No.526320

IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~

解決と終わりのメロディ

2013-01-01 19:47:14 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:1089   閲覧ユーザー数:1019

「………んぁ」

 

目を覚まして最初に目に入ったのは、綺麗な金色だった。

 

(なんだろ…良い匂い………)

 

起き抜けで全然働かない頭で思考する。

 

(サラサラしてる…)

 

手で触ってみるとそんな感触がした。

 

 

………………ん?

 

 

段々と意識がはっきりしていく。

 

(なんか…いつかも、こんなことあったような)

 

そう…一年くらい前にこんなこと……

 

「んん!?」

 

身体を起こすと、金色の間から肌色が見えた。

 

「…ん、もう、朝なの?」

 

「な…な………なな……!?」

 

目の前で横たわるなにかが動いた。

 

「な…なにしてんのシャルロットさん!?」

 

思わずフルネーム&敬称付きでその名前を呼ぶと、シャルはゆっくりと身体を起こした。おろした髪がその…を隠しちゃいるが、アレだ、ふ、ふくらみはバッチリ見えちまう。

 

「あ………おはよう瑛斗」

 

まだ少し寝ぼけているのか、ぽーっとした感じで挨拶してくる。

 

「ばっ! バカ! なんで寝間着もなんも着てないんだよ!」

 

目を覆って顔を逸らす。本来恥ずかしがる方逆じゃね?

 

「だいじょぉぶ…ちゃんと、ぱんつ履いてるから………」

 

「ああそうなの? …ってそうじゃなくて! 服! 服を着なさいよ!!」

 

「え…あ…………わあああ!?」

 

ババッっと腕で胸を隠す。ふぅ、やっと目を覚ましたみたい。

 

「ふわわ…わあああ! ええええっち! 瑛斗のえっち!」

 

「なにゆえ!? なにゆえ俺が悪い風に言われるの!?」

 

とりあえずお互いベッドの上で背中を向けて正座。

 

「と、とりあえず服着よう! シャル、服着ようか!」

 

「う、うん…」

 

シャルがベッドから降り、衣擦れの音が聞こえ始める。

 

 

あああ…や、やっぱりいきなり過ぎたかな。

 

見れば、まだ瑛斗は正座して小さくなって背を向けてる。…なんだか可愛い。

 

(自分で昨日の夜考えたのに…自分で驚いちゃった………)

 

ラウラみたいには、いかないな。

 

「あれ? ここって…」

 

あ、気づいたみたい。

 

「うん。僕の部屋だよ」

 

「え? あれ? そういや昨日俺どうなったんだ?」

 

「瑛斗が倒れたあと、僕の部屋が近かったからそこで休んでもらったんだ」

 

「起こしてくれりゃあ移ったのに。悪いことした」

 

「いいんだ。気にしないで。それにしてもいきなり倒れたからびっくりしたよ」

 

「…たしかに、フランスに来てからこっち、ロクに休んじゃいなかったな」

 

瑛斗、やっぱり無理してたんだ。

 

「…うん、着替え終わった。瑛斗、もうこっち見ていいよ」

 

瑛斗は振り返ると目を丸くした。

 

「へ…変かな?」

 

「いや…そんなことない。けど、お前それ………」

 

「うん。学園の制服」

 

「だって、お前…退学届を…………そうだ! アデル! アデルはどうした!」

 

瑛斗は言葉を考えてから思い出したように問いかけてきた。

 

「義兄さんはあの人と本邸に。エリナさんとエリスさんも早い便の飛行機だからって昨日の夜のうちに出て行ったから、ここには僕と瑛斗だけ」

 

「そうか」

 

「制服はあの人が一度戻ってきて僕に渡してくれたんだ」

 

「なるほど…で、どうする?」

 

「どうするって?」

 

聞きかえすと瑛斗はごにょごにょと喋り出した。

 

「その………昨日は、あの、サイコフレームのせいで勢いであんな風に言っちまったけど、お前は…」

 

「………………」

 

「い、いや、お前の意見を尊重したい。ここに残るのか、それとも……」

 

「瑛斗」

 

僕は瑛斗の言葉を遮った。

 

「な、なんだ?」

 

「ちょっと…一緒に来てくれるかな?」

 

「い、いいけど、どこに?」

 

「それは内緒。とりあえずここを出発しようか。朝ごはんは街の方で食べよう」

 

瑛斗は首を捻った。

 

 

シャルに連れられてやって来たのは霊園だった。前を進むシャルは昨日の夜みたいに無言。でもその足取りはしっかりしていて、迷いがない。

 

