No.527739 IS x アギト 目覚める魂 25: 凶報、暴走i-pod男さん 2013-01-04 21:52:07 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2434 閲覧ユーザー数:2312 |
専用機持ち達はそれぞれの国から送られたパッケージやパーツのテストを浜で行う事になった。一夏も、簪の葛藤等露程も知らずにパーツや機材を運んだりと手伝っていた。
「俺には換装パッケージとかオートクチュールが無いってのが残念だなあ。あーあ。」
「一夏の機体って高機動、攻撃特化型の結構ピーキーな奴だからね。シールドエネルギーも攻撃に回しちゃうんだもん。それに、機体中にブレードが生えてそれをビットみたいに操るし。後、変な鞭みたいなのも腕から出るでしょ。(一夏がアギト・・・・私達を助けてくれた・・・・もし、そうなら僕は・・・・)」
「ああ。扱いが難しいってのは確かだな。ワンオフアビリティーって一機につき一つだけなのに、俺のは二つある。零落白夜はシールドエネルギーを食う燃費最悪の最大の理由だ。その分攻撃力が上がるは良いが、当たらなきゃ意味が無い。次が全身からクローを生やすジェネラル・アーマメント。機体の一部を武器に使うから破損が多くなるってのが難点だが、使い所を間違えなければかなり使える。後、まだ使ってないのが」
「織斑先生!」
すると、山田先生が花月荘からブック型端末を片手に走って来た。
「ハワイ沖で軍用」
「静かに。生徒達に聞こえる。テストは中止だ。一般生徒は各自指示があるまで部屋で待機しろ。専用機持ち達は私について来い。篠ノ之、お前もだ。今日からお前には」
「ちーーーーーーーーーーーーーーーちゃーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!」
突如遠方から声がし、崖から何かいや誰かが飛び降りて来た。それは、フリルの付いたドレスを着て、メカニカルなピンクのウサ耳カチューシャを装着した紫の頭髪を持つ女性だった。ジャンプしてそのまま綺麗な放物線を描きながら真っ直ぐに千冬に向かって行った。だが、両手を広げて飛んで来る彼女を千冬はアイアンクローで顔面をキャッチした。
「誰がちーちゃんだ馬鹿者。」
「ぐぬぬぬ・・・・!相変わらず容赦の無いアイアンクローだね!」
「束さん!」
「やあやあいっくん、久し振りー!ちょこっと白式見せてねー。おりゃ。」
白式にどこから伸ばしたのかコードを繋げると、十数個近くの空中投影されたディスプレイが現れ、キーボードを両手で巧みに操り始めた。
「不思議なフラグメントマップをしてるねー。やっぱり男の子だからかな?んーーっと?あれれ?何これ?何でワンオフアビリティーが二つもあるのかな?」
「それは、俺も分からないです。でも、燃費の悪さをどうにか出来ないかな?このままじゃ短期戦しか出来なくなるし。」
「いーよー。十秒待ってねー。」
そしてきっかり十秒後、燃費の悪さが四割程改善された。
「ハイ終わりー、流石私だねー。さてと、箒ちゃーん!とう!」
人垣の陰に隠れていた箒を一瞬で見つけ出した。
「久し振りだねー、大きくなったねー特に胸が」
ガツン!
木刀で思い切りぶん殴られてしまった束。
「痛い!箒ちゃん、いたいよ!」
「それで・・・・」
「うんうん、出来てるよー!大空をご覧あれ!」
空から菱形のコンテナが落ちて来ると、中から赤いISが現れた。
「これぞ既存のISを超えるスペックを持つ第四世代のIS、その名も紅椿!」
「第四世代・・・!?」
現在世界は第三世代の開発にようやくこぎ着けた所なのに、その努力の一切合切が全て全くの無駄にされてしまったのだ。改めて天才の頭脳の恐ろしさを思い知らされる。
「身内だからって専用機が貰えるの?」
「ずるくない、それ?」
「おやおや、頭が悪い人達が多いみたいだね。有史以来、いつ人は平等だったのかな?平等なんて物が存在すれば戦争なんて起こらないんだよ?
