No.527679

クリスマスプレゼン

今更クリスマスも何もないだろうと思ったけど、まあ、Rマークのついてないのが倉庫から発掘されたので。
突発で書いたブツ(そんなわけで言切ベースの士言?言士??)ホンワカ衛宮一家

2013-01-04 18:36:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:798   閲覧ユーザー数:794

去年のクリスマスは父さんと母さんがいた。

 

終業式が終わって家に帰って来ると母さんがクリスマス用のご飯を作っていた。

「これは夜だから、お昼はサンドイッチで我慢してね」

って言われて手渡されたのはチキンの入ったサンドイッチ。

「これもクリスマスみたいだね」

って言ったら『クリスマスですもの』って母さんは笑った。

 

父さんが帰ってきてクリスマスのパーティ。

母さんの作ったごちそうは豪華でおいしかった。

ケーキはスギノのケーキ。

父さんと母さんの大好きなお店のケーキだ。

白い生クリームとイチゴのたくさん乗ったケーキはとってもおいしかった。

 

次の日の朝。

枕元にはプレゼント。

サンタさんがくれたものだ!

開けてみると欲しかったラジコン。

「良かったな」って父さんが言ってくれた。

「サンタさんにありがとうって言わなきゃね」って母さんが言った。

 

父さんと、母さんと……一緒だった最後のクリスマス。

 

 

士郎は眠い目を擦り起きた。

今日から冬休み。

だからと言うわけではなく、丁度日曜日だから、ゆっくり起きる日だ。

衛宮家の平日の朝食は7時。けれど土曜と日曜は8時と決められている。

士郎は時計を見た。

針は6時。もう少し布団の中で寝ていてもいい。

 

士郎はもぞもぞと布団の中で寝返りを打つとぼんやりと考え事を始めた。

幸せな夢を見ていた気がした。

でも、起きたら胸が苦しくなった。

そんな夢。

(どんな夢だったんだろう……)

考えるとますます胸が苦しくなった。

(―――なんだろ)

だが、思い出すことをやめるのは嫌だ。

つじつまの合わない感情に士郎が眉を寄せた時だった。

 

「!」

薄暗い部屋の中目の中に飛び込んできたものを確認して士郎はがばりと布団を跳ね上げた。

思わず正座でソレを手に取る。

赤い包み紙に包まれて、金のリボンを付けた箱。

「クリスマスプレゼントだ!!」

士郎は思わず声を上げた。

昨日、衛宮の家に来て初めてのクリスマス。

ご馳走とケーキでクリスマスを祝ってプレゼントをもらった。

なのにまたクリスマスプレゼントなんて、何事だろう?

もう小学生だからサンタクロースなんていないことを士郎は知っている。

プレゼントを手に取って、添えられていたカードに目を通して士郎はパッと顔を輝かせた。

カードに書かれていたのは『サンタクロースより』。

養父の『おちゃめ』なサプライズだろうとすぐに士郎は思い至らせた。

―――と、士郎は大きな包みの陰に隠れた小さな包みをも見つけた。

添えられていた素敵な意匠のカードには、父の友人の名が書かれてあった。

 

士郎はプレゼントを開けると廊下に出た。

父に礼を言うために。

まだ寝ているかもしれないが、許されるだろうと思った。

父の部屋の前で息を整える。

朝の冷たい空気が身に染みる。

士郎は襖をそっと開けた。

 

「綺礼……」

襖を開け、士郎は小さくつぶやいた。

父の布団に彼の親友言峰綺礼が居たのだ。

教会の神父の仕事をしている彼は昨日の士郎と父とのクリスマス会にはいなかった。

『クリスマスはキリストさまの誕生日だから奴は忙しいんだとさ』そう言ったのは父だ。

自分が寝てから来たのだろうか。

一つの布団で寄り添って眠る姿がパパとママみたいだ。

士郎はふとそんなことを思った。

(ママ……言ったら怒られるな)

と、彼の目が開いた。

「……お早う綺礼」

士郎は小さく声を掛けた。

「……おはよう」

たった今考えていたことを知られたくなくて士郎はぎこちなく俯いた。

それから

(せっかく寝てたのに起こしちゃ悪かったよね)

と思い口早に礼を言った。

「綺礼、クリスマスプレゼントありがとう」

そうして自分の部屋に帰ろうと踵を返した。

父もまだ眠っているようだったし、何より父は綺礼と一緒の布団に寝ているのを自分に見られるのを嫌がっているからだ。

けれど『士郎』と綺礼に声を掛けられ、士郎は足を止めた。

振り返る。

見ると、手招きだ。

「行っていいの?」

体をずらす仕草を確認し士郎が頭を傾げる。

小さく頷かれ、士郎は顔をほころばせた。

 

 

父と綺礼の間にするりと滑り込んだ士郎は、少し悩んで綺礼の方に体を向け横たわった。

父の寝息は深く、招いた相手に背を向けるのは失礼だと思ったのだ。

綺礼と顔を向かい合わせ士郎はもう一度礼を言った。

「プレゼントありがと」

「ああ……」

「十字架の、綺礼と一緒だね」

「何をやったらいいのかわからなくて悩んだんだが……以前欲しがっていただろう?」

「うん、うれしい。大事にする」

プレゼントは綺礼と同じクロスだった。

と、腰を抱かれ、士郎は顔を後ろにそらした。

父の手だった。

「シローの体冷たい」

温もりを分け与えようというのか、そう言いながら父が抱きこむようにすり寄ってきた。

「おはよう、親父。親父は温かいね」

低い声で士郎が挨拶をすると、口の中でむにゃむにゃと父は言うと

「ん……。綺礼がいたから」

と、続けた。

まだ寝ぼけているのだろう。腕からはすぐに力が抜け父の寝息は再び深いものに変わった。

綺礼の手が士郎の体をまたいでそんな父の肩を抱き寄せた。

2人の間に抱き寄せられる形になり、士郎はもぞもぞと体を揺らした。

恥ずかしい。

「綺礼……」

出ていこうか、と聞こうとして今度は綺礼に頭を彼の肩口に押し付けられた。

「もう少し寝てろ。まだ起きる時間ではない」

そう言われ、士郎は素直にうなずいた。

「……うん」

頬が緩む。

嬉しくて。

綺礼は父の友人で。

自分にも優しく接してくれるけど、でもやっぱり家族ではないし距離を感じることも多々ある。

冷たいと感じられるときも。

そんな彼が父と眠る布団に招き入れてくれた。

嬉しかった。

気まぐれかもしれないけど。

温かさ嘘じゃない。

(プレゼントよりうれしいとか言ったらダメかな)

士郎は綺礼の広い胸に顔を押し付けた。

そんな士郎を邪険にするでもなく綺礼は黙って士郎したいようにさせてくれている。

 

―――あったかいや。

 

背後の父の寝息に誘われるように士郎はうっとりと目を閉じた。


 
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