「…着いたよ」

 

シャルが一つの墓標の前で立ち止まった。

 

「連れてきたかったのって、ここか?」

 

「うん。お母さんの、お墓」

 

「……………」

 

「ここを知ってるのは、僕だけ。葬儀も僕だけだった」

 

「お前一人で?」

 

シャルは無言で頷いた。

 

「………お母さんが亡くなった時も、看取ったのは僕だけ。あの人はなにもしなかった」

 

ディエルのことだな。

 

「でも、ディエルは―――――」

 

「わかってる。全部…勘違いで、昨日、僕に制服を返してくれた時に謝ってくれた」

 

「……………」

 

シャルは墓標に…いや、お母さんに語りかけ始めた。

 

「お母さん、久しぶり。僕…私の大切な人を連れてきたよ。瑛斗っていうんだ」

 

「…………ども」

 

シャルにならって頭を下げる。

 

「お母さんにはこの姿は初めて見せるね」

 

(あ…………)

 

シャルの目から涙が流れて落ちた。

 

「シャ―――――」

 

声をかけようとしたけど、思い留まった。

 

「学園にね、友達もいるんだ」

 

笑っていたんだ。涙を流して、口を引き攣らせてもなんとか笑顔を作っていた。

 

 

でも、すぐに限界が来た。

 

 

「辛いことも…たくさっ、沢山、あったんだ。でも………その度、みんなが、助けて、くれてね…!」

 

「………」

 

弾かれるようにシャルは俺の胸に飛び込んできた。

 

「瑛斗…! 僕、怖かった…!」

 

「シャル…」

 

「瑛斗に…ラウラに………みんなに、もう…もう会えないと思ったら、怖くて…寂しくて…!」

 

俺の胸に顔をうずめてしゃっくりあげる。そんな姿が、たまらなく………

 

「…………っ」

 

「…瑛斗………?」

 

「頑張ったな…! お前はよく頑張った……!」

 

シャルの背中に手をまわして小さく震えている頭を撫でる。するとシャルの目から一層涙が溢れた。

 

「瑛斗…えいとぉ………!」

 

ずっと堪えていたんだろう。その涙は昨日と違う気がする。

 

「昨日ね…あの人が言ったんだ…。家がもう僕を縛ることはないって…自由に生きろって…!」

 

「ああ。お前はもうシャルルなんかじゃない。シャルロットで、シャルだから」

 

「うん…うん…………!」

 

その後、涙を流し終えると霊園の出入り口に歩き始めた。

 

「あの人は…義兄さんと話し合って今後のデュノア社の方針を決めていくって」

 

「裏取引も、多分消えるだろうな」

 

「でも、きっと、なんとかするよ」

 

「そうだな」

 

「あの人は…あの時僕が咄嗟に『お父さん』って呼んだので充分救われたって言ってた」

 

「そっか…その分なら、きっと大丈夫さ」

 

「ねえ瑛斗」

 

シャルが立ち止まって、こっちに振り向いた。後ろで束ねた金色の髪が踊る。

 

「なんだ?」

 

「この場所……憶えていてくれる?」

 

「……ああ。忘れねぇよ」

 

「じゃあ、これで、この場所を憶えてるのは二人になったね」

 

そこにもう涙は無かった。あるのは優しい、いつもみたいに優しい笑顔だけだった。

 

 

「やぁーっと、帰ってきたぁー」

 

日が傾いている。俺たちは今、二週間振りにIS学園の校門を見ていた。

 

「エリナさんが飛行機のチケット取ってくれたなんて、ホントエリナさんさまさまだよ。今度ちゃんとお礼しないと」

 

「……………」

 

『そうだね』くらいは返って来るだろうと思って顔を向けると、表情が険しいシャルがいた。

 

「? シャル?」

 

「え? あ……うん。そうだね」

 

「…大丈夫か?」

 

「いやぁ…ちょっと、緊張しちゃって。どんな顔して入ったら良いのかなって」

 

「あー………」

 

確かに、シャルは退学届を置いて出て行った。それは俺も気がかりになっているんだよ。

 

「で、でも大丈夫! 俺が頼み倒してどうにかしてやる!」

 

「ほ、本当?」

 

「おうさ! だから、胸張って行くぞ」

 

「う、うん」

 

意気込むシャルと一緒に、いざ学園に!

