く、噂に聞く『殺人蜂』の仕業に違いありません!!」

 

 

 

 ドンガラガッシャ~~ン!

 

 燐里のその言葉の直後、何かがひっくり返ったような音が聞こえたと思った

 

 ら、梓美さんが盛大に皿を落して割っていた。

 

「梓美さん、大丈夫でしゅか?」

 

 朱里が慌てて駆け寄る。

 

「大丈夫です。申し訳ありません…」

 

「いや、謝るような事はないけどね。でも珍しいな、梓美さんがそういう失敗

 

 をするなんて」

 

「本当に申し訳ありません!!」

 

 梓美さんは素早く割れた皿を片付けると、足早に部屋から出ていった。

 

「どうしたんや?梓美の奴、えらく慌ててたけど?」

 

 霞も彼女の態度に首をかしげていた。それは皆も同じ…おや?輝里の様子だ

 

 けが少し違うな。

 

「どうした、輝里?梓美さんの事が心配なのか?」

 

「い、いえ、何でもありません」

 

 輝里はそう言っていたが…何か怪しい。まあ、いいか。

 

「それで?燐里が言った『殺人蜂』って何?」

 

「私も噂で聞いただけなのですが、金さえ払えばどのような殺人の依頼もこな

 

 すという殺し屋の名前です。名前の由来は全ての標的を急所への一撃のみで

 

 仕留める事からついたと聞いています。今回の事件もほぼ全ての者が一撃で

 

 殺されている事から間違いは無いかと」

 

「確かにやり口は一緒ですしねー」

 

 風もそれに同意するような口ぶりを示す。

 

 

 

「という事は、その『殺人蜂』とかいうのに依頼した者がいるという事か」

 

「現時点ではその可能性が高いと言わざるを得ないでしょうね」

 

 朱里はそう言って、殺人蜂の動向を掴む為の策を皆と練り始めようとした。

 

 しかしその時、

 

「すみません、少し席を外しても構いませんか?すぐに戻りますので」

 

「何や、輝里。もしかして、う〇…」

 

「霞様、そういう事を言うものではありません!」

 

 霞が何だかデリカシーの無い事を言いかけて、凪に止められていた。

 

「まあ、すぐに戻るというなら構わないぞ」

 

 俺がそう言うと、輝里はそそくさと部屋を出て行った。

 

「輝里の奴、やっぱ我慢してたんちゃうか~?」

 

「霞様!!」

 

 霞と凪の漫才じみた会話が続いていたが、俺には輝里の態度が気になって

 

 いた。

 

「すまん、俺もちょっと席を外す。すぐに戻るし」

 

「何や一刀も、う〇…」

 

「霞様、いい加減にしてください!!」

 

 霞もなかなかそれにこだわるな…というか前に及川も似たような事言ってた

 

 な…、そういや大阪の人はすぐそういう事を言うような話を何処かで聞いた

 

 事があるけど、こっちでも関西弁の人はそういう風習があるのだろうか?

 

 とか、つまらない事を考えながら俺は部屋を後にした。

 

 

 

 俺が部屋を出て間も無く、廊下の隅の方から話し声が聞こえた。俺はそっと

 

 近付き耳をすます。

 

「ねえ、梓美。本当にあなたがやったわけではないのね?」

 

「しつこいぞ、輝里。あたいがこの城にいたのはお前が一番知っているじゃね

 

 ぇか。幾ら何でもお前が寝ている間に行って帰ってはこれねぇよ」

 

 やはり輝里と梓美さんだったが…あれ?梓美さんってこんな声してたっけ?

 

「なら心当たりはある?そもそも『殺人蜂』ってあなた一人の呼称では無く、

 

 あなたが所属していた殺し屋組織の名称だったよね?その時の仲間で今も生き

 

 ている人達の名前とか…」

 

「組織としての『殺人蜂』が壊滅したのはもう六年以上前だ。その頃いた奴らの

 

 所在なんざ、知りようもねぇよ。そもそもあたい以外の面子でああいう技術の

 

 持ち主はいなかった。他の奴らは普通に剣とか槍とかで仕留めるか毒を用いる

 

 かだったしな」

 

 衝撃の事実だった…まさか梓美さんが元殺し屋だったとは。しかも、今話に出

 

 ていた『殺人蜂』が彼女の事だったとは。どうやら輝里はそれを知っていたよ

 

 うだな。

 

 ならば、先程の梓美さんの狼狽っぷりと輝里の態度のおかしさには納得がいく。

 