「それに箒は要人保護プログラムの所為で色々あったんだ。多少の事は看過せざるを得ないだろう。監視と聴取を何年も繰り返されたら、俺でも気が狂っちまう。恐らくその聴取をしている奴らをぶち殺してるかもな。」
正論を言う束と縁起でも無い事を言う一夏に、異を唱える一般生徒達は黙殺された。
「じゃあ、箒ちゃん乗ってみてねー。パーソナライズはすぐ出来るから。思い通りに動く筈だよ。」
箒は言われた通りISを装着し、パーソナライズが終わると空に舞い上がった。
「速い・・・!!」
「白式より少し上か・・・・」
「秋斗さんには負けるんじゃ・・・?」
「どうだろうな。まあ、俺も高機動の万能型だから別にいらないと思うが。セカンドシフトもまだしてないし。」
「んじゃ、次は武装のテストだよー。右が雨月、左が空裂。雨月は突きの動作でレーザーが出る駆らねー。射程はアサルトライフル並みだからね。空裂は振りの動作と一緒に帯状のビームを出すから。試しにこれ落としてみてちょ。ポチッとな♪」
どこからかミサイルポッドが量子変換され、十発程のミサイルを撃ち出した。だが、それらを全て振り切り、僅かな時間でそれらを全て撃ち落とした。
「やれる!この紅椿なら!」
「一般生徒は各自部屋で待機、専用機持ち達は全員集合しろ!篠ノ之、お前も来い。」
「おいおい、まさかISを貰い立てのペーペーに参加させるってのか?」
だが、千冬はその言葉を無視して専用機持ち達を作戦室に連れて行った。
「ハワイ沖でテスト稼働中のイスラエルとアメリカが共同開発した軍用IS『
「胸糞悪い話だな。年端も行かないガキ共に軍用ISを相手に戦えってのか?勝てる筈無いだろうに。国の不始末はその当事国の人間が尻拭いをするのが当然の行動だろう。何故責任を俺達に押し付けるんだ?」
「それは私も疑問に思っているが、聞いた所で知らぬ存ぜぬの一点張りだろう。命令を受けてしまった以上、遂行するのが我々の役目だ。組織とはそう言う物だ。」
重苦しそうに千冬が秋斗の質問に答える。実際彼女も委員会の動きを時偶不審に思い、完全に信用するのは危険だと判断していた。だが、命令される立ち場である故に口答えは出来ない。しよう物なら親しい者にも累が及ぶ可能性があるからだ。
「目標ISの詳細スペックを要求します。」
セシリアは咳払いをして手を挙げる。
「良いだろう。だが、これは両国の最高軍事機密だ。漏らせば最低二年間の監視と聴取を受ける事となるのを忘れるな。」
「シルバーベル・・・・これが厄介そうだな。俺達でも捌ききれるかどうか分からん。」
「僕の防御パッケージのガーデンカーテンでも防ぎきれるかどうか・・・・・」
「確かに。それに、スピードが半端無い。」
顔を顰めながら展開された福音のスペックデータを見て行く。
「偵察は行えないのですか?」
「無理だ。福音は現在でも音速並みのスピードで移動している。アプローチが出来るとしても、一回だけだ。チャンスは一度、最小人数で一撃で仕留める必要がある。」
「そこで、俺の出番て訳か。良いぜ。俺がやってやる。」
一夏が首をコキコキと鳴らしながら立ち上がる。
「けど、エネルギーはどうするのよ?零落白夜の燃費の悪さを知らない訳じゃないでしょ?」
「俺も付いて行く。」
鈴音の疑問に秋斗が答える。
「俺のも一応高機動型だからな。スラスターを弄って出力を上げた。スピードは白式とほぼ同じになるからな。それに、パッケージテストが中止になった今、動ける人数はかなり限られる。こう言うのは早く終わらせたがる物だよ、お偉方は。要員は一夏は言わずもがな、後は、俺位だろう。どうせなら山田先生か他の教師の方に来て貰いたいってのが本音だけど。」
「待った待ーーーーった!その計画ちょっと待ったなんだよ!