 

 

 

「桐野、デュノア。二週間の特別研修、ご苦労だった」

 

 

 

「「………………え?」」

 

最前線に送り込まれる新兵ばりの覚悟を持って職員室に行き、織斑先生の前に立つと、その言葉を言われた。

 

「え…や、あの? 織斑先生?」

 

「なんだ」

 

「失礼を重々承知で言わせてもらいますけど…」

 

「だからなんだ。さっさと言え」

 

ギロと睨まれてしまう。

 

「あの、シャル………シャルロットの退学の件は…?」

 

「退学? なんのことだ?」

 

織斑先生は整理された机の引き出しから一冊の小冊子を取り出して俺に渡してきた。

 

「『ISの操縦能力向上のための特別研修』……?」

 

横から覗き込んだシャルが読み上げる。

 

「お前たちは二年の専用機持ちの中から推薦で選ばれて研究施設へ二週間の研修へ行っていたんだろうが。退学なんて話、まったく聞いていないぞ」

 

「だ、だって、言ったじゃないですか、俺を二週間の停学処分にって」

 

織斑先生が眉をしかめた。

 

「さっきからお前ら二人は何を言ってるんだ? 向こうで変な薬でも投与されたのか?」

 

いやいやいや、こっちとしてはそっちが何言ってんですかなんですよ。なんて口が裂けても言えん。

 

「ほら、疲れただろ。行け」

 

「あの――――――」

 

「行け」

 

「………………」

 

織斑先生はそのまま席を立ってどこかへ行ってしまった。

 

「…しゃ、シャル、わけがわからないのは俺も同じだ。とりあえず寮へ行こう」

 

「う、うん」

 

寮に行くとのほほんさんがいた。

 

「あ、きりりんとでゅっち~だ~。おかえり~」

 

「の、のほほんさん!」

 

「僕たちどこ行ってた!?」

 

詰め寄ると、

 

「え~? どこって、二人とも研修に行ってたんでしょ~?」

 

ぬああ…! のほほんさんまでそんなことを!

 

「ど~だった~? やっぱ大変だった~?」

 

「大変なんてもんじゃねぇって! こちとら―――――!」

 

「うんうん~そっかそっか~」

 

「聞けよ!?」

 

のほほんさんはそのまま歩き出した。

 

「でゅっち~は自分の部屋に戻ったら~? らうらうが会いたがってたから~」

 

らうらうって…ラウラか。

 

「じゃあ〜ね〜」

 

のほほんさんがそのまま曲がり角へ消えて行く。

 

「どういうことだよ…」

 

「ラウラ…ラウラが待ってる!」

 

弾かれるようにシャルは駆けだした。

 

「おいシャル!?」

 

慌てて追いかけてなんとか追いつく。シャルは自分とラウラの部屋のドアの前で立ち止まっていた。

 

「…………」

 

ノックしようとする手を一度ひっこめる。

 

「…………」

 

こっちを不安そうな目で見てくるから、俺は頷いてみせる。するとシャルも頷き返してコンコンとドアをノックした。

 

『開いているぞー』

 

おわああ二週間ぶりのラウラの声だ!

 

シャルは深呼吸ひとつしてドアを開けた。

 

 

「シャルロットと瑛斗か。研修は勉強になったか?」

 

 

そこにはいつも通りな感じにラウラがいた。

 

「…ラウラ」

 

シャルはぽつりとラウラの名前を呼んだ。そしてゆっくりと歩み寄っていく。

 

「…………………」

 

ラウラは一度目を伏せる。そして次に開いた目は涙が溢れそうになっていた。

 

「~~~~~~~~~~ッ…! ラウラァッ!!」

 

そしてシャルはラウラを飛びつくように抱きしめた。ドサッと二人でベッドに倒れ込む。

 

「ラウラ! ラウララウララウララウララウラ!! ラウラァッ!!」

 

ラウラの名前を連呼するシャル。

 

「…シャルロット、おかえり………!」

 

ラウラもそれに答えて、目から涙を落とす。

 

(よかったよかった…………)

 

俺も若干目頭が熱くなるのを感じた。静かにドアを開けて部屋から出る。

 

「…………じゃ、状況説明プリーズ」

 

横を見ると曲がり角から『へへへ…///』と頭を掻きながら二年生専用機持ちが俺とシャルとラウラを除いて全員出てきた。

 

・・・

 

・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

結局、俺とシャルは『特別研修』に行っていたことになっているらしく、『ほぼ』全員が普通に接してきた。飯の時だって普通な会話をしたし。

 

(それはそれで面倒なことにならずに済むか…)

 

なによりもやっぱり自分の部屋って落ち着くわ。

 