「そうか…なら仕方無いわね。ごめんなさい、何かしらの手がかりでも掴めればと

 

 思ったんだけどね」

 

「こっちこそすまねぇな、役に立てなくて。その代わりと言っちゃ何だが、昔の知り

 

 合いに声はかけておく。さすがに赤ん坊殺しまでは見過ごせねぇしな」

 

「あら?『殺人蜂』は金さえ積めば赤子でも殺すって専らの評判だったけど?」

 

「ああ、確かにな。但し、赤ん坊を殺す場合は国が百年経営出来る位の金が必要だ。

 

 しかも全額前払いでな」

 

 なるほど、どうやら梓美さんはいい人ではあるようだ。

 

「さて、話がまとまった所で…そこにいる奴、動くなよ。もし逃げるっていうなら、

 

 どうなるか分かってるんだろうな?」

 

 

 

 げっ、バレてた…仕方無い、ここはおとなしく出るとしよう。

 

「ごめん、盗み聞きするつもりは無かったんだけどね」

 

 俺がそう言って出て行くと、二人の顔色が見るからに変わっていく。

 

「げっ、北郷様…まずい」

 

「一刀さん!?何故あなたがここに…」

 

「輝里の様子があまりにもおかしかったのでね…口には出してなかったけど、朱里も

 

 気にしてた様子だった」

 

「うっ…それは」

 

 輝里はそう言われてバツの悪そうな顔をする。

 

「大丈夫、今の話の内容から輝里は梓美さんが本当にやっていたんじゃないかと気に

 

 なっただけのようだしね。梓美さん、改めて聞くけどあなたではないんですね?」

 

「ああ、それは間違い無い。さっきの話に出てた時刻は、あたいは輝里と一緒にいた

 

 からな」

 

「ありがとう、それを聞けて安心した。でも、その口調が地なのかい?」

 

「…そうだよ、いつものは侍女らしく猫かぶってみただけさ。幾ら何でも侍女がこんな

 

 口調じゃおかしいと思うだろ?」

 

「それはそれで可愛いとは思うけどね」

 

 俺がそう言った瞬間、梓美さんの顔が赤くなる。

 

「そ、そうか?でもやっぱり侍女としてはな…」

 

 何だかしどももどろになったので助けを求めて輝里に視線を向けたが、何故だか彼女

 

 の顔はまたしても不機嫌そうになっていた…俺、何かしたかな?(←自覚無し)

 

「まあ、それはそうと、これからどうするんだ?このまま放っておいたら梓美さんの身

 

 にも良くない事がおきかねないだろう?」

 

「ああ、それならさっき輝里にも言ったけど、昔の知り合いにあたってみるつもりさ。

 

 何かしらの情報を持っている奴がいるはずだしな」

 

「そうか、ならよろしく頼みます。輝里、この件は任せる。何か分かったら教えてくれ。

 

 こっちはこっちでやってみる」

 

「分かりました」

 

 さて、これで何かしらの進展があればいいのだが。

 

 

 

 それから数日後、この日は結構仕事が残っていたので大分決裁に時間がかかっていた。

 

 そこへ近付いてくる足音が聞こえた。

 

「誰だ!?」

 

 俺は刀を引き寄せながら声をかける。

 

「あたいだ」

 

「梓美さんか、どうぞ」

 

 俺は梓美さんを部屋へ招き入れたが、

 

「どうしたんですか、その格好?」

 

 梓美さんは何時ものメイド服ではなく、黒の忍者服のような物を身にまとっていた。

 

「ああ、これは以前の仕事用の服さ。何でも高祖劉邦に仕えた名軍師張良が従えていた

 

 特殊部隊が身にまとっていた服装だとかいう話だ。あたいはその末裔なのさ」

 

 張良?まさか…でも、もしかして…。

 

「どうかしたのか?」

 

「い、いや、何でもない。それで?そんな格好してるって事は…」

 

「ああ、奴らの尻尾を掴んだ。あたいの、いや『殺人蜂』の名を騙った奴らの始末は

 

 この手でつけないと気が済まねぇからな。すぐ戻る」

 

 そう言って梓美さんは姿を消す。今のは忍術っぽいな、やはりその特殊部隊って…。

 

「と、今はそれを考えている場合じゃない。誰かある!」

 

 俺の声に近くにいた兵士が応える。

 

「はっ!」

 

「客間にお泊めしている周泰殿を呼んで来てくれ!」

 

 

 

 それから数刻後、梓美は情報のあった場所へ来ていた。

 