屋根の板を外して束が現れた。
「出て行け。」
「聞いてよ、ちーちゃん!ここは断・然ッ!紅椿の出番なんだよ!見て見て!これが第四世代の新しい特製のマルチロールアクトレス。パッケージなんてもういらないんだよ!現在は世界中で絶賛机上の空論となっているんだけど、これで実現出来ちゃいましたー!あ、後ねー、白式にも同じ物が入ってるよー。試しに私が突っ込んだ。」
「実質的にコレも第四世代って事か。成る程ね。」
データを数分程じっくりと見ると、千冬は口を開いた。
「・・・・・良いだろう。織斑、篠ノ之の二名で出撃。残りは各自待機だ。」
「それは駄目だ。」
異を唱えたのは作戦の要である一夏だ。壁に背を預けて目を閉じたままだ。
(ああ、コイツ今『見てる』な。)
「何故だ?」
「嫌な予感がする。海上封鎖は当然されてるだろうけど、密漁船は?」
「いない。それは既に捜索済みだ。」
「ジャマーを積んでたらレーダーには当然引っ掛からない、百パーセントと言う確証じゃないでしょう。箒が行くのは構いません。でも、せめて門牙さんにも参加してもらわないと。この中じゃ最年長だし、実力だけで言うなら俺よりも上だ。ここは経験豊富な人を活かすべきだと俺は思います。」
「どう言う事だ一夏?」
「最悪の状況を想定しているに過ぎない。」
まだ分からないのかとでも言いた気に頭を振ると、更に言葉を続けた。
「箒、仮にお前が経験豊富なIS操縦者だとしよう。お前は強くて新しい機体を持って間も無い新米パイロットを出向かせるか、それともある程度経験がある奴か。出撃出来るのはこの二人の内一人だけ。誰を向かわせる?」
「それは、経験豊富な操縦者の方が・・・・成功確率は高いが・・・」
「その通り。俺は幼馴染みとしてお前が心配だ。この戦いで死んで欲しくない。剣道大会で優勝したのは新聞で見た。テレビ放送でも見た。だが、あの時のお前の太刀筋は、只の暴力だ。」
その最後の言葉で、箒の体がビクリと跳ねた。秋斗はその記憶を箒が寝ている間にこっそりと『読み取り』、それを一夏に話したのだ。
「だから、仮に戦闘中に密漁船が現れて犯罪者を放って置けなんて言われたくないんだ。これが終わったら模擬戦には嫌と言う程付き合ってやる。だから今回は引いてくれないか?焦って実戦でヘマをするより、修練を積んでからの方がより確実だと俺は思うんだ。幼馴染みとして、俺の顔に免じて。この通りだ、頼む。」
一夏は箒に深々と頭を下げた。
「ちょっとちょっといっくん、駄目だよ〜!それじゃあ全然だめだよー!紅椿と箒ちゃんが一緒じゃなきゃ勝てっこないよー!!」
「大丈夫です。
「良いだろう。では織斑、門牙の二人で出撃。福音を迎撃し、パイロットを救出しろ。」
「「ラジャー。」」
「出発は十分後だ。準備をしておけ。残りの専用機持ちはここで指示を出すまで待機だ。以上、解散。」
(出る前に簪に会っておかなきゃな。)
「門牙さん、おれちょっとよる所があるんで、先に行ってて下さい。直ぐに戻るんで。」
「分かった。G4-Mildはまだ使ってないんだよな?」
「はい。残念ながら。」
「使うチャンスがその内来るさ。」
「だと良いですけど。」
簪の名前が書いてある張り紙を探し、その部屋の扉をノックした。フラフラと簪が青白い顔をして出て来た。
「おいおい、大丈夫か?」
「いち、か・・・・?」
「お、おう・・・・どうした?」
簪は何も言わずに一夏に抱き付き、胸に顔を埋めて泣き始めた。しばらくしてからようやく落ち着いたので、何故あんな有様だったのかを聞いた。
「そうか。そうだったよな。ごめんな、はっきり言わないで。もう分かってたと勝手に勘繰った、完全に俺のミスだ。ごめん。」
一夏は深呼吸すると、簪の両肩を掴んだ。
「俺は今から戦いに行く。学園の方で軍用IS暴走の後始末をする破目になった。それを終わらせて戻ったら、改めて簪に言いたい事がある。だから、それまでもう少しだけ待っててくれるか?」
「分かった・・・・・待ってる。」
「ありがとう。ごめん、無駄に心配かけさせて。」
「無駄な心配じゃないさ。じゃあな。後で。」
一夏は簪の手を最後にもう一度だけ握って頭にポンと手を置くと、砂浜に向かった。既に秋斗の準備は出来ていた。ネロを展開し、システムの再チェックを行っている。
「御待たせしました。」
「待ってない。行くぞ。とっとと片付けて俺はもう一度風呂に入る。」
「同感。」
一夏も白式を纏い、秋斗の両肩に足を置いた。
『二人共分かっていると思うが、今回の任務は一撃必殺が目的だ。出来るだけ時間をかけずに戦え。』
「了解。」
「ブースター、スラスター、点火。発進まで三・・・・二・・・・一・・・・・ゼロ!」
限界までスラスターとブースターを吹かし、空に舞い上がった。空気が切り裂く様に鋭い唸り声を上げて行く。
「目標まで後一キロ・・・・・・五百メートル。準備しろ!」
一夏は雪片を右手に持ち、ジェネラル・アーマメントを発動した。体中のクローが一夏の周りを飛び始める。
「到達まで後三、二、一・・・・行け!」
福音の姿が見え始めた所で一夏は秋斗の機体の肩の部分を蹴り、イグニッションブーストで飛び出した。
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
『零落白夜発動、出力100%』
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福音戦開幕です。