ラウラは箒によくしてもらってたようだ。やっぱり寂しかったんだろう。

 

(ま、それはさておき………)

 

後ろから足音が聞こえた。

 

「やあ瑛斗くん。研修お疲れ様」

 

「…………」

 

月明かりを背にこっちを見てる生徒会長、更識楯無さん。手に持つ扇子には『おつかれ!』と達筆な筆字が。

 

「サイコフレームの制御ができるようになったそうじゃない。これはおねーさんの生徒会長の座も危ないかも♪」

 

「ぜってーそんなこと思ってないでしょ。そんなことより、何の用ですか。俺疲れてるんですけど」

 

「大丈夫。すぐ終わるわ」

 

楯無さんは俺のところに近づいてきて首に触れてきた。細い指がセフィロトを撫でる。

 

「チヨリおばあ様にお世話になったみたいねぇ」

 

「ですね。チヨリちゃんには助けてもらいましたよ。フランスへも手荒く発射してもらいました」

 

「ふふふ…そっか。おねーさんのことは何か言ってたかしら?」

 

「小さいころ…楯無さんが『楯無』の名前を受け継ぐ前から知ってるって言ってました」

 

「それだけ?」

 

「それだけ」

 

「ふぅん」

 

な、なんだったんだ、今の問いかけ。

 

「あの、楯無さん」

 

「なぁに?」

 

「チヨリちゃんって、何者なんですか? あんな小さい身体で64歳って。正直人間とは思えません」

 

「ストレートな言い方ね。でも、私からは答えられないわ」

 

「またそうやって…そうやって煙にまかないで少しはちゃんと答えてくださいよ」

 

すると楯無さんはおもむろに俺の左手を掴んで自分の胸に押し当てた。って、えええっ!?

 

「たたた、楯無さん!?」

 

離そうとしても自分の腕なのにビクともしない。ただただ柔らかい感触が手から伝わってくる。

 

「瑛斗くん、何を感じる?」

 

穏やかな表情でなんか聞かれた!

 

「何って、何ですか!?」

 

「いいから。何を感じる?」

 

「……柔らかい、です」

 

「他には?」

 

ひええ、もう勘弁して!

 

「その…あったかいです」

 

「他には?」

 

「楯無さんの…心臓の…こ、鼓動」

 

「うん。そうね」

 

楯無さんがパッと俺の腕を離した。俺も凄い速さで引っ込める。

 

「私は生きてる。瑛斗くんだって生きてるわ。それだけは揺るがない真実よ」

 

「は…はぁ。つまり?」

 

「つまり…そういうことよ。じゃあお疲れ様。ゆっくり休んでね」

 

楯無さんはミステリアス・レイディを展開すると三年生寮の方角へ飛び去っていった。

 

「……………」

 

……結局、楯無さんの胸を触って終わってしまった。

 

(柔らかかったな…山田先生くらい…………)

 

「ってバカじゃねぇの俺!!」

 

頭を地面に打ち付ける。

 

 

「え、瑛斗?」

 

 

「どわっはやあああ!?!?」

 

後ろから名前を呼ばれた! なに!? 誰!?

 

「だ、大丈夫?」

 

「って、なんだシャルか。びっくりしたぁ」

 

「な、なんかごめん。で、なにしてたの?」

 

「え!? あ、い、いや別に。ゆ、夕涼み! 夜風に当たってたんだよ!」

 

「? そうなんだ」

 

必死で取り繕うと、少し首を傾げながらも納得してくれた。

 

「そっ、それで? お前こそどうした?」

 

「僕も夕涼み。ラウラが心配するからすぐ戻るけどね」

 

「そか」

 

「……………」

 

「……………」

 

一気に静かになる。この気まずいというかなんというかな空気、憶えがある。

 

「「なんだかあの風呂の時と似てるな(ね)」」

 

ハモってしまった。場を和ませようとしたけどまた一層気まずくなっちまう。

 

「……………」

 

「……………」

 

な、なんでだろ。変にドキドキすんな。胸の中央に手を当てる。

 

(ん?)

 

堅い感触が………あ。

 

「…そうだ。すっかり忘れてた」

 

「?」

 

「シャル、目閉じて」

 

「え?」

 

パチクリと瞬きする。聞こえなかったかな?

 

「だから、目を閉じてって」

 

「え…えええええっ!?」

 

さっきの俺みたいにテンパっている。どした?

 

「え、や、こ、こんなところ…だ、誰もいないけど………ええ!?」

 

あうあうあわあわしてんだけど、俺変なこと言った?