「あれか…確かにやばそうな連中がうじゃうじゃいやがる」

 

 そこには賊や傭兵のなれの果てのような者達が数百人近くたむろしていた。

 

 その中に数名、梓美と似たような服を着た者達がいた。

 

「あいつらか…あの服装、あたいと同じ特殊部隊の末裔って所か。だから似たような

 

 手口を使いやがったのか」

 

 梓美が潜んでいるとは知らない賊達は大声で話をしていた。

 

「がははは、ここまでうまくいったものだぜ!どうせ洛陽の連中は全部『殺人蜂』の

 

 せいにするだろうしな!!」

 

「ああ、俺らは知らん顔しておけば済む話だぜ、はっはっは!」

 

「次は何処にする?」

 

「荊州とかどうだ?あそこは随分と金回りがいいらしいからな、少し調べりゃ埃が出

 

 てきそうな奴らがいるんじゃねぇか?」

 

「そうだな。まあ、実際無くてもそれらしい噂ばらまいときゃいいしな。どうせ関係

 

 者は皆殺しにするんだからよ」

 

「違ぇねぇ、違ぇねぇ!次も赤ん坊を殺していいんだよな?俺ぁ、あの泣き声聞くと

 

 我慢出来なくてよ!」

 

「ああ、好きにしろ、好きにしろ!どうせ家族は皆殺しにするんだ、赤ん坊だけ残っ

 

 てたらそれこそ可哀そうってもんだぜ!!」

 

 賊はそう言って大笑いしていた。

 

 

 

 その瞬間、賊の輪の中に一つの影が落ちてきたと思ったら、数人の首が一瞬で刎ね

 

 られる。

 

「なっ!?誰だ!」

 

「あたいの名は張儁乂、てめえらをあの世へ送る者だ。さあ、この世の別れの時間だ」

 

 梓美の名乗りを聞いて、賊の顔に驚愕が走る。

 

「ま、まさか…本物の『殺人蜂』…?」

 

「その名を騙った罪は重いぜ。地獄で反省しやがれ!!」

 

 そこから梓美の大立ち回りが始まった。それから小半刻後には周りにいた賊の三割程

 

 が血の海に倒れていたのであった。

 

 しかし、頭目の周りには梓美と似た服を着た者達がしっかり守っており、容易に近付

 

 く事が出来ない。

 

「ふん、さすがは『殺人蜂』だな。ここまでやられるとは予想外だ。しかし、こいつら

 

 だってお前と同じ位の力があるぜ。如何に『殺人蜂』とてこれ以上は無理だぜ?どう

 

 だ、おとなしく降伏して俺達に忠誠を誓うってのなら、こいつらと同じように手厚く

 

 扱ってやるぜ」

 

 梓美がなかなか手を出せない状況に気を良くした賊の頭目はにたにた笑いながらそう

 

 話かけてくる。

 

「手厚く…?嫌だね、あたいは赤ん坊殺しの片棒を担ぐなんざ死んでも御免だ」

 

「ちっ、こっちが下手に出てやらあ調子に乗りやがって…もういい。お前ら、こいつを

 

 殺してしまえ」

 

 頭目の命令で梓美と似た服を着た者達が一斉に襲い掛かる。それから小半刻程戦って

 

 いたが、相手も手練揃いで容易に決着がつかず、さすがの梓美にも疲れが見え始めて

 

 いた。

 

 

 

「ふっ、手間取らせやがって。さあ、こいつを始末しろ」

 

 頭目の命令で梓美に一斉に刃が振り下ろされ、梓美も死を覚悟したその時、数本の

 

 くないのような物が飛んで来て梓美に襲い掛かった者達に刺さる。

 

「誰だ!まだ俺達に逆らおうって奴がいるのか!?」

 

 そこへ舞い降りたのは、

 

「我が名は孫権様が将、周泰!左将軍北郷様の依頼により、張儁乂殿の助太刀に参り

 

 ました!」

 

 一刀が密かに蓮華に依頼して来てもらっていた明命であった。だが、それ以上に賊

 

 達に衝撃を与えたのは、一刀の名であった。

 

「北郷だと!?まさか…既にここがバレているとでも…?」

 

「ここは既に北郷様の手勢によって囲まれています。大人しく降伏し、罪を悔い改め

 

 なさい!」

 

 明命のその叫びと同時に矢が十数本程飛んで来て賊に刺さる。

 

「ひぃっ!もうダメだぁぁぁ!!」

 

 残っていた賊の大半はそれだけで恐れを成して逃げて行く。

 

 しかし、その先には、

 