 

「いいから、ほら」

 

「う…うんっ!」

 

ぎゅーっと目を閉じて顔を真っ赤にしてるな。でもよ、なんで若干顔を上に向けてるんだ?

 

「まだだぞ、まだだぞ」

 

「……………!」

 

これで…よし!

 

「うん。もういいぞ」

 

「え…? あ」

 

目を開けたシャルの胸元には光るものが。

 

「やっぱり、それはお前が持ってる方がしっくりくるよ」

 

「僕の…ラファール……」

 

オレンジ色のそれは、月明かりを反射してこころなしか嬉しそうに見える。

 

「セフィロトにつけたパイルバンカーもまた付け直してやるよ。それと…盗聴器も取っておいた」

 

「……………」

 

「これでやっと『シャルロット・デュノア』って感じだな」

 

「そ、そうかな?」

 

「そうさ。おかえり………シャルロット」

 

「瑛斗………ありがとう…」

 

シャルの顔に笑顔が咲いた。ふぅ、これで全部解決したな。大変だったよ本当に。

 

「さて…寝るか。六月下旬っつっても夏風邪引いたら溜まったもんじゃないからな」

 

「瑛斗待って」

 

「ん――――――――」

 

 

「………………」

 

「………………」

 

 

なんだろ? 口が柔らかいなにかに塞がれた。それに…なんでこんなにシャルの顔が近いんだ?

 

「…………」

 

ゆっくりシャルの顔が離れた。口から空気が漏れる。………!?

 

「シャル…今………!」

 

「お、おやすみ!」

 

シャルはそのまま寮内へと続く階段を駆け下りていった。

 

「…………」

 

俺は茫然と、ただ茫然と、自分の唇に触れることしかできずにいた。

 

 

「ん~♪」

 

「上機嫌だね。たっちゃん」

 

自室へ向かう楯無を薫子が止めた。

 

「まあね。瑛斗くんが成長してくれたから」

 

「自分の胸を揉ませるのは、どうかと思うけどなぁ」

 

「やだ、見てたの?」

 

「黛家の力を舐めないでちょうだいよ」

 

楯無はクス、と笑って胸をはった。

 

「どう? 薫子ちゃんも揉みたい?」

 

「やーよ。それ以上大きくなられたら、ただでさえない勝ち目が消滅しちゃう」

 

「んふふ♪ それは残念」

 

「でも、これで更識家の宿願に一歩近づいたわね」

 

「一歩どころじゃないわ。大躍進よこれは」

 

瞬間、苦笑する薫子の表情に鋭さが差した。

 

「……どうやら向こうも動き出したみたいよ」

 

「…! 確かなの?」

 

「まだ誤魔化し誤魔化しだけど、見抜けない私じゃないわ」

 

「そう………そうなってくると、こっちも急がないと」

 

「無理はしないでね。たっちゃん」

 

「りょーかい。気をつけるわ」

 

最後に目配せして二人はそのまま互いの部屋に戻るのだった。

 

 

「んー♪ んー♪ んーんーんー♪」

 

この世界のどこか。そこにもメロディを口ずさむ者がいた。

 

「…上機嫌ですね。束様」

 

「もぉー、くーちゃん。私のことは『お母さん』って呼んでってばー」

 

目を堅く閉ざした少女へ椅子に座る束は身を反らしてぼやく。

 

「…でもまあ、確かに機嫌はいいね」

 

「いよいよ…ですね」

 

「だねー。ここまで長かったよ」

 

束の眼下には、おびただしい数の『無人ISの残骸』。

 

砕かれ、撃たれ、刻まれ、人の形を留めているものの方が少ない。

 

「全てのゴーレムに人工知能を搭載して、闘わせ、最後に残った一機………」

 

少女は閉ざされた眼はその残骸の山の頂点に立つ機体に向けられていた。

 

「……さあ、始めるよ。そして………」

 

その人型の機体の頭頂部からはケーブルが伸び、『ポニーテール』のようになっている。四本の腕には、四本の刀。そして背中には大型ブースター。異形、と言う言葉がふさわしい姿だ。

 

「そして……世界を壊すんだ」

 

「―――――――!!!!」

 

束の言葉に呼応するように、その機体は空へ吠えた。

 

 

瑛「インフィニット・ストラトス~G-soul~ラジオ!」

 

一「略して!」

 

瑛&一「「ラジオISG!!」」

 

瑛「みなさぁぁぁぁぁぁぁぁん! こんばどやぁー!!」

 

一「こんばんわー」

 

瑛「ああ帰ってきました! みなさん! 桐野瑛斗がラジオISGに帰ってまいりましたよぉーっほぉぅ!!」

 

一「テンション高ー」

 

瑛「ったりめえだ! 三週間振りくらいの登場だぞ! テンションも上がるってもんよ!!」

 

一「おー、モチベも高い」

 

瑛「一夏、俺がいない間ラジオやってくれてサンキューな。恩に着る」

 

一「お…おお。普通にお礼を言われた」

 

瑛「さあ! 張り切って質問参りましょう!! カイザムさんからの質問! 一夏の質問です。何歳の時にサンタに見放されましたか? だって」

 

一「サンタクロースか。子供の夢だな」

 

瑛「ちなみにカイザムさんは13歳で見放されたって」

 

一「なんか悲しい発言だな」

 

瑛「お前ももれなくそんな悲しい発言をしなきゃダメだかんな」

 

一「うーん…そもそも俺ん家はサンタクロースなんて伝説だったな」

 

瑛「まあ普通に伝説だけどな」

 

一「これを見てる読者の夢を砕かないために言うけど、俺んちは対サンタクロース用迎撃システムが常設されてるから、サンタは来ようとしても来れないんだよ」

 

瑛「サンタ迎撃システム!? なにそれカッケェ!」

 

一「ちなみに千冬姉作製だ」

 

瑛「相当容赦なさそうだ!」

 

一「ま、そういうわけだから俺んちにはサンタは来ないよ」

 

瑛「なるほどー。ちなみにツクヨミではサンタが来る来ないにかかわらず所長が酔っ払って、俺が介抱任されるからそれほど楽しい思い出はあんまない」

 

一「その発言の方が悲しいわ!」

 

瑛「まあでも? 去年来たじゃん、お前」

 

一「な…まさか」

 

瑛「読者のみなさーん! 今ピンと来ましたー? 来なかったら作者のアカウントが変わる前の『ドラーグ』時代の本編を見てみてくださーい!」

 

一「ここで宣伝! ここで宣伝か!」

 

瑛「ささ続きましてロキさんからの質問! 一夏に質問です。正月はどう過ごしますか? だって」

 

一「また俺宛てか。クリスマスの次は正月か」

 

瑛「正月の過ごし方! いろいろありますよー寝正月もあれば貫徹正月! 食正月もある!」

 

一「うーん…IS学園に来る前は普通に受験勉強とかしてたから、普通に家で過ごしてたな。やっぱり寝正月」

 

瑛「へー、俺は宇宙ステーションにいたから年の変わり目とか言われてもあんまりピンとこなかったなー」

 

一「そうなの?」

 

瑛「そうさ。でもはしゃいだ所長がやっぱり酒飲むんだなこれが」

 

一「で、介抱すると」

 

瑛「そゆこと」

 

一「でも、学園に入ってからは結構そういうイベントも楽しめてはいるよな」

 

瑛「ハプニングもセットだけどな」

 

一「ハハハ、違いねぇ」

 

瑛「さて…次の……あれ?」

 

一「どうした?」

 

瑛「質問が、ない」

 

一「あー…うん、きっと、今ので最後だったんだ」

 

瑛「嘘!? 俺帰ってきたのに質問ゼロ!? マジで!?」

 

一「こればっかりは仕方ないな、うん」

 

瑛「くっ…! いいもん! それじゃあエンディング!」

 

 

流れ始める本家ISのエンディング

 

 

一「おー、久しぶりに声があるな」

 

瑛「今回はスペシャルってことでなかなかスペシャルな人を連れてきた。上見ろ」

 

一「…なんだ? あの巨大戦艦」

 

瑛「なんでも空を飛ぶ戦艦なんだってさ、浅草とか武蔵とか、そんな日本風な名前」

 

一「へー。声は女の人だな」

 

瑛「来てもらうの大変だったぜ。さて、最後も元気に行きましょう! それじゃあ!」

 

一「みなさん!」

 

瑛&一「「さようならー!」」

 

???「おーいホライゾーン! なーにしてんだ?」

 

???「トーリ様。名前を呼ばれるとホライゾンにつけられた『???』の意味がなくなるのですが」

 

???「そんなこと言ったら俺も手遅れだYO! ほらほら、今日も俺の宝剣はもうこんn―――――」

 

一「え、瑛斗、なんか、顔面に殴られた痕がある全裸の男が降って来るんだけど」

 

瑛「あー、アレだって。気にしたら負けなんだって」


 
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