「おっと、ここは通さへんで!」

 

 霞が部隊を引き連れて待ち構えており、逃げて来た賊を一網打尽にする。

 

「まさかこの状況…あたいが城を出た時から尾けてたという事か?」

 

「申し訳ありません。それも一刀様と輝里殿よりの依頼でした」

 

 明命がそう言うと梓美はため息をついた。

 

「はっ、あたいもヤキがまわったって事かい…だけど、助かった!」

 

 梓美は立ち上がり、再び剣を構える。その横で明命も戦闘態勢を取る。

 

 

 

「儁乂殿、周りの雑魚は私が片付けますのであなたは頭目を」

 

「ああ、任せた!」

 

 二人は一気に駆け出す。

 

「ひ、ひぃっ!お前ら、俺を守れ!!」

 

 頭目の命で残った賊が一斉に襲ってくるが、二人の連携の前に次々と葬り

 

 去られる。

 

「へぇ、凄いなお前。あたいの動きについてくるなんて」

 

「儁乂殿こそ噂に違わぬその技、大いに勉強になります」

 

 二人は軽口を叩きあうだけの余裕すらあった。

 

 そして残ったのは頭目だけとなった。

 

「ま、待て、俺が悪かった!もうこんな事はしないから、な!大体俺達だって

 

 そもそも、とある筋の方から依頼されただけで…」

 

「ほう、それはいい事を聞いた。なら知ってる事を全て白状してもらおうか」

 

「い、言えば助けてくれるのか?」

 

「さあな、それは我が主殿が決められる事だ。あたいが知るか。ただ、お前に

 

 黙秘権は無い事だけは確かだ」

 

 梓美と明命は慌てふためく頭目を簀巻きにして引っ立てていったのである。

 

 

 

「この度はご助力を賜り申し訳ありませんでした」

 

 数日後、全てを片付けて城に戻って来た俺に梓美さんは侍女の時の声で俺に

 

 そう礼を述べた。

 

「いや、梓美さんが気にする事は無いよ。俺達だって侍女長がいなくなったら

 

 困るからね」

 

 俺がそう言うと、梓美さんは苦笑混じりに微笑んでいた。

 

「ところでさ、侍女長も重要なんだけど…出来れば『張郃』として力を貸して

 

 もらうわけにはいかないかな?」

 

 俺のその問いに少し考えた後、地の口調で答える。

 

「悪いが、それは断らさせてもらう。将なんてあたいの性に合わないんでな。

 

 まさか『将として働けないならクビ』とか言わないよな?」

 

「それこそまさかさ」

 

「じゃあ決まりだな。でも遠征とかで留守の間はきっちり守るから安心しな」

 

「なら今後とも侍女長として、よろしくお願いします」

 

「よし、それじゃ…お任せください。一刀様!!」

 

 再び侍女の口調に戻った梓美さんはそのまま退出していった。

 

 ・・・・・・・

 

「梓美様、お帰りなさいませ!」

 

 侍女部屋に戻って来た梓美を侍女の皆が出迎える。

 

「さあ、皆さん。今日も一日お仕事頑張りましょう!!」

 

 梓美は何時もの調子で皆にテキパキと指示を出していたのであった。

 

 

                    

 

                                      …続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は梓美さん再登場の巻でした。

 

 本当は将として仕える形にしようかとも思ったのですが、

 

 彼女には侍女のままでいてもらう事にしました。

 

 ちなみに輝里とは、以前輝里が旅をしていた際に殺し屋としての任に

 

 あたっていた梓美とひょんな事から出会い、その後、殺し屋の仕事に

 

 嫌気が差していた彼女に、輝里が一刀の城の侍女の仕事を紹介したと

 

 いう経緯があったりします。細かい事まで語ってたらどれだけ字数を

 

 かけても終わらなくなってしまうので、割愛しますが。

 

 後、賊の頭目が語った「とある筋の方からの依頼」とかいうのは、

 

 命さんが全て闇から闇へ葬ってますので。

 

 さて、次回はまた拠点の話です。さあ、誰を出そうかな?

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ二十四でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 追伸 梓美さんの先祖が所属していた「張良が従えていた特殊部隊」と

 

    いうのは当然の事ながら、一刀のじいちゃんとばあちゃんの若き

 

    頃の話です。彼女の使う忍術じみた技も実はじいちゃんが、その

 

    特殊部隊の者達に伝授した物です。しかし一刀がそれを知るのは

 

    現代に戻った後の事ですので。

 

 

 

 

  


